遺産分割調停の管轄とは?

- 遺産分割調停の管轄は原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所
- 相手方が複数いる場合は複数の管轄裁判所から選べることがある
- 合意管轄や自庁処理など管轄の例外も存在する
- 管轄裁判所が遠方でもウェブ会議や弁護士への依頼で対応できる
目次
【Cross Talk 】遺産分割調停の管轄とは?
遺産分割調停を申し立てたいのですが、どこの家庭裁判所に申し立てればよいのでしょうか。
遺産分割調停には管轄があり、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。ただし、相手方が複数いる場合や合意管轄などの例外もあります。
遺産分割調停の管轄とは?
遺産分割調停を検討しているものの、「どこの家庭裁判所に申し立てればよいのかわからない」「相手方が遠方に住んでいる場合はどうなるのか」と悩んでいる方もいるでしょう。遺産分割調停では、どの家庭裁判所に申し立てるかによって、その後の手続きの進めやすさや負担が大きく変わります。そこで、この記事では遺産分割調停の管轄の基本ルールから例外的な取扱い、遠方の裁判所への対応方法、よくある質問までわかりやすく解説します。
管轄を誤ると移送によって手続きが遅れることもあるため、申立て前に正しいルールを理解しておきましょう。
管轄とは?基礎知識

- 裁判所には事件ごとに管轄がある
- 管轄外の裁判所へ申立てると、管轄裁判所へ移送されることがある
裁判所の管轄とは何でしょうか。
ある事件について、どの裁判所が担当をするのかを決めるものが管轄です。
管轄とは
管轄とは、ある事件について、どの裁判所が担当をするか、を決めるものです。裁判所と一口にいっても、さまざまな種類の裁判所が日本全国にあります。イメージしやすいのは、地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所ですが、高等裁判所・最高裁判所も裁判所には違いありません。管轄には、職分管轄・事物管轄・土地管轄などの種類があります。職分管轄とは、ある事件や手続きを、どの種類の裁判所が取り扱うか、という管轄の種類で、地方裁判所・簡易裁判所・家庭裁判所のどれが担当するかについて決めるものです。例えば、判決を出すのは地方裁判所ですが、判決に基づいて強制執行を行うのは執行裁判所、という具合です。
事物管轄とは、裁判の第一審を地方裁判所と簡易裁判所のどちらが担当するか、を決める管轄のことをいいます。場合によっては、上記の職分管轄も含めた意味で用いられることもあります。遺産分割調停にはあまり関係ないですが、例えば請求額が140万円以下の請求の場合は簡易裁判所が行います。土地管轄とは、どの土地の裁判所が、遺産分割調停事件を担当するか、についての管轄です。こちらについては後述します。
管轄の重要性
管轄については紛争解決において重要な役割をします。特にどの土地で手続きを行うかについて、あまりにも遠方で遺産分割調停をすることを強いられると、- 遺産分割調停の期日ごとに遠方の裁判所に行くことを強いられる可能性がある。
- 弁護士に依頼をする場合、交通費などの実費の出費を強いられる可能性がある。
- 電話会議で行う場合に、調停委員に表情を察してもらったりすることができず、自分が考えていることを伝えきれないことがある。
管轄を間違えると管轄裁判所へ移送される
遺産分割調停では管轄となる裁判所が定められているため、申立てをする際には正しい家庭裁判所を選ばなければなりません。申立書や戸籍謄本などの必要書類を準備して提出したとしても、管轄を誤っていれば改めて管轄のある家庭裁判所で手続きをしなければならないことがあります。その結果、解決までに余計な時間や手間がかかる可能性があります。
なお、遺産分割調停が管轄ではない家庭裁判所に申し立てられた場合でも、相手方の申立て又は家庭裁判所の職権で管轄のある家庭裁判所に事件を移送される場合もあります(家事事件手続法9条1項)。
家事事件手続法における管轄に関する規定
