目次

はじめに

「遺言書があれば相続トラブルは防げる」と思っていませんか?
実は、遺言書があるにもかかわらず、相続人同士の争いが起きてしまうケースは少なくありません。
例えば、「内容が不公平」「形式に不備がある」「誰かに書かされたのでは?」といった疑念から、相続人同士が対立してしまうこともあるのです。
本記事では、遺言書を巡って実際に起こりやすいトラブルの具体例と、その対処法や予防策についてわかりやすく解説します。
相続の混乱を避けるためにも、遺言書の正しい理解と準備が大切です。

遺言に関するトラブルの代表例

遺言書を巡るトラブルには、どのようなものがあるのでしょうか。
具体的な例をいくつか紹介します。

自筆証書遺言の要件を満たしていなかった

遺言書のトラブルとして多いのが、自筆証書遺言をしていた場合に、遺言書の内容に不備がある例です。
自筆証書遺言は、専門家に依頼したり、公証人を介したりせずに作成できるため、気軽に作成できます。
しかし、遺言書には厳格なルールがあり、民法所定のルールに従っていない自筆証書遺言は無効になります。
例えば、

  • 遺言書作成の日付の記載がない・曖昧である
  • 遺産の目録以外の部分についてもパソコンで作成をしてしまった
  • 氏名の記載がない、本人と特定が難しい雅号を使った

このような場合には、遺言書は無効になるのですが、遺言書自体は存在するので、遺言書のとおりに遺産分割をするか・しないかといった点で相続人の対立を引き起こす可能性があります。
また、記載が判例などに照らして有効と判断できるものであっても、その遺言書の有効・無効を争ったことが原因で相続人に感情の行き違いが発生してしまい、トラブルに発展するようなこともあります。

なお、自筆証書遺言については「そんなに難しくない?自筆証書遺言の書き方(メリット・デメリット)」 でも詳しく解説しているので、合わせて参考にしてください。

認知症の症状がある・非常に高齢なのに遺言書があった

遺言書が有効な形式で作成されていたとしても、作成した本人が認知症であったり、非常に高齢で、遺言書を作成する判断能力がなかったりする場合、「誰かに書かされたのでは」という疑念から、トラブルに発展する可能性があります。
遺言書を作成するには、遺言書を作成することによってどのような結論になるのかを認識する能力である「遺言能力」が必要です。
遺言能力の有無は、長谷川式認知スケール等の点数である程度判断できます。
遺言能力がなければ、形式的には有効な遺言書があっても遺言書は無効になるのですが、相続当事者で争いになることは避けられません。

遺留分を侵害する遺言がされていた

遺言書は、形式に沿っていれば内容は自由に作成することができます。
そのため、「全財産を長男が相続する」や「遺産は全て愛人に遺贈する」といった極端な内容の遺言も有効です。
しかし、相続においては最低限の相続分を主張できる遺留分が規定されており、これを侵害された場合は遺留分侵害額請求をすることができます。
つまり、遺留分を侵害する内容の遺言書があると、遺留分を侵害された相続人とそれ以外の相続人でトラブルになる可能性があるのです。
なお、遺留分については、 「遺留分とは?相続分との違いは?遺留分は親や孫にも認められる?」 でも詳しく解説しているので、参考にしてください。

遺言書を発見してもらえなかった

遺言書を巡ったトラブルとして、せっかく作った遺言書を相続人に見つけてもらえず、破棄されてしまう場合もあります。
このような場合には、せっかく遺言書を作成したにもかかわらず、その効力が発生しないまま相続がされることになってしまいます。

遺言書が見つかり自分に都合の悪いものだったので破棄した

遺言書が生前や死後に見つかった場合でも、見つけた人にとって不利な内容が記載されているような場合には、その人が破棄してしまうことがあります。
このような場合には、誰にも見つけてもらえなかった場合と同様に、通常の相続が行われることになってしまいます。

遺言の内容が曖昧で解釈の余地がある

遺言書の内容が曖昧で解釈の余地があるような場合、解釈の違いによってトラブルとなることがあります。
例えば「遺産はAに任かせる」という遺言書があった場合、遺産をAに相続させる趣旨なのか、遺産分割の方法をAに任かせるのか判断ができません。
結果として、相続人の間でトラブルとなる可能性があるでしょう。

遺産分割をしたあとに遺言書を発見した

遺産分割をしたあとに遺言書が発見された場合、遺産分割の方法についてトラブルになる可能性があります。
遺言書が作成されていた場合、通常は遺言書の内容を優先するのですが、遺言書を発見できなかった場合には通常どおり遺産分割をします。
しかし、遺産分割をしたあとに遺言書が見つかった場合、既に遺産分割に従って遺産を処分しているようなこともあり、トラブルになる可能性があるのです。

