相続した不動産の売却する手続と費用について詳しく解説します!
ざっくりポイント
  • 不動産を相続したら必ず相続登記をする
  • 相続した不動産の分割方法は4種類ある
  • 相続した不動産を売却すれば税金の申告・納付しなければならない
目次

【Cross Talk】相続した不動産を売りたい!

父から不動産を相続したのですが、私は遠方に住んでいるので、管理ができずに困っています。どうすればいいですか?

不動産は所有しているだけで固定資産税などの負担がありますから、その不動産が必要でないのなら、相続登記をしたうえで売却してはいかがでしょうか?

やっぱり売却したほうがいいですか。売却の手続はどう進めればいいか教えてください。

相続した不動産を売却するにはどうすればいい?

将来的にもそこに住む予定がないとか、遺産を分けるためにお金に換える必要があるなど、相続した不動産を売却したいというケースは珍しくありません。 ただし、過去に不動産を売却した経験がなく、不動産の売却の手続の流れや売却にかかる費用などがどうなっているのかわからないという方が多いのではないでしょうか。 そこで今回は、相続した不動産を売却する手続や費用について解説します。

どのように相続しても不動産を売却するには登記が必要

知っておきたい相続問題のポイント
  • 不動産を売却するには相続登記をしなければならない
  • 相続登記をしないで放置するとトラブルになるおそれがある

相続した不動産を売却するには、まず何をすればいいのですか?

亡くなった方の名義のままでは不動産を売却することができません。ですから必ず相続登記をしなければなりません。

被相続人(亡くなった方)が不動産を所有していた場合に、その不動産の名義を被相続人から相続人に変更することを、相続登記といいます。
被相続人の名義のままでは不動産を売却することができないので、不動産を売却したい場合には必ず相続登記をしなければなりません。

また、相続登記をしないで放置していると、相続人が亡くなってさらに相続が発生してしまい、手続が複雑になるなど、トラブルになるおそれがあります。
さらに、3年以内に相続登記をしなければ、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。
従来は相続登記をしなくても特にペナルティはありませんでしたが、相続した土地の所有権者がわからなくなり、管理などでトラブルが生じることがあることから法改正が行われたので、古い情報に注意しましょう。

相続した土地(不動産)を遺産分割する方法

知っておきたい相続問題のポイント
  • 分割方法は現物分割、代償分割、換価分割、共有の4種類ある
  • 相続人間の協議で分割方法を決めることができる

妹と二人で父の土地を相続したのですが、土地はどうやってわけたらいいのですか?

土地の分割方法としては、土地そのものを分ける現物分割、特定の相続人が土地を取得して他の相続人に金銭を支払う代償分割、土地を売却して売却代金を分ける換価分割、相続人の共有状態にする共有、の4種類があります。相続人間の協議で、どの分割方法を選ぶかを決めることができます。

現物分割

遺産分割の方法としてまず考えられるのが、遺産にあたる財産そのものを分けることです。これを現物分割と言います。 土地の場合、相続分に応じて土地を分筆(一つの土地を複数の土地に分けること)し、各相続人が取得するという方法が考えられます。

現物分割はシンプルで相続人間の不公平も生じにくいというメリットがありますが、もともとの土地がそれなりに大きくないと、土地を細分化することで土地の価値が下がってしまったり、切り分け方によっては道路に面しているかどうか等によって切り分けた土地の評価が変わる可能性あるというデメリットがあります。

代償分割

代償分割は、特定の相続人が遺産を取得し、他の相続人にはその代わりに金銭を支払うというものです。 特定の相続人がそのまま土地を引き継ぐことになるので、細分化によって土地の価値を下げてしまうことはありません。

ただし、代償金を支払うだけの資力が必要になりますし、誰が土地を取得するか、土地をいくらと評価するかで争いになる可能性があります(不動産の価値が低ければ代償金の額が少なくなり、逆に不動産の価値が高ければ代償金も高額になるため)。

換価分割

遺産を売却し、売却に必要な経費を差し引いた残額を分けることを換価分割といいます。 誰が不動産を取得するかは問題になりませんし、全員にお金で分けるので不公平になり難いといえます。また、不動産の評価で揉めることも少ないでしょう(代償分割と異なり、高く売れるほどたくさんのお金を得ることができるという点で相続人間の利害が一致しているため)。