遺産分割調停の管轄については、家事事件手続法で以下のように定められています。 上記からわかるように、遺産分割調停は原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。また、当事者全員が合意している場合には、別の家庭裁判所を管轄裁判所として定めることも可能です。例えば、申立人が神戸市に住み、相手方が大阪市に住んでいる場合、原則として大阪市を管轄する家庭裁判所へ申し立てることになります。一方で、相続人全員が「神戸家庭裁判所で調停を行う」と合意している場合には、神戸家庭裁判所へ申し立てることもできます。
遺産分割調停の管轄

- 遺産分割調停の管轄は原則相手方の住所地を管轄する家庭裁判所となる
- 当事者が合意で定めた場合、その家庭裁判所が管轄となることも可能
遺産分割調停を行う場合、どの裁判所が管轄となるのでしょうか。
原則は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所が管轄となります。
原則は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所
遺産分割調停は家庭裁判所に申立てをするのですが、家庭裁判所は日本全国に存在します。どの場所の家庭裁判所に遺産分割調停を申立てるか、言い換えれば、どの場所の家庭裁判所が担当するか、を土地管轄と呼びます。遺産分割調停に関しては、家事事件手続法245条1項によって、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所で行うのが原則となります。そのため、自分が大阪市に住んでいて、遺産分割調停を起こす相手が東京に住んでいる場合には、東京の家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。家事事件手続法245条1項の条文引用
遺産分割調停の管轄については、家事事件手続法245条1項で定められています。 条文を見ると、遺産分割調停の管轄には相手方の住所地を管轄する家庭裁判所と当事者が合意で定める家庭裁判所の2つがあることがわかります。もっとも、当事者全員が管轄について合意しているケースはそれほど多くありません。そのため、実際には相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てることが一般的です。
例えば、申立人が大阪市に住み、相手方が東京都新宿区に住んでいる場合には、原則として東京家庭裁判所へ申し立てることになります。一方で、当事者全員が大阪家庭裁判所で手続きを進めることに合意している場合には、大阪家庭裁判所を管轄裁判所とすることも可能です。
住民票上の住所と実際の居住地が異なる場合
管轄における相手方の住所地とは、一般的には相手方が生活の本拠としている場所です。そのため、住民票と現住所が異なる場合、相手方が実際に住んでいる所を管轄する家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる必要があります。相手方の住所地が不明な場合の対応
相手方の住所地が不明な場合、住民票や戸籍の附票を取得して住所を調査する必要があります。相手方の過去の住所や本籍地がわかっている場合には、その情報をもとに住民票や戸籍附票をたどることで現在の住所を特定できることがあります。もし電話番号がわかるのであれば、契約者情報の照会によって所在調査を行う場合もあります。
このような調査を尽くしても相手方の所在が判明しない場合には、不在者財産管理人の選任を申し立てることがあります。不在者財産管理人とは、行方不明者に代わって財産の管理や法律行為を行う人のことです。家庭裁判所に不在者財産管理人が選任されれば、その人を相手方として遺産分割手続きを進めることが可能です。
また、生死が長期間不明である場合には、失踪宣告の手続きを利用することも考えられます。失踪宣告が確定すると、法律上は一定の時点で死亡したものとみなされるため、その相続人を含めて遺産分割手続きを進めることになります。
これらの手続きはいずれも一定の要件を満たす必要があり、住所調査を十分に行ったことの証明などが求められることもあります。
管轄の例外

- 管轄の例外には合意管轄や自庁処理などがある
- 家庭裁判所の職権で、別の家庭裁判所に管轄がある事件を処理することができる場合がある
