
- 自分で手続きすれば実費のみで数千円〜数万円、専門家に依頼すると10万円以上が目安
- 費用は「実費」「専門家報酬」「税金」の3層に分けて考えると整理しやすい
- 不動産があると登録免許税(固定資産税評価額×0.4%)の金額インパクトが大きい
- 他の相続人との交渉や調停の代理ができるのは弁護士だけ
相続手続きは、内容が複雑な場合や相続人同士でもめている場合、自力では時間も労力もかかります。
ご自身のケースで専門家に依頼すべきか、相続にくわしい弁護士に初回無料でご相談いただけます。
【Cross Talk 】相続手続きの費用は「実費+専門家報酬+税金」の3層で決まる
相続手続きにはどれくらいの費用がかかりますか。
自分で進めるか、誰に頼むかで大きく変わります。3つの層に分けて確認していきましょう。
親族が亡くなると、そこから相続手続きが始まります。はじめての相続手続きの場合、どれくらいの費用が発生するのか不安を抱えている方も少なくありません。相続手続きの費用は、内容の複雑さや依頼する専門家によって大きく変動するため、事前に相場を把握しておくことが大切です。
相続手続きの費用は、(1)戸籍などの書類にかかる実費(2)専門家に依頼した場合の報酬(3)登録免許税や相続税といった税金、の3つに分けて考えると整理しやすくなります。ご自身で進めれば実費のみの数千円程度で済むこともありますが、不動産があれば登録免許税が、専門家に依頼すれば報酬が加わります。
この記事では、書類ごとの取得費用、裁判所を使う場合の費用、専門家別の報酬相場、モデルケースでみる総額シミュレーション、費用を抑えるコツまで、弁護士が解説していきます。
相続手続きの費用の全体像を把握したい方は、ぜひ参考にしてください。
相続手続きの費用相場(自分でやるか・誰に頼むかで決まる)

- 自分で手続きすれば、費用は書類代などの実費が中心で数千円〜数万円程度
- 専門家に依頼すると10万円以上が目安で、依頼先と内容によって変わる
相続手続きにかかる費用の相場はいくらでしょうか?
ここでは、相続手続きにかかる費用の相場について自力で行った場合と専門家に依頼した場合について解説していきます。
自分で手続きする場合の費用相場(実費のみ・数千円〜)
相続手続きをすべてご自身で行う場合、費用は比較的安く抑えられます。基本的には、役所や金融機関から必要書類を取り寄せるための手数料や郵送費などが主となるため、おおよそ数千円から数万円程度が相場となるでしょう。
具体的には、戸籍謄本や住民票などの取得費用が1通あたり数百円、郵送費用が数百円程度です。もし相続財産が預貯金や有価証券のみで、相続人同士で争いがなく手続きがシンプルな場合は、これらの実費のみで済むことも珍しくありません。
しかし、相続財産に不動産が含まれる場合は、登録免許税や不動産鑑定費用、測量費用などが発生し、これらを合わせると数十万円かかることもあります。また、自動車の名義変更にも別途手数料が必要です。
ご自身で手続きを行う最大のメリットは費用を抑えられることですが、専門知識が必要な場面や、手続きに膨大な時間と労力がかかるリスクには注意が必要です。
専門家に依頼する場合の費用相場(10万円〜・依頼先で変わる)
相続手続きを専門家に依頼する場合、その費用は依頼する専門家の種類や相続財産の規模、複雑さによって大きく異なります。一般的には10万円以上が相場となり、遺産総額が高額な場合や、相続人間に争いがある場合などは、100万円を超えることも少なくありません。
弁護士費用は以下のように、いくつかの項目に分けられます。
まず、相談の段階で発生するのが「相談料」です。多くの法律事務所では、初回相談を無料としているところが多いですが、有料の場合は30分あたり5,000円程度が相場です。
次に、具体的な遺産分割協議の代理交渉などを依頼する際に支払うのが「着手金」です。これは依頼時に発生する費用で、遺産の金額や交渉の難易度によって変動しますが、おおよそ20万円から50万円程度が目安となります。
そして、相続問題が解決した際に、その成果に応じて発生するのが「報酬金」です。この報酬金は、弁護士が介入したことで依頼者が得られた「経済的利益」(例えば、交渉によって取得できた遺産額など)の一定割合で計算されることが一般的で、その割合は経済的利益の規模に応じて変動します。
その他、手続きを進める上で実際に発生する費用として実費や、弁護士が遠方に出張して対応する必要がある場合には、別途日当が発生することもあります。
費用の全体マップ:実費+専門家報酬+税金の3層
相続手続きの費用は項目が多く、全体像がつかみにくいものです。そこで、次の3つの層に分けて整理すると、ご自身のケースでいくらかかるのかを見通しやすくなります。
| 層 | 内容 | 金額の目安 | かかる場面 |
|---|---|---|---|
| (1)実費 | 戸籍・住民票などの書類代、郵送費、裁判所の収入印紙代 | 数千円〜数万円 | 原則として必ずかかる |
| (2)専門家報酬 | 弁護士・司法書士・税理士・行政書士などへの報酬 | 10万円〜数十万円以上 | 依頼した場合のみ |
| (3)税金 | 登録免許税(不動産)、相続税 | 評価額×0.4%ほか | 財産の内容による |
(1)の実費は、誰が手続きをしても原則として必要になる費用です。金額は数千円から数万円程度に収まることが多く、ここが大きく膨らむことはあまりありません。
(2)の専門家報酬は、依頼した場合にのみ発生します。逆にいえば、ご自身で手続きを進めれば発生しない費用です。金額の幅が最も大きく、総額を左右する部分でもあります。
(3)の税金は、財産の内容によって決まります。特に不動産があると登録免許税がかかり、評価額次第では数十万円になることもあります。遺産が基礎控除を超える場合は相続税も加わります。
