- 寄与分は貢献の形態によって5つの型に分かれ、それぞれ計算式が異なる
- 寄与分がある場合は「みなし相続財産」を計算してから各相続人の相続分を出す
- 寄与分には上限があり、遺贈がある場合は遺贈が優先される(民法904条の2第3項)
- 相続開始から10年を過ぎると、原則として寄与分を主張できなくなる(民法904条の3)
【Cross Talk 】寄与分は5つの型ごとに計算式があり、遺産から遺贈を除いた範囲内で認められる
遺産分割における寄与分は、どのように計算すればいいのでしょうか。
寄与分の計算方法は、貢献の形態によって異なります。5つの型に分けて確認しましょう。
寄与分とは、被相続人の財産維持や増加に貢献した相続人が、法定相続分に加えて受け取れる相続分です。相続人間の公平を図るために設けられた制度ですが、その計算方法は、寄与の形態や事情によって異なります。
寄与分の計算は、まず貢献の形態(5つの型)ごとに寄与分の額を求め、その額を遺産から差し引いた「みなし相続財産」を法定相続分で分けたうえで、寄与した相続人にその寄与分を加算する、という流れで行います。ただし、寄与分には遺贈を優先する上限があり、相続開始から10年を過ぎると主張できなくなるといった注意点もあります。
この記事では、5つの型ごとの計算式と計算例、相続分への反映のしかた、上限や評価時期といった注意点、そして相続人以外の貢献を請求できる特別寄与料まで、弁護士がわかりやすく解説していきます。
寄与分の計算について整理したい方は、ぜひ参考にしてください。
寄与分とは(認められるための要件)

- 寄与分は、被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした相続人が受け取れる(民法904条の2)
- 単に親族として面倒を見ただけでは「特別の寄与」とは認められにくい
そもそも、寄与分とはどのようなものなのでしょうか。
被相続人への特別な貢献を、相続分に反映させる制度です。要件から確認しましょう。
寄与分の意味(民法904条の2)
寄与分とは、特定の相続人が被相続人の財産の維持または増加に特別な貢献をした場合に、その貢献度に応じて、その相続人の相続財産を増額する制度です。民法904条の2に規定されており、共同相続人間における公平性を図ることを目的としています。
第九百四条の二 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
条文にあるとおり、寄与分の対象となる貢献は「事業に関する労務の提供」「財産上の給付」「療養看護その他の方法」に分類され、いずれも被相続人の「財産の維持又は増加」に結びついていることが必要です。この分類が、後述する計算方法の型に対応します。
寄与分が認められる条件(特別の寄与・無償性・財産の維持又は増加)
ただし、単に被相続人と親族関係にあるというだけでは認められず、相続人自身の「特別の寄与」が必要とされます。
この「特別の寄与」と認められるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。まず、寄与行為が、被相続人と相続人という身分関係から通常期待される範囲を超える貢献でなければなりません。例えば、夫婦間の協力扶助義務に基づく日常的な家事労働や、親族間の扶養義務に基づく通常の介護などは、原則として「特別の寄与」とは認められにくいと考えられています。
次に、その寄与行為によって、被相続人の財産の維持・減少を防いだ、または増加、すなわち財産を増やしたという明確な因果関係が必要です。単に精神的な支えとなったといった貢献は、経済的な財産の維持・増加に直接結びつかないため、寄与分として考慮されません。また、寄与行為は相続開始時までに行われたものでなければなりません。さらに、その寄与行為に対して、被相続人から適切な対価を受けていないこと(無償性)も重要な要件です。もし、貢献に見合うだけの報酬や弁償を受けていた場合、それは特別の寄与とは評価されません。
「親の面倒を見ていた」だけでは認められにくい理由
寄与分は、実務上、認められるハードルが高い制度です。「長年、親の面倒を見てきた」という貢献があっても、それだけでは寄与分が認められないことが少なくありません。
理由の一つは、前述の「通常期待される範囲を超える」という要件です。親子や夫婦の間には、法律上、扶養義務や協力扶助義務があります。そのため、通常の範囲の介護や生活の援助は「義務の履行」と評価され、特別の寄与とは認められにくいのです。もう一つの理由が、貢献を裏づける証拠をそろえにくいことです(証拠については大項目7で解説します)。