管轄が相手方の住所地以外になる場合もあるのでしょうか。
はい。いくつかの例外があるので、ひとつずつ確認していきましょう。
合意管轄とは
同じ家事事件手続法245条1項は、当事者が管轄についての合意を定めた場合に、その裁判所の土地管轄を認めています。この合意については、書面・電磁的記録によってされなければ効力を生じません(家事事件手続法245条2項、民事訴訟法11条2項・3項)。自庁処理とは
自庁処理とは、本来であれば別の家庭裁判所に管轄がある場合であっても、事件を担当している家庭裁判所が事件を処理することです。家事事件手続法274条3項では、以下のように定めています。
第二百七十四条 第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件についての訴訟又は家事審判事件が係属している場合には、裁判所は、当事者(本案について被告又は相手方の陳述がされる前にあっては、原告又は申立人に限る。)の意見を聴いて、いつでも、職権で、事件を家事調停に付することができる。
3 家庭裁判所及び高等裁判所は、第一項の規定により事件を調停に付する場合には、前項の規定にかかわらず、その家事調停事件を自ら処理することができる。
引用元:家事事件手続法 | e-Gov法令検索
上記の通り、審判事件が係属している家庭裁判所がその事件を調停に付した場合には、管轄権の有無にかかわらず自ら調停事件を処理できると定められています。3 家庭裁判所及び高等裁判所は、第一項の規定により事件を調停に付する場合には、前項の規定にかかわらず、その家事調停事件を自ら処理することができる。
引用元:家事事件手続法 | e-Gov法令検索
これは、既に審判事件を担当している裁判所であれば、相続関係や当事者の主張、争点などについて一定の理解や心証を形成していることが多く、同じ裁判所が引き続き調停を担当することで円滑に手続きを進められると考えられるためです。
管轄に属しない裁判所への申し立てにおける自庁処理
自庁処理については、家事事件手続法9条1項ただし書に、家庭裁判所は事件を処理するために特に必要があると認めるときは職権で自ら処理できる旨が定められています。
第九条 裁判所は、家事事件の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送する。ただし、家庭裁判所は、事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で、家事事件の全部又は一部を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に移送し、又は自ら処理することができる。
引用元:家事事件手続法 | e-Gov法令検索
上記の通り、管轄のない裁判所へ申し立てられた場合には、原則として管轄裁判所へ移送することを定めており、家庭裁判所が事件を処理するために特に必要があると判断した場合には自ら事件を処理することも認められています。引用元:家事事件手続法 | e-Gov法令検索
例えば、既に同じ相続に関する審判事件が係属しており、裁判所が相続関係や争点を十分把握しているような場合には、別の家庭裁判所へ移送するより同じ家庭裁判所が担当した方が迅速かつ円滑に手続きを進められることがあります。このような場合、裁判所の職権によって自庁処理が行われる場合があります。
合意管轄が認められるケース
合意管轄とは、相続人全員の合意によって本来の管轄裁判所とは別の家庭裁判所で遺産分割調停を行う制度です。例えば、相続人の1人が東京、1人が大阪、1人が福岡に住んでいたとします。この場合、東京に住む相続人が申立人となり、大阪に住む相続人を相手方として調停を申し立てるのであれば、原則として大阪家庭裁判所が管轄となります。しかし、当事者全員が大阪家庭裁判所で手続きを進めることに合意している場合には、合意管轄によって大阪家庭裁判所を管轄裁判所とすることもできます。
また、相続人の多くが同じ地域に住んでいる場合や、遺産の中心となる不動産がある地域で手続きを進めたい場合なども、合意管轄が利用されることがあります。