この記事では、以降の項目でこの3層を順番に見ていきます。まずは、誰にでもかかる(1)の実費から確認しましょう。
必ずかかる実費(1):書類の取得費用一覧

- 戸籍謄本は1通450円、除籍謄本と改製原戸籍謄本は1通750円
- 書類の取得費用は全体で数千円〜1万円程度に収まることが多い
相続手続きに必要な書類は、いくらくらいかかりますか。
1通あたりは数百円です。まとめて一覧で確認しておきましょう。
相続手続きでは、相続人が誰かを確定し、どのような財産があるかを調べるために多くの書類を集める必要があります。ここでは、書類ごとの手数料を一覧にまとめました。
| 書類 | 手数料の目安 | 取得先 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 戸籍謄本(全部事項証明書) | 1通450円 | 市区町村役場 | 相続人の確定 |
| 除籍謄本 | 1通750円 | 市区町村役場 | 相続人の確定 |
| 改製原戸籍謄本 | 1通750円 | 市区町村役場 | 相続人の確定 |
| 戸籍の附票 | 1通300円程度 | 市区町村役場 | 住所の履歴確認 |
| 住民票・住民票除票 | 1通300〜400円程度 | 市区町村役場 | 住所の確認 |
| 印鑑登録証明書 | 1通300〜400円程度 | 市区町村役場 | 遺産分割協議書に添付 |
| 登記事項証明書 | 1通600円 (オンライン請求は480〜500円) |
法務局 | 不動産の確認 |
| 固定資産評価証明書 | 1通300〜400円程度 | 市区町村役場 | 登録免許税の計算 |
| 残高証明書 | 1通数百円〜1,000円程度 | 金融機関 | 預貯金の確認 |
戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍の取得費用
遺産分割を行うためには、まず誰が相続人であるかを確定させる必要があります。
この相続人調査は、故人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本を収集し、相続関係を明らかにする重要な作業です。戸籍謄本は1通あたり450円程度ですが、故人の転居や結婚、離婚などにより複数の戸籍にまたがる場合があり、数十通に及ぶことも少なくありません。また、相続人全員の戸籍謄本も必要となります。これらの書類収集にかかる費用は、数千円から1万円程度になることが一般的です。
戸籍には種類があり、手数料も異なります。現在の戸籍である戸籍謄本(全部事項証明書)は1通450円ですが、その戸籍にいる人が全員いなくなった「除籍謄本」と、法改正によって作り替えられる前の「改製原戸籍謄本」は、いずれも1通750円です。出生までさかのぼると、除籍謄本や改製原戸籍謄本が何通も必要になるのが通常です。
弁護士に相続人調査を依頼する場合、これらの戸籍謄本等の収集代行を含め、5万円から10万円程度が目安となることが多いでしょう。
住民票・印鑑登録証明書などの取得費用
戸籍のほかに、住所を確認するための住民票や住民票除票、遺産分割協議書に添付する印鑑登録証明書なども必要になります。これらは1通あたり300円から400円程度が目安ですが、金額は市区町村ごとに条例で定められているため、お住まいの自治体によって異なります。
また、被相続人の住所の履歴をたどる必要がある場合には、戸籍の附票(1通300円程度)を取得します。登記簿上の住所と死亡時の住所が違う場合に、同一人物であることを証明するために使うことが多い書類です。
登記事項証明書・固定資産評価証明書・残高証明書の費用
相続人調査と並行して行うのが、故人の所有していた相続財産の調査です。これには、預貯金、不動産、有価証券などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金といったマイナスの財産もすべて洗い出す作業が含まれます。預貯金については各金融機関への照会、不動産については登記簿謄本や固定資産評価証明書の取得などが必要となり、これらの書類取得費用は数千円から数万円程度です。
不動産の内容を確認する登記事項証明書は、法務局の窓口や郵送で請求する場合は1通600円です。オンラインで請求すると手数料が下がり、郵送で受け取る場合は500円、窓口で受け取る場合は480円となります。通数が多いときはオンライン請求を使うと費用を抑えられます。
登録免許税の計算に使う固定資産評価証明書は1通300円から400円程度、金融機関に発行してもらう残高証明書は1通数百円から1,000円程度が目安です。いずれも自治体や金融機関によって金額が異なります。
弁護士に相続財産調査を依頼した場合、財産の種類や数、複雑さによって費用は変動しますが、10万円から30万円程度が相場となることが多いです。特に複雑な財産がある場合は、不動産鑑定士や税理士など他の専門家への依頼費用が別途発生する可能性もあります。
戸籍の広域交付制度で取得の手間を減らせる(2024年3月〜)
従来、戸籍謄本は本籍地のある市区町村でしか取得できず、被相続人が何度も転籍していると、そのたびに遠方の役所へ郵送請求する必要がありました。
2024年3月1日から始まった「戸籍の広域交付制度」により、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書を請求できるようになりました。本籍地が全国各地にあっても、1か所の窓口でまとめて請求できるため、郵送のやり取りにかかる時間と郵送費を大きく減らせます。
ただし、次のような制限があるため注意が必要です。
- 請求できるのは、本人・配偶者・父母や祖父母などの直系尊属・子や孫などの直系卑属の戸籍に限られる
- 兄弟姉妹や甥姪など、傍系親族の戸籍は請求できない
- コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は対象外
- 本人が窓口に行く必要があり、郵送や代理人による請求はできない
そのため、兄弟姉妹が相続人になるケース(被相続人に子も親もいない場合)では、この制度を使えず、従来どおり本籍地ごとに請求することになります。手数料自体は広域交付でも同じ金額です。
必ずかかる実費(2):手続きの場面別の費用

- 死亡届の提出自体は無料だが、死亡診断書の取得には数千円かかる
- 自筆証書遺言の検認には、遺言書1通につき収入印紙800円が必要
手続きの場面ごとに、どんな費用が発生しますか。
届け出、遺言書の確認、遺産分割協議の順に見ていきましょう。
死亡後の届け出関係の費用
死亡届の提出や火葬許可証の取得などは、主に市区町村役場で行う行政手続きです。これらの届け出自体に費用はかかりませんが、死亡診断書の取得には数千円程度の費用が発生します。
また、故人が年金受給者だった場合の年金受給権者死亡届や、世帯主であった場合の世帯主変更届なども、定められた期限内に提出が必要です。
なお、死亡診断書は保険金の請求などにも使うため、複数枚必要になることがあります。あとから追加で発行してもらうと再度費用がかかるので、必要枚数を見込んで取得しておくとよいでしょう。
遺言書の検認にかかる費用(収入印紙800円+郵便切手)
相続手続きの初期段階で非常に重要となるのが、故人の遺言書の有無の確認です。遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
もし故人が自筆証書遺言や秘密証書遺言を残していた場合、家庭裁判所での検認手続きが必要です。この検認手続きには、遺言書1通あたり800円の収入印紙代と、検認証明書の収入印紙代150円、合計950円程度の費用がかかります。しかし、法務局で保管されていた自筆証書遺言や公正証書遺言の場合は、検認は不要であり、これらの費用はかかりません。
このほかに、家庭裁判所から相続人へ連絡するための郵便切手を納める必要があります。金額は申立てをする裁判所によって異なるため、事前に確認しましょう。
検認は、遺言書の内容を明確にして偽造・変造を防ぐための手続きであり、遺言が有効かどうかを判断するものではありません。検認を受けたからといって遺言書の有効性が保証されるわけではない点は、押さえておきたいところです。
遺産分割協議・協議書作成の費用
相続人全員で、故人の遺産をどのように分割するか話し合うのが遺産分割協議です。話し合いがまとまれば、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。
協議そのものや、協議書を相続人自身で作成することには費用がかかりません。必要になるのは、協議書に添付する印鑑登録証明書の取得費用(1通300円から400円程度)程度です。
この段階で相続人間に意見の対立が生じ、話し合いが円滑に進まない場合、弁護士が代理人として交渉にあたることが一般的です。
弁護士に遺産分割協議の交渉を依頼した場合、まず着手金として20万円から50万円程度が必要となることが一般的です。これは、弁護士が業務を開始する際に支払う費用で、遺産の総額や事案の難易度によって変動します。交渉が成立し、遺産分割が解決した際には、別途報酬金が発生します。さらに、交渉が決裂し、家庭裁判所での遺産分割調停や審判に移行した場合は、さらに追加で費用が発生する可能性があります。
財産の種類別にかかる費用(不動産は登録免許税に注意)

- 不動産の相続登記には、固定資産税評価額の0.4%の登録免許税がかかる
- 預貯金や株式の名義変更に、金融機関へ支払う手数料は原則としてかからない
財産の種類によって、費用は変わりますか。
大きく変わります。特に不動産があるかどうかで金額が変わります。
不動産:登録免許税(固定資産税評価額×0.4%)と免税措置(2027年3月31日まで)
遺産分割協議で合意した内容に基づき、不動産や自動車などの名義変更手続きを行います。
不動産の名義変更(相続登記)には、登録免許税(不動産の固定資産評価額の0.4%)がかかります。相続登記は司法書士の専門業務ですが、相続手続き全体を弁護士に依頼している場合は、弁護士が司法書士と連携して手配してくれる可能性もあります。この場合、弁護士の費用とは別に、司法書士への報酬(数万円から十数万円)が発生します。
登録免許税は、相続手続きの費用の中で金額のインパクトが最も大きくなりやすい項目です。例えば固定資産税評価額が2,000万円の自宅であれば、2,000万円×0.4%=8万円となります。評価額は固定資産評価証明書で確認できます。
一方、一定の場合には登録免許税が免税となる措置が設けられており、適用期限は2027年(令和9年)3月31日までとされています。免税の対象は次の2つの類型です。
- 相続により土地を取得した方が、相続登記をしないまま亡くなった場合に、その方を登記名義人とするために受ける登記
- 不動産の価額が100万円以下の土地について受ける、相続による所有権移転登記など
2つ目の類型は、令和4年度の税制改正(2022年4月1日から)によって適用対象が全国の土地に広がり、価額の上限も10万円以下から100万円以下に引き上げられました。その後、令和7年度の税制改正で、適用期限が2027年3月31日まで延長されています。
注意したいのは、この免税措置は自動的に適用されるものではないという点です。申請書に免税の根拠となる法令の条項を記載する必要があり、記載がなければ免税を受けられません。法務局の案内では、それぞれ「租税特別措置法第84条の2の2第1項により非課税」「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」と記載するよう示されています。
