相続欠格とはどのような時になるのか?基本的な仕組みや廃除との違いなどを知ろう
ざっくりポイント
  • 相続欠格とは
  • 廃除との違い
  • 相続欠格の要件の詳しい内容
目次

【Cross Talk 】相続欠格について詳しく知りたい

先日父が亡くなり、母・私・弟の3人で相続をしました。お恥ずかしい話なのですが弟の素行が良くなく、亡くなる寸前に父を脅迫して無理矢理遺言書を作らせていました。さすがにこのような場合に弟が相続に加わるのは納得いきません。調べたところ「相続欠格」という制度があることを知ったのですが、具体的な内容について教えてもらえませんか?

お伺いしている範囲では相続欠格の可能性はありますね。詳しい要件を見てみましょう。

相続欠格とはどのような制度か?

相続をして遺産を手にいれたい、という理由で、自分の父親を殺害したり、脅迫をして遺言書を書かせたりするような場合があったとします。このような場合、相続人なので相続によって遺産を手にすることができる、という結論はおかしい、というのは誰もが納得をするところでしょう。

民法には、一定の事由が発生した場合に相続人の地位を失わせる「相続欠格」という制度があります。相続人となることができないものとして同様に論じられる廃除との違いや、どのような場合に相続欠格となるかなどについて知っておきましょう。

相続欠格とは

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続欠格とはどのようなものか
  • 廃除とどのように違うのか

まず、相続欠格という制度を教えてもらえますか?

相続人に相続させることが適切ではない一定の事情が発生した場合に、相続人の地位を失わせる制度のことです。

まず、相続欠格とはどのようなものかをざっと知りましょう。

相続欠格の意味

相続欠格とはどのような制度なのでしょうか。 相続において前述したように、被相続人となる人を殺害したような場合や、被相続人の遺言に圧力を加えたような場合に、その人に相続をさせるのは良いこととはいえません。

殺害したような場合は殺人罪で逮捕されますし、遺言書を無理やり作成させたような場合には強要などの犯罪として逮捕されますが、それだけでは相続人としての民事上の効力を否定することはできません。 そのため、相続においては相続欠格という規定を置いて(民法第891条)、相続人となることができない、とすることによって、相続をさせないという措置がとられています。 相続人の地位がなくなるので、相続人であることが前提の遺留分侵害額請求をすることができなくなる点も併せて知っておきましょう。

また、相続欠格となった人に子どもがいるような場合には、代襲相続という制度によって、その子どもなどが相続をすることができるようになっていることも併せて知っておきましょう。

相続欠格と相続廃除の違い

相続人になることができなくなる制度としては、相続廃除という制度が一緒に紹介されることが多くあります。 相続廃除は民法第892条所定の事由がある場合に、家庭裁判所の判断のもと相続人の権利を失わせる制度です。

相続欠格との違いとしては、相続欠格は後述する法定された条件をみたした場合に、裁判所の判断を経るまでもなく相続人となることができなくなることになっている点にあります。

相続欠格の確認方法

よくある質問として、誰々が相続欠格になっていることを確認する方法はあるのか?という内容です。 もし相続欠格になったとしても、例えば、戸籍に記載される、役所や裁判所から証明書が発行されるということはありません。

そのため、第三者が当該相続で、相続人が相続欠格になっていることを確認することはできません。

相続欠格の証明

では、相続欠格にある場合に、それを証明するためにはどのようにすれば良いのでしょうか。 この相続欠格の証明は、例えば、遺産の不動産の登記名義を変える際に必要になります。 相続登記においては、相続人全員がきちんと遺産分割協議に参加していることを前提に、登記申請書と一緒に遺産分割協議書、相続人に関する戸籍などを提出します。

この時に、相続欠格の人は相続欠格だからといって遺産分割協議書から抜いてしまうと、なぜ遺産分割協議から抜けているのか不明となり、そのままだと遺産分割協議が適法にあったと認められず、不動産登記の受付ができなくなります。

そのため、ある相続人は相続欠格となっている、という事を証明するために、証拠書類が必要となります。 証拠書類には、相続欠格事由ごとに異なりますが、次のようなものがあります。

  • 刑事裁判の判決書
  • 相続人の地位にないことの確認の訴えの判決書
  • 相続欠格になった本人が認めているような場合には、相続欠格証明書

5つの相続欠格事由

知っておきたい相続問題のポイント
  • どのような場合に相続欠格となるかの5つの事由を知っておく

では、どのような場合に「相続欠格」となるのですか。

相続欠格になる5つの事由について知っておきましょう。

どのような事由があると相続欠格となるのでしょうか。5つの相続欠格事由を確認しましょう。

故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられたこと

まず、被相続人や先順位若しくは同順位にある人を殺した・殺そうとしたということです。 例えば、被相続人を殺すことがこれにあたります。 また、被相続人に子どもが3人いる場合に、子どもが他の子どもを殺すような場合も、同順位にある人を殺したとしてこれにあたります。

また、被相続人の両親は既に他界しているような場合、被相続人の子どもを殺害すれば兄弟姉妹が相続人になるので、被相続人の弟が、被相続人の子どもを殺す行為は先順位にある人を殺す行為になります。

次にこの殺人または殺人未遂は「故意」でなければならないので、交通事故など過失によるものは相続欠格となりません。 最後に、この殺した行為について刑に処せられた、つまり刑事事件での裁判が確定して有罪になった場合をいいます。