遺言書の執行が大変だった

遺言書がある場合、その執行が大変でトラブルとなることがあります。
遺言書で定められた内容を実現するためには様々な手続きが必要です。
被相続人が所有していた動産を受け継いだだけのような場合には、自動車のように特に手続きが必要なものでなければ、手続きなく受けとることができます。
しかし、不動産の場合には相続登記が必要であり、預貯金を解約して払い戻しをするには金融機関所定の手続きが必要です。
遺言書の執行が大変であるような場合に、何も手続きをしないで遺産を相続したい相続人との間でトラブルとなることがあります。

遺言書に関するトラブルを避ける方法

遺言書を巡っては、様々なトラブルが発生する可能性があることがわかりました。
では、遺言書によるトラブルを避けるためにはどのような対策をすべきなのでしょうか。
以下で詳しくみていきましょう。

遺言書の様式を守った遺言書を作成する

遺言書を作成する場合は、必ず様式を守った遺言書を作成するようにしましょう。
特に、自筆証書遺言で遺言書を作成する場合、法律の要件を満たさないために遺言書の一部や遺言書自体が無効となってしまうことがあります。
法律上どのような要件を必要としているか正確に把握するとともに、できれば専門家にチェックしておいてもらうことをおすすめします。

元気なうちに遺言書を作成する

遺言書は、できる限り元気なうちに作成しておきましょう。
なぜなら、高齢や認知症が原因で判断能力が衰えてから遺言書を作成すると、その有効性を争ってトラブルになる可能性が高いからです。

公正証書遺言を作成する

遺言書によるトラブルを避けるためには、公正証書遺言を作成するのがおすすめです。
公正証書遺言は、公証人が作成することになるので、形式で無効となるおそれはありません。
また、作成した遺言書は公証役場で保管されるため、破棄されたり改ざんされたりするリスクも抑えられます。
公正証書遺言の作成には費用がかかりますが、その分遺言書の検認が不要になるといったメリットもあるので、ぜひ利用を検討してみてください。
公正証書遺言については「公正証書遺言とは?メリット・デメリット、費用などについて解説!」でも詳しく解説しているので、参考にしてください。

遺留分に配慮した遺言書の作成

遺言書によるトラブルを避けたいなら、必ず遺留分に配慮するようにしましょう。
遺留分を侵害しないことや、遺留分の侵害をせざるを得ない場合でも対応するための現金を用意したり、相続人が遺留分侵害額請求権を行使しないように遺言を作成したりと、方法はさまざまです。

遺留分について不安な場合は、弁護士に相談をすればアドバイスを得られるでしょう。

遺言書の保管

遺言書によるトラブルを避けるためには、保管方法についても工夫が必要です。
家族構成や、普段大事なものをどのように保管しているかなどによって適切な保管方法は異なります。
亡くなる前に見つかると困る場合には、きちんと目のふれないところに隠しておくべきですが、その分亡くなったあとに発見されないリスクも高まります。
資産が多く、大事な書類を貸金庫に入れているような場合には、そこに一緒にしておくのがよいでしょう。
なお、保管場所に悩む場合は弁護士に依頼することで、有料で預かってもらうこともできます。
また、遺言執行者を定めたような場合には、遺言執行者に預けておくことが一般的です。
遺言書の保管・管理については、「遺言はどうやって管理する?預けるほうがいい?」でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。

遺言書の内容は明確に記載する

遺言書の内容は、解釈に違いが出ないように明確に記載することが大切です。
遺言書の内容を明確に記載したつもりでも、様々な解釈ができる可能性も否定できません。
そのため、作成した遺言書は弁護士に確認してもらうと安心です。

遺言執行者を選任しておく

遺言書によるトラブルを避けるために、遺言執行者を選任しておきましょう。
特定の相続人の遺言執行が大変であるような場合に、手続き的に均等ではないためトラブルとなる可能性があります。
しかし、遺言書の中で遺言執行者を選任しておけば、手続きは遺言執行者に任せることができるので、トラブルを防ぐことができます。
なお、費用を払えば弁護士を遺言執行者に選任しておくことも可能です。

専門家に相談をする

自筆証書遺言や秘密証書遺言など、文章を自分で作成する遺言書については、弁護士に相談をしたうえで、文面を作ってもらう、作成した遺言書をチェックしてもらうといった対策をしておくことをおすすめします。
特に、親族には内緒で遺言を作成したい人は、証人が不要である自筆証書遺言の作成を希望することが多いです。
弁護士には守秘義務があるので、自筆証書遺言の内容はもちろん、相談・依頼があったこと自体も第三者に漏れることはありません。
せっかく作成した遺言書が無効とならないためにも、弁護士への相談を検討しましょう。

さいごに

遺言書は相続トラブル回避のために用いられますが、適切な遺言書でなければそれが原因でトラブルになることもあります。
心配なことがあるのであれば、弁護士に相談をし、適切な遺言書を作成できるように対策しておきましょう。

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この記事の監修者

弁護士 鈴木 奏子
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