預貯金・株式:金融機関への手続き手数料は原則不要
預貯金の払戻しや名義変更について、金融機関に手数料を支払う必要は原則としてありません。株式や投資信託などの有価証券についても、証券会社への手続き手数料は原則としてかかりません。
ただし、手続きの際に残高証明書や取引残高報告書の発行を依頼すると、1通あたり数百円から1,000円程度の発行手数料がかかります。また、金融機関ごとに戸籍一式の提出を求められるため、複数の金融機関に口座がある場合は、書類を使い回せるよう法定相続情報一覧図を活用すると効率的です。
なお、株式を相続する場合、被相続人の口座から相続人の口座へ移す手続きが必要になるため、相続人側にも証券口座を用意する必要がある点には留意しましょう。
自動車:車庫証明などの実費
また、自動車の名義変更には、移転登録手数料、車庫証明取得費用、ナンバープレート代などがかかり、数千円から数万円程度が目安です。これらの手続きを弁護士に依頼する場合、その手数料については、事務所によって取り扱いが異なりますので、事前に確認が必要でしょう。
内訳としては、移転登録手数料が1台500円程度、車庫証明の取得費用が2,000円台から3,000円程度、ナンバープレート代が1,500円程度からが目安です。管轄が変わる場合はナンバープレートの変更が必要になります。
裁判所を使う場合の費用(調停・相続放棄・遺留分)

- 裁判所に納める実費自体は、収入印紙と郵便切手で数千円程度
- 争いになった場合、費用の本体は裁判所の実費ではなく弁護士費用
裁判所の手続きを使うと、費用は高くなりますか。
裁判所に納める実費は意外と少額です。順番に見てみましょう。
話し合いがまとまらない場合や、相続放棄をする場合には、家庭裁判所の手続きを使うことになります。裁判所に納める費用は、次のとおりです。
| 手続き | 収入印紙 | そのほか | 備考 |
|---|---|---|---|
| 遺言書の検認 | 遺言書1通800円 | 連絡用の郵便切手 | 検認済証明書の交付に別途150円 |
| 遺産分割調停 | 1,200円 | 連絡用の郵便切手 | 被相続人1人につき |
| 相続放棄の申述 | 800円 | 連絡用の郵便切手 | 相続人1人につき |
| 遺留分侵害額請求調停 | 1,200円 | 連絡用の郵便切手 | ― |
遺産分割調停:収入印紙1,200円+郵便切手
遺産分割の話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。申立てに必要な収入印紙は、被相続人1人につき1,200円です。これに加えて、裁判所から当事者へ連絡するための郵便切手を納めます。
郵便切手の金額は、申立先の裁判所や相続人の人数によって異なります。数千円程度になることが多いため、申立て前に管轄の家庭裁判所へ確認しておきましょう。
調停の申立てには、被相続人の出生から死亡までの戸籍や相続人全員の戸籍、遺産に関する資料などを添付する必要があります。必要書類については関連コラムもあわせてご覧ください。
相続放棄:1人あたり収入印紙800円+郵便切手
相続放棄をする場合は、家庭裁判所に申述を行います。必要な収入印紙は、申述する相続人1人につき800円です。こちらも、連絡用の郵便切手を別途納めます。
相続人が複数人まとめて相続放棄をする場合は、人数分の収入印紙が必要になります。3人であれば2,400円という計算です。
このほか、被相続人の除籍謄本や住民票除票、申述人の戸籍謄本などの取得費用がかかるため、1人あたり3,000円から5,000円程度を見込んでおくとよいでしょう。
遺言書の検認・遺留分侵害額請求の調停費用
自筆証書遺言などの検認は、遺言書1通につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手が必要です。検認済証明書の交付を受ける際には、別途150円の収入印紙がかかります。
遺留分を侵害された場合の遺留分侵害額請求について、話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に調停を申し立てます。この場合の収入印紙は1,200円です。
なお、遺留分侵害額請求には、相続の開始と遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時から1年(相続開始の時からは10年)という期間制限があります(民法1048条)。費用の準備を検討しているうちに期間が経過してしまわないよう注意が必要です。
争いになった場合は弁護士費用が費用の本体になる
ここまで見てきたとおり、裁判所に納める実費自体は、収入印紙と郵便切手を合わせても数千円程度にとどまります。「調停を申し立てると高額な費用がかかる」というイメージをお持ちの方もいますが、裁判所に支払う金額自体は決して高くありません。
実際に費用の中心となるのは、代理人として依頼する弁護士の費用です。調停は平日に開かれ、1回で終わることはまれで、成立まで半年から1年以上かかることもあります。ご自身で対応することも制度上は可能ですが、主張の組み立てや資料の準備には相応の負担がかかります。
つまり、裁判所を使う場合の費用を考えるうえで見るべきなのは、印紙代ではなく「代理人を立てるかどうか」です。次のH2では、その専門家報酬の相場を確認していきます。
専門家別の報酬相場(弁護士・司法書士・税理士・行政書士)

- 専門家の報酬は自由化されており、事務所ごとに金額も体系も異なる
- 他の相続人との交渉や調停の代理ができるのは弁護士のみ
専門家ごとに、報酬はどれくらい違うのでしょうか。
依頼できる業務の範囲が違うので、そこから確認しましょう。
