
- 不動産には4つの評価の方法がある
- 遺留分侵害額請求をする際にはまず実勢価格で評価をするのが良い
- 遺留分侵害額請求をするにあたって不動産の評価で争いのある場合の対応方法
【Cross Talk 】遺留分侵害額請求をしようと思っているのですが不動産はどうやって計算すればいいですか?
先日父が亡くなり相続が開始した件でご相談です。父は全ての遺産を兄に相続させる旨の遺言書を残していました。私も子どもが高校に上がることもあり物入りなので、遺留分侵害額請求をしようと思っています。遺留分がいくらなのか計算しているのですが、不動産はどのように計算すればいいのでしょうか。
確かに、不動産の評価の方法は複数あって分かりづらいですね。遺留分侵害額請求をするときには実勢価格で計算するのが良いでしょう。
そうなるとだいぶ争いになるかもしれません…対処方法なども教えてもらえますか?
遺留分を侵害された相続人は、侵害者に対して遺留分侵害額請求をできます。その計算にあたって遺産の総額を求める必要があるのですが、不動産がある場合には実勢価格で計算をしましょう。 不動産の評価にはいくつかの種類があり、相続税などでは他の基準を利用することもあって、不動産をいくらで計算するか争いになることもありますので、争いになった場合の対処方法についても確認しておきましょう。
遺留分侵害額請求権を行使する場合の不動産の評価方法

- 不動産の評価方法には固定資産税評価額、路線価、公示価格、実勢価格がある
- 遺留分侵害額請求をする場合は実勢価格で不動産を評価する
遺留分侵害額請求をする場合に不動産をどのように評価すればいいのですか?
不動産の評価方法には固定資産税評価額、路線価、公示価格、実勢価格と言った種類があります。都市部では実勢価格がもっとも高くなることが多いので、遺留分侵害額請求権を行使する場合は実勢価格で不動産を評価するのが一般的です。
固定資産税評価額
固定資産税評価額は、市区町村が土地や建物の所有者に固定資産税を課税するための基礎となる評価額です。
公示価格のおよそ7割とされており、3年ごとに評価替えを行って見直され、市区町村の役所で固定資産税評価額証明書を発行してもらうことで確認できます。
路線価
路線価は、国税庁が相続税や贈与税を算定する基準として公表しているもので、道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価格を1000円単位で表したものです。路線価は公示価格の約8割の水準とされています。
路線価は国税庁のホームページなどで確認することができます。
公示価格
公示価格は、国土交通省が毎年発表する標準的な土地の価格で、不動産鑑定士によって毎年1月1日時点における標準地の1㎡あたりの正常な価格を判定したものです。この判定には、市場の需要や供給および売主や買主の事情といった取引実態は考慮されていません。
公示価格は国土交通省のホームページで確認することができます。
実勢価格
実勢価格はいわゆる「時価」のことで、不動産が実際に売買される場合の取引価格のことです。
時価の算定は容易ではありませんが、不動産業者に近隣の取引事例等を参考にした査定を依頼することで、おおよその目安を知ることができます。
固定資産税評価額、路線価、公示価格、実勢価格のなかで、都市部では通常は実勢価格がもっとも高くなります。
不動産を取得した相手方に対して遺留分侵害額請求権を行使する場合、不動産の評価が高いほど遺留分算定の基礎となる財産の価額が大きくなるため、遺留分侵害額は大きくなります。
そのため、遺留分侵害額請求権を行使する場合は、実勢価格で不動産を評価して遺留分侵害額を算定し、相手方に請求するべきと言えます。
不動産の評価が難しい場合の対処法

