非嫡出子の法定相続分や、非嫡出子の相続で注意すべき点などを解説いたします。
ざっくりポイント
  • 非嫡出子は法律婚でない男女の間に生まれた子どもである
  • 非嫡出子抜きで遺産分割協議をしても無効になってしまう
  • 遺言書を作成しておくと非嫡出子と相続人の相続トラブルを防止しやすくなる
目次

【Cross Talk 】非嫡出子の法定相続分は嫡出子と同じ?

私は非嫡出子ですが、法定相続分は嫡出子よりも少なくなってしまうのでしょうか?

民法の改正によって、非嫡出子の法定相続分は嫡出子と同じになりました。とはいえ、非嫡出子がいる相続では注意点もあります。

非嫡出子の法定相続分は嫡出子と同じになったんですね。非嫡出子の相続における注意点についても詳しく教えてください!

非嫡出子の法定相続分が嫡出子と同じになったことや、非嫡出子がいる相続のポイントなどを解説。

法律婚でない男女の間に生まれた子どもを非嫡出子といいます。 民法の改正によって、非嫡出子の法定相続分は嫡出子と同じになりましたが、非嫡出子がいる相続には注意すべき点もあるのです。 そこで今回は、非嫡出子の法定相続分や相続の注意点などを解説いたします。

非嫡出子とは?相続分はどうなる?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 非嫡出子は法律婚でない男女の間に生まれた子どもである
  • 非嫡出子と嫡出子の法定相続分は同じである

私は非嫡出子なのですが、相続人になった場合、認知をされていても相続分は嫡出子よりも少なくなってしまうのでしょうか?

民法の改正によって、非嫡出子と嫡出子の間の法定相続分の差異はなくなりましたので、安心してください。

非嫡出子とは

非嫡出子とは、法律婚をしていない男女の間に生まれた子どものことです。 法律婚とは法律によって婚姻関係が認められることであり、婚姻届を提出することで成立します。 いわゆる事実婚や内縁関係など、婚姻届を提出していない男女の間に子どもが生まれた場合は、非嫡出子にあたります。

非嫡出子の場合、母親との親子関係は出生によって当然に認められますが、父親との親子関係が認められるには認知の手続きが必要です。 そのため、非嫡出子の方が父親の相続の際に相続人となるためには、認知をされているか、父の死後3年以内の死後認知請求訴訟により親子関係が成立している必要があります。

また、法律婚の夫婦の間に生まれた子どもを「嫡出子」といいます。嫡出子の場合は、認知によらずに父親との親子関係も認められます。

非嫡出子の相続分は現在では嫡出子と同じ

非嫡出子の法定相続分(民法が規定する相続の割合)は、以前は嫡出子よりも低く設定されていましたが、民法の改正によって嫡出子と同じになっています。

民法の改正前は、非嫡出子の法定相続分は、嫡出子の法定相続分の1/2でした。

しかし、非嫡出子であることを理由に法定相続分を半分とすることは、憲法が定める法の平等に反する規定であるとの批判が古くからあり、ついに最高裁も違憲の決定を下しました。

最高裁の決定を受けて民法が改正された結果、非嫡出子の法定相続分は嫡出子と同じ割合になったのです。

非嫡出子でも遺留分侵害額請求は可能

非嫡出子が相続人の場合も、遺留分侵害額請求が可能です。

被相続人の配偶者や子どもなど、一定の法定相続人には遺産の最低限の取り分が法律で認められており、遺留分といいます。 遺言書などによって遺留分を侵害された相続人は、遺留分を侵害した者に対して、遺留分に相当する金銭を請求することができ、遺留分侵害額請求といいます。

非嫡出子が相続人であっても、遺留分を侵害された場合は遺留分侵害額請求が可能です。 例えば、遺産の総額が1,000万円であり、相続人として嫡出子と非嫡出子の2人がいる場合に、「嫡出子に全ての遺産を相続させる」という遺言書があったとしましょう。

上記においては、非嫡出子には遺留分として250万円(遺産の総額の1/4)が認められます。 嫡出子が1,000万円全てを相続した場合、非嫡出子は250万円の遺留分を侵害されているので、遺留分侵害額請求として、長男に250万円の金銭の支払いを請求できます。

関連記事:遺留分侵害額(減殺)請求権とは?行使方法、時効、計算方法を解説!

非嫡出子を参加させずに遺産分割協議をするとどうなる?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺産分割協議を成立させるには相続人全員の同意が必要
  • 認知のされている非嫡出子抜きで遺産分割協議をしても無効になってしまう

仲の悪い非嫡出子が相続人にいるのですが、遺産分割で揉めたくありません。非嫡出子なしで遺産分割協議をしても大丈夫ですか?

