
- 遺産分割協議書は、相続人全員で決めた遺産の分け方を書面にまとめたもの
- 相続人全員の合意が必要であり、1人でも反対すると成立しない
- 遺産分割協議書は手書きでもパソコンでも作成可能
- 相続人同士でもめている場合などは、専門家への相談も検討が必要
【Cross Talk】遺産分割協議書とは?
遺産分割協議書は、どのような場面で必要になるのでしょうか。
遺産分割協議の内容を書面にまとめるために作成します。
遺産分割協議書は、単に話し合いの内容を書面化するだけでなく、不動産の相続登記や預貯金の払い戻し、相続税申告など、さまざまな相続手続きでも利用されます。また、相続人同士の認識違いによるトラブルを防ぐためにも重要な書類です。
この記事では、遺産分割協議書とは何か、必要になるケースや作成の流れ、書き方や注意点、専門家へ依頼する場合の考え方などについて解説します。
遺産分割協議書とは?

- 遺産分割協議書は遺産分割協議の結果を書面にまとめたもの
- 遺産分割協議書は不動産の名義変更や預貯金の引き出しなどに必要
遺産分割協議書とはどのようなものでしょうか。
遺産分割協議の結果を書面にまとめたのが遺産分割協議書です。
どのような場合に遺産分割協議書が必要なのでしょう。
遺産分割協議書は遺産分割協議の結果を書面にまとめたもの
遺産分割協議書とは、遺産分割協議の内容を書面にしたものです。相続が発生すると、不動産や預貯金といった相続財産は相続人全員が共有している状態になります(民法第898条)。そして、これらの財産を最終的に誰が相続するかについては遺産分割協議で話し合い、その内容を遺産分割協議書にまとめます。
遺産分割協議が完了しない限り、相続財産を使ったり変更を加えたりすることはできません。そのため、相続が発生したらまずは遺産分割協議を行い、その内容に従って遺産分割協議書を作成する必要があります。
遺産分割の内容は相続人同士の話し合いによって決める
遺産分割協議に関しては、民法で以下のように定められています。第九百七条 共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
そして、話し合いの結果を遺産分割協議書にまとめることで、誰がどの財産を相続するのかを明確にします。
遺産分割協議書を作成する法的義務はない
遺産分割協議書を作成する法的な義務はないため、作成しなくても法律上は特段問題ありません。ただし、相続した不動産の登記を移転したり、預貯金を引き出したりする際に遺産分割協議書が必要とされるため、実務においては遺産分割協議書の必要性は高いといえます。例えば、不動産を相続したら法務局で相続登記の手続きが必要です。2024年4月1日からは相続登記が義務化されており、不動産を相続したことを知った日から原則3年以内に登記を行わなければなりません。
また、預貯金の取り扱いは金融機関によって異なりますが、預金を払い戻したり解約したりするためには遺産分割協議書の提出を求められます。
公正証書として作成すれば信頼性の高い遺産分割協議書ができる
遺産分割協議書は、公正証書として作成することも可能です。公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公的な文書のことであり、公証人が内容を確認しながら作成するため証拠としての信頼性が高いという特徴があります。遺産分割協議書を公正証書として作成しておくことで、一定の場合には裁判を経ることなく強制執行できる場合もあります。
遺産分割後のトラブルが予想される場合や相続人同士の関係性に不安がある場合、遺産分割協議書を公正証書として作成することも検討が必要です。
遺産分割協議書が必要なケース・不要なケース

- 相続手続きやトラブル防止の観点で遺産分割協議書を作成したほうがよい場合がある
- 遺産分割の内容が単純な場合などは、例外的に遺産分割協議書なしでよい場合もある
遺産分割協議書は必ず作成しなければならないでしょうか。
法律上の義務はありませんが、作成した方がよい場合もあります。