「特別の寄与」といえるだけの貢献の程度と、それを裏づける証拠がそろって初めて、寄与分が認められます。この記事の計算方法は、寄与分が認められることを前提としたものである点を、あらかじめ押さえておいてください。
タイプ別寄与分の計算方法と計算例

- 寄与分の計算は、貢献の形態によって5つの型に分かれる
- 各型の計算式には「裁量的割合」が用いられ、個別の事情で調整される
寄与分の計算方法について教えてください。
貢献の形態によって異なります。5つのタイプに分けて確認していきましょう。
家事従事型
被相続人の家業を無償で手伝うことで財産の維持・増加に貢献した場合に適用されます。標準的な計算式は以下の通りです。
・本来得られたはずの年間給与額 × (1 - 生活費控除割合) × 寄与年数
「本来得られたはずの年間給与額」は、同業種・同年齢の平均賃金(賃金センサスなどを参考に算出)を基準とします。「生活費控除割合」は、被相続人から生活費の援助を受けていた場合に、その割合を差し引くものです。
<計算例> 被相続人の農業を10年間無償で手伝い、同種の仕事の年間給与が300万円、生活費控除割合が3割の場合、300万円×(1−0.3)×10年=2,100万円が寄与分の目安となります(実際には、後述の裁量的な調整が入ることがあります)。
金銭等出資型
被相続人に金銭や不動産などの財産を提供した場合に適用されます。出資の種類や態様によって計算式が異なります。
- 金銭を贈与した場合: 贈与額 × 貨幣価値変動率 × 裁量的割合
- 不動産を贈与した場合: 相続開始時の不動産評価額 × 裁量的割合
- 不動産取得資金を出資した場合: 相続開始時の不動産評価額 × (出資額 ÷ 取得時の不動産価格) × 裁量的割合
- 不動産を無償で貸した場合: 相続開始当時の賃料相当額 × 使用年数 × 裁量的割合
「貨幣価値変動率」は、贈与時の金銭価値を相続開始時の価値に換算するために用いられます。「裁量的割合」は、親族間の扶養義務などを考慮して個別の事情に応じて調整される割合です。
<計算例> 20年前に被相続人の自宅購入資金として500万円を援助し、その資金が相続開始時に貨幣価値の変動を考慮して600万円に相当する場合、裁量的割合を8割とすると、600万円×0.8=480万円が寄与分の目安となります。金銭出資型では、贈与時の額面ではなく相続開始時の価値に換算する点がポイントです。
療養看護型(介護報酬基準額×日数×裁量割合)
寝たきりの被相続人を自宅で介護するなど、特別な療養看護を行った場合に適用されます。標準的な計算式は以下の通りです。
・療養看護の報酬相当額(日当) × 看護日数 × 裁量的割合
「療養看護の報酬相当額(日当)」は、介護保険の介護報酬基準額などを参考に、要介護度に応じて算出されます。「裁量的割合」は、親族関係や介護の程度を考慮して5~9割程度で調整されることが多いです。
実務では、被相続人が要介護2以上の状態にあったことが、療養看護型の寄与分が認められる一つの目安とされることがあります。要介護度が低く、常時の介護が必要とはいえない状態では、「特別の寄与」と認められにくい傾向があります。
<計算例> 日当を8,000円、自宅介護をした日数を1,000日、裁量的割合を7割とすると、8,000円×1,000日×0.7=560万円が寄与分の目安となります。介護日数や要介護度を裏づける記録が重要になります。
扶養型
身体的または経済的に扶養が必要な被相続人の生活の面倒を見た場合に適用されます。標準的な計算式は以下の通りです。
・負担した扶養料 × 扶養期間 × (1 - 寄与者の法定相続分割合)
「負担した扶養料」は、仕送り額や生活費の負担額などが該当します。「(1 - 寄与者の法定相続分割合)」は、親族間の扶養義務を考慮して、寄与者の法定相続分に相当する部分を差し引くためのものです。
<計算例> 毎月5万円(年間60万円)を10年間仕送りし、寄与者の法定相続分が4分の1の場合、60万円×10年×(1−0.25)=450万円が寄与分の目安となります。
財産管理型
被相続人に代わって賃貸物件の管理をした場合、代わりに不動産の売却手続きを行い、占有者の立ち退き交渉をした場合など、財産の維持・管理に特別な貢献をした場合に適用されます。標準的な計算式は以下の通りです。