執行猶予の場合は刑の執行を猶予するにすぎないので刑に処せられていることには変わりなく、相続欠格となります。

亡くなった方が殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかったこと

被相続人が殺害されたことをしっているような場合に、告発・告訴といった行為をしなかったような場合には相続欠格になります。

ただし、告訴・告発が期待できないような事情があるような場合にまで相続欠格となるのは適切ではないため、相続人が幼齢などで是非弁別ができない場合や、犯人が配偶者である場合、直系の血族にあるような場合、告訴・告発しなかったとしても相続欠格とはなりません。

詐欺または強迫によって、亡くなった方が遺言書を作成することなどを妨げたこと

亡くなった方が遺言書を作成しようとしている場合に詐欺・強迫という手段を使って遺言書を作成するのを妨げたような事情がある場合には、相続欠格となります。

詐欺または強迫によって、亡くなった方に遺言書を作成させるなどしたこと

亡くなった方に詐欺・強迫という手段で遺言書を無理やり作成させるような場合にも相続欠格となります

亡くなった方の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿したこと

亡くなった方に遺言書がある場合に、この遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿という行為を行った者は相続欠格となります。

相続廃除の方法と手続き

知っておきたい相続問題のポイント
  • 生前の廃除申立てをする
  • 遺言書で廃除する旨の記載する

相続人の廃除はどのような方法・手続きで行うのですか?

生前に家庭裁判所に申立てをして請求する方法と、遺言で廃除をする方法がありますが、できれば生前に申立てを行いましょう。

相続人の廃除を行う方法・手続きを確認しましょう。

生前に申立てをする

相続人の廃除は家庭裁判所に申立てをして請求します。
(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
申立ては住所がある地域の家庭裁判所に対して行います(東京23区の場合には東京家庭裁判所)。 申立書のほかに、相続人・廃除の対象となる推定相続人の戸籍謄本を添付して、800円の収入印紙を申立書に貼付して、予納郵券(家庭裁判所が使う郵便切手)を添付して行います。

予納郵券については家庭裁判所に問い合わせをして確認してください(東京地方裁判所の場合には、500円✕2枚+100円✕2枚+82円✕8枚+10円✕20枚+5円✕2枚+2円✕5枚=2,076円が必要です)。

家庭裁判所では、廃除をするのが妥当かどうかを、申立人・推定相続人の意見を聞きながら審議を行います。 なお、相続人の廃除は、相続人の地位を失わせるものなので、慎重に審理されますし、相続人の地位が剥奪されるという結果の大きさから廃除が認められるのは多くはありません。 そのため、相続人の廃除をより確実に行いたい場合には、弁護士に相談・依頼して、手続きを進めることをおすすめします。

遺言書に廃除する旨の記載をする

遺言書に廃除をする旨の記載がある場合には、指定された遺言執行者が廃除の請求を家庭裁判所に行います。

廃除を行うには必ず遺言執行者を選任する必要があるので注意しましょう。 上述したとおり、廃除は認められづらく、しっかり時系列で状況を整理して、証拠を集めておく必要があります。 死後には、状況を整理することや、証拠の収集が難しくなることもあるので、できる限り生前に廃除を申立てるのが望ましいといえます。

相続欠格や相続廃除になるとどうなるか

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 相続欠格になったらどうなるか
  • 相続廃除になるとどうなるか

相続欠格・相続廃除となるとどうなるのでしょうか。

どちらの場合も相続人ではなくなります。

相続欠格・相続廃除となるとどうなるかを確認しましょう。

相続人ではなくなる

相続欠格に該当する事由がある場合には、相続廃除となる場合と異なり、特に手続き等は必要ではなく、相続人ではなくなります。 また、相続人の廃除の場合も、廃除された方は相続人ではなくなります。

代襲相続が発生する

相続欠格・相続人の廃除がされた場合、その方は相続人ではなくなります。 この場合には、代襲相続が発生し、その相続人の子どもが、本来相続する分であった相続分を相続することになります。

遺産分割のやり直し

遺産分割をしたものの、相続欠格事由が発覚した場合や、遺産分割後に廃除の審判が確定した場合には、もともと行った遺産分割は相続人全員で行ったものではなくなります。 そのため、遺産分割をやり直す必要があります。

遺言書の中で相続人と扱われていても相続はできない

遺言書を作成するときに、遺言書の中では相続人として記載されていることがあります。 しかし、遺言書に記載されていたからといって相続人になるわけではなく、法律上は相続人ではなくなっているので、相続できないことに変わりはありません。

相続欠格・相続人の廃除は特定の被相続人との関係のみ

相続欠格・相続人の廃除は、特定の被相続人との関係についてのみ発生します。 例えば、父・母・子と家族がいる場合に、子が父との関係で相続欠格・相続人の廃除をされた場合でも、母が亡くなった場合の母の相続については、相続欠格・相続人の廃除となるわけではありません。 そのため、父が保有していた自宅があるとして、父が亡くなったときに相続欠格で相続できなくても、自宅は母が相続している場合には、母が亡くなってその相続で自宅を手に入れることは可能です。

まとめ

このページでは、相続欠格と相続人の廃除についてお伝えしてきました。 相続において不適切とされる5つの類型に該当する行為を行った場合には、相続ができなくなるという制度が相続欠格です。 また、家庭裁判所の判断を経て相続人ではなくなる制度が相続人の廃除です。 相続欠格や相続人の廃除は、どのように事実を証明するかなど、難しい点が多いので、弁護士に相談するようにしてみてください。

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