【必要なケース】遺言書がなく相続人が複数いる
遺言書があれば、原則としてその内容に従って遺産を分けることになります。一方、遺言書がないと誰がどの財産を相続するのかを相続人同士で話し合わなければならず、相続人同士で意見が対立することもあります。そのため、遺言書が残されておらず、遺産分割協議で遺産の分け方を決めた場合には、あとからトラブルになることを防ぐために遺産分割協議書が役立ちます。特に、相続人の数が多いほどあとからもめるリスクも高いので、遺産分割協議書の必要性は高くなります。
【必要なケース】相続登記・相続税申告等の手続きが必要
遺産分割協議書は、相続登記や相続税申告などの手続きで必要になることがあります。相続登記は法務局で行う不動産の名義変更手続きであり、相続財産の中に不動産がある場合には相続登記の手続きが必要です。
また、遺産の額が一定額を超える場合には相続税の申告が必要ですが、相続税の申告手続きにも遺産分割協議書が求められます。
【必要なケース】相続人同士のトラブルを防ぎたい
遺産分割協議書は、相続人同士のトラブルを防ぐためにも有効です。遺産分割協議の結果を書面に残していないと、あとから言った・言わないの争いになることがあります。例えば、「預貯金の分け方について認識が違っていた」「不動産を取得する代わりに金銭を支払う約束だった」といった主張が、あとから出ることがあります。
遺産分割協議書には相続人全員が署名押印を行うため、協議書に書かれた内容についてはあとから蒸し返されることがなく、トラブルのリスクを抑える効果があります。
【不要なケース】相続人が1人しかいない
遺産分割協議書は、相続人同士で遺産の分け方を話し合った内容を書面にまとめるものです。そのため、そもそも相続人が1人しかいない場合には遺産分割協議が行われないため、遺産分割協議書も作成する必要がありません。【不要なケース】遺産が現金・預金しかない
遺産が現金や預貯金のみであり、相続人同士で遺産の分け方について争いがない場合には、遺産分割協議書を作成する必要性は高くありません。預貯金の名義変更には基本的に遺産分割協議書の提出が必要ですが、金融機関によっては所定の払戻請求書や相続届などを利用でき、協議書なしで手続きを進められる場合があります。
もっとも、必要書類や手続きの流れは金融機関ごとに異なるため、事前に金融機関へ確認しておくとよいでしょう。
【不要なケース】遺言書の内容通りに遺産分割する
有効な遺言書があり、その内容どおりに遺産を分ける場合には、遺産分割協議書がなくても問題ありません。遺言書には、誰がどの財産を取得するのかを指定する効力があります。そのため、遺言書があれば相続人同士で改めて遺産の分け方を話し合う必要がなく、遺言書に従って相続手続きを進めることができます。
なお、遺言書にはいくつか種類があり、代表的なのが自筆証書遺言と公正証書遺言です。自筆証書遺言は自分で作成できる反面、記載内容や方式に不備があると無効になるリスクがありますが、公正証書遺言は公証人が関与して作成するため、方式不備によって無効になるリスクが低い点が特徴です。
【不要なケース】法定相続分の割合で遺産分割する
法定相続分とは、民法で定められている相続割合のことです。例えば、配偶者と子ども2人が相続人になる場合には配偶者が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1ずつ相続することになります。法定相続分どおりに相続する場合には、相続人同士で新たに遺産の分け方を決める必要がないため、遺産分割協議書を作成せずに相続手続きを進めることも可能です。
遺産分割協議書ができるまでの流れ

- 協議の前に相続人調査と財産調査を行い、それぞれ確定させる
- 遺産分割協議を行い、その内容を書面にまとめる
遺産分割協議書はどのように作成するのでしょうか。
相続人と相続財産を確定させてから協議を行い、その内容を書面にまとめます。
STEP1:遺言書の有無を確認する