合意管轄は相続人全員の負担を軽減し、円滑に手続きを進めるために利用されます。ただし、一部の相続人でも反対している場合には利用できないため、相続人全員でよく話し合う必要があります。
相手方が複数人いる場合の管轄

- 相手方となる相続人が複数いる場合には、それぞれの住所地が管轄の候補となる
- 複数の管轄を選べる場合にはどの裁判所を選ぶかが重要
相手方が複数いるときの管轄はどうなるのでしょうか。
管轄権を有する裁判所の中からどれかひとつを選ぶことになるので、どの裁判所を選ぶかが重要です。
複数の住所地のうちからひとつを選べる
遺産分割調停では、相続人全員を当事者として手続きを進める必要があります。そのため、相手方となる相続人が複数いる場合には、それぞれの住所地が管轄の候補となります。例えば、申立人が神戸市に住んでおり、相手方である兄が大阪市、妹が名古屋市、弟が東京都に住んでいる場合には、大阪家庭裁判所、名古屋家庭裁判所、東京家庭裁判所のいずれも管轄裁判所となります。
このような場合、申立人は相手方のうち誰の住所地を基準とするかを選ぶことができます。そのため、交通の便や移動時間、他の相続人の居住地などを考慮しながら、手続きを進めやすい家庭裁判所を選択することが可能です。
管轄する裁判所が複数ある場合の申立先の選び方
遺産分割調停では、期日ごとに家庭裁判所へ出頭する必要があるため、申立先を選べる状況であれば自宅から比較的近い家庭裁判所を選択することで、移動時間や交通費を軽減できます。そのため、相続人の多くが同じ地域に住んでいる場合には、その地域の家庭裁判所を選んだ方が手続きを円滑に進めやすいでしょう。相手方が複数いる場合には、出頭の負担や手続の進めやすさも踏まえて申立先を検討することが重要です。
兄弟姉妹が全国に散らばっている場合の選び方
相続では、兄弟姉妹が相続人となるケースや、子ども同士が相続人となるケースで、相続人が全国各地に住んでいることがあります。このような場合には、まず申立人自身が出頭しやすい家庭裁判所であるかを検討します。また、相続人の人数が多い地域や、相続人の大半が出席しやすい地域であるかも重要な判断材料です。さらに、相続財産の中心となる不動産がある地域や、既に関係する手続きが進んでいる地域があれば、その地域の家庭裁判所を選んだ方が手続きを進めやすい場合もあります。
自分の都合だけでなく、他の相続人の負担や手続全体の進めやすさも考慮し、合理的な申立先を検討することが大切です。
管轄裁判所が遠方の場合の対応方法

- ウェブ会議を使って調停に参加することができる
- 弁護士が代理人として調停に参加することも可能
管轄裁判所が遠方にあると何か問題があるでしょうか。
調停期日に出頭するのが大変なので、弁護士に依頼したりウェブ会議を利用したりといった対策の検討も必要です。
電話会議システムの利用
上述のように、自分が大阪市に住んでいて、相手が東京都に住んでいる場合には、原則として東京都(23区の場合には東京家庭裁判所)に調停を申立てることになります。 当然ですが、このような場合に、大阪市の裁判所に遺産分割調停を申立てる合意をとろうと思っても、相手は合意しないことが多いです。 このような場合には、電話会議システムを使うことが可能となっています。 電話会議というと、携帯電話に電話をかけて当事者と調停委員が話し合うという方法をイメージするかもしれませんが、それでは本当に電話に出ている人が、調停委員・当事者であると確認することが難しいといえます。そのため、電話会議システムで出席する当事者が、最寄りの家庭裁判所に出向いて、そこで電話会議システムの設備がある部屋で会議を行う、という運用になっていることが一般的です。 ただし、電話会議で行うかどうか、最終的には裁判所が判断します。 場合によっては、電話会議が認められない場合もあります。
通話は複数の人が同時に聞くため、通常の携帯電話のように耳にあてて聞くのではなく、スピーカー機能を持つ電話をつかって通話を行います。 通常の当事者が出席している期日では、調停委員は当事者がどのような表情をしているか、といったことも考慮することが可能なのですが、電話会議システムでは音声のみの通話になるので当事者の表情を読み取ることができません。 遺産分割調停は複数回あるため、どうしても言いたいことが伝わらない場合には、直接出向くことも検討しましょう。
