空き家を相続するときにどんな話し合いをすればいいのか?
ざっくりポイント
  • 空き家は形式としては資産
  • 固定資産税・維持費などがかかるという点で、もらっても嬉しくない場合がある
  • 空き家になる場合には相続で特別の配慮を
目次

【Cross Talk 】相続するのは空き家?納得いかないのだけど…

先日父が亡くなり、私・弟・妹で相続をすることになりました。 遺産分割の話し合いをしているのですが、長男である私は両親が住んでいた実家を相続するという話になっています。母もすでに亡くなっており、現在は空き家状態なので、売却も考えましたが、実家を売却するのは気が引けます。実家を相続するなら、預金の方がいいなと思っているのですが…。何かいい案はないでしょうか?

空き家になる家を相続する場合には、固定資産税や管理費の負担を考えてもらう方向で話合いをしましょう。

なるほど!詳しく教えてもらってもいいですか?

空き家の相続は単純な財産と考えることはできない場合も

遺産の中に空き家がある場合には注意が必要です。不動産は資産として単純に計算をすることができますが、維持にも費用がかかるものです。 1,000万円の不動産と1,000万円の現金を相続するのでは、相続後の使いやすさや維持管理に必要なコストなども全く違います。 空き家を相続するときにはどのようなコストが発生するのかを知った上で、相続にあたってどのような話し合いをすれば争いになりにくいのでしょうか。

空き家を相続する場合にかかる負担を考える

知っておきたい相続問題のポイント
  • 空き家も相続においては資産である
  • 資産ではあるが維持のための費用がかかる

空き家を相続したとしてどのような負担があるのでしょうか。

不動産を持っていると固定資産税がかかりますし、維持管理にも費用がかかります。

空き家といっても不動産を相続することになるので、持っているだけで次のような費用がかかります。

空き家とは

空き家とは、一般的には誰も住んでいない家のことをいいます。
例えば、父・母・子どもで住んでいた家で、既に父が亡くなっており、子どもは独立して別の場所に住んでいて母が亡くなった場合には、子どもが実家に戻らない限り空き家となります。
なお、空家等対策の推進に関する特別措置法2条1項では、「この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。第十四条第二項において同じ。)をいう。」と定義されています。

固定資産税

不動産を所有している人は固定資産税を納付する義務があります。 固定資産税額は、固定資産税評価額という決められた金額に対して、ほとんどの自治体で1.4%の税率で決められます(税率は自治体が自由に決定できますがほとんどの自治体が1.4%です)。 固定資産税の評価額が1,000万円の場合には、年間14万円の負担となります。

建物管理

空き家といっても完全に放置をしておくわけにもいきません。 もし放置をして、建物や塀が崩れたことで被害を被った人が居るような場合には、建物の所有者は民法717条所定の不法行為責任を負うことになります。 一戸建てならば維持のための管理費が、マンションであれば共益費の負担が発生します。

売却・賃貸をする場合の管理

もし売却する場合や賃貸に出す場合には、不動産仲介企業に依頼をしたりする負担が発生します。 対象となる空き家が過疎地域にあるような場合には、地域の自治体が地方創生のための一環として、空き家の売買や賃貸を斡旋していることがあるので、そういったものに登録をします。

空き家を相続する場合の選択肢

知っておきたい相続問題のポイント
  • 空地を相続した場合の選択肢

空き家を相続した後はどのような対応が可能でしょうか。

空き家を相続した場合に採りうる選択肢について確認しましょう。

空き家を相続する場合のその後の選択肢としては次のものが挙げられます。

売却

空き家を売却するのが一つの方法です。
そのまま持っているとどうしても固定資産税や管理の負担がかかります。
売却してしまえば、固定資産税や管理の負担がなく、さらにお金を手に入れることができます。

貸し出す

空き家を貸し出すことは一つの方法です。
借り手がつけば家賃収入を得ることができ、固定資産税や管理費用を回収することができます。

リノベして住む

リノベして住むのも一つの方法です。
空き家が便利なところにあっても、設備が古い・家族構成にあわない間取りになっているといった場合があります。
相続人の中でリノベをして暮らせそうであれば、その相続人がリノベをして住むことも検討すべき選択肢となります。

相続放棄

どうしても所有権を取得したくない場合には相続放棄をすることも一つの方法です。
相続放棄をすれば、最初から相続人ではなかったことになるため、不動産の所有権を取得しません。
ただし、相続放棄をすると最初から相続人ではなかったと扱われるため、不動産だけを相続放棄することはできません。
そのため、他に相続したい財産がある場合には、他の財産も相続できなくなるので注意が必要です。

相続不動産国庫帰属制度がスタート

相続不動産国庫帰属制度が2023年4月27日からスタートしています。
相続不動産国庫帰属制度とは、相続で取得した土地について一定の要件で国が引き取る制度です。
ただし、同制度を利用する場合、土地に建物が建っていないことが要件となりますので、解体するなどして更地にする必要があるので注意しましょう。