遺産分割協議を成立させるには相続人全員の同意が必要であり、非嫡出子の場合も同様です。一人でも欠けると協議が無効になるので注意してください。

非嫡出子を除いて行った遺産分割協議は無効

非嫡出子であっても認知により親子関係がある場合には相続人となり、その方を除外して遺産分割協議をすると、協議は無効 になってしまいます。 遺産分割協議とは、相続人が話し合いをして、遺産をどのように分割するかを決める手続きのことです。 誰がどれだけの財産を受け取るかということだけではなく、現物分割にするのか、換価分割(遺産に含まれる財産を売却して代金を配分する方法)にするのか、代償分割(不動産などの現物を特定の相続人が取得し、他の相続人に金銭を払う方法)にするのかといった遺産分割の方法も決めることになります。

非嫡出子と日頃から疎遠であったり、仲が悪かったりした場合は、非嫡出子を交えずに遺産分割協議を成立させたくなるかもしれません。 しかし、遺産分割協議を成立させるには、相続人全員が遺産分割協議の内容に同意する必要があります。

相続人のうち一人でも同意が欠けている場合は、遺産分割協議をしても無効になってしまいます。 これは非嫡出子の場合も同様なので、もし非嫡出子の同意なしで遺産分割協議をした場合、協議は無効になるので注意しましょう。 関連記事:遺言書があっても相続人全員の合意があれば遺産分割協議は可能?

非嫡出子との相続で発生しやすいトラブル

知っておきたい相続問題のポイント
  • 非嫡出子と疎遠で連絡が取れず遺産分割が進められないことがある
  • 父親の死亡後に戸籍等を調べて被嫡出子の存在が発覚することがある

非嫡出子がいる場合の相続では、どのようなトラブルが発生しやすいのでしょうか?

被相続人に配偶者や配偶者との間の嫡出子のほか、非嫡出子がいる場合、配偶者や嫡出子が非嫡出子と疎遠であることが多く、非嫡出子と連絡が取れずに遺産分割ができないことがあります。また、配偶者や嫡出子が非嫡出子の存在を知らず、被相続人の戸籍等を取り寄せて初めて発覚する場合もあります。

非嫡出子との連絡が取れずに遺産分割協議ができない

嫡出子を除いてした遺産分割協議は無効になります。 被嫡出子を含めて遺産分割協議をする必要があるのですが、非嫡出子は被相続人自身、あるいは被相続人の配偶者や嫡出子と疎遠になっている場合が珍しくありません。

そのため、被相続人の相続が開始した後、被相続人の配偶者や嫡出子が被嫡出子と連絡がとれず、遺産分割協議ができないこともあるのです。

父親の死後に非嫡出子がいることが発覚した

父親が被嫡出子を認知した場合、父親の戸籍に認知をした事実が記載されますが、非嫡出子が父親の戸籍に入るわけではありません。 また、転籍や改製によって新たな戸籍が作られると、新たな戸籍には認知の事実は記載されないため、被相続人の配偶者や嫡出子などの相続人が、被嫡出子の存在を知らない場合があるのです。

なお、被相続人の預貯金の解約や不動産の登記手続をするには、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本等が必要になります。

非嫡出子との相続トラブルを回避する方法

知っておきたい相続問題のポイント
  • 生前に認知をして死後の認知の訴え等のトラブルを回避する
  • 被嫡出子の遺留分に配慮した遺言書を作成する

非嫡出子との相続トラブルを回避するにはどうすればいいでしょうか?

まず、非嫡出子を認知していない場合、生前に認知をしておくといいでしょう。そのうえで、法定相続分と異なる割合で相続させたいときは、遺留分に配慮した遺言書を作成することが考えられます。被相続人が遺言書を作成せずに死亡した場合には、弁護士に依頼して非嫡出子と交渉してもらうのが効果的といえます。

非嫡出子を認知する

父親が生前に非嫡出子を認知していなかったとしても、父親の死後3年以内は死後認知の訴えを提起できます。その訴えによって親子関係が認められた場合、非嫡出子も父親の相続人になります。

そのため、その時点でまだ遺産分割協議が終わっていない場合は、非嫡出子も含めた遺産分割協議が必要です。また、遺産分割協議が既に終わっていた場合、非嫡出子は遺産分割のやり直しを求めることはできませんが、法定相続分に応じた金銭を請求することができます。

認知していない非嫡出子がいると、その後の手続が複雑になるため、認知していない非嫡出子がいる場合、生前に認知をしておくべきでしょう。

遺言書で非嫡出子に対して財産を残す

相続において嫡出子と非嫡出子との間に区別はなく、非嫡出子には嫡出子と同じ法定相続分が認められるため、被相続人が非嫡出子と疎遠であるなどの理由から、配偶者や嫡出子に法定相続分以上の財産を相続させたい場合には、遺言書を作成する必要があります。

ただし、非嫡出子にも遺留分があるので、遺言の内容は、非嫡出子の遺留分に配慮したものでなければなりません。

弁護士に依頼する

被相続人が遺言書を作成せずに亡くなると、非嫡出子を含めた遺産分割協議の実施が必要です。

ただし、非嫡出子と被相続人が疎遠であった場合など、非嫡出子が被相続人やその配偶者、嫡出子に対して不満、不公平感を抱いていることがあると話し合いがうまくいかないおそれがあります。その場合、弁護士に依頼をして、感情論ではなく法律に基づいて被嫡出子と交渉が効果的です。

まとめ

法律婚でない男女の間に生まれた子どもを非嫡出子といいます。 かつては、非嫡出子の法定相続分は嫡出子の1/2でしたが、民法の改正によって、法定相続分は嫡出子と同じになりました。 相続人の中に非嫡出子がいる場合は、相続トラブルが生じやすいので、遺言書を作成して遺産分割協議を回避するなどの工夫が重要です。

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この記事の監修者

弁護士 田中 理莉子第二東京弁護士会
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