・第三者に委任した場合の報酬額 × 裁量的割合
「第三者に委任した場合の報酬額」は、管理委託料や仲介手数料などを参考に算出されます。「裁量的割合」は、管理の程度や労力を考慮して個別に判断されます。
<計算例> 被相続人の賃貸物件を管理し、管理会社に委託した場合の報酬相当額が年間30万円、管理期間が10年、裁量的割合を8割とすると、30万円×10年×0.8=240万円が寄与分の目安となります。
以上のとおり、いずれの型でも、親族間に一定の助け合いが期待されることをふまえた個別事情に応じた調整が入る点が特徴です(金銭等出資型・療養看護型・財産管理型では計算式に「裁量的割合」として組み込まれ、家事従事型・扶養型でも同様の調整が加わることがあります)。この調整は、貢献のうち「特別」といえる部分に絞るためのものです。そのため、計算式で出た額がそのまま認められるわけではなく、あくまで目安である点に注意してください。
寄与分がある場合の相続分の計算(みなし相続財産方式)

- 寄与分は、遺産から寄与分を引いた「みなし相続財産」を基準に各相続分を計算する
- 寄与した相続人は、法定相続分に自分の寄与分を加算した額を受け取る
寄与分がある場合、最終的に受け取れる財産はどう計算しますか。
「みなし相続財産」という考え方を使います。数字の例で見てみましょう。
計算手順:(遺産−寄与分)を法定相続分で分けて寄与者に加算(民法904条の2第1項)
寄与分がある場合の基本的な相続分の計算は、以下の手順で行います。
1.相続財産の総額から、寄与分として認められた金額を差し引きます。この金額を「みなし相続財産」といいます。
2.みなし相続財産を、各相続人の法定相続分に応じて分割します。
3.寄与が認められた相続人については、2で計算された法定相続分に、自身の寄与分を加算した金額が最終的な相続分となります。
計算例:配偶者と子2人のケース
以下のような事例で、考えてみましょう。
| 相続人 | 法定相続分 | みなし相続財産(4,000万円)を分けた額 | 寄与分の加算 | 最終的な取得額 |
|---|---|---|---|---|
| 配偶者A | 2分の1 | 2,000万円 | ― | 2,000万円 |
| 長男B(寄与分1,000万円) | 4分の1 | 1,000万円 | +1,000万円 | 2,000万円 |
| 次男C(寄与なし) | 4分の1 | 1,000万円 | ― | 1,000万円 |
遺産総額5,000万円、相続人が配偶者A・長男B(寄与分1,000万円)・次男C(寄与なし)、法定相続分は配偶者A2分の1、長男B4分の1、次男C4分の1というケースです。
まず、みなし相続財産は、5,000万円−1,000万円(長男Bの寄与分)=4,000万円です。これを法定相続分で分けると、配偶者A:4,000万円×2分の1=2,000万円、長男B:4,000万円×4分の1=1,000万円、次男C:4,000万円×4分の1=1,000万円となります。
最後に、寄与が認められた長男Bに寄与分を加算します。その結果、最終的に受け取る額は、配偶者A:2,000万円、長男B:1,000万円+1,000万円(寄与分)=2,000万円、次男C:1,000万円となります。寄与分の1,000万円が、長男Bの取り分として上乗せされていることが分かります。
寄与分には上限がある(遺贈が優先される)

- 寄与分は「相続開始時の財産−遺贈の価額」を超えられない(民法904条の2第3項)
- 被相続人の遺言(遺贈)は、寄与分より優先される
遺言で遺贈がある場合、寄与分とどちらが優先しますか。
遺贈が優先します。寄与分には上限があるためです。条文で確認しましょう。
寄与分は「相続開始時の財産−遺贈の価額」を超えられない(民法904条の2第3項)
被相続人が遺言によって特定の相続人または第三者(受遺者)に財産を遺贈している場合、遺贈と寄与分はどちらが優先するのでしょうか。この点、民法904条の2第3項には、「寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない」と定められているため、遺贈が寄与分に優先すると考えられています。
以下の事例で考えてみましょう。遺産総額3,000万円、相続人が長男A(寄与分2,000万円)・次男B(遺贈2,000万円)というケースです。