ウェブ会議の利用
ウェブ会議とは、裁判所と当事者や弁護士事務所をインターネットで接続し、パソコンやスマートフォンを利用して調停に参加する方法です。ウェブ会議の導入によって、遠方の裁判所まで移動する時間や交通費の負担が軽減されるだけでなく、相続人同士の対立が激しい事案でも直接顔を合わせることなく手続きが進められるようになりました。ウェブ会議は、裁判所が当事者の意向や事件の内容を踏まえ、相当と判断した場合に利用が認められます。そのため、当事者が希望しても認められるとは限りませんが、管轄裁判所が遠方にある場合にはウェブ会議の利用を検討してみてもよいでしょう。
代理人の弁護士に出席してもらう
弁護士に依頼した場合、弁護士が本人に代わって調停期日に出席することが可能です。そのため、毎回本人が家庭裁判所まで出向く必要はありません。もっとも、遺産分割の経緯や家族関係について本人から詳しい説明が必要な場合や、調停の場で解決案について判断する必要がある場合には、本人の出席を求められることもあります。
遠方出席にかかる費用と時間の実態
管轄裁判所が遠方にある場合、期日への出席に相応の時間と費用がかかることがあります。例えば、大阪市に住んでいる人が東京家庭裁判所の期日に出席する場合、新幹線の往復費用だけでも数万円程度かかります。また、移動時間も往復で数時間に及ぶため、平日に仕事を休まなければならないこともあるでしょう。
さらに、遺産分割調停は1回の期日で終了するとは限らず、複数回にわたって期日が開かれることがあります。そのため、出席のたびに交通費や宿泊費が発生するケースもあります。
相続人が高齢である場合や、仕事や介護などの事情で長時間の移動が難しい場合には、こうした負担が大きな問題となります。そのため、管轄裁判所が遠方である場合には、実際に出席が必要となる回数や、電話会議・ウェブ会議の利用が可能かどうかを事前に確認しておくとよいでしょう。
管轄外で申立てる際の注意点

- 遺産分割調停では相続人全員の同意がなければ合意管轄は成立しない
- 自庁処理は裁判所が必要と判断しない限り適用されない
管轄外の裁判所に申し立てるうえでの注意点はあるでしょうか。
合意管轄や自庁処理などにおける注意点を知っておきましょう。
一部の相続人が反対すると合意管轄は利用できない
合意管轄を利用するためには相続人全員の同意が必要です。相続人のうちひとりでも反対している場合には、合意管轄を利用することはできません。特に、相続人同士の対立が強いケースでは、管轄裁判所についても意見がまとまらないことがあります。そのため、合意管轄を前提に手続きを進めるのではなく、全員の同意が得られるかを事前に確認しておくことが重要です。
自庁処理は裁判所の判断で決まる
自庁処理は事件を処理するために特に必要があると認められる場合に限り、家庭裁判所が職権で行います。そのため、自庁処理を行うかどうかは最終的に裁判所が判断します。例えば、既に同じ相続に関する事件が係属しており、裁判所が相続関係や争点を十分に把握している場合には自庁処理が行われることがありますが、そのような必要性が認められない場合には通常どおり管轄となる裁判所へ移送されます。
そのため、自庁処理を希望する場合には、本来の管轄裁判所ではなく、申立てを受けた裁判所で処理する必要性がある事情を主張することが重要です。
管轄違いを理由とした移送
裁判所が事件について管轄を有しないと認めたときは、申立てまたは職権によって事件を管轄裁判所へ移送することができます。移送が行われる分だけ審理の開始が遅れたり、追加の書類提出が必要になったりすることがあるため、遺産分割調停を申し立てる際には、事前に相手方の住所地や管轄裁判所を十分に確認しておくことが重要です。
実務上のリスクと対処法
ここまで説明してきたように、遺産分割調停では原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てる必要があります。また、相手方が複数いる場合や合意管轄が利用できる場合には、申立先を選択できることもあります。しかし、管轄を十分に確認しないまま申し立てを行うと、事件が移送されたり、想定していた家庭裁判所で手続きを進められなかったりすることがあります。
