
- 連絡が取れる人だけで遺産分割協議をすることはできない
- 放置すると相続税が高額になったり預金の払戻しが困難になったりするリスクがある
- 不在者財産管理人、失踪宣告、遺産分割調停・審判等の法的手続を利用する
【Cross Talk 】非協力的な相続人がいる場合はどうすればいいの?
先日、姉が亡くなりました。姉は独身で子どももいなかったので、私たち兄弟や兄弟の子どもが相続することになったのですが、連絡が取れない相続人がいます。どうすればいいでしょうか?
遺産分割協議は相続人全員でしなければならないので、戸籍の附票を調べて現住所を確認し、手紙などで相続手続への協力を求めるのが一般的です。それでも協力が得られない場合には、遺産分割調停・審判を申立てる必要があります。また、行方不明の相続人がいる場合には、不在者財産管理人の選任や失踪宣告を申立てる方法も考えられます。
いろいろな対応方法があるんですね。詳しく教えてください!
相続人の中に連絡を拒否するなど非協力的な相続人がいるため、相続手続が進められずに困っているということは珍しくありません。そこで今回は、相続人が非協力的になる主な理由を紹介したうえで、具体的な対処法を解説します。
相続人が連絡拒否などの非協力的になる場合

- 被相続人や他の相続人と仲が悪いなどの感情的な対立がある
- 相続手続に協力するのが煩わしいと思っている
相続人が相続手続に非協力的になるのはどのような理由があるのでしょうか?
いろいろな理由がありますが、代表的なものとしては被相続人や他の相続人との仲が険悪で感情的な対立がある、相続財産が少ないとか遠方に居住しているなどの事情から相続手続に協力することを煩わしいと感じている等の理由が考えられます。
相続人が連絡を拒否するなど相続手続に非協力的になるのは、主に次のような場合です。
- 被相続人や他の相続人との仲が険悪で感情的な対立がある場合
- 相続財産が少ない、遠方に居住しているなどの事情から相続手続に時間と手間をかけることを煩わしいと感じている場合
- 高齢などの事情から相続について十分に理解ができず放置している場合
非協力的な相続人を除いて遺産分割協議はできない

- 遺言がない場合は遺産分割協議をする必要がある
- 遺産分割協議は相続人全員でしなければならない
非協力的な相続人がいる場合、相続はどうなるのですか?
遺言がない場合、遺産分割協議が必要になりますが、遺産分割協議は相続人全員でしなければなりません。ですから、非協力的な相続人を除外して協力的な相続人だけで遺産分割協議をすることはできないのです。
相続が開始した場合、遺言があれば遺言に従って遺産が分けられますが、遺言がなければ遺産分割協議によって遺産の分割方法を定める必要があります。
この遺産分割協議は相続人全員でしなければなりません。そのため、相続人の中に連絡を拒否するなど非協力的な相続人がいる場合でも、その相続人を除外して協力的な相続人だけで遺産分割協議をすることはできないのです。
連絡が取れない相続人を放置するリスクについて

- 相続税を延滞して延滞税・加算税が課されるおそれがある
- 預貯金を払い戻すことが難しくなる
連絡が取れないなど非協力的な相続人がいる場合に、相続手続を勧めずに放置すればどうなるのですか?
相続手続を放置した場合、相続税の納付・申告が遅れて相続税が高額になるおそれがあります。また、一部を除いて遺産分割前に預貯金を払い戻すことが困難になるというデメリットもあります。
相続税が高額になる可能性がある
相続税の申告・納付は被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内にしなければならず、この期限内に相続税の申告・納付をしない場合、延滞税や加算税が課される可能性があります。
この期限は遺産分割協議が未了の場合であっても変わりありません。ですから連絡が取れない相続人がいる場合に相続手続を放置し、相続税の申告・納付もしなかったときは、延滞税や加算税が課されて相続税が高額になるおそれがあるのです。
預貯金の払い戻しが困難になる
連絡が取れない相続人がいると、一部を除いて預貯金の払戻が困難になるのもデメリットです。
かつて預貯金は相続開始と同時に法定相続人が法定相続分にしたがって相続するとされており、遺産分割協議の対象ではなかったのですが、最高裁判所の判例変更により、預貯金も遺産分割協議の対象とされることになりました。そのため、遺産分割協議が終わる前に預貯金の払戻しをすることができなくなったのです。
ただし、それでは被相続人の預貯金を葬儀費用や施設・病院代の支払い、遺族の生活費に宛てたりすることができなくなってしまいます。そのため、遺産分割前であっても各相続人は単独で預貯金の1/3に法定相続分をかけた額までは払い戻しができる制度が新たに作られました。もっとも、上限が150万円とされているなど、必ずしも上記の費用を支払うのに十分な額が払い戻せるとは限りません。
連絡がとれない相続人への対処法