まずは遺言書が残されていないかを確認します。有効な遺言書があれば、原則としてその内容に従って相続手続きを進めることになるため、遺言書の有無は遺産分割協議の内容に大きく関わります。遺言書がない場合や遺言書に記載されていない財産がある場合、遺産分割協議で遺産の分け方を話し合う必要があります。
STEP2:法定相続人を調査し確定する
遺言書の有無を確認したあとは相続人調査を行い、誰が法定相続人になるのかを確定させます。遺産分割協議は相続人全員で行わなければならず、一部の相続人を除いて協議を進めてしまうと協議自体が無効になる可能性があります。そのため、遺産分割協議を始める前に、必ず相続人調査を行っておく必要があります。
相続人調査を行う際は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などを取得し、家族関係を確認する方法で行います。
STEP3:相続財産を調査し確定する
法定相続人が確定したら、遺産の内容を明らかにするために財産調査を行います。相続財産には不動産や預貯金だけでなく、有価証券、自動車、保険金なども含まれます。また、借金や未払い金などのマイナスの財産についても確認が必要です。
通帳や固定資産税の納税通知書、証券会社からの郵便物などを確認し、相続財産を正確に調査・確定しなければなりません。
STEP4:遺産分割協議を行う
法定相続人と相続財産が確定したら、遺産分割協議を行います。遺産分割協議は相続人全員の合意が必要なので、1人でも反対している相続人がいると協議が成立しません。そのため、遺産分割協議では相続人全員で合意形成が図れるよう、よく話し合うことが重要です。
なお、相続人同士で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停や審判を通じて解決を目指す場合もあります。
STEP5:遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議で相続人全員の合意がとれたら、その内容を遺産分割協議書にまとめます。遺産分割協議書には相続人全員が署名押印を行います。そうすることで、合意内容に関してあとから蒸し返されることを防げます。
作成した遺産分割協議書は、相続登記や預貯金の解約、相続税申告などの手続きでも利用することになるため、協議がまとまったらできるだけ早めに作成しておくとよいでしょう。
【ひな形・文例付き】遺産分割協議書の書き方

- 相続財産の内容によって遺産分割協議書の書き方が異なる
- 相続財産の内容や相続させる相手が明確にわかる内容にすることが重要
遺産分割協議書に書き方の決まりはあるのでしょうか。
相続財産の内容や相続させる相手が明確にわかる記載をすることが重要です。
一般的な遺産分割協議書の文例
一般的な遺産分割協議書の文例は、以下の通りです。被相続人 鈴木一郎(令和2年1月1日 死亡)
最後の住所 東京都港区1-2-3
最後の本籍 東京都港区1-2-3
上記被相続人の相続財産について、相続人 鈴木花子、鈴木一男 の2名は次のとおり分割する(ことに合意した)。
1. 相続人 鈴木一男は、次の不動産を取得する。
土地 所在 東京都港区1丁目
地番 2番3号
地目 宅地
地積 150.00㎡
建物
所在 東京都港区1丁目
家屋番号 2番3号
構造 木造平屋建て
床面積 60㎡
2. 相続人 鈴木花子は下記財産を取得する。
港区銀行 港支店の被相続人名義の預金
普通預金 口座番号 1234567 のすべて
(後日判明した財産)
3. 本協議に記載なき相続財産は相続人全員によって、その財産について再度協議を行うこととする。
上記の協議の成立を証するため、署名押印したこの協議書を2通作成し、各自1通保有する。
令和2年2月1日
住所 東京都港区1-2-3
相続人 鈴木花子 印
住所 東京都港区1-2-3
相続人 鈴木一男 印
続いて遺産分割の内容について記載し、最後に相続人の署名・押印を記載すれば作成完了です。
以上が一般的な遺産分割を行う場合の文例ですが、遺産分割の内容によっては上記とは異なる書き方をすることもあります。以下では、遺産分割の内容に応じた協議書の書き方について、いくつかのパターンを紹介します。