また、管轄裁判所が遠方である場合には、期日への出席に時間や費用がかかることもあります。そのため、電話会議やウェブ会議の利用が可能か、弁護士へ依頼する必要があるかなども含め、事前に検討しておくことが重要です。
遺産分割調停では、管轄の問題がその後の手続きの進めやすさにも影響します。申立てを行う前に相続人の住所や利用できる管轄を確認し、正しい管轄の裁判所へ申立てを行いましょう。
遺産分割審判に移行した場合の管轄

- 遺産分割調停が不成立となると自動的に遺産分割審判へ移行する
- 遺産分割審判の管轄は原則として被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となる
遺産分割審判に移行した場合の管轄はどうなるのでしょうか。
原則として被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所が管轄となります。ただし、調停から審判へ移行する場合には、そのまま同じ家庭裁判所で手続きが続くこともあります。
調停不成立で自動的に審判に移行
遺産分割調停が不成立となった場合には、自動的に遺産分割審判へ移行します(家事事件手続法272条4項)。審判では、協議や調停のように相続人同士の話し合いで解決を目指すのではなく、裁判所が提出された資料や当事者の主張を踏まえて判断を下します。
遺産分割調停は必ずしも合意によって終了するとは限りません。そのため、話し合いによる解決が難しい場合には最終的に裁判所が判断を示す遺産分割審判へ移行することになります。
調停から移行した審判の管轄について
遺産分割審判の管轄は、相続開始地、すなわち被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所が原則となります。例えば、相続人全員が東京都や大阪府に住んでいたとしても、被相続人が亡くなった時点で福岡市に住んでいたのであれば、原則として福岡家庭裁判所が管轄裁判所となります。もっとも、遺産分割調停と遺産分割審判とで管轄裁判所が異なる場合には、遺産分割審判の管轄裁判所へ移送されることがあります。ただし、調停を担当した家庭裁判所がそのまま審判手続を行うこともあり、どちらになるかは最終的に裁判所が判断します。
また、調停や審判について当事者間で管轄の合意が成立している場合には、その合意した家庭裁判所で手続きを行うことも可能です。この場合には、申立書とともに管轄合意書を提出します。
審判で扱える範囲・扱えない範囲
遺産分割審判で判断できるのは、遺産をどのように分けるかという遺産分割に関する問題です。例えば、各相続人が取得する財産の内容や割合、寄与分や特別受益の有無など、遺産分割に必要な事項については審判での判断が可能です。一方で、遺産分割に関連していても、すべての問題を審判で解決できるわけではありません。例えば、使途不明金の返還請求、葬儀費用や遺産管理費用の精算、相続開始後に発生した賃料や配当金の分配などは、原則として別途民事訴訟等で解決する必要があります。
よくある質問・まとめ

- 住所地がわからないときは弁護士会照会制度や公示送達などを活用する
- 相手が海外に住んでいる場合は外国送達の手続きが必要
相手方の住所地がわからない場合や海外に住んでいる場合などはどうするのでしょうか。
そういった場合に管轄がどうなるのかも理解しておきましょう。
Q1.相手方の住所地がわからない場合は?
遺産分割調停は相手方の住所地を基準として管轄裁判所が決まるため、まずは相手方の住所を調査する必要があります。例えば、住民票や戸籍の附票を取得して住所を追跡したり、被相続人の戸籍から相続人の本籍地を確認したりする方法があります。また、弁護士へ依頼して弁護士会照会制度を利用する方法もあります。
このような調査を行っても住所が判明しない場合には、公示送達の利用が検討されます。
公示送達とは、相手方の住所や居所がわからず書類を送達できない場合に、裁判所の掲示板などで一定期間公示することによって相手方に書類が届いたものとみなす制度です。公示送達が認められれば、相手方が所在不明であっても手続きを進めることが可能です。
Q2.相手方が海外に住んでいる場合は?
