はじめに
- 親族を後見人にしても大丈夫か?
- 成年後見制度でどんなトラブルがあるの?
本記事では、成年後見制度をめぐる代表的なトラブルの事例を紹介しつつ、任意後見契約や家族信託といった回避策についてもわかりやすく解説します。
成年後見制度におけるトラブル
成年後見制度におけるトラブルには、いくつかパターンがあります。
成年被後見人の遺産を管理する立場である成年後見人に、遺産の着服されてしまうケースがあります。
成年後見制度においてはどのようなトラブルがあるのか、実例に基づいて紹介します。
成年後見人が金銭を着服したケース
成年後見制度において、もっとも多いトラブルは成年後見人が遺産を着服するケースです。
1年に1回、その管理の内容を裁判所に報告する義務があるものの、綿密に計画して遺産を着服するケースがまれにあります。
着服したケース1
2020年3月31日、那覇市で成年後見人を務めていた40代の市職員が、3人で合計398万円を着服していたため、懲戒免職されたことが発表されました。
着服したケース2
2021年1月21日、大分県行政書士会所属の行政書士が、90歳代の女性の預貯金約4,800万円を着服し、大分地裁で懲役3年6カ月の判決が言い渡されました。
着服したケース3
2021年3月28日、成年後見人をしていた元弁護士が、2,300万円を横領していたとして、懲役2年8カ月の判決が言い渡されています。
成年後見人が仕事をしないケース
成年後見人は、定期的に家庭裁判所に業務報告をしなければなりません。
そのため、なかには在任中に職務を投げ出してしまう方もいます。
本人が介護付有料老人ホームに入所している場合、身元引受人に入居料が支払われていないと連絡が入ってトラブルが発覚する事例があります。
夫の年金を妻が使えないケース
夫婦のうち妻が専業主婦だった場合、夫の年金で夫婦の生活費としているケースは少なくありません。
このときに夫が認知症になってしまったため、成年後見を利用し妻以外が成年後見人に選ばれたとしましょう。
成年後見人が選ばれると、夫の財産を管理する権限は成年後見人にわたります。
その結果、夫の年金から生計を立ててきた妻は、夫の年金を使えなくなってしまい、生活に困ってしまうケースがあります。
成年後見でトラブルが発生しないためには
成年後見制度を利用してトラブルを発生させないためには、どのような方法があるか、制度の内容とトラブルが発生した場合の対処法を知っておきましょう。
任意後見契約を結び、信頼できる人に後見人になってもらう
被相続人が、自分の判断能力が無くなってしまったときに備えておこうと考えている場合は、任意後見契約の利用を検討するとよいでしょう。
任意後見は判断能力があるうちに、後見人となる人と任意後見契約を結んでおき、いざ判断能力が無くなったときに、その方に後見人に就任してもらうものです。
成年後見のもうひとつの制度である法定後見は、本人の判断能力が無くなってしまったあとに利用されるものなので、後見人を選ぶのは裁判所となります。
本人と面識がない人や金銭管理ができない人が成年後見人に就任してしまった場合に、トラブルになってしまうことがあります。
そのような事態を避けるためにも、自身が信頼できる人に後見人になってもらったほうがよいでしょう。
また、夫の年金を妻が使えないトラブルは、任意後見契約のなかで、夫の年金から妻の生活費を出すことを明記しておくことで避けられる可能性があります。
成年後見人が仕事をしない場合には解任を要求する
成年後見人が成年被後見人の資産を着服した場合や、仕事を放棄している場合など、成年後見人としてふさわしくない場合には、親族などであれば、成年後見人を解任することができます。
第八百四十六条 後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で、これを解任することができる。
引用元:民法 | e-Gov 法令検索
成年後見人がふさわしくない場合には、成年後見人の解任を家庭裁判所に請求しましょう。
家族信託を利用して家族が生活に困らないようにする
最後に後見制度を利用することで、夫の年金や預金から妻の生活費が出せなくなるおそれがある場合の対策をよく検討しましょう。
遺言書は、夫の死後に効力を生じるものです。
遺言書で妻の財産を遺しても、生前の妻の生活は守ることができません。
このような場合には夫の資産から妻の生活費を捻出する内容の家族信託契約を結んでおくとよいでしょう。
さいごに|成年後見制度でのトラブルは弁護士へ相談
成年後見制度を利用する際にどのようなトラブルが発生するかは、成年被後見人の資産や、誰を成年後見人にするかなどによっても異なります。
成年後見で発生するトラブルについて悩んでいるのであれば、弁護士へ相談することをおすすめします。


- 判断力があるうちに後見人を選んでおきたい
- 物忘れが増えてきて、諸々の手続きに不安がある
- 認知症になってしまった後の財産管理に不安がある
- 病気などにより契約などを一人で決めることが不安である
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この記事の監修者

- 東京弁護士会 / 一般社団法人日本マンション学会 会員
- 一見複雑にみえる法律問題も、紐解いて1つずつ解決しているうちに道が開けてくることはよくあります。焦らず、急がず、でも着実に歩んでいきましょう。喜んですぐそばでお手伝いさせていただきます。
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