代償分割の場合の文例
代償分割とは、特定の相続人が不動産などの遺産を取得する代わりに、他の相続人へ金銭を支払う遺産分割方法です。例えば、長男が不動産を取得することになった場合に次男へ金銭を支払い、バランスをとることがありますが、これが代償分割です。
代償分割を行う場合には、遺産分割協議書に代償金の支払内容について記載します。
換価分割の場合の文例
換価分割とは、相続財産を売却して現金化したうえで、その売却代金を相続人同士で分けるという遺産分割方法です。換価分割を行う場合、どの財産を売却するのか、売却代金をどのように分けるのかについて遺産分割協議書へ明記する必要があります。具体的な文例は、以下の通りです。
財産別の記載例(不動産)
不動産を遺産分割協議書へ記載する場合には、どの不動産を誰が取得するのかを特定できるよう登記事項証明書の内容を正確に記載することが重要です。土地であれば所在地や地番、地目、地積などを記載し、建物であれば家屋番号や種類、床面積などを記載します。
土地
所在 東京都中央区◯丁目
地番 ◯番◯
地目 宅地
地積 ◯◯.◯◯平方メートル
建物
所在 東京都中央区◯丁目◯番地◯
家屋番号 ◯番◯
種類 居宅
構造 木造瓦葺二階建
床面積 1階 ◯◯.◯◯平方メートル
2階 ◯◯.◯◯平方メートル
財産別の記載例(預貯金・有価証券)
預貯金や有価証券は、金融機関名や支店名、口座番号などを記載し、対象となる財産を特定できるようにします。同じ金融機関に複数の口座がある場合には口座番号まで正確に記載し、有価証券は証券会社名や銘柄などを記載します。
◯◯銀行◯◯支店
普通預金
口座番号 ◯◯◯◯◯◯◯
・相続人 鈴木花子 は、次の有価証券を取得する。
◯◯証券株式会社
口座番号 ◯◯◯◯◯◯◯
◯◯株式会社 普通株式 ◯◯株
財産別の記載例(自動車・配偶者居住権)
自動車を記載する場合には登録番号や車台番号などを記載し、対象となる車両を特定できるようにします。配偶者居住権を設定する場合、どの建物について、誰に相続させるのかを明確に記載する必要があります。
登録番号 品川◯◯◯ あ ◯◯◯◯
車台番号 ◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
・相続人 鈴木花子 は、次の建物について配偶者居住権を取得する。
所在 東京都中央区◯丁目◯番地◯
家屋番号 ◯番◯
種類 居宅
構造 木造瓦葺二階建
床面積 1階 ◯◯.◯◯平方メートル
2階 ◯◯.◯◯平方メートル
遺産分割協議書作成時の注意点

- 新たな遺産が出てきた場合の対処法などを記載しておく
- 実印や契印、割印によって偽造や変造を防止できる
遺産分割協議書を作成する上での注意点はありますか。
ここまでに説明したことも含め、協議書を作成するうえでの注意点をまとめましょう。
どの相続人が何の遺産を相続するかを明らかにする
遺産分割協議書は、誰がどの財産を相続するのかを明確にするための書類なので、相続人や相続財産を正確に特定できるよう記載することが重要です。先ほど紹介した文例からもわかる通り、不動産であれば所在地や地番、預貯金であれば金融機関名や口座番号などを記載し、どの財産を対象にしているのかを明確にしましょう。
また、相続人についても、「長男」「長女」などとだけ記載するのではなく、氏名などを正確に記載する必要があります。相続人全員の氏名・住所・生年月日・続柄などを記載しておけば、誰が相続するのかについてあとから意見が分かれることもありません。
新たな遺産が出てきた場合についてのルールを定める
遺産分割協議が成立したあとで、新たな相続財産が見つかることもあります。このような場合に備え、あらかじめ遺産分割協議書にルールを定めておくことで、のちのトラブルを防ぐことができます。具体的には、以下のような内容を遺産分割協議書へ記載しておく方法があります。
- 新たに見つかった財産は特定の相続人に相続させる