相続手続きに関わる専門家には、弁護士・司法書士・税理士・行政書士などがいます。それぞれ対応できる業務の範囲が法律で定められており、報酬の相場も異なります。
| 専門家 | 主な依頼内容 | 報酬の目安 | 交渉・調停の代理 |
|---|---|---|---|
| 弁護士 | 遺産分割の交渉・調停・審判、遺留分侵害額請求、相続放棄 | 着手金20万円〜 +報酬金(経済的利益による) |
できる |
| 司法書士 | 相続登記、裁判所提出書類の作成 | 10万円前後〜 | できない |
| 税理士 | 相続税の申告 | 遺産総額の0.5〜1.0%程度 | できない |
| 行政書士 | 遺産分割協議書などの書類作成(争いがない場合) | 10万円前後〜 | できない |
| 信託銀行 | 遺産整理業務(手続きの取りまとめ) | 最低110万円程度〜(税込) | できない |
前提として、専門家の報酬は自由化されており、統一された基準はありません。以下の金額はあくまで一般的な目安であり、実際の金額は事務所ごとに異なります。依頼前に必ず見積もりを確認してください。
弁護士:遺産分割の交渉・調停の代理(20万円〜・経済的利益による)
弁護士は、法律事務全般を扱うことができます。相続の場面では、他の相続人との交渉、遺産分割調停・審判の代理、遺留分侵害額請求、相続放棄の手続きなど、幅広く対応できるのが特徴です。
費用は、着手金と報酬金に分かれるのが一般的です。着手金は20万円程度からで、依頼時に支払います。報酬金は、解決によって得られた「経済的利益」の額に応じて決まるため、取得した遺産が多いほど報酬金も大きくなります。
そのため、遺産の規模や争いの有無によって総額が大きく変わります。「弁護士費用は一律いくら」と示しにくいのはこのためです。当事務所の費用については、料金案内のページをご覧ください。
司法書士:相続登記(10万円前後〜)
司法書士は、不動産の登記手続きの代理を専門とします。相続登記だけを依頼する場合、報酬は10万円前後からが目安です(登録免許税は別途かかります)。
注意したいのが業務の範囲です。司法書士は、裁判所に提出する書類の作成はできますが、他の相続人との交渉や、家庭裁判所の遺産分割調停の代理はできません。認定司法書士であれば簡易裁判所の一定の民事訴訟などの代理はできますが、家事事件である遺産分割調停の代理権は含まれていません。
したがって、「登記だけ済ませたい」「相続人間で争いがない」というケースでは司法書士が適していますが、話し合いがまとまらない場合には対応できる範囲を超えることになります。
税理士:相続税申告(遺産総額の0.5〜1.0%程度)
税理士は、相続税の申告や税務相談を扱います。報酬は遺産総額に応じて決まることが多く、遺産総額の0.5%から1.0%程度が目安です。遺産総額が8,000万円であれば、40万円から80万円程度という計算になります。
土地の数が多い場合や、非上場株式の評価が必要な場合などは、加算報酬が発生することが一般的です。
なお、相続税の申告が必要になるのは、遺産総額が基礎控除額を超える場合に限られます。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算するため、多くのケースでは相続税の申告自体が不要です。この場合、税理士への依頼も必要ありません。
行政書士:書類作成・名義変更(10万円前後〜)
行政書士は、官公署に提出する書類の作成などを扱います。相続の場面では、戸籍の収集や遺産分割協議書の作成、自動車の名義変更などを依頼できます。報酬は10万円前後からが目安です。
ただし、行政書士が扱えるのは、相続人間に争いがない場合の書類作成に限られます。他の相続人との交渉を代理することはできず、これを行うと弁護士法72条が禁じる非弁行為にあたるおそれがあります。また、不動産登記の代理や相続税の申告もできません。
信託銀行の遺産整理業務(最低110万円程度〜)の費用構造と注意点
信託銀行などが提供する「遺産整理業務」は、相続手続き全体の取りまとめを任せられるサービスです。窓口が1つにまとまる安心感がありますが、最低手数料が110万円程度(税込)からと設定されていることが多く、遺産の規模によっては、必要な業務をそれぞれの専門家に直接依頼する場合と比べて費用が大きくなることがあります。
また、信託銀行自身が登記や税務申告、他の相続人との交渉を行うわけではなく、提携する司法書士や税理士に取り次ぐ形になります。そのため、それぞれの専門家に直接依頼する場合と比べて、費用が上乗せになりやすい構造です。相続人間に争いがある場合は、そもそも遺産整理業務では対応できません。
ケース別:どの専門家に頼むべきか(費用を無駄にしない選び方)

- 依頼内容がはっきりしているなら、その業務の専門家に直接頼むのが無駄がない
- もめている・もめそうな場合は、最初から弁護士に相談するのが結果的に近道
結局、誰に頼めばよいのでしょうか。
ご状況によって変わります。代表的なケースで整理してみましょう。
相続人の数が多い場合や、相続財産の種類が多岐にわたる場合、相続手続きは非常に複雑になります。連絡調整や必要書類の収集に膨大な時間と労力がかかるため、専門家への依頼を検討する場面です。もっとも、誰に頼むかを間違えると、二度手間になって費用が余計にかかることもあります。ここでは、ケース別に整理します。
登記だけなら司法書士・税申告だけなら税理士
相続人間で争いがなく、依頼したい内容がはっきりしている場合は、その業務を専門とする専門家に直接依頼するのが最も無駄がありません。
遺産が自宅と預貯金のみで、遺産分割協議もまとまっており、あとは名義を変えるだけ、という場合は司法書士に相続登記を依頼すれば足ります。預貯金の払戻しはご自身でも進められることが多いでしょう。
