推定相続人と法定相続人の言葉の意味を知ろう
ざっくりポイント
  • 推定相続人と法定相続人とは
  • 推定相続人でも実際に相続人になれない人とは
  • 相続人が誰かを調べるには
目次

【Cross Talk】推定相続人と法定相続人ってどう違うの?

相続についてインターネットで調べると、よく「推定相続人」と「法定相続人」という似た言葉が出てきます。これらはどのように違うのでしょうか。

推定相続人は相続が開始した場合に相続人になる可能性がある方のことです。一方で、法定相続人とは、実際に被相続人が亡くなって相続が開始したときに法律の規定により相続人となる方のことをいいます。

なるほど!もっと詳しく教えてもらっていいですか?

ややこしい推定相続人と法定相続人という考え方について確認しよう

相続に関する説明をするにあたって「推定相続人」という言葉と「法定相続人」という言葉が存在します。また、相続については、相続欠格・相続人の廃除という規定が存在します。

推定相続人と法定相続人の意味を確認する

知っておきたい相続問題のポイント
  • 推定相続人とは
  • 法定相続人とは

まず「推定相続人」と「法定相続人」の言葉の違いについて教えてください。

「推定相続人」はまだ存命である方が、今後亡くなられたときに、法律の規定に従うと相続人となる方のことをいいます。法律上は、「相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう」(民法892条)と規定されています。一方で、「法定相続人」は実際に相続が開始した際に、法律の規定により相続人となる方のことをいいます。

推定相続人とは

推定相続人とは、ある方が亡くなって相続が開始する際に相続人となる方のことです。 相続によって所有権などが移転する効果が発生するのは、被相続人が亡くなったときになります(民法882条)。そのため、亡くなられる前までは相続人は存在しないため、「推定相続人」という表現を用います。 また、推定相続人については、相続人の廃除という規定が存在し、これは相続が開始する前に、今のまま亡くなったら相続人となるであろう「推定相続人」に相続をさせないようにする手続きです。

法定相続人とは

法定相続人とは、相続が開始した場合に法律の規定により相続人となる方のことをいいます。

相続人とは

相続人とは、相続によって被相続人の権利義務を承継する方のことをいいます。

推定相続人・法定相続人の違い

知っておきたい相続問題のポイント
  • 推定相続人はまだ相続が開始していない段階
  • 法定相続人は被相続人が亡くなって相続が開始した段階

推定相続人と法定相続人は何が違うのですか。

推定相続人と法定相続人の違いは、すでに相続が開始しているかどうかという点にあります。推定相続人はまだ相続が開始していない場合、法定相続人はすでに相続が開始した場合の用語と区別することができます。

推定相続人と法定相続人は、その順位や範囲についての基本的なルールに違いはありません。
両者の違いは、すでに相続が開始しているかどうかというところにあります。

推定相続人は、まだ相続が開始していない場合に、現時点で被相続人が亡くなって相続が開始したとすると相続人になる方のことをいいます。
あくまで現時点における推定ですので、その後の事情の変化によって、推定相続人の範囲が変わることもあります。たとえば、離婚・離縁によって配偶者・養子であった者が推定相続人ではなくなったり、推定相続人が被相続人よりも先に亡くなったため、推定相続人の子どもが代襲して推定相続人になったりすることがあるのです。

これに対し、法定相続人は、すでに被相続人が亡くなって相続が開始した段階において、法律の定めに従って相続人になる方のことをいいます。

推定相続人の範囲

知っておきたい相続問題のポイント
  • 推定相続人と法定相続人の順位、範囲は同じ
  • 相続人には配偶者相続人と血族相続人の2種類があり、後者には順位がある

推定相続人になるのはどのような方ですか。

推定相続人の範囲と順位は、法定相続人の範囲と順位と同じです。被相続人に配偶者がいる場合は必ず配偶者が相続人になります。また、親族が相続人になる範囲については、子ども、直系尊属、兄弟姉妹と定められており、この順位に従って相続人になります。