- 新たに見つかった財産について改めて遺産分割協議を行う
- 新たに見つかった財産が高額なら、遺産分割協議自体をやり直す
相続人の数だけ遺産分割協議書を用意する
遺産分割協議書は、不動産の相続登記や預貯金の解約、相続税申告など、さまざまな相続手続きで利用することになります。そのため、相続人全員がそれぞれ1通ずつ保有できるよう人数分作成しておきます。作成方法としては、同じ内容の遺産分割協議書を人数分印刷し、それぞれに相続人全員が署名押印を行うのが一般的です。
なお、相続関係の手続きで原本の提出を求められる場合もあるため、必要に応じてコピーを取っておくと安心です。
日付を明確に記載する
遺産分割協議がいつ成立したのかは、相続財産の権利関係に影響を与える場合があります。例えば、不動産の共有持分を売却したケースでは、その売却が遺産分割協議の前だったのか後だったのかにより、誰がいくらの売却代金を取得するのかが変わります。また、相続登記や相続税の手続きなどにおいても、いつ遺産分割協議が成立したのかを確認されることがあります。
そのため、遺産分割協議書には、「令和◯年◯月◯日」など、協議が成立した日付を明確に記載しておきましょう。
パソコンで作成すると修正・加筆がしやすい
遺産分割協議書には、自筆で作成しなければならないという決まりはありません。そのため、手書きでもパソコンでも作成することが可能です。ただし、実際には共同相続人の人数分作成する手間や修正・加筆のしやすさを考慮し、パソコンで作成されることが多いでしょう。
なお、自筆証書遺言については財産目録を除いて自筆で作成することが民法に定められており、パソコンで作成することはできません。遺産分割協議書と混同しないよう注意しましょう。
印鑑には実印を利用する
遺産分割協議書には、実印を利用することが一般的です。実印とは、市区町村へ印鑑登録をしている印鑑のことであり、本人が押印したものであることを証明するために利用されます。認印は簡単に入手できるため偽造の疑いがあり、証明力が弱いという問題があります。そのため、認印で遺産分割協議書を作成してしまうと、あとから偽造やなりすましなどを疑われるリスクがあるので、遺産分割協議書の押印には実印を用いることが推奨されます。
契印・割印をする
契印や割印は、遺産分割協議書の偽造や変造を防ぐために行われる押印方法です。契印とは、遺産分割協議書が複数ページになる場合に、ページとページにまたがる形で押印することです。契印をすることで、あとからページの差し替えや抜き取りを防ぐことができます。
割印とは、複数作成した遺産分割協議書にまたがって押印することです。割印をすることで、それぞれの遺産分割協議書が同じ内容で作成されたものであることを証明できます。
相続人全員がそれぞれ1通ずつ保有する
遺産分割協議書は、相続人全員がそれぞれ1通ずつ保有しておくことが一般的です。これは、不動産の相続登記や預貯金の解解約、相続税申告など、さまざまな相続手続きで利用するためです。また、相続人それぞれが遺産分割協議書を保管しておくことで、各自がどのような内容で合意したのかをあとから確認できます。
通常は相続人の人数分だけ同じ内容の遺産分割協議書を作成し、それぞれに相続人全員が署名押印を行ったうえで各相続人が1通ずつ保有します。
あとから財産が出てきた場合にどうするかを明記しておく
遺産分割協議が終わった後に、新たな相続財産が見つかることがあります。例えば、使っていなかった預貯金口座や株式、被相続人名義の不動産などが発見されるようなケースです。このような場合、遺産分割協議書に「あとから見つかった財産をどのように扱うのか」を記載していないと、再び相続人同士で話し合いが必要になることがあります。
そのため、遺産分割協議書には、あとから財産が見つかった場合の取り扱いについても記載しておくと安心です。
特殊な相続人がいる場合の対応

- 未成年者は法定代理人や特別代理人が本人に代わって遺産分割協議に参加する
- 認知症で判断能力が低下している人には成年後見人の選任が必要