遺産総額が基礎控除額を超えて相続税の申告が必要なものの、分け方については争いがない、という場合は税理士に申告を依頼します。相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内と決まっているため、早めの相談が必要です。
もめている・もめそうなら弁護士(交渉・調停の代理は弁護士のみ)
「特定の相続人が生前贈与を受けていた」「故人の介護などで貢献したと主張する相続人がいる」「不公平な遺言書の内容に納得できない」などは、争いになりやすい典型例です。
このような紛争性が高い状況であっても弁護士に依頼すれば、法律に基づき冷静かつ客観的な視点から問題点を整理し、依頼人の代理人として交渉してもらえます。必要に応じて、家庭裁判所での遺産分割調停や審判手続きを代理することも可能です。
ここで押さえておきたいのが、専門家の職域です。ご本人の代理人として他の相続人と交渉したり、遺産分割調停を代理したりできるのは、弁護士だけです。司法書士や行政書士がこれを行うことは、弁護士法72条によって禁じられています。
そのため、「まず司法書士に頼んだものの、話し合いがこじれて対応できなくなり、改めて弁護士に依頼し直した」というケースでは、費用が二重にかかってしまいます。もめている、あるいはもめそうだという段階であれば、最初から弁護士に相談するほうが、結果的に費用も時間も抑えられることが多いといえます。
相続放棄すべきか悩んでいる場合(熟慮期間3か月)
故人が多額の借金などマイナスの財産を抱えていた場合、「相続放棄」を検討する必要があります。相続放棄とは、故人のプラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないという選択です。
ここで重要なのが期限です。相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行う必要があります(民法915条1項)。この期間を「熟慮期間」といいます。
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
3か月という期間は、財産調査をしているとあっという間に過ぎてしまいます。期間内に判断できない場合には、家庭裁判所に申し立てて熟慮期間を伸長してもらえることがあります。また、遺産の一部を処分してしまうと単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがある点にも注意が必要です。
弁護士に相談すれば、故人の財産調査を依頼でき、その結果に基づいて相続放棄すべきか否かについて適切なアドバイスを受けることができます。また、必要な書類の収集から申述書の作成、裁判所への提出までを正確かつ迅速に進めてもらえるため、期限内に手続きを進めやすくなります。
窓口を1つにまとめたい場合の考え方
「複数の専門家とやり取りするのは大変なので、窓口を1つにしたい」という方もいます。この場合の選択肢は、信託銀行の遺産整理業務を利用するか、法律事務所に相続手続き全体を依頼するかのいずれかが中心になります。
法律事務所に依頼する場合、登記や税務申告は、実務上は提携する司法書士や税理士と連携して進めることが一般的です。争いが生じた場合にもそのまま対応できるため、紛争になる可能性があるケースでは、法律事務所を窓口にするほうが結果的にスムーズです。
いずれにしても、依頼前に「どこまでが報酬に含まれ、どこからが別料金なのか」を確認しておくことが、費用を無駄にしないポイントになります。
費用シミュレーション:モデルケースでみる総額

- 自分で手続きする場合、不動産があっても総額10万円未満に収まることがある
- 専門家に依頼すると数十万円〜100万円程度になることもある
結局、総額でいくらくらいになるのでしょうか。
3つのモデルケースで、実費と報酬の合計を見てみましょう。
ここまでの費用を、モデルケースで合計してみます。いずれも一定の前提を置いた概算であり、実際の金額は財産の内容や依頼先によって変わる点にご留意ください。
ケース(1):遺産が預貯金と自宅のみ・自分で手続きする場合
相続人は配偶者と子1人、遺産は預貯金1,000万円と自宅(固定資産税評価額1,500万円)のみ。争いはなく、すべてご自身で手続きするケースです。相続税は基礎控除額(3,000万円+600万円×2人=4,200万円)以下のため、申告は不要です。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 戸籍謄本などの書類の取得費用 | 5,000円〜1万円程度 |
| 登記事項証明書・固定資産評価証明書 | 1,000円〜2,000円程度 |
| 登録免許税(自宅の評価額1,500万円×0.4%) | 6万円 |
| 専門家報酬 | 0円 |
| 合計 | 約7万円前後 |
このように、専門家に依頼しなければ、不動産があっても総額7万円前後で収まります。金額の大半は登録免許税であり、書類代そのものは1万円程度です。時間と手間はかかりますが、費用を最優先するならこの方法になります。
ケース(2):司法書士(登記)と税理士(申告)に分担依頼する場合
相続人は子2人、遺産は預貯金3,000万円、自宅(固定資産税評価額2,000万円)、その他の不動産や有価証券を含めて総額8,000万円。争いはないものの、基礎控除額(3,000万円+600万円×2人=4,200万円)を超えるため相続税の申告が必要なケースです。登記は司法書士、申告は税理士に依頼します。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 実費(書類の取得費用など) | 1万円程度 |
| 登録免許税(自宅の評価額2,000万円×0.4%) | 8万円 |