推定相続人になる方の範囲や順位は、法定相続人の範囲と順位と同じで、民法の規定に従って決まります。
被相続人の配偶者は常に相続人になります。
被相続人と親族関係のある方が全て相続人になるわけではなく、相続人の範囲は被相続人の子ども(子どもが死亡しているときは、孫など子どもの直系卑属)、直系尊属(父母・祖父母等)、兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡しているときは兄弟姉妹の子ども)に限られます。そのため、従兄弟や兄弟の孫等は親族関係があっても相続人にはなりません。
血族相続人には順位があり、上に挙げた順に相続人になり、先順位の相続人がいない場合に高順位の方が相続人になります。

たとえば、被相続人に配偶者、母、弟がいる場合の推定相続人を考えてみましょう。
まず、配偶者は常に相続人になります。子どもがいないため直系尊属である母が相続人になります(弟は先順位の母がいるので相続人になりません)。したがって、現時点における推定相続人は、被相続人の配偶者、母ということになります。
その後、相続の開始前に被相続人の母が亡くなった場合、その時点での推定相続人は被相続人の配偶者と、先順位の相続人がいなくなったことで相続人になった弟、ということになります。

推定相続人でも相続人になれない場合を確認しよう

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続欠格と相続人の廃除
  • 相続欠格事由の発生・相続人の廃除がされた場合の代襲相続

推定相続人であれば相続人に必ずなれるという訳ではないのですね。

はい、推定相続人に対して相続人の廃除という手続きをすることによって、相続人から外してしまうことが可能です。

推定相続人であっても、被相続人が亡くなったときに、相続人になれなくなる場合を知っておきましょう。

相続欠格

相続に関して背信性の高い行為をした相続人の相続権を剥奪する制度が相続欠格です。 民法891条に規定されており、次の5つのことを行うと相続人となることができません。 1つ目は、自分の相続が有利になるよう人を故意に死亡させた場合や、死亡させようとして刑に処された場合です。 被相続人を殺害して相続することを認めるのは妥当でないですし、他人を殺害することによって自分に相続が回ってくる・相続分が増えることになるのは妥当ではありません。

2つ目は、被相続人が殺害されたことを知っていながら告発しなかったような場合です。 3つ目は、詐欺または強迫によって、被相続人が遺言書を作成することを妨げた場合です。その裏返しとして、4つ目は、詐欺または強迫によって、被相続人に遺言書を作成させた場合です。

最後に、遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿したような場合です。このような事項にあてはまることをすると、特に家庭裁判所に請求をすることもなく、相続欠格として相続人になることはできなくなります。

相続人の廃除

相続欠格に該当するようなことを行っていなくても、例えば非行に走って親や兄弟に多大な迷惑をかけていたような場合に、親としてはその子どもに相続をさせたくない、と考える場合もあります。 そのような場合に、推定相続人の相続権を剥奪するのが相続人の廃除という手続きです。慎重を期すため、家庭裁判所が相続権を奪うことが妥当かどうかを判断して行います(民法892条)。

代襲相続という規定を知っておく

相続欠格に該当する・相続人として廃除されたというような場合には、その方は相続することができなくなります。しかし、相続欠格に該当する人・相続人として廃除された方に子どもがいる場合、本来その方が受け取るべきだった相続分を子どもが受け継ぐことができ、これを代襲相続といいます。なお、代襲相続をした方は、他の相続人がいるような場合には共同相続をします。

推定相続人の廃除を受けた場合

遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をしたり、重大な侮辱を加えたり、推定相続人にその他の著しい非行があったときは、推定相続人の廃除によって、その推定相続人の相続する権利を失わせることができます。

廃除の対象が遺留分を有する推定相続人に限定されているのは、遺留分を有しない相続人(兄弟姉妹やその子ども)については、遺言で相続財産を一切取得させないことができ、あえて廃除を認める必要がないためです。

