
- 財産管理委任契約とは他の制度との違いは
- 財産管理委任契約のメリット・デメリット
- 財産管理委任契約の手続の方法
【Cross Talk 】財産管理委任契約とはどのようなものですか?
現在、私の終活について検討しています。インターネットのいろんなサイトを見ていると中には「財産管理委任契約」というものを見るのですが、これはどのようなものですか?
契約自体は財産管理を委任するもので、当事者の契約で簡単に結ぶことができるメリットがありますが、一方で管理を適切に行っているかを監督する人がいないなどのデメリットもあります。
そうなんですね、詳しく教えて下さい。
終活をしていると、老後の自分をサポートしてもらう制度として、財産管理委任契約というものが紹介されることがあります。これは契約で自分の財産の管理について依頼するものです。例えば判断能力自体はあっても、足が不自由で外に出るのも車椅子で家族の介助がないと難しいような場合に、銀行に行って現金をおろす・各種の振込を行うことや、役所に行って申請などを行うのが困難になります。このような場合に契約を結んで財産管理についての契約をしてもらうのが財産管理委任契約です。
財産管理委任契約とは

- 財産管理委任契約とは
- 財産管理委任契約と終活で用いられる制度との違い
財産管理委任契約とはどのようなものですか?
銀行取引や役所に固定資産税を払うなど、財産管理に関する事務の委託を契約で行うものです。
財産管理委任契約とはどのようなものでしょうか。 終活でよく目にする制度などとも比べてみましょう。
財産管理委任契約とは
財産管理委任契約とは、自分の財産の管理についての権限(代理権など)を与える契約のことをいいます。 財産の管理をするためには、銀行や役所などを訪問する必要がある場合があります。 寝たきりである・車椅子生活で自由が効かないなどの場合には、こういった財産管理に関する種々の行為が大きな負担になることがあります。 親族などがいない、近くに住んでいないような場合には、誰かに助けてもらう必要があります。 このような場合に利用するのが財産管理委任契約です。成年後見制度との違い
成年後見制度とは、精神上の障害により判断能力が不十分となったときに、本人保護をするために成年後見人を選任して、本人を保護する制度です。 加齢や認知症・精神疾患などで契約などに必要な判断能力を失ったときに、成年後見人が本人を代理して契約を行うなどして、本人を保護しようとするものです。 成年後見制度は本人が判断能力を失ったときに利用するものですが、財産管理委任契約はそれそのものが契約なので判断能力はあるけれども助力が必要な場合に利用します。家族信託との違い
家族信託とは、受託者に資産を管理してもらい、発生する利益を受益者が受け取るという信託契約を結ぶものです。 これによって、自分が財産管理をできなくなったときに預けた資産を管理してもらったり、財産を預けた上で相続人に利益を受け取れるようにしてもらうことが期待できます。 家族信託は、信託という契約方式で資産を預けて管理をしてもらうのに対して、財産管理委任契約は財産の管理をするための事務を委任するという契約です。遺言書との違い
遺言書は、自分の死後の財産などについての意思表示をしておくものです。 特に遺言をせずに亡くなった場合には、民法の相続に関する規定に沿って財産の分配などがされます。 遺言書によって、自分の財産を遺族やその他の方にどのように分配するかなどを決めることが可能です。 遺言書は死後の財産の分配に関するもので、生前の財産管理に関する契約をする財産管理委任契約とは適用される場面が違います。 そのため、生前のことについては財産管理委任契約を、死後の遺産の割り振りについては遺言書を、と使い分ける関係にあります。 遺言書については「遺言書とは?普通方式・特別方式すべてを簡単に解説」 で詳しく解説しているので併せて参照してください。死後事務委任契約との違い
死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後に発生する事務処理について、生前から委託しておく契約のことをいいます。 亡くなった後には相続に関する手続の他にも、役所などの機関に様々な届出をするなど、面倒な手続がたくさんあります。 死後事務委任契約を結ぶことによって、これらの手続を依頼することで遺族の負担をへらすことが可能です。 死後事務委任契約も遺言書と同様に死後の処理についてのもので、生前の事務処理に関する財産管理委任契約とは適用場面が異なります。 生前については財産管理委任契約を、死後のことについては遺言書と死後事務委任契約を、それぞれ利用するということを検討する余地があります。財産管理委任契約で委任できる内容

- 財産の管理全般を委任できる
- 病院や施設の手続など療養看護に関する事務の委任もできる
財産管理委任契約を結べば、どのようなことを委任できるのですか?
財産管理委任契約を締結することで、自身の財産を代わりに管理してもらう財産管理・自身に代わって病院や施設の手続等をしてもらう療養看護に関する事務を委任できます。
財産管理
財産管理委任契約を締結すれば、受任者に財産の管理を委任できます。 財産管理の対象とする財産や管理の方法は契約で定めることになりますが、一般的には以下を定めていることが多いです。- 金融機関との取引
- 家賃、地代、年金のその他定期的な収入の受領
- 家賃、地代、公共料金等定期的な支出を要する費用の支払い
- 保険契約の締結、解約、保険料の支払い、保険金の受領等
関連記事:財産管理委任契約とはどのようなものか解説
療養看護
財産管理委任契約では、財産管理のほかに療養看護に関する事項の委任も可能です。 療養看護に関する事項とは、以下の本人の身上監護に関する事柄をいいます。- 病院との医療契約・入院契約、施設との入所契約・その他福祉サービス利用契約等
- 介護保険の要介護認定の申請、介護サービス契約の締結・解約等
財産管理委任契約のメリット