この場合、長男Aが主張できる寄与分の上限は、3,000万円−2,000万円(次男Bへの遺贈)=1,000万円です。長男Aの寄与分は本来2,000万円と計算できますが、遺贈後の遺産残額が1,000万円しかないため、実際に取得できるのは1,000万円にとどまります。次男Bは遺贈により2,000万円を取得します。
遺言(遺贈)は寄与分より優先されるという制度趣旨
遺贈が寄与分に優先するのは、被相続人自身の最終的な意思である遺言を尊重するためです。寄与分は、被相続人の意思が示されていない部分について、相続人間の公平を図る制度です。そのため、被相続人が「この財産は特定の人に遺贈する」と明確に意思表示している場合には、その意思が優先され、寄与分はその残りの範囲でしか認められません。
寄与分と遺留分の関係
寄与分と遺留分の関係は、やや複雑です。遺留分は、一定の相続人に保障された最低限の取り分ですが、寄与分は遺留分を算定する際の基礎財産には含めないと考えられており、寄与分によって直接ほかの相続人の遺留分が侵害されるという関係にはないと整理されています。
もっとも、寄与分をどの程度認めるかは家庭裁判所の裁量に委ねられており、ほかの相続人の遺留分にも配慮して判断されることがあります。寄与分と遺留分がからむケースは判断が難しいため、具体的な見通しについては弁護士にご相談ください。
計算の前提となる注意点(評価時期・特別受益・複数の寄与)

- 寄与分の評価は、相続開始時の価値を基準に行う
- 特別受益と寄与分の両方がある場合は、あわせて計算する
計算するうえで、ほかに気をつける点はありますか。
評価の時期、特別受益との関係、複数の寄与者がいる場合の3点を押さえましょう。
寄与分の評価時期は相続開始時
寄与分をいくらと評価するかは、相続開始時(被相続人が亡くなった時)の価値を基準に行います。例えば、金銭を出資した型では、出資した当時の額面ではなく、相続開始時の貨幣価値に換算した額で評価します。不動産を贈与した型でも、贈与時ではなく相続開始時の評価額を用います。
古い貢献ほど、この評価の調整が影響します。「昔のことだから金額は小さい」と考えていると、換算後の額が想定より大きくなることもあります。
特別受益と寄与分の両方がある場合の計算
相続人の中に、寄与分が認められる人と、特別受益(生前贈与などによる特別な利益)を受けた人の両方がいる場合には、両方を反映して計算します。具体的には、遺産の総額に特別受益を加え、そこから寄与分を差し引いたものを「みなし相続財産」として、各相続人の相続分を計算します。
寄与分は取り分を増やす方向に、特別受益は取り分を減らす方向に働きます。両方がからむと計算が複雑になるため、詳しくは特別受益に関する関連コラムもあわせてご覧ください。
複数の相続人に寄与が認められる場合の算定
複数の相続人に、それぞれ寄与が認められる場合もあります。例えば、長男が家業を手伝い、長女が介護をした、というケースです。この場合は、それぞれの寄与分を別々に算定し、その合計額を遺産から差し引いてみなし相続財産を求めます。
そのうえで、みなし相続財産を法定相続分で分け、各自の寄与分をそれぞれに加算します。誰の、どの貢献が、いくらの寄与分にあたるのかを一つずつ算定していく必要があるため、複数の寄与がからむケースは特に専門的な検討が必要です。
「10年ルール」に注意:寄与分の主張には期限がある

- 相続開始から10年を過ぎると、原則として寄与分を主張できなくなる(民法904条の3)
- 計算方法を知っていても、期限を過ぎると主張できない点に注意
寄与分は、いつまで主張できるのでしょうか。
2023年施行の新しいルールで、10年という期限ができました。重要な注意点です。
相続開始から10年経過後は原則として寄与分を主張できない(民法904条の3・2023年4月施行)
見落とされやすいのが、寄与分を主張できる期限です。2023年4月1日に施行された民法904条の3により、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割では、原則として寄与分を主張できなくなりました(特別受益についても同様です)。
これは、遺産分割がされないまま長期間放置されると、貢献の証拠が失われ、寄与分の判断が難しくなることを防ぐために設けられたルールです。どれだけ計算方法を理解していても、相続開始から10年という期限を過ぎてしまえば、原則として寄与分を主張できなくなります。この点は、計算方法と同じくらい重要です。
例外(10年経過前の家裁への請求・やむを得ない事由)と経過措置
