
- 特定遺贈と包括遺贈の違いとは?
- 特定遺贈と包括遺贈のどちらを選ぶべき?
- 遺贈をする際の注意点とは?
【Cross Talk】特定遺贈と包括遺贈の違いはなんですか?
遺贈には特定遺贈と包括遺贈があると聞きました。両者の違いはどこにあるのでしょうか?
対象となる遺産や、遺産分割協議の取り扱い、債務の放棄の仕方などの違いがあります。
特定遺贈と包括遺贈の違いについて、詳しく教えてください。
被相続人が遺言によって、相続人以外の第三者や団体に財産を譲り渡すことを「遺贈」といいます。相続人以外を対象にでき、必ず遺言が必要となる点に特徴があります。そして、遺贈には特定遺贈と包括遺贈という2種類があります。それでは、特定遺贈と包括遺贈の違いはどこにあり、どちらを選択すべきなのでしょうか。この記事では、これらの疑問点について、弁護士が解説していきます。
特定遺贈とは?

- 特定遺贈とは?
- 遺言者が特定の財産を特定の受遺者に遺贈すること
遺贈のうち特定遺贈とはどのようなものなのでしょうか?
ここでは、特定遺贈の概要について解説していきます。
特定遺贈とは、遺言者が所有する特定の財産を、特定の受遺者に遺贈することを指します。
具体的には、「現金100万円をAに遺贈する」「自宅不動産をBに遺贈する」「〇〇証券会社の有価証券をCに遺贈する」などのように、遺言書の中で譲る財産を明確に指定する形で行われます。
遺言者が意図した相手に、意図した財産を確実に遺贈できることが特定遺贈の大きな特徴です。
特定遺贈では、遺贈する財産が具体的に指定されるため、遺言者が特に指定しない限り、負債や借金などのマイナスの財産が受遺者に引き継がれることはありません。つまり、遺言に書かれた財産のみが受遺者へ渡り、それ以外の財産は相続人が法定相続分に従って引き継ぐことになります。
包括遺贈とは?

- 包括遺贈とは?
- 遺言者が所有する財産の全部または一定の割合を受遺者に遺贈すること
包括遺贈とはどのような遺贈のことなのでしょうか?
ここでは、包括遺贈の概要について解説していきます。
包括遺贈とは、遺言者が所有する財産の全部または一定の割合を受遺者に遺贈することを指します。 例えば、「全ての財産をAに遺贈する」「財産の50%をBに遺贈する」といった形で、財産全体の一部または全部を割合で指定して遺贈を行います。包括遺贈の場合、財産の範囲が明確に特定されていないため、積極財産(現金や不動産などのプラスの財産)だけでなく、負の財産(借金や債務)も含まれるのが特徴です。
包括遺贈は、特定の財産を明示して遺贈する特定遺贈とは異なり、財産の割合のみを指定するため、相続財産全体に関わることになります。包括遺贈の受遺者は「包括受遺者」と呼ばれ、法律上は相続人と同一の権利義務を有します(民法第990条)。
包括遺贈は、遺言者の死亡と同時に効力を発生し、包括受遺者は相続人と同様に、遺産の割合に応じた権利義務を承継します(民法第896条)。包括受遺者が取得する財産の範囲は、特定遺贈とは異なり、遺産分割協議を経ることで最終的に確定されます。
特定遺贈と包括遺贈の違いとは?