- 委任契約の内容を自由に決められる
- 判断能力があればすぐに利用を開始できる
財産管理委任契約にはどんなメリットがあるのですか?
財産管理委任契約は契約ですので、契約内容を当事者が自由に決められるメリットがあります。また、同じく判断能力がある間に契約を結ぶ制度である任意後見契約と比較すると、判断能力がある間に直ちに利用を開始することも可能です。
委任内容の自由度が高い
財産管理契約は契約ですので、誰に財産管理等を委任するか、どのような財産管理等を委任するか等について、原則として当事者が自由に決めることができます。委任内容の自由度が高いことが、財産管理委任契約のメリットの一つです。判断能力があれば利用できる
財産管理委任契約と同様、本人の判断能力がある間に契約を結んでおく方法として任意後見契約があります。任意後見契約は、将来判断能力が低下した場合に後見人となる方をあらかじめ契約で定めておくもので、契約を結んでも本人の判断能力がある間は後見人が財産管理等を行うことはありません。そのため、たとえば足が不自由で外出は難しいが判断能力に問題はないという場合、任意後見契約を結んだだけでは財産管理等を代理してもらうことはできないのです。
これに対し、財産管理委任契約を結べば、本人の判断能力に問題がなくても直ちに契約で定めた財産管理等を任せることができます。
財産管理委任契約のデメリット

- 本人が結んだ契約等を受任者が取り消すことができない
- 受任者を監督する機関がなく、不正リスクがある
財産管理委任契約のメリットはわかりましたが、逆に何かデメリットはありますか?
財産管理委任契約のデメリットとしては、受任者には本人が締結した契約等の取消権がないこと、後見と異なり監督機関がないため、受任者による不正のリスクがあることなどが挙げられます。
取消権がない
財産管理委任契約の受任者は、本人に代わって財産管理等を行う権利はありますが、本人が結んだ契約等を取り消す権限がありません。たとえば本人が騙されて高額な商品を購入する売買契約を結んだり、不必要なリフォームをする請負契約を結んだりした場合、受任者は詐欺を理由に契約を取り消すことはできず、本人に契約を取り消すよう説得する必要があります。
不正リスクがある
後見の場合、後見人は少なくとも年に1回は家庭裁判所に定期報告書を提出する必要があります。また、任意後見人は必ず、法定後見(任意後見契約によらずに家庭裁判所が後見人を選任する場合)は必要に応じて後見監督人が選任され、後見人の後見業務を監督することになっています。これに対し、財産管理委任契約の場合、公的な監督機関がありません。そのため、後見と比較して受任者による不正が起こりやすく、また不正が長期にわたり発覚しにくいというリスクがあるのです。
財産管理委任契約の手続の流れ

- 取引のある金融機関に事前に確認しておく
- 契約書・公正証書を作成して金融機関に提出する
財産管理委任契約を結ぶ手続の流れを教えてください。
まず取引のある金融機関に対して、財産管理委任契約に対応しているかどうかを事前に確認する必要があります。確認ができたら適切な受任者を選び、契約書・公正証書を作成して金融機関に提出することで、財産管理委任契約の運用を開始することができます。
金融機関への確認
取引のある金融機関に対して、財産管理委任契約に対応しているかどうかを事前に確認します。金融機関によっては財産管理委任契約に対応しておらず、独自の代理人制度の利用を勧められたり、取引の都度、委任状を要求されたりすることがあるので、注意が必要です。
受任者の選定
金融機関への確認ができれば、受任者を選定します。後見と比較して受任者による不正のリスクが高いので、信頼できる受任者を選定する必要があります。 親族のほか、弁護士などの専門職を選定することも考えられますが、後者の場合は通常報酬が発生することに注意が必要です。
契約書の作成
受任者を選定した後は、具体的に委任したい事柄を特定した契約書を作成します。契約書には、契約の目的、管理を委任する財産や委任する事務の内容、受任者の報酬の有無や支払方法などを具体的に特定して記載します。
公正証書の作成
財産管理委任契約の契約書には特に方式の制限はありませんが、公正証書を作成するのが一般的です。 公正証書は、公証人という国家機関が認証する文書ですので、私人間で作成した文書と比較して信用性が高い特徴があります。そのため、公正証書を作成することには、将来の委任内容等を巡るトラブルを防止するとともに、金融機関等の第三者からの財産管理委任契約への信頼を得やすいというメリットがあるのです。
金融機関へ提出〜運用開始
公正証書が作成出来たら、受任者が取引のある金融機関への提出等を行い、財産管理や療養看護等、財産管理委任契約で定められた具体的な事務に着手します。まとめ
このページでは、財産管理委任契約についてお伝えしました。 財産管理委任契約は、本人の判断能力が衰えていないうちから、財産管理の権限を任せておける契約です。 終活をするにあたってどのような制度を利用するのがいいのかは、その方の希望や資産・相続人となる方にどのような資産があるかによって異なります。 財産管理委任契約を含め、どの制度を利用すべきかどうかは、総合的な判断をするのが望ましいので、何か対策をしたい場合には弁護士に相談することをおすすめします。


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