相続人に未成年者がいる場合などは、遺産分割協議書に影響があるのでしょうか。
はい。未成年者や認知症の方などがいる場合、遺産分割協議において注意が必要です。
どのような点に気を付ければよいか、詳しく教えてください。
相続人に未成年者がいる場合
未成年者の相続人にも相続権はありますが、未成年者は単独で法律行為を行うことができません。そのため、未成年者が遺産分割協議を行う場合には、原則として法定代理人が必要になります(民法5条)。ただし、未成年の子と法定代理人の利益が相反する場合などは、家庭裁判所で特別代理人を選任しなければなりません。特別代理人は、未成年者に代わって遺産分割協議などを行うために、家庭裁判所によって選任される代理人のことです。
特別代理人を選任することで、未成年者に不利益な内容で遺産分割協議が進められることを防ぎ、適法に相続手続きを進めることができます。
相続人に胎児がいる場合
民法では、「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」と規定されています(民法886条1項)。遺産分割協議は、胎児が出生するのを待ってから行うのが一般的です。もし出生前に遺産分割協議を進めてしまうと、その後の事情によって相続人の範囲が変わり、遺産分割協議をやり直さなければならなくなる可能性があるためです。
胎児が出生したあとに相続人になる場合には、未成年者の相続と同様に親権者との利益相反が問題になります。この場合は未成年者の相続と同じように、家庭裁判所で特別代理人を選任したうえで遺産分割協議を進めることになります。
相続人に認知症の人がいる場合
相続人の中に認知症の人がいる場合には、成年後見制度を利用する場合があります。成年後見制度とは、判断能力が十分でない人に対し、成年後見人が財産管理や法律行為を支援する制度です。遺産分割協議は法律行為にあたるため、認知症によって内容を理解して判断することが難しい場合には、成年後見人が本人に代わって遺産分割協議へ参加することになります。
もっとも、認知症であっても遺産分割協議の内容を理解し、自分で判断できる状態であれば、必ずしも成年後見人を選任する必要はありません。
相続人に行方不明者がいる場合
遺産分割協議は相続人全員で行わなければならないため、行方不明者がいる場合はまず戸籍や住民票などを確認し、連絡を取る必要があります。もっとも、中には長年誰とも連絡が取れておらず、所在がわからない相続人がいることもあります。このような場合、家庭裁判所で不在者財産管理人を選任するという方法があります。不在者財産管理人とは、行方不明者に代わって財産管理や遺産分割協議などを行う人のことです。
また、長期間にわたって生死不明の状態が続いている場合には、家庭裁判所に失踪宣告の申立てを行うことも可能です。失踪宣告が認められると法律上は死亡したものとして扱われるため、その人がいなくても遺産分割協議を進めることができます。
遺産分割協議書の提出先

- 遺産に預貯金や有価証券などがあれば金融機関で提出を求められる
- 行政関係の手続きでは役所への提出が必要
遺産分割協議書はどこに提出するのでしょうか。
状況に応じて金融機関や役所など、いくつかの提出先があります。
銀行:預貯金の払い戻し
相続が発生した場合、まずは銀行へ口座名義人が亡くなったことを連絡する必要があります。銀行が口座名義人の死亡を把握すると原則として口座は凍結され、相続手続きが完了するまで自由に預貯金を引き出すことはできません。そして、預貯金を引き出すには銀行への申請が必要ですが、誰がその預貯金を相続するのかを銀行側が確認するために、遺産分割協議書の提出を求められることがあります。
ただし、遺言書の有無などによって必要書類は異なるので、実際に手続きを進める際は事前に銀行へ確認し、手順に従って手続きを進めましょう。
証券会社:有価証券の名義変更