- 特定遺贈と包括遺贈の違いとは?
- 4つの違いについて解説
それでは、特定遺贈と包括遺贈はどこが違うのでしょうか?
ここでは、特定遺贈と包括遺贈の4つの違いについて解説していきます。
特定遺贈は、特定の財産を指定して遺贈する方法であり、一方で包括遺贈は、相続財産の全部または一定割合を指定して遺贈する方法です。このような違いにより、以下のように、受遺者が取得する財産の範囲や相続手続きへの関与が異なってきます。
遺贈される財産
特定遺贈では、遺言書に記載された特定の財産のみが受遺者に渡ります。例えば、「甲土地をAに遺贈する」と指定されていれば、Aは甲土地を取得しますが、それ以外の財産を受け取ることはありません。また、遺言書作成後に財産内容が変更され、甲土地が売却されてしまった場合、その遺贈は無効となるため、Aは何も受け取ることができなくなります。
上記に対して、包括遺贈の場合には、遺言書作成時点で具体的な財産を特定する必要はなく、相続時点で存在する財産の一定割合を受遺者が取得することになります。
そのため、遺言書作成後に財産の内容が変わっても、包括受遺者は遺産全体の指定された割合を受け取ることができます。ただし、包括遺贈では負債も含まれるため、注意が必要です。
遺産分割協議に参加できるかどうか
特定遺贈の受遺者は、遺言に記載された財産を単独で取得するため、相続人間の遺産分割協議に参加する必要はありません。遺言の内容がそのまま実行されるため、特定遺贈の受遺者は遺言執行者や相続人と連絡を取るだけで手続きが進みます。
これに対して、包括遺贈の受遺者(包括受遺者)は、相続人と同じ立場になるため、遺産分割協議に参加する必要があります。相続財産を共有する形になるため、具体的にどの財産を取得するかについて、他の相続人と話し合いを行い、合意を得る必要があります。 したがって、包括遺贈の方が特定遺贈よりも手続きが複雑になることがあります。
債務があった場合の放棄の方法
特定遺贈では、基本的に受遺者は遺言で指定された財産のみを受け取るため、負債を引き継ぐことはありません。
特定遺贈の受遺者が遺贈を放棄する場合、家庭裁判所での手続きは不要で、遺言執行者や相続人に対して放棄の意思を伝えるだけで放棄が成立します。また、特定遺贈の放棄には期限がなく、遺言者の死亡後いつでも放棄することができます。ただし、相続税の申告期限(10カ月以内)があるため、税務上の問題を避けるためにも早めの決断が望ましいでしょう。
これに対して、包括遺贈では、財産だけでなく負債も含まれるため、受遺者が負債を引き継ぎたくない場合は、相続開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所に遺贈放棄の申述をする必要があります。これは、包括受遺者が相続人と同等の権利義務を持つとされているためです。この期限を過ぎると、負債を含めた全ての財産を受け入れたとみなされるため、包括遺贈を受けた場合は早めに財産の状況を確認することが重要です。
不動産所得税の違い
不動産を遺贈された場合、特定遺贈と包括遺贈では、不動産取得税の扱いが異なります。
包括遺贈の場合、受遺者は相続人と同じ扱いとなるため、不動産取得税は非課税となります。これは、包括遺贈が相続に準じたものとみなされているためです。
これに対して、特定遺贈の場合には、受遺者が相続人であれば不動産取得税は非課税となりますが、受遺者が相続人以外であれば、不動産取得税が課税されます。例えば、「甲土地を友人のBに遺贈する」とした場合、Bは不動産取得税を支払う必要があります。これは、特定遺贈が相続ではなく贈与に近い性質を持つと考えられているためです。
したがって、特定遺贈で不動産を受け取る場合は、税負担についても考慮する必要があります。
特定遺贈と包括遺贈のどちらを選択すべき?