10年を過ぎても、次の場合には例外的に寄与分を主張できます。
- 相続開始から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求(調停・審判の申立て)をしていた場合
- 10年の期間満了前6か月以内にやむを得ない事由があり、その事由が消滅した時から6か月を経過する前に家庭裁判所に遺産分割の請求をした場合
また、この10年ルールは施行日(2023年4月1日)より前に開始した相続にも適用されますが、経過措置により、施行の時から5年を経過する時(2028年(令和10年)4月1日)、または相続開始から10年を経過する時のいずれか遅い時までは、寄与分を主張する機会が確保されています。
早めに遺産分割に着手すべき理由
以上のとおり、寄与分を主張したい事情がある場合は、相続開始から10年が経過する前に、遺産分割の手続きに着手することが重要です。話し合いがまとまらない場合は、10年が経過する前に家庭裁判所へ遺産分割の調停・審判を申し立てておくことで、主張の機会を確保できます。
古い相続を放置している場合は、この期限が迫っていることも少なくありません。寄与分に心当たりがある方は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
寄与分を認めてもらうための証拠と進め方

- 寄与分は、貢献を裏づける証拠がなければ認められにくい
- 話し合いでまとまらない場合は、調停・審判で判断されることになる
計算方法は分かりました。実際に認めてもらうには、どうすればよいですか。
証拠がとても重要です。類型別に、何が証拠になるかを見ておきましょう。
寄与分の計算方法を知っても、実際に認めてもらうには、貢献の事実を裏づける証拠が必要です。「特別の寄与」といえるだけの貢献があったこと、その程度や期間を、客観的な資料で示すことが求められます。
類型別の証拠の例(出勤記録・振込記録・介護記録・要介護認定資料など)
寄与の型ごとに、証拠となり得る資料の例は次のとおりです。
- 家事従事型:出勤記録、業務日報、確定申告書、事業の帳簿、無償で働いたことが分かる資料
- 金銭等出資型:預金通帳の記録、振込明細、贈与契約書、領収書、不動産の登記事項証明書
- 療養看護型:介護日記、要介護認定の資料、診断書、施設の利用明細、介護保険の記録
- 扶養型:仕送りの振込記録、生活費を負担したことが分かる通帳・領収書
- 財産管理型:管理の記録、賃貸借契約書、修繕や交渉の記録、管理委託料の相場が分かる資料
特に療養看護型では、いつ、どのような介護をしたのかを記録した介護日記や、要介護度を示す認定資料が重要になります。日々の記録は、後から作成するのが難しいため、貢献している時点で残しておくことが望ましいといえます。
協議→調停→審判の流れ
寄与分は、まず相続人間の遺産分割協議の中で主張します。話し合いで合意できれば、その内容で遺産分割を行います。
協議でまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、調停委員を交えて話し合います。それでも合意に至らない場合は、審判に移行し、裁判所が判断を下します。審判では、裁判所が寄与の時期・方法・程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定めます(民法904条の2第2項)。
証拠を揃えて計算根拠を示すことが交渉力になる
寄与分は、感情的な対立を招きやすい論点です。「これだけ貢献したのだから当然だ」という主張だけでは、ほかの相続人は納得しにくいものです。そこで、証拠に基づいて「どの型にあたり、計算式に当てはめるといくらになるのか」という根拠を示すことが、交渉を有利に進める鍵になります。
どのような証拠が有効か、計算根拠をどう組み立てるかは専門的な判断を要します。証拠の収集と計算の両面から、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
相続人以外の貢献は「特別寄与料」で請求(子の配偶者の介護など)

- 相続人でない親族の貢献は「特別寄与料」として請求できる(民法1050条)
- 請求の期限が短いため(知った時から6か月・相続開始から1年)、早めの対応が必要
相続人ではない私(子の配偶者)が介護した場合は、何ももらえないのでしょうか。
2019年からできた「特別寄与料」を請求できる可能性があります。期限が短い点に注意です。