遺産の中に株式などの有価証券がある場合、証券会社での手続きが必要であり、その際に証券会社から遺産分割協議書の提出を求められることがあります。銀行の場合と同じように、有効な遺言書がある場合には遺言書の提出が求められることもあり、必要書類や手続きの流れは証券会社ごとに異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
法務局:不動産の相続登記
不動産を相続した場合には法務局で相続登記の手続きを行い、名義を相続人へ変更する必要があります。そして、遺産分割協議によって不動産の相続人を決めたら、法務局へ遺産分割協議書を提出します。一方、法定相続分どおりに遺産を分ける場合や遺言に従って相続する場合などは、遺産分割協議書が不要になることもあります。相続登記で遺産分割協議書が必要になるかどうかは相続の内容によって変わるので、事前に法務局に問い合わせて確認しておくと安心できるでしょう。
運輸支局:自動車の名義変更
自動車を相続した場合には、運輸支局で名義変更の手続きを行います。遺産分割協議によって自動車の相続人を決めた場合、遺産分割協議書を提出します。ただし、自動車の査定額が100万円以下である場合には、遺産分割協議成立申立書を利用できるケースもあります。この場合、通常の遺産分割協議書より簡易的な形で手続きを進められます。
そのほかにも、自動車の名義変更では車検証や印鑑証明書、車庫証明書などの書類が必要です。
税務署:相続税の申告
相続税の申告を行う際も、誰がどの財産を相続するのかを確認するために、税務署へ遺産分割協議書を提出することがあります。ただし、相続税には期限があり、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告と納税を行わなければなりません。そのため、相続人同士の話し合いがまとまらず、申告期限までに遺産分割協議が終わらない場合には、いったん仮の申告として「未分割申告」を行うことがあります。
自分で作成するか専門家に依頼するか

- 自分で作成することもできるが、複雑な手続きが絡むときは専門家への依頼がおすすめ
- 相続の状況に応じて依頼する専門家を選ぶことが重要
遺産分割協議書は自分で作成することもできるのでしょうか。
はい。ただし専門家に依頼した方がよい場合もあるので、状況に応じて判断しましょう。
自分で作成するメリット・デメリット
専門家へ依頼するには費用がかかるので、自分で遺産分割協議書を作成することで、費用を抑えられるというメリットがあります。そのため、相続人同士で話し合いがまとまっており、相続財産もシンプルな場合には、自分たちで作成してもよいでしょう。ただし、遺産分割協議書には不動産や預貯金などの財産を正確に記載しなければなりません。また、相続人同士で意見が対立している場合や相続財産が多い場合などには、協議そのものがまとまらずトラブルになることもあります。
そのため、相続人同士でもめていないか、不動産や相続税申告が関係するかといった点を踏まえ、自分で作成するかどうかを検討するのがおすすめです。
もめているときは弁護士に依頼
遺産分割においては、誰がどの財産を相続するのかをめぐって相続人同士でもめることもよくあります。特に、相続人の数が多い場合や、不動産・自社株など分けにくい財産がある場合には、意見が対立しやすくなります。このような場合は弁護士へ依頼し、間に入ってもらいながら遺産分割協議を進めることも検討しましょう。弁護士なら遺産分割協議の代理人として交渉を行うだけでなく、話し合いがまとまらなかった場合の遺産分割調停や審判などにも対応できます。
不動産がある場合は司法書士に依頼
遺産の中に不動産がある場合には、司法書士への依頼を検討するとよいでしょう。司法書士は登記手続きの専門家であり、相続登記に対応しています。相続登記では、不動産の表示内容や相続関係を正確に確認しながら書類を作成する必要があるため、慣れていないと難しく感じることもあります。司法書士へ依頼し、登記手続きをまとめて対応してもらえば、確実に相続登記の手続きを進められます。
不動産がない場合は行政書士に依頼
