
- 生命保険金は原則として遺留分に含まれない
- 生命保険金が例外的に遺留分に含まれる場合は?
- 生命保険金が遺留分に含まれる基準とは?
【Cross Talk 】生命保険金は遺留分に含まれますか?
生命保険金は遺留分の対象に含まれますか?
原則として生命保険金は遺留分の対象に含まれませんが、例外的に含まれる場合があります。
生命保険金と遺留分の関係について、詳しく教えてください。
遺留分とは、一定の相続人に保障されている遺産の最低限の取り分のことを指します。遺留分を侵害されている相続人の方は、他の相続人に対して、侵害されている分を金銭で支払うように請求することができます。それでは、生命保険金は遺留分の対象となるのでしょうか。生命保険金が遺留分の対象とされるのはどのような場合で、またどのような基準で判断されているのでしょうか。この記事では、このような疑問点について弁護士が解説していきます。
生命保険は遺留分に含まれる?

- そもそも遺留分とは?
- 生命保険金は原則として遺留分に含まれない
生命保険金は遺留分の対象に含まれるのでしょうか?
原則として生命保険金は遺留分の対象には含まれません。
遺留分とは?
「遺留分」とは、「兄弟姉妹以外の相続人」に認められた、法律上保障された一定割合の相続財産のことを指します。本来、相続財産は被相続人(亡くなった人)の意思に基づいて自由に分配することが可能です。そのため、遺言書によって「特定の相続人に全財産を相続させる」といった指定をすることも認められています。 しかし、被相続人が全ての財産を一部の相続人に渡してしまうと、他の相続人が財産を全く受け取れなくなってしまいます。このような不公平を防ぐために、法律では遺留分という制度によって相続人の最低限の取り分を確保しているのです。 そして、遺留分を侵害された相続人は、「遺留分侵害額請求権」を行使することで、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを請求することができます。生命保険は原則として遺留分に含まれない
それでは、生命保険金は遺留分の対象に含まれるのでしょうか。生命保険金は、相続財産のように思われがちですが、実際には原則として相続財産ではないため遺産分割の対象とはならず、遺留分の対象にも含まれません。 まず、生命保険金は、保険契約によって被相続人が亡くなった際に、特定の受取人に直接支払われることになるため、相続財産の一部ではなく遺産には含まれないと考えられています。そのため、生命保険金は遺留分の対象にもならないのが原則です。 生命保険契約では、契約者(被相続人)が保険料を支払い、保険事故(死亡)が発生した際に、保険会社が指定された受取人に保険金を支払うという仕組みになっています。したがって、生命保険金は被相続人の財産ではなく、受取人固有の財産とみなされるのです。そして、生命保険金は受取人の固有の財産であり相続人の間で分割する必要がないため、遺産分割の対象にもならないのです。このように、生命保険金は遺産に含まれないため、特定の相続人に多くの財産を渡したい場合、その相続人を生命保険の受取人に指定することで、遺留分を気にせずに財産を残すことが可能となります。 例えば、被相続人が「長男には多くの財産を残したいが、遺留分の関係で遺言では調整しづらい」と考えた場合、長男を保険金受取人に指定することで、他の相続人に遺留分を侵害されたと主張されることなく、希望通りの財産分配を実現することができます。 なお、生命保険金を受け取る場合には、相続税または贈与税の課税対象になる可能性があります。生命保険金を利用して財産を分配する際には、税務上の影響も考慮しながら計画を立てることが重要です。
例外的に生命保険が遺留分の対象となる場合