特別寄与料とは(民法1050条・2019年7月施行)
寄与分を主張できるのは、原則として相続人に限られます。そのため、被相続人の子の配偶者(いわゆる「嫁」「婿」)が、どれだけ被相続人を介護しても、その人自身は相続人ではないため、従来は寄与分を主張できませんでした。
この不公平を解消するため、2019年7月1日に施行された民法1050条により、「特別寄与料」の制度が設けられました。被相続人に対して無償で療養看護その他の労務を提供し、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人などを除く)は、相続人に対して、その寄与に応じた金銭(特別寄与料)の支払いを請求できます。
請求できる人と期限(相続の開始と相続人を知った時から6か月・相続開始から1年)
特別寄与料を請求できるのは、被相続人の「親族」で、無償の労務提供によって財産の維持・増加に特別の寄与をした人です。子の配偶者による介護が典型例です。なお、相続人、相続を放棄した人、相続欠格・廃除により相続権を失った人は除かれます。
注意が必要なのは、請求の期限が短いことです。当事者間で協議が調わない場合に家庭裁判所へ処分を請求できるのは、特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から6か月を経過するまで、または相続開始の時から1年を経過するまでです(民法1050条2項)。この期限を過ぎると、家庭裁判所への請求ができなくなります。
額の上限と算定方法(寄与分の計算が参考になる)
特別寄与料の額は、家庭裁判所が、寄与の時期・方法・程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して定めます。また、特別寄与料の額は、相続開始時の財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができません(民法1050条4項)。この上限の考え方は、寄与分と同じです。
算定にあたっては、これまで解説した寄与分の療養看護型の計算方法(日当×看護日数×裁量的割合)が参考になります。請求の期限が短いため、心当たりのある方は、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。
寄与分の計算・交渉を弁護士に相談するメリット

- 寄与分が認められるか、いくらになるかは、事前に弁護士のアドバイスを受けられる
- 証拠の評価と計算根拠の提示は、交渉を有利に進める鍵になる
寄与分の計算に不安がありますが、弁護士に相談した方がいいのでしょうか。
計算と証拠、交渉を一貫して任せられる点が大きなメリットです。
寄与分の確保についてアドバイスを受けられる
まだ相続が発生していない段階でも、現在行っている被相続人の事業の手伝いや介護などの貢献が、将来的に寄与分として認められるか不安に感じる方もいるでしょう。弁護士に事前に相談することで、どのような貢献が寄与分として認められやすいのか、また、その貢献を記録しておくべき方法などについて具体的なアドバイスを得ることができます。これにより、将来の相続を見据えた適切な行動をとることが可能になります。
遺産分割協議を円滑に進めるためのサポートを受けられる
寄与分の主張は、他の相続人の理解と協力が不可欠です。既にご説明しましたように、寄与分が認められるには、複数の要件を充たす必要がありますし、ご自身で計算するには複雑な場合もございます。
弁護士にご依頼いただければ、弁護士が法的な根拠に基づき、あなたの寄与分が正当に評価されるよう他の相続人と交渉し、合意形成を支援します。感情的な対立が生じやすい遺産分割協議において、弁護士が間に入ることで、冷静かつ建設的な話し合いが期待でき、早期解決に繋がる可能性があります。
協議が不調に終わった場合には、家庭裁判所での調停や審判が必要になります。弁護士は、どのような証拠が有効であるかを熟知しており、依頼者に代わって証拠収集や主張書面の作成、裁判所とのやり取りを行います。計算・証拠・交渉を一貫して任せられる点が、弁護士に依頼する大きなメリットです。
よくある質問・まとめ

- 介護をしていても、要件と証拠がそろわなければ寄与分は認められない
- 寄与分に一律の相場はなく、貢献の内容に応じて個別に算定される
最後に、よくある疑問を教えてください。
特に質問の多い4つの点を確認していきましょう。
介護をしていれば必ず寄与分はもらえる?