空き家を相続するときに決めること

知っておきたい相続問題のポイント
  • すでに発生した相続に空き家がある場合の対処
  • 自分の相続で空き家が発生しそうな場合の事前準備の方法

空き家を相続した人の負担についてはよくわかりました。そのことを踏まえて遺産分割協議ではどのように話し合いをすすめればよいでしょうか。

権利をどうするか、費用はどのように負担するか、利用をどのようにするか、という観点から考えてみましょう。

遺産に空き家がある場合の遺産分割協議のポイントについて検討しましょう。

所有権

まず、所有権者を誰と定めるかです。 上述したとおり、所有権者は管理をしていないと、空き家の管理不足で損害を生じさせたときには賠償をする義務を負います。 また、所有権者は固定資産税の納税義務者となります。 こういった負担をするのが誰になるのかについてきちんと決めた上で、所有権者となる人は相続登記をするようにしましょう。

共有にする場合の固定資産税・管理費用の取り扱い

共有にするような場合には、固定資産税・管理費用を誰がどのように持つかについて確認しましょう。 固定資産税が共有になっているような場合には、共有資産代表者という人に納税通知書などが送られてきます。 誰を代表者にするのかを決めます。 費用負担について、誰がどの程度の負担をするか、どのようにして支払うのかを決めておきましょう。

利用方法

空き家をどのように利用するかについても決定しておきましょう。 空き家を売却する、賃貸する、リノベして貸し出す、そのまま残しておいて年に2回みんなで集まるためにだけ使う、など様々な選択肢が挙げられます。 どのように利用するかを決めておかないと、だれかが自由に使っていて、管理費用を負担している人がまったく利用できないという事も考えられます。 また、貸し出す際には、そこから生まれる賃貸料をどのように分配するかも決めるべきでしょう。

将来の相続に備える場合

以上はすでに相続が発生した場合を想定してお伝えしています。 もし、自分が亡くなった時に空き家をどのようにするか、争いにならないように備えたいというのであれば、次のような対策を考えます。

まず、生前に売却をしてしまって、自分は老人ホームなどの施設や賃貸物件に引っ越しをしてしまうことです。 売却によって現金が残っている場合には、相続でも分けやすいので、相続での争いが発生する可能性を大きく下げることが可能です。

また、リバースモゲージという、自宅を担保にお金を借りて老後資金を捻出する金融商品を利用するのも一つの方法です。 リバースモゲージを利用すると、返済は自分の死後に不動産を売却して行いますので、空き家をどのようにするかという選択肢がなくなります。 もし自宅を残したいというのであれば、管理する人や会社に生前から打診をしておき、自身の死後管理をお願いするように手配しておくと、相続人の負担を減らすことが可能です。

まとめ

このページでは空き家がある場合の相続についてお伝えしてきました。 空き家も確かに資産なのですが、受け継いだところで費用ばかりがかかり、積極的に受け継ぎたい人はなかなかいません。 どのような負担があるか、ということを計算に入れて、遺産分割の話合いをするためのコツを再度確認していただき、うまく交渉できないような場合には、弁護士への相談や、依頼をして他の相続人と話してもらうことで、解決をするのがよいでしょう。

参考記事:
空き家問題とは?原因や放置するデメリット、活用方法を解説|MINPAKU MAG

遺言や相続でお困りの方へ
分からないときこそ専門家へ
相続については、書籍やウェブで調べるだけではご不安な点も多いかと思います。当事務所では、お客様の実際のお悩みに寄り添って解決案をご提案しております。「こんなことを聞いてもいいのかな?」そう思ったときがご相談のタイミングです。
  • 亡くなった親に借金があるかもしれない
  • 親と疎遠のため、財産を相続する気がない
  • 相続税が払えないため家などの不動産を相続したくない
  • 自営業を引き継ぎたいが借金がある
初回相談
無料
法律問題について相談をする
電話での予約相談
(新規受付:7時~22時)
0120-500-700
相続手続お役立ち資料のダウンロード特典付き
(新規受付:24時間対応)
LINEでの相談予約
(新規受付:24時間対応)

この記事の監修者

弁護士 水本 佑冬第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 消費者委員会幹事
一つひとつの案件が、ご依頼者さまにとって重大な問題であることを忘れずに、誠実に職務に取り組みます。

法律問題について相談をする

初回相談無料

電話での予約相談

(新規受付:7時~22時) 0120-500-700

相続手続お役立ち資料のダウンロード特典付き

(新規受付:24時間対応)

LINEでの相談予約

(新規受付:24時間対応)
資料ダウンロード

相談内容

一般社団法人 相続診断協会
資料ダウンロード
相続手続き丸わかり!チャート&解説