- 特定遺贈を選択した方が良い場合は?
- 包括遺贈を選択した方が良い場合は?
特定遺贈と包括遺贈のどちらを選択すべきか分かりません。
ここでは、特定遺贈を選択した方が良い場合・包括遺贈を選択した方が良い場合について解説します。
特定遺贈を選択した方が良い場合
特定遺贈は、「A不動産を長男に遺贈する」「B銀行の預金500万円を孫に遺贈する」といった具体的な指定が可能です。包括遺贈を選択した方が良い状況として、以下のような状況が考えられます。
遺言者が財産の分配を明確に決めておきたい
例えば、長年親の介護をしてきた子どもや、特別に世話になった人物に感謝の意を示すために特定の財産を遺贈したい場合など、遺言者の意思を具体的に反映させることができます。これにより、遺産分割協議が不要となり、相続人同士の争いを防ぐことができるため、円滑な相続が可能になります。
遺産分割協議を避けたい
特定遺贈の場合、遺言に記載された財産のみが受遺者に渡るため、他の相続人と協議を行う必要がありません。特に、相続人同士の関係が良好でない場合や、財産分割においてもめる可能性がある場合には、特定遺贈を選択することで相続トラブルを回避できるでしょう。
遺言者に債務があり、その負担を特定の相続人に引き継がせたくない
特定遺贈では、指定された財産のみが受遺者に渡るため、負債を引き継ぐことはありません。例えば、「自宅不動産を配偶者に遺贈するが、ローン残債は相続人全体で負担する」といった形で負債の分担を調整できます。
包括遺贈を選択した方が良い場合
包括遺贈は、「全財産の50%を長男に遺贈する」といった形で指定されます。包括遺贈を選択すべきケースとして、以下のような状況が考えられます。
財産の内容が相続時までに変動する可能性が高い
不動産を売却したり、新たな資産を取得したりする予定がある場合、特定遺贈では遺言内容が無効になる可能性があります。しかし、包括遺贈であれば、相続時点で存在する財産全体の割合で指定されるため、財産の変動を考慮する必要がありません。
遺産分割を相続人や受遺者同士で話し合って決めてほしい
包括遺贈を受けた受遺者は、遺産分割協議に参加する権利を持つため、相続人と協力して遺産を分配することができます。これは、遺言者が具体的な財産分配を決めるよりも、相続人同士の話し合いに委ねたい場合に適した方法です。
受遺者が法定相続人と良好な関係にあり、相続トラブルが発生しにくい
包括遺贈では、受遺者が相続人と同様の立場で相続手続きを進めるため、関係性が良好であればスムーズな遺産分割が期待できます。
遺贈をする際の注意点

- 遺贈をする際の注意点とは?
- 不安がある場合には弁護士に相談するようにする
自分の財産を遺贈しようとする際に、どのようなことに注意する必要がありますか?
ここでは、遺贈の際の注意点について解説していきます。
遺贈を行う際には、法的手続きや税金など、いくつかの重要な注意点があります。これらを事前に把握し、適切な遺言書を作成することで、遺贈をスムーズに実行し、相続トラブルを防ぐことができます。
法的に有効な遺言書を作成する
遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がありますが、法的要件を満たさないと無効になる可能性があります。確実に有効な遺言を残すためには、公正証書遺言を作成することが望ましいです。
遺言執行者の選任を検討する
遺贈を円滑に進めるために、遺言執行者を指定することが重要です。遺言執行者がいれば、受遺者と相続人の間で手続きが滞ることを防ぐことができます。
遺留分を侵害しないようにする
遺留分とは、法定相続人(配偶者・子ども・父母)に認められた最低限の相続財産の割合です。これを無視した遺贈を行うと、遺留分侵害額請求が行われ、遺贈された財産が減少する可能性があります。
相続税の負担を考慮する
遺贈も相続と同様に相続税の対象となります。受遺者が法定相続人以外の場合、基礎控除の恩恵を受けられず、さらに2割加算されるため、税負担が大きくなる点に注意が必要です。
まとめ
特定遺贈は、特定の財産を指定して遺贈する方法であり、一方で包括遺贈は、相続財産の全部または一定割合を指定して遺贈する方法です。このような違いにより、以下のように、受遺者が取得する財産の範囲や相続手続きへの関与に違いがあります。
特定遺贈と包括遺贈には、それぞれメリットとデメリットがあるため、ご自身のケースでどちらを選択すべきか判断が難しいという場合には、ぜひ弁護士に相談するようにしてください。
当事務所には、相続問題に詳しい弁護士が在籍しておりますので、ご不安な方はお気軽にお問い合わせください。


- 相続対策は何から手をつけたらよいのかわからない
- 相続について相談できる相手がいない
- 相続人同士で揉めないようにスムーズに手続きしたい
- 相続の手続きを行う時間がない
無料
この記事の監修者

最新の投稿
- 2025.07.28相続全般特定遺贈と包括遺贈の違いとは?判断の仕方や注意点を解説
- 2025.07.28遺産分割協議遺産分割と相続の違いとは?具体的な遺産の分け方・流れについて
- 2025.07.23相続全般不動産の共有名義人の片方が死亡した場合の相続について解説
- 2025.07.18相続全般養子縁組をすることで相続の順位が変わるケースとトラブルの回避方法