相手方が海外で生活しているものの、日本国内に住所や住民票が残っている場合には、その住所地を基準として管轄裁判所が決まります。一方で、日本国内に住所がない場合には日本の家庭裁判所に国際裁判管轄が認められるかどうかが問題となります。また、調停を進めるためには、申立書や裁判所の書類を相手方へ送達しなければなりません。相手方が海外に住んでいる場合には外国送達の手続きが必要となることがあり、通常の送達よりも時間がかかることがあります。
さらに、相手方が期日に出席できない場合には、代理人を選任して対応することも考えられます。近年は電話会議やウェブ会議を利用できるケースもありますが、利用できるかどうかは裁判所の判断によります。
このように、相手方が海外に住んでいる場合でも手続自体は可能ですが、管轄や送達など国内の事案にはない問題が生じます。
Q3.管轄が決まったら途中で変更できる?
一度遺産分割調停を申し立てたあとでも、家庭裁判所が必要と判断した場合には別の家庭裁判所へ事件が移送されることがあります。例えば、調停開始後に相続人全員が別の地域に住んでいることが判明した場合や、現在の家庭裁判所で手続きを進めることが著しく不便である場合には、家庭裁判所が移送を検討することがあります。ただし、管轄のある家庭裁判所から別の家庭裁判所へ移送するかどうかは、家庭裁判所の判断によります。そのため、当事者には移送を請求する権利はなく、「移送してほしい」という上申を行うことしかできません。
上申は必ず移送が認められるわけではなく、事件の内容や当事者の居住地、手続の進行状況などを踏まえ、家庭裁判所が移送の必要性を判断します。
Q4.弁護士に依頼すると遠方でも対応できる?
弁護士に依頼することで、遠方の家庭裁判所で行われる遺産分割調停にも対応しやすくなります。遺産分割調停では、弁護士を代理人として選任した場合、弁護士が本人に代わって調停期日に出席できます。そのため、管轄裁判所が遠方にある場合でも本人が毎回出頭する必要はありません。
もっとも、遺産分割の経緯や家族関係について本人から詳しい説明が必要な場合や、調停の場で解決案について判断する必要がある場合には、本人の出席を求められることもあります。
近年は電話会議やウェブ会議を利用できるケースも増えているため、弁護士への依頼とあわせて活用することで、遠方の家庭裁判所であっても負担を抑えながら手続きを進めることも可能です。
まとめ・弁護士相談への導線
このページでは、遺産分割調停についての管轄についてお伝えしました。 どの裁判所に申立てをするかについて確認をして、不明な点があれば弁護士にご相談をするようにしてください。
遺言や相続でお困りの方へ
分からないときこそ専門家へ
相続については、書籍やウェブで調べるだけではご不安な点も多いかと思います。当事務所では、お客様の実際のお悩みに寄り添って解決案をご提案しております。「こんなことを聞いてもいいのかな?」そう思ったときがご相談のタイミングです。

- 遺産相続でトラブルを起こしたくない
- 誰が、どの財産を、どれくらい相続するかわかっていない
- 遺産分割で損をしないように話し合いを進めたい
- 他の相続人と仲が悪いため話し合いをしたくない(できない)
初回相談
無料
無料
法律問題について相談をする
この記事の監修者
最新の投稿
- 2026.02.13相続全般不動産(土地)の生前贈与とは?手続きや発生する費用、メリット・デメリット
- 2025.09.22相続全般相続不動産を共有するメリット・デメリットは?解消方法も弁護士が解説
- 2025.09.19相続税申告・対策弔慰金に相続税はかかる?非課税となる範囲と課税されるケースを解説
- 2025.09.05相続手続き代行遺産分割協議後に新たな財産が見つかったら?対処法を弁護士が解説








