相続に関する話をしていると、「相続財産」と「遺産分割財産」という似たような言葉を耳にすることがあります。
どちらも「故人が残した財産」というイメージを持たれがちですが、実は法律上の意味や扱いに違いがあります。
違いを正しく理解しておかないと、相続手続きでの誤解やトラブルにつながることもあるため、事前に基本知識を身に着けておきましょう。
本記事では、「相続財産」と「遺産分割財産」の違いを明確にしながら、それぞれの意味や実務上の注意点についてわかりやすく解説します。
ざっくりポイント
  • 相続財産とは何か
  • 遺産分割の対象となる相続財産は何か
目次

相続で受けつぐ相続財産とは何か

相続では、被相続人の財産全てを相続できると勘違いされがちですが、実はそうではありません。
被相続人の財産であっても、年金を請求する債権のように相続をするのに適さない財産もあります。
遺産分割の対象になる財産は相続財産でなければならないので、まず何が相続財産かを確認しましょう。

相続の対象となる財産・ならない財産

被相続人が所有していた財産は原則として相続財産になりますが、被相続人のみが行使できる一身専属権は相続財産にはなりません。

・生活保護の受給権
・年金の受給権

なお、財産というと、家・土地などの不動産・銀行預金などのプラスの財産を連想する方も多いと思いますが、貸金業者への借金や、個人事業主で支払義務のある買掛金といった債務などのマイナスの財産も相続の対象になります。 ただし、債務の場合も同様に、雇用契約に基づいて発生する労働の債務や、作曲家が作曲をする債務などは相続されません。

遺産分割の対象となる財産

では、相続財産のうち、遺産分割の対象となる財産・ならない財産はどのようなものがあるのでしょうか。
遺産分割の対象となる財産・対象とならない財産について確認し、あわせて遺産分割の際に問題になりやすい財産について見てみましょう。

遺産分割の対象とならない財産

まず、遺産分割の対象にならないのは、可分債権です。典型的な例としては金銭債権が挙げられます。
古い判例ですが、最高裁昭和29年4月8日判決等によると、金銭債権のような可分債権は、遺産分割を経ずに各相続人が相続分に応じて取得するとされています。
ただし、預金債権については、遺産分割の対象とする判例が最高裁判決平成28年12月19日で出されているので注意が必要です。
預金については、通常は遺産分割をしないと引き出すことができませんが、例外的に一部を引き出せる場合があり、引き出した金銭については遺産分割の対象となりません。

遺産分割の対象となる財産

可分債権以外の財産は、すべて遺産分割の対象になります。
たとえば、不動産は遺産分割協議をして遺産分割協議書を作成しなければ、名義を変更するための相続登記を受け付けてもらえません。

遺産分割の際に問題になる財産

相続財産のなかには、遺産分割の際に問題になりやすいものも多いです。
ここでは、遺産分割の際に問題になやすい財産の例を紹介します。

生命保険金

生命保険金は、被相続人が亡くなったときに、指定受取人が受け取ることになりますが、これは被相続人が持っていた財産ではなく、保険契約によって支払われるものです。
そのため、指定受取人が被相続人本人ではない限り、相続財産にはなりません。
しかし、通常は相続人の一人がまとまったお金を受け取ることになることから、遺産分割の際に話し合いの議題として上げることは可能です。
実質的に見ても、被相続人が掛け金を支払って相続人の一人が保険金を受け取っているので、そのバランスがあまりにも悪い場合には、特別受益の持ち戻しの対象になって調整を受ける可能性があるでしょう。
なお、生命保険金については相続税の計算において「みなし相続財産」として、相続財産の計算に入れることになる点にも注意が必要です。

死亡退職金

被相続人が勤務していた会社に死亡退職金の制度がある場合で、死亡退職金の受取人が相続人である場合には、生命保険金と同様に相続財産に含まれません。 とはいえ、こちらも一部の相続人が大きな金額を受け取ることになるので、遺産相続の際に考慮することがあります。

火災保険金などの代償財産

被相続人が死亡してから遺産分割協議がされるまでに自宅が家事で消失した場合、火災保険金が入ることがあります。 このような財産を代償財産といいます。 こちらも契約によって生じるので相続財産ではなく、遺産分割の対象とはなりません。 しかし、自宅のある・なしで遺産として受け取れる範囲が変わるのは不公平なので、遺産分割の対象として検討することになります。

収益物件による賃料

相続財産に収益物件があるような場合、相続が開始してから遺産分割をするまでの間に、賃料が発生することになります。 この賃料債権のような遺産をベースに発生する資産のことを、法律用語では「果実」と呼びます。 相続開始後から遺産分割までの間に遺産から生じる果実は、遺産とは別の財産であり、各共同相続人がその相続分に応じて取得するのが通常です。 そして、各共同相続人が相続分に応じて取得した果実は、後になされた遺産分割の影響を受けません。 しかし、相続人全員で合意して、遺産分割の対象に考慮することもできます。

祭祀に関する財産

先祖代々のお墓や、仏壇・仏具といった、先祖を祀るための財産のことを、祭祀に関する財産と呼びます。 このような財産については、通常の遺産のように分割して分けるというより、代々管理をしていくことになるので、特別な配慮が必要です。 相続人全員で管理の方法などをしっかり話し合いましょう。

一部の相続人に使い込まれた遺産など

被相続人が亡くなる前に共同相続人の一人が遺産を使い込んでいた場合や、被相続人が亡くなった後に銀行口座の暗証番号を知っている相続人が口座からお金を引き出して処分していた場合には、遺産分割協議で考量しなければなりません。 相続財産はあくまで相続開始時の財産で計算をするため、使い込まれた財産や口座から引き出された現金は、原則として相続財産に含まれません。 しかし、2019年7月1日から施行された、民法906条の2第1項では、相続人の同意があれば、使い込まれた遺産も含めて遺産分割協議をすることが可能になっています。 なお、お金を引き出すなどして処分した相続人の同意は不要です。

さいごに|相続財産について正しく理解しよう

本記事では、遺産分割の対象となる財産は何なのか、遺産分割の際に問題になる財産について解説しました。 相続財産がシンプルであればあまり問題になることはありませんが、複雑な事情がある場合には、前提としてどの財産について交渉の対象にするか、という所から争いになることもあります。 遺産分割が上手く折り合わない場合には弁護士に依頼するなどして、適切に対応するのがよいでしょう。

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