ただし、せっかく親が残してくれた土地を処分することに抵抗を感じるという場合もあるでしょう。また、土地の買い手が見つからず、遺産分割がなかなか終わらないということもありえます。

共有

「現物分割」~「換価分割」のような具体的な分割方法を決めず、相続人の共有にしておくということも考えられます。 共有にすれば相続人間の不公平は生じませんが、特定の相続人が土地を利用したとしても他の相続人はそれを止める術もなく、また固定資産税も共有割合で負担しなくてはいけないばかりか、共有のままでは全員で同意しない限り土地を処分しにくいですし、共有者が亡くなって相続が開始すると共有者の相続人が共有持分をさらに相続し、権利関係が複雑になってしまいます。不動産を共有にすることはあまりお勧めできる方法ではないことが通常です。
相続人は、協議によっていずれかの分割方法選ぶことができますが、分割方法にはそれぞれメリット、デメリットがありますので、いずれがふさわしいかはケースバイケースといえます。

相続した土地(不動産)を売却する場合の手続

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺産分割協議・相続登記をして不動産を売却する
  • 税金の申告を忘れない

妹と話し合った結果、不動産を売却してお金で分けようということになりました。不動産の売却はどのように進めて行けばいいですか?

まず遺言書の有無を確認しましょう。また同時に相続人や遺産の調査をしたのち、相続人間で遺産をどのように分けるかを話し合い、合意ができれば遺産分割協議書を作成し、遺産分割の内容に従って相続登記をします。 その後に不動産の売却をするのですが、買い手に心当たりがない限り、不動産仲介業者に依頼(媒介契約を締結)をするのが一般的です。 仲介業者が買い手を見つけたら、買い手との間で不動産の売買契約を締結します。 これで不動産の売却手続きは終わりですが、不動産を売却して得た利益には譲渡所得税という税金が課されることに注意が必要です。

遺言書の有無の確認

遺言書があるかないかを確認します。
有効な遺言書がある場合には遺言書に分割方法が記載されているためです。
大事な書類をまとめていたところに遺言書がないかを確認しましょう。
併せて、貸金庫がある場合には貸金庫をチェック、公証役場で公正証書遺言の有無を確認、法務局で自筆証書遺言書保管制度による自筆証書遺言の有無をチェックします。

相続人の調査

相続人の調査を行います。
相続人の調査は、被相続人が生まれてから亡くなるまでの間の戸籍謄本を取得することで行います。
特に一度離婚をしているような場合には、前婚の配偶者との間に子どもがいることがあり、その子どもも相続人となるため注意が必要です。
取得した戸籍謄本は後に手続きのための書類としても利用します。

遺産の調査

遺産の調査を行います。
不動産に関しては、名寄帳を取得することで、被相続人が所有していた不動産を把握することができます。
遺産分割協議書作成や相続登記に必要となるので、不動産登記事項証明書を取得しましょう。
その他の財産についても調査するほか、借金・債務についてもきちんと調査します。
債務のほうが多い場合には、相続放棄や限定承認を検討することになります。
住宅ローンが残っている場合、団体信用生命保険に加入していれば、住宅ローンが免除される可能性もあるので調べてみましょう。

遺産分割協議

相続人が複数いる場合には、まず相続人全員で遺産をどのように分けるかについて話し合いをします。これを遺産分割協議と言います。 話し合いの結果、遺産の分け方について合意ができれば、合意内容を文書にまとめた遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印を押して印鑑証明書を添付します。 もし話し合いをしても遺産の分け方について合意ができないときは、家庭裁判所に遺産分割の調停・審判の申立てをすることができます。

相続登記

遺産分割協議ができて不動産を取得する相続人が決まっても、そのままでは不動産を売却することができません。 まずは上記のとおり不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する必要があるのです。代償分割で分けることに合意している場合でも、相続人全員の名義に変更し、相続人全員が売主となって売却手続きを行う必要があります。

仲介業者への不動産売却の依頼

不動産を売却するには、不動産の査定、宣伝、購入検討者との交渉、契約書類や重要事項説明書などの書類作成といった作業が必要になります。 一般の方が全て自分でするのは難しいので、仲介業者に依頼するのが一般的です。