なお、廃除の効果が及ぶのは廃除を受けた方だけで、廃除された方に子どもがいる場合は、廃除された方に代わってその子どもが代襲して相続人になります。

推定相続人と法定相続人が誰かを調べるためには

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続人が誰かを調べる方法

父の相続対策を考えているのですが、父は一度離婚をしており、前回結婚をしていたときにも子どもがいたとのことでした。私たちどころか父も現在の連絡先がわからないとのことなのです。誰が相続人なのかはどうやって調べれば良いでしょうか。

戸籍を取り寄せることで可能です。実例を紹介しますのでやり方を見てみましょう。

相続対策のために推定相続人が誰かを知りたいけれど、相談者様のように離婚歴があるなどして自分たちの知らない相続人がいる場合があります。 このような場合に推定相続人を探す方法を説明します。なお、相続が開始して法定相続人を調査する場合も同様の方法で行います。

相続人が誰かを調べるためには戸籍を調査する

相続人が誰かを調べるためには、戸籍を調査する必要があります。 例えば、Aさんは大阪市の両親元で出生し、大阪市内でBさんと結婚し子Cさんをもうけましたが離婚、東京に出てきたためDさんと結婚し子EさんFさんをもうけたとします。

このとき、Aさんが亡くなったときには、配偶者であるDさんと、子CさんEさんFさんの4人が法定相続人となります。Cさんのように、離婚した妻の子どもであるからといって法定相続人から除かれるわけではありません。 このときに、現在の東京にあるAさんの戸籍だけだと、東京に移ってきてからDさんと結婚しEさんFさんをもうけたことまでしか記載されていないことになります。 戸籍謄本を順番に取り寄せていくと、結婚をして新しい戸籍が作成された大阪市での除籍謄本に、結婚をして子どもがいる事実が記載されている可能性が高いのです。

事例をもとに戸籍の調査の仕方を紹介

上述の例をもとに考えてみましょう。 まず、Aさんの現在の戸籍があるところで、戸籍全部事項証明書を取得します。これには、改製という記載があったので、改製原戸籍謄本を取得します。

改製原戸籍謄本には大阪市の住所より転入してきたこと、筆頭者がAさんであることが確認できるので、大阪市の除籍謄本を取り寄せます。大阪市の除籍謄本を取り寄せたところ、妻Bさんと結婚の後Cさんをもうけていることが確認できます。

この戸籍には、Aさんの父(または母)が筆頭者となっている同じ大阪の別の住所の戸籍から転入してきたことが確認できますので、その除籍謄本を取り寄せます。 これでAさんには、CさんDさんEさんFさんの4人が相続人で、他に相続人がいないと確定できます。

推定相続人に財産を相続させたくない場合の対処法

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 推定相続人に財産を相続させたくない場合の対処方法
  • 廃除をするほか生前贈与や遺言で相続させない方法

どうしても遺産を相続させたくない相続人が居るのですが…

廃除の申立てをしたり、生前贈与や遺言で財産を相続する人を決めてしまうのが良いでしょう。

推定相続人に相続させたくない場合にはどのような方法があるのでしょうか。

推定相続人の廃除を申立てる

推定相続人である方の相続権を奪う唯一の制度が、推定相続人の廃除(民法892条)です。
(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
推定相続人の廃除は、
・被相続人に対して虐待をした
・被相続人に重大な侮辱を加えた
・推定相続人に著しい非行があった
ときに家庭裁判所に対して請求をします。 廃除の請求をすることができる場合は限られているので、注意が必要です。 また、上記のような事情があっても、相続権を奪うのが適切かどうかについては慎重に判断されます。 そのため、推定相続人の廃除が認められることは、よっぽどの事情がない限りないと考えておくべきです。