- 例外的に生命保険金が遺留分の対象となる場合とは?
- 受取人が被相続人である場合や、相続人の間で不公平が生じている場合
生命保険金が遺留分の対象とされることはないのでしょうか?
一定の条件がある場合には、例外的に生命保険金が遺留分の対象となることがあります。
保険金の受取人が被相続人となっている
生命保険金は原則として相続財産には含まれず、遺留分の対象にもなりません。しかし、例外的に生命保険金が遺留分の対象となる場合があります。 生命保険契約では、通常は 保険金の受取人が特定の相続人に指定されることが多いですが、保険金の受取人が被相続人(亡くなった方)本人に指定されている場合には、生命保険金は相続財産とみなされます。 すなわち、生命保険契約に関する権利そのものが相続財産となり遺産分割の対象になるため、遺留分を主張する相続人は、生命保険金を含めた相続財産の分配を求めることが可能です。 例えば、契約者と受取人が被相続人であり、保険金が被相続人の口座に振り込まれた場合や、被相続人の財産管理の一環として契約されていた保険であり、解約返戻金の相当額が資産として計上される場合は、生命保険金が相続財産とみなされ、遺留分の対象に含まれる可能性があります。 このような場合、生命保険金は「受取人の固有財産」とは認められず、他の相続財産と同様に扱われるため、遺留分の対象となります。相続人の間で著しく不公平が生じている
もう一つの例外は、生命保険金を受け取った相続人と、その他の相続人との間に 極端な財産の偏りが生じる場合です。生命保険金が 「特別受益」 に準じるものとして遺留分の計算対象になる可能性があります。最高裁の判例(平成16年10月29日)では、以下のように述べられています。 「保険金受取人である相続人と、その他の共同相続人との間に生ずる不公平が、遺留分の趣旨に照らして到底是認することができないほどに著しいものである場合、特別受益に準じて持戻しの対象となる」 この判決により、生命保険金が原則として特別受益に該当しないとされる一方で、極端な不公平が生じる場合には特別受益に準じた取扱いをすることが認められました。 特別受益とは、被相続人から特定の相続人が生前贈与や遺贈を受けていた場合、その相続人だけが多くの財産を得てしまうことを防ぐための制度です。特別受益に該当する財産は、相続財産に含めた上で相続分を決めることになります。例えば、以下では、生命保険金が特別受益とみなされ、遺留分の対象となる可能性があります。- 相続財産が500万円しかないのに、特定の相続人が1億円の生命保険金を受け取る場合
- 生命保険金の金額が相続財産全体の大半を占めるため、他の相続人の取り分が極端に少なくなる場合
生命保険金を特別受益として持ち戻す基準

- 生命保険金が特別受益となる基準とは?
生命保険金が遺留分の対象となる基準はどのようなものなのでしょうか?
ここでは、生命保険金が特別受益の持ち戻しの対象となる基準について解説していきます。
- 生命保険金が遺産総額の大半を占める
- 保険金受取人が特別な介護や経済的負担をしていない
- 他の相続人が極端に少ない財産しか受け取れない
相続問題を弁護士に相談するメリット

- 相続問題を弁護士に相談するメリットとは?
相続問題は弁護士に相談すべきなのでしょうか?
ここでは、相続問題を弁護士に相談するメリットについて解説していきます。
直接の話し合いを避けられる
相続に関する話し合いは、親族間の感情がぶつかり合う場面が多く、精神的な負担が大きくなりがちです。弁護士を通じてやり取りをすれば、相続人同士が直接話し合う必要がなくなり、冷静な交渉が可能になります。また、弁護士に任せることで、相手の強い態度や圧力に屈することなく、適切な対応ができます。法的手段でスムーズに解決できる
相続問題は話し合いで解決できるのが理想ですが、相手が遺産の分割に応じない場合や、不公平な遺言がある場合は、法的手続きを検討する必要があります。 弁護士に依頼すれば、遺産分割調停や遺留分侵害額請求訴訟などの法的な手続きを適切に進めることが可能です。このような場合には、弁護士が代理人として法的主張を行い、有利な解決を目指してくれます。書類作成や証拠収集を任せられる
相続に関する手続きには、戸籍謄本や財産目録の作成、遺産分割協議書の作成など、多くの書類が必要です。こうした煩雑な作業を弁護士に依頼することで、手間を大幅に軽減できます。また、必要な証拠を適切に収集することで、後々のトラブルを防ぐことも可能になります。まとめ
生命保険金は原則として遺留分の対象とはなりませんが、例外的に、保険金の受取人が被相続人となっている場合や、相続人の間で著しく不公平が生じている場合には、遺留分の対象となります。そして、遺留分を侵害されている相続人の方は、他の相続人に対して遺留分侵害額請求をすることができます。 遺留分や相続トラブルでお困りの場合には、一度弁護士に相談されることをおすすめ致します。 当事務所には、相続問題に詳しい弁護士が在籍しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。


- 相手が遺産を独占し、自分の遺留分を認めない
- 遺言の内容に納得できない
- 遺留分の割合や計算方法が分からない
- 他の相続人から遺留分侵害額請求を受けて困っている
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