| 司法書士報酬(相続登記) | 10万円前後 |
| 税理士報酬(相続税申告・遺産総額8,000万円) | 40万〜80万円程度 |
| 合計 | 約60万〜100万円程度 |
争いがないため弁護士に依頼する必要はなく、必要な業務をそれぞれの専門家に直接依頼しています。費用の中心は税理士報酬で、遺産総額に応じて決まるため、遺産が多いほど大きくなります。
ケース(3):遺産分割でもめて弁護士に依頼する場合
相続人は子2人、遺産は預貯金1,000万円と自宅(固定資産税評価額1,500万円)。長男が自宅の取得を主張し、次男と折り合いがつかないため、次男が弁護士に依頼して交渉・調停を進めるケースです。
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 実費(書類の取得費用・裁判所の収入印紙代など) | 1万〜2万円程度 |
| 弁護士費用(着手金) | 20万〜50万円程度 |
| 弁護士費用(報酬金) | 取得した経済的利益に応じて別途 |
| 合計(依頼した相続人の負担) | 着手金の段階で約21万〜52万円程度 (報酬金は解決時に別途) |
| (参考)自宅を取得する相続人の負担 | 登録免許税6万円(評価額1,500万円×0.4%) |
弁護士費用は依頼した本人(このケースでは次男)の負担となり、着手金の段階で20万円台前半からです。解決時には取得した経済的利益に応じた報酬金が別途発生します。自宅の相続登記にかかる登録免許税は、自宅を取得する相続人の負担です。ケース(1)と比べると費用は大きくなりますが、話し合いがまとまらないまま長期化すれば、不動産を活用できない状態が続くことになります。
なお、当事務所では初回相談を無料としています。依頼した場合の費用は事案によって異なりますので、まずは見通しと費用の見積もりを確認したうえでご判断ください。
相続費用を安く抑えるコツと注意点

- 広域交付や法定相続情報一覧図を使えば、書類収集の手間と費用を減らせる
- 登録免許税の免税措置は、申請書に条項を書かないと適用されない
費用を少しでも抑える方法はありますか。
制度を活用する方法があります。ただし注意点もあります。
書類収集は広域交付・法定相続情報一覧図を活用
費用を抑えるうえで効果が大きいのが、書類収集の効率化です。前述の戸籍の広域交付制度を使えば、1か所の窓口でまとめて戸籍を請求できるため、郵送費と手間を減らせます。
あわせて活用したいのが「法定相続情報証明制度」です。集めた戸籍一式と相続関係を一覧にした図を法務局に提出すると、法務局が認証した「法定相続情報一覧図の写し」を交付してもらえます。この写しは、戸籍一式の代わりとして、金融機関の手続きや相続登記、相続税の申告などに使えます。
一覧図の写しは無料で必要な通数の交付を受けられるため、金融機関が複数ある場合に特に有効です。金融機関ごとに戸籍一式を提出して返却を待つ必要がなくなり、手続きを同時並行で進められます。
登録免許税の免税措置を漏らさない(申請書への条項記載が必要)
登録免許税の免税措置は、条件に当てはまるにもかかわらず見落とされやすい制度です。前述のとおり、免税を受けるためには申請書に根拠となる法令の条項を記載する必要があり、記載がなければ免税は受けられません。
特に、価額100万円以下の土地に関する免税措置は、令和4年度の税制改正で対象が全国の土地に広がっています。自宅の敷地とは別に、地方に評価額の低い土地を相続しているようなケースでは、適用できる可能性があります。
適用期限は2027年(令和9年)3月31日までです。該当しそうな場合は、法務局の案内を確認するか、司法書士や弁護士に相談してみましょう。
相見積もり・無料相談を活用する
専門家の報酬は自由化されており、同じ業務でも事務所によって金額や料金体系が異なります。そのため、複数の事務所から見積もりを取って比較することには意味があります。
比較する際は、金額そのものだけでなく、次の点をあわせて確認しましょう。
- どこまでの業務が報酬に含まれ、どこからが別料金になるのか
- 実費や日当が別途かかるのか
- 調停や審判に移行した場合、追加の費用が発生するのか
- 報酬金がある場合、どのように計算されるのか
また、多くの法律事務所では初回相談を無料としています。無料相談を利用して、見通しと費用の目安を確認したうえで、依頼するかどうかを判断するとよいでしょう。なお、相談が無料でも、実際に依頼した場合には費用が発生します。
「安さ」だけで選ぶと二度手間になることがある
最後に注意点です。費用を抑えることは大切ですが、金額の安さだけで依頼先を選ぶと、かえって高くつくことがあります。
典型的なのが、対応できる業務の範囲を確認せずに依頼してしまうケースです。前述のとおり、他の相続人との交渉や調停の代理ができるのは弁護士だけです。争いが生じたときに、依頼していた専門家では対応できず、改めて弁護士に依頼し直すことになれば、費用は二重になります。
また、報酬が低く設定されていても、実費や追加費用が別途必要で、結果的に総額では変わらないこともあります。見積もりは、総額でいくらになるのかという観点で比較することが大切です。
ご自身のケースで、どこまで自分で進められるのか、どの専門家に何を頼むべきかについては、一度弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
よくある質問・まとめ

- 相続税の申告が必要なのは、遺産総額が基礎控除額を超える場合だけ
- 相続登記は2024年4月から義務化され、怠ると過料の対象になり得る
最後に、費用についてよくある疑問を教えてください。
特に質問の多い4つの点を確認していきましょう。
相続手続きの費用は誰が負担する?