- 戸籍の附票を調べて現住所に連絡する
- 行方不明の相続人がいる場合には不在者財産管理人の選任や失踪宣告を申立てる
- どうしても遺産分割協議がまとまらない場合は遺産分割調停・審判を申立てる
連絡が取れない相続人がいる場合、どのように対処すればいいのでしょうか?
まずは戸籍の附票を調べて現住所を確認し、手紙で相続手続への協力を求めるのが一般的な方法です。相続人が現住所に居住しておらず、所在が不明な場合には、裁判所に対して不在者財産管理人の選任や失踪宣告の申立てをすることが考えられます。どうしても遺産部活協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停・審判を申立てて、遺産の分け方を決めることになります。
戸籍の附票を取得して現住所を確認する
連絡がとれず、住所もわからない相続人がいる場合、戸籍の附票によって住所を確認することができます。
戸籍の附票とは、戸籍が作られたり入籍したりしてから現在まで(または除籍されるまで)の住所の変遷が記載されている書類です。
例えば、婚姻によってその戸籍に入籍してから現在までに「住所1→住所2→住所3」の順番で住所を移した場合、戸籍の附票を取得すれば変遷を確認することができます。
戸籍の附票が保管されているのは、本籍地の地区町村です。戸籍の附票を取り寄せるには、本籍地の地区町村役場で申請手続きを行いましょう。
なお、戸籍の附票で確認できる住所の変遷は、あくまでその戸籍に入っていた期間の住所に限られます。転籍前の住所の変遷を確認したい場合は、転籍前の戸籍の附票を取得しなければなりません。
不在者の財産管理人を選任する
行方不明の相続人がいる場合、不在者財産管理人を選任する方法があります。
従来の住所や居所を去って、容易に戻る見込みのない方を不在者といい、不在者の財産を管理する方がいない場合は、家庭裁判所に申立てをすることで不在者財産管理人が選任されます。
不在者財産管理人は、不在者の財産の管理や保存を行うほか、家庭裁判所の許可を得た場合は、不在者に代わって遺産分割協議に参加することが可能です。
そのため、行方不明の相続人がいるために遺産分割協議を成立させられない場合は、不在者財産管理人を遺産分割協議に参加させることで、手続きを進められるようになるでしょう。
失踪宣告の手続きを行う
いつまでも連絡がとれない相続人がいる場合は、失踪宣告の制度を利用することが考えられます。
失踪宣告とは、ある方が以下のいずれかの事由に該当する場合に、その方を法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。
- 不在者の生死が7年間明らかでないとき
- 戦争や震災など死亡の原因となる一定の危難に遭遇し、その危難が去ったあと、生死が1年間明らかでないとき
例えば、実家に居住していた長男が家出をして、そのあとも生きているのか死んでいるのか不明な状態が7年以上続いた場合は、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをすることで遺産分割協議を進められる可能性があります。
失踪宣告後は、その方の物理的な生死が不明な状態にあるとしても、法律上は死亡したものとして扱います。そのため、連絡がとれない相続人を除いて遺産分割協議を進めることが可能です。
遺産分割調停・審判の申立を行う
非協力的な相続人がいるため遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停・審判を申立てることが考えられます。
遺産分割審判は、当事者の提出する主張書面や証拠に基づいて、裁判所が遺産の分割方法を定める手続きなので、非協力的な相続人が欠席を続けたとしても、遺産を分割できます。
弁護士に依頼して連絡してもらう
相続人の間では非協力的な対応をされる場合、弁護士に依頼して弁護士から非協力的な相続人に連絡をしてもらう方法が考えられます。
弁護士からの連絡であれば、非協力的であった相続人も「弁護士からの連絡を無視すれば裁判になるのではないか」「自分も弁護士に相談した方がいいのか」等と考えて、非協力的な態度を改める可能性が高くなるからです。
まとめ
遺産分割協議を成立させるには相続人全員の同意が必要なので、連絡がとれない相続人がいる場合、相続手続きを進めることができません。
連絡拒否などの非協力的な相続人がいる場合は、遺産分割調停・審判や、不在者財産管理人の選任など方法で対応してみましょう。
ただし、どのような対策が有効かは状況によって異なるので、まずは相続問題の経験が豊富な弁護士に相談するのがおすすめです。

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