ただし、近隣の住民や知人が購入を希望しているなど、具体的な買い手の候補がいる場合には、仲介業者に依頼せずに売却を進めることもできます。

不動産の売却

購入検討者との間で売却代金、引渡時期などの売却条件について合意ができれば、不動産の売買契約を締結します。 売主である相続人、買主が売買契約書に署名・押印し、手付金の授受を行います。

その後、売買契約で定めた期日に買主から残りの売買代金を受領し、買主に不動産を引渡します。 不動産の名義を相続人から買主に変更して、手続は終了です。

売却にかかる税金の申告

不動産を売却した場合に忘れてはならないのは、税金の申告です。 不動産を売却したことで利益を得た場合、その利益に対して譲渡所得税という税金が課されます。 これは相続した不動産を売却した場合でも同様ですので、譲渡所得税の申告をする必要があるのです。

相続した土地(不動産)を売却する際にかかる費用

知っておきたい相続問題のポイント
  • 登録免許税、譲渡所得税などの税金がかかる
  • 司法書士や仲介業者に依頼した場合は手数料も必要になる

不動産の売却の流れはわかりました。税金も払わなければいけないみたいですが、売却が終わるまでに全部でどんな費用がかかるのですか?

まず、相続登記をするのに登録免許税という税金がかかります。売買契約書には収入印紙を貼らなければいけませんし、売却によって利益を得た場合には譲渡所得税がかかります。 そのほかに、相続登記を司法書士に依頼した場合は司法書士の報酬が、売買の仲介を仲介業者に依頼した場合は仲介業者の手数料が、それぞれ必要になります。

相続登記までにかかる費用

遺産分割協議には特別な費用はかかりません。強いて言うなら相続人が連絡を取りあうための通信費、集まるための交通費、印鑑証明書の発行手数料(1通300円ほどです)がかかる程度でしょう。

相続人自身が相続登記を行うこともできないわけではありませんが、専門家である司法書士に依頼した方がスムーズに手続を勧められるでしょう。司法書士に依頼した場合には、登録免許税のほかに、司法書士への報酬が必要になります。

不動産仲介業者にかかる費用

不動産仲介業者に仲介を依頼した場合、手数料がかかります。仲介手数料は、宅地建物取引業法により次のように上限が定められています。
売買価格 仲介手数料
売買価格200万円以下の部分 売買価格の5%以内
売買価格200万円超400万円以下の部分 売買価格の4%以内
売買価格400万円を超える部分 売買価格の3%以内

たとえば売買価格が2000万円の場合、仲介手数料は 200万円以下の部分               200万円×0.05=10万円 200万円を超え400万円以下の部分       200万円×0.04=8万円 400万円を超え2000万円までの部分      1600万円×0.03=48万円 の合計66万円(消費税は別)が上限となります。

売買価格が400万円を超える場合には、 売買価格×3%+6万円 の計算式で速算することができます。

あくまで上限ですので、この額から減額してもらえるかは業者次第ということになります。

不動産を売却したことによる税金

不動産を売却することで次の税金がかかることを確認しましょう。

登録免許税

不動産を売却する場合には、土地の相続登記を行わなければなりません。
相続登記を行うために、登録免許税がかかります。
相続の場合は「固定資産税評価額×0.4%=登録免許税」となります

印紙税

土地を売却する場合に、印紙税がかかります。
土地を売却する際には、売買契約を結んで売買契約書を作成する必要があります。
契約書作成の際には印紙税をおさめなければならず、契約書に収入印紙を購入し、契約書に貼付するという形で納税します。
印紙税は次の金額となります。

契約書に記載する売買金額 本則 軽減税率(注1)
1万円未満 200円 非課税
1万円以上10万円以下 200円 200円
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 10,000円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 20,000円 10,000円
5,000万円超1億円以下 60,000円 30,000円
1億円超5億円以下 100,000円 60,000円
5億円超10億円以下 200,000円 160,000円
10億円超50億円以下 400,000円 320,000円
50億円超 600,000円 480,000円