戸籍の取得費用など、相続手続きに共通して必要になる実費は、相続人全員で分担するのが一般的です。民法にも、相続財産に関する費用はその財産の中から支弁する旨の規定があります(民法885条)。
もっとも、誰がいくら負担するかについて明確なルールがあるわけではなく、実際には手続きを進めた相続人が立て替え、遺産分割の際に精算することが多いでしょう。後から争いにならないよう、領収書を保管し、あらかじめ話し合っておくと安心です。
一方、ご自身の代理人として依頼した弁護士の費用は、原則として依頼した本人の負担になります。他の相続人に負担を求められるものではない点に注意が必要です。
相続税は必ずかかる?(基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人の数)
相続税は、必ずかかるものではありません。遺産総額が基礎控除額を超える場合にのみ、申告と納税が必要になります。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。例えば法定相続人が配偶者と子2人の合計3人であれば、3,000万円+600万円×3人=4,800万円が基礎控除額です。遺産総額がこの金額以下であれば、相続税の申告は不要で、税理士に依頼する必要もありません。
なお、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って相続税がゼロになる場合には、申告そのものは必要です。特例の適用を受けるには申告が要件となっているためです。判断に迷う場合は税理士に確認しましょう。
専門家への費用は遺産から支払える?
遺産分割が終わる前の遺産は、相続人全員の共有状態にあります。そのため、他の相続人の同意なく、遺産である預貯金を勝手に引き出して自分の弁護士費用に充てることはできません。
ただし、当面必要な資金については「預貯金の仮払い制度」を利用できます。各相続人は、相続開始時の預貯金額の3分の1に自分の法定相続分を掛けた額(1つの金融機関につき150万円が上限)までは、単独で払戻しを受けられます(民法909条の2)。
また、遺産分割によって取得した財産から、事後的に専門家への費用を支払うことは当然可能です。手元資金が不足している場合は、支払時期について事務所に相談してみるとよいでしょう。
手続きをしないで放置するとどうなる?(相続登記の義務化)
相続手続きを放置すると、費用面でも法律面でも不利益が生じます。
特に注意が必要なのが相続登記です。2024年4月1日から相続登記の申請が義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければならないことになりました。正当な理由なくこれを怠った場合、10万円以下の過料の対象となり得ます。この義務は、2024年4月1日より前に発生していた相続にも適用され、その場合の申請期限は原則として2027年3月31日までです。
また、放置している間に相続人の誰かが亡くなると、その相続人の相続人へと権利が引き継がれ、関係者がねずみ算式に増えていきます。連絡を取るべき相手が増え、戸籍の収集範囲も広がるため、費用も手間も膨らみます。相続手続きは、早く着手するほど費用が安く済むのが実情です。なお、期限までに遺産分割がまとまらない場合には、簡易な「相続人申告登記」を法務局に申し出ることで、ひとまず義務を履行する方法もあります。この申出に登録免許税はかかりません。
まとめ
相続手続きにかかる費用は、ご自身で進める場合は数千円から数万円程度の実費が中心ですが、専門家に依頼すると内容や依頼先によって大きく変動し、数十万円から100万円を超えることもあります。特に、遺産分割協議で揉めている、相続人が多数いる、または相続放棄を検討しているなどの場合は、弁護士への依頼が有効です。
費用を考えるときは、(1)書類などの実費(2)専門家報酬(3)登録免許税や相続税といった税金、の3層に分けて整理すると全体像がつかめます。実費は数千円程度に収まることが多く、総額を左右するのは専門家報酬と、不動産がある場合の登録免許税です。
また、誰に依頼するかを見極めることが、費用を無駄にしないうえで最も重要です。他の相続人との交渉や調停の代理ができるのは弁護士だけであり、もめている、もめそうだという場合には、最初から弁護士に相談するほうが結果的に費用を抑えられることが多いといえます。
専門家に依頼することで、手続きの負担軽減、正確性の確保、そして何よりも相続人間のトラブルを未然に防ぎ、円満な解決へと導くことが期待できます。当事務所には相続手続きに詳しい弁護士が在籍しておりますので、お悩みの方はお気軽にご相談ください。
<参照>
法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」
法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」
裁判所「遺産分割調停」「相続の放棄の申述」
日本公証人連合会「12 手数料」

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