相続財産に不動産がなく、遺産分割協議書の作成など書類作成をメインで任せたいときには、行政書士へ依頼する方法もあります。行政書士は、遺産分割協議書などの書類作成を代行する専門家です。相続財産が預貯金や有価証券のみである場合や、遺産分割協議書の作成を中心に依頼したい場合には、行政書士への依頼を検討するとよいでしょう。
相続税の申告義務がある場合は税理士に依頼
相続税の申告が必要な場合は、税理士への依頼を検討するとよいでしょう。相続税の申告には、相続財産の評価や相続税の計算など専門的な処理が求められるので、税理士へ依頼するメリットは大きいといえます。また、配偶者控除や小規模宅地等の特例など相続税を減額する制度もあるので、税理士に依頼すればこれらの制度をうまく活用することもできます。
なお、相続税には基礎控除があり、遺産の総額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えない場合には相続税の申告は不要です。
専門家に依頼する場合の費用相場
遺産分割協議書の作成や相続手続きを専門家へ依頼する場合、一般的な相場としては以下のような金額になることが多いでしょう。- 弁護士:数十万円〜(遺産額や争いの有無によって変動)
- 税理士:10万円〜数十万円程度
- 司法書士:数万円〜20万円程度
- 行政書士:数万円〜10万円程度
よくある質問・まとめ

- 遺産分割協議書の作成に期限はない
- 作成後のやり直しは原則できないが、例外的に無効となる場合もある
遺産分割協議書に期限はあるのでしょうか。
法律上の期限はありませんが、あまり長引かせると実務面で不都合もあります。
Q1.遺産分割協議書はいつまでに作成すべき?
遺産分割協議書の作成について、法律上の期限はありません。もっとも、遺産分割協議を長期間放置すると話し合いが進まず、相続人が亡くなることで相続関係が複雑になるリスクも生じます。また、相続税の申告には10か月以内という期限もあるので、相続が発生した後はできるだけ早めに遺産分割協議を進め、遺産分割協議書を作成することが重要です。
Q2.相続人の1人が押印を拒否したら?
遺産分割協議は相続人全員が合意しなければ成立しません。そのため、相続人の1人でも遺産分割協議書への署名押印を拒否している場合には、改めて相続人同士で話し合いを行ったり、弁護士へ依頼して交渉を進めたりすることになります。もし話し合いで解決できない場合には、遺産分割調停や審判も検討が必要でしょう。審判になった場合には、相続人全員の合意がなくても最終的に裁判所の判断で遺産分割が決まります。
Q3.作成後にやり直しはできる?
遺産分割協議は相続人全員の合意によって成立するものであり、一度成立した遺産分割協議をやり直すことは原則としてできません。ただし、相続人全員が改めて合意している場合には遺産分割協議のやり直しが可能です。また、詐欺や脅迫があった場合や重大な勘違いがあった場合などには、例外的に遺産分割協議が無効になる場合もあります。
Q4.遺産分割協議書に名前がなければ相続放棄になる?
遺産分割協議書に名前が記載されていないからといって、相続放棄をしたことにはなりません。相続放棄をするためには、家庭裁判所へ相続放棄の申述を行う必要があります。遺産分割協議書に一部の相続人の名前がない場合、相続人全員の氏名を記載したうえで改めて押印する必要があります。
まとめ
遺産分割協議書は、相続人全員で決めた遺産の分け方を記載する重要な書類です。不動産の相続登記や預貯金の解約、相続税申告などで必要になることも多く、あとから「言った・言わない」のトラブルを防ぐ役割もあります。
もっとも、相続人同士で意見が対立している場合や、不動産・相続税が関係する場合には、手続きや話し合いが複雑になることも少なくありません。そのような場合には、早い段階で弁護士などの専門家へ相談することで相続手続きをスムーズに進めやすくなります。
遺産分割協議書の作成や相続手続きで不安がある場合には、まずは一度専門家へ相談してみるとよいでしょう。

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