- 弁護士に依頼して適正な評価方法を選択してもらう
- 不動産の評価について合意ができない場合は不動産鑑定士に依頼する
自分で不動産の評価をするのが難しいときはどうすればいいですか?
弁護士に依頼をして適正な不動産の評価方法を選択してもらい、その評価額を前提として相手方と交渉してもらうことが考えられます。弁護士に依頼をしても相手方と不動産の評価方法で合意ができない場合は、不動産鑑定士に鑑定してもらうことも考えられます。
弁護士に依頼して適正な評価方法を選択してもらう
不動産の評価方法は複数あり、複雑ですので、遺留分権利者が自身で不動産評価方法を選択することが難しい場合や、当事者間では不動産の評価額について合意ができない場合があります。
そのような場合には、弁護士への依頼が効果的です。
弁護士は専門的な知識に基づいて適切な不動産の評価方法を選択できますし、感情的にならずに法的な問題に絞った交渉ができます。
不動産の評価について合意ができない場合は不動産鑑定士に依頼する
場合によっては、弁護士に依頼をしても相手方と不動産の評価方法について合意ができないこともあるため、不動産鑑定士に依頼するのも選択肢の一つです。
中立の第三者である不動産鑑定士の鑑定の方が、一方当事者の代理人である弁護士の評価よりも相手方の理解が得られやすくなります。
遺留分侵害額請求権を行使する際の方法

- 遺留分侵害額請求は必ず内容証明で行う
- 不動産の評価に争いがあって支払いに応じない場合には早めに調停を提起する
遺留分侵害額請求をした場合で、不動産の評価方法に争いがある場合には、どのような処理が望ましいのでしょうか。
時効があるため早めに内容証明で遺留分侵害額請求を行い、相手方の意見を聞いて、争点を見極めるようにしましょう。
遺留分侵害額請求権を行使したものの不動産の評価方法に争いがある場合には、どのような処理をすべきか確認しておきましょう
遺留分侵害額請求は必ず内容証明郵便で行う
まず、口頭や書面で請求したにもかかわらず、不動産の評価方法について折り合いがつかず、話し合いが進まない場合には、早めに内容証明郵便を送るようにしましょう。
遺留分侵害額請求権に関しては、相続が開始して遺留分の侵害を知った時から1年が経過すると時効で消滅することになっています(民法1048条)。 この1年の間に遺留分侵害額請求をしていたことを証明できないと、後々裁判を起こしても時効の主張をされてしまい、請求が棄却されることになりかねません。
内容証明郵便(配達証明付き)で遺留分侵害額請求をすることによって、遺留分侵害額請求をする旨の書面を時効期間内に送ったことを証明することができます。 口頭や普通の書面で請求をし、不動産の評価で争っているうちに1年が経過した、ということがないように、早めに内容証明を送るようにしましょう。
不動産の評価に争いがあって支払いに応じない場合には早めに調停を提起する
不動産の評価については上記のように4つの基準があります。 その中で比較的目に触れやすいのが、毎年の固定資産税の納税のために役所から送られてくる固定資産税の納付用紙に記載されている固定資産税評価額です。
この固定資産税評価額は実勢価格よりも低い価格で見積もられることが多いため、実勢価格をベースに請求をしても、相手が固定資産税評価額で計算した場合には「不動産の評価額はもっと低いはずである」などと反論されることが想定されます。 しかし、これもまずは、不動産会社に出してもらった実勢価格を相手に示して、固定資産税評価額で計算されるべきではないことを主張しましょう。
もっとも、不動産の評価をどう計算するかで長期間揉め続けるというのは、あまり現実的ではありません。不動産の評価の問題で長期間支払いに応じない状態が続く場合は、現実には不動産の価格をいくらとするのかを争っているというよりは、そもそも遺留分侵害額請求に応じるつもりがないと考えられる場合も少なくありません。というのも、遺留分侵害額請求をされた場合には、遺留分として計算された金額を金銭で支払わなければならず、遺贈の大部分が不動産であるような場合、支払う金銭が不足している可能性も高いからです。
こうなった場合は、早めに弁護士に依頼をしたり、遺留分侵害額請求調停の提起をするなど、法的手段を取ったほうが解決しやすいといえます。
関連記事:遺留分侵害額の請求調停とは?請求調停を行うメリットや手続きの流れ、注意点を解説まとめ
このページでは、遺留分侵害額請求をした場合の、不動産の評価についてお伝えしました。遺留分侵害額請求をするときには、4つある不動産の評価方法のうち、まずは実勢価格を利用するべきなのが通常です。 また、争いがある場合には早めに内容証明を送るようにしましょう。

- 相手が遺産を独占し、自分の遺留分を認めない
- 遺言の内容に納得できない
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