遺言によって推定相続人を廃除する

廃除は生前に行うほか、遺言で行うことが可能です。
(遺言による推定相続人の廃除)
第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

ただし、遺言で行うということは、本人は既に亡くなっています。 そのため、家庭裁判所に対して虐待・侮辱・非行に関する資料を追加で提出することが困難になることから、もともと難しいとされる推定相続人の廃除が、さらに難しくなるといえます。 どうしても推定相続人の廃除をしたい場合には、遺言ではない生前に行うことが望ましいです。

なお、廃除については、「遺産を相続させたくない!推定相続人の廃除とは?」で詳しくお伝えしていますので、参考にしてください。

第三者への遺贈や死因贈与で相続財産を無くす

相続人への相続分の分配は、相続財産に対して一定の割合で行われます。 もし相続財産が全くないのであれば、相続させたくない推定相続人に相続するものがないことになります。 そのため、当該推定相続人以外の方への遺贈や、死因贈与、生前贈与を行うことを検討しましょう。 なお、その相続人が兄弟姉妹である場合には、遺留分がないので遺贈・死因贈与・生前贈与によって何も主張できませんが、子・親などの直系尊属である場合には遺留分があり、受遺者・受贈者は遺留分侵害額請求を受けることになる点で注意が必要です。

推定相続人の廃除についての詳しい内容は、こちらをご確認ください。 「遺産を相続させたくない!推定相続人の廃除とは?」

推定相続人の廃除の手続きの流れ

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 推定相続人の廃除をするには家庭裁判所の手続が必要
  • 廃除は遺言によってすることもできる

推定相続人を廃除する手続きの流れを教えてください。

推定相続人を廃除するには、家庭裁判所の手続が必要になります。推定相続人の廃除は生前に行うのが一般的ですが、遺言ですることもできます。遺言でする場合でも、家庭裁判所の手続が必要であることや手続の流れに変わりはありません。

推定相続人を廃除するには、家庭裁判所の手続が必要です。
具体的には、まず被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に、推定相続人の廃除の審判を申立てます。家庭裁判所に申立てをするには、申立書のほか、廃除原因に関する資料、被相続人の戸籍謄本、推定相続人の戸籍謄本、収入印紙、郵券などが必要になります。

申立てを受けた家庭裁判所は、事実関係の調査や排除を求められた推定相続人の陳述聴取などの手続きを経て、 廃除原因があると判断した場合には、推定相続人の廃除の審判をします。
この審判の確定から10日以内に、役所に推定相続人の廃除の届け出をすれば、手続は完了です。

推定相続人の廃除は被相続人が生前に自身で行うのが一般的ですが、遺言で推定相続人を廃除する意思を表示し、遺言執行者を指定しておくことで、被相続人の死後にすることもできます。
被相続人の死亡によって遺言の効力が生じると、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の申立てをします。
その後の手続の流れは、生前に行う場合と基本的に同じです。

このように両者の手続には大きな違いはありませんが、それぞれメリット、デメリットがあります。
生前に行う場合、虐待や侮辱を受けるか、推定相続人の著しい非行をよく知っている被相続人自身が行うため、廃除原因を立証しやすいというメリットがありますが、廃除したことが推定相続人に知られると逆恨みされるなどさらなるトラブルに発展するおそれがあるというデメリットがあります。これに対して遺言で廃除を行う場合のメリット、デメリットは、生前に行う場合のメリット、デメリットの裏返しということができます。
したがって、どちらがふさわしいかはケースバイケースと言えるでしょう。

まとめ

このページでは、推定相続人・法定相続人という言葉の意味と、相続人の調査方法、推定相続人に相続をさせたくない場合にとるべき方法を中心にお伝えしてきました。 不明なことがある場合には、早めに弁護士に相談してみるようにしてください。

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この記事の監修者

弁護士 岩壁 美莉第二東京弁護士会 / 東京第二弁護士会 司法修習委員会委員
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