(注1)令和6年4月1日から令和9年3月31日までに作成される契約書については軽減税率が適用される。

所得税・住民税・復興特別所得税

相続した不動産を売却したことで利益を得た場合、その利益(譲渡所得といいます)に対して税金が課されます。
譲渡所得は、売却価格から取得費(不動産の購入代金や仲介手数料など)と譲渡費用(売却の際の仲介手数料など)を差し引いて計算します。 取得費が分からない場合、売却価格の5%を取得費として計算します。相続した不動産の場合、取得時の売買契約書等の資料が残っておらず、取得費を売買価格の5%として計算することも珍しくありません。取得費を売買価格の5%として計算すると譲渡所得が高額になることが多いので、取得費に関する資料は徹底的に探すようにしましょう。
上記の計算で譲渡所得がある場合、その譲渡所得に税金が課されます。 税率は、不動産の所有期間によって異なります。
所有期間が譲渡した年の1月1日時点で5年以下の場合を短期譲渡といい、税率は所得税30%、住民税9%になります。 所有期間が譲渡した年の1月1日時点で5年を超える場合を長期譲渡といい、税率は所得税15%、住民税5%になります。 これに加えて2037年までは、東日本大震災の復興施策の財源確保のために復興特別所得税2.1%も課されます。
なお、相続した不動産の所有期間は、被相続人が所有していた期間を引き継いで計算しますので、相続から5年経過しないと長期譲渡にならないというわけではありません。 相続した不動産の売却の場合、長期所得にあたる場合が多いでしょう。

相続した土地の売却を検討する場合

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続した土地の売却を検討する場合
  • 相続税の納税資金や老人ホーム入居などで費用がかかる・土地のせいで遺産分割ができない・活用ができないという場合について確認

どのような場合に相続した土地の売却を検討すべきでしょうか。

相続税の納税資金がない場合や老人ホーム入居などで費用がかかる場合、相続税の納税資金がない場合や老人ホーム入居などで費用がかかる場合

相続した土地の売却を検討する場合として次の場合を確認しましょう。

相続税の納税資金や老人ホーム入居などで費用がかかる

相続税の納税資金や、老人ホームへの入居などで費用がかかる場合には、相続した土地の売却を検討しましょう。
医療が発達してきて、平均寿命が長くなりました。自分の親が亡くなった時には、自分も高齢者になっている場合も少なくありません。自身の預貯金は今後のために使いたい方もいらっしゃるでしょう。
しかし、相続税は基本的には現金でおさめる必要があり、納税資金がない場合には、費用を工面する必要があります。
また、老人ホームに入居する場合には初期費用が高額になることもあります。

相続税の納税資金や、老人ホームへの入居などで費用がかかる場合には、相続した土地の売却を検討しましょう。 医療が発達してきて、平均寿命が長くなりました。自分の親が亡くなった時には、自分も高齢者になっている場合も少なくありません。自身の預貯金は今後のために使いたい方もいらっしゃるでしょう。 しかし、相続税は基本的には現金でおさめる必要があり、納税資金がない場合には、費用を工面する必要があります。 また、老人ホームに入居する場合には初期費用が高額になることもあります。

このような場合に、相続した土地を担保にお金を借りる不動産担保ローンを利用することのほかに、相続した土地を売却してお金を調達することを検討することになります。

土地のせいで遺産分割ができない

土地のせいで遺産分割ができない場合、換価分割をするために土地を売却することを検討しましょう。
遺産の価額のほとんどを土地が占めていると、その土地を誰か一人に相続させる際に、法定相続分にそぐわない不均衡な遺産分割となります。
相続人が法定相続分に近い相続を主張し、代償分割における代償金が用意できない場合には、残された選択肢としては相続した土地を担保にお金を借りて代償金を用意するか、代償分割を検討することになります。

活用ができない

土地の活用ができない場合に、売却を検討することになります。
たとえば、山奥の土地で自分たちでは利用することができない場合でも、土地を保有していると固定資産税がかかり、また不法投棄などで管理をする必要があることがあります。
このような活用できない土地を持っている場合、相続土地国庫帰属制度の利用のほかに、売却できるのであれば売却することを検討することになります。

まとめ

相続した不動産の売却について解説しました。 税金の計算など複雑な問題もあるので、相続した不動産の売却をお考えの方は、早めに専門家に相談するといいでしょう。

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この記事の監修者

弁護士 手柴 正行第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 法教育委員会委員
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