必ずもらえるわけではありません。寄与分が認められるには、「通常期待される範囲を超える特別の貢献」であること、その貢献によって被相続人の財産が維持・増加したこと、無償であることなどの要件を満たす必要があります。
親族間には扶養義務があるため、通常の範囲の介護は「義務の履行」と評価され、特別の寄与とは認められにくいのが実情です。実務では、被相続人が要介護2以上であったことが一つの目安とされることもあります。介護をしていた事実に加えて、その程度と、それを裏づける証拠がそろって初めて認められます。
寄与分の相場はいくらくらい?
寄与分に、一律の相場はありません。貢献の型、期間、程度、遺産の額などによって大きく異なるためです。
金額は、この記事で解説した型ごとの計算式に当てはめて算定しますが、いずれの型でも「裁量的割合」による調整が入るため、計算式で出た額がそのまま認められるわけではありません。ご自身のケースでいくらになりそうかは、貢献の内容と証拠をふまえた個別の検討が必要ですので、弁護士にご相談ください。
相続人でない嫁(子の配偶者)が介護した場合は?
子の配偶者は相続人ではないため、寄与分そのものを主張することはできません。しかし、2019年7月に施行された「特別寄与料」の制度により、被相続人を無償で介護するなど特別の寄与をした場合には、相続人に対して特別寄与料を請求できる可能性があります(民法1050条)。
ただし、請求の期限が「相続の開始および相続人を知った時から6か月」「相続開始から1年」と短いため、注意が必要です。心当たりのある方は、できるだけ早く弁護士に相談してください。
何年前の貢献まで主張できる?
貢献自体は、被相続人の生前に行われたものであれば、何年前のものでも寄与分の対象になり得ます。金銭出資型などでは、古い貢献も相続開始時の価値に換算して評価します。
ただし、主張できる「期限」には注意が必要です。相続開始から10年を過ぎると、原則として寄与分を主張できなくなります(民法904条の3)。貢献がいつのものかにかかわらず、相続が始まってから10年以内に遺産分割に着手することが重要です。
まとめ
寄与分は、被相続人の財産維持・増加に貢献した相続人に、その貢献度に応じて相続分を増やす制度です。寄与分の計算方法は、家事従事型、金銭等出資型、療養看護型、扶養型、財産管理型など、貢献の態様によって異なります。寄与分を考慮した相続分の計算は、遺産総額から寄与分を差し引いた「みなし相続財産」を法定相続分で分配し、寄与者にその寄与分を加算する形で行います。
あわせて、寄与分には遺贈を優先する上限があること、相続開始から10年を過ぎると主張できなくなること、そして相続人でない親族には特別寄与料という別の制度があることも押さえておきましょう。計算式で額を出せても、要件・証拠・期限がそろわなければ、実際には認められません。
ご自身の貢献が寄与分に該当するか、また、その金額をどのように計算すべきかご不明な場合は、当事務所の弁護士にご相談ください。専門的な知識と経験に基づき、適切なアドバイスと手続きのサポートを提供いたします。
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