遺言を作成する場合の注意点について解説します。
ざっくりポイント
  • 自筆証書遺言を作成するには法が定める要式を守り、不明瞭な記載はしない
  • 自筆証書遺言は遺留分の取り扱いや保管方法に注意する
  • 公正証書遺言を撤回するには、新しい有効な遺言を作成する
目次

【Cross Talk 】遺言を作成するには、どんなことに注意すべき?

相続に備えて遺言を作成しようと思うのですが、どんなことに注意する必要がありますか?

自筆証書遺言は自分で作成できますが、要式をきちんと守ったり内容を明確にしたりすることが重要です。公正証書役場で作成手続をする、公正証書遺言という方法もあります。

自筆証書遺言は手軽そうですが、注意点も多そうですね。公正証書遺言の注意点もあれば教えてください!

自筆証書遺言や公正証書遺言を作成する場合の注意点は?

相続に備えて遺言書を作成する場合、せっかくの遺言が無効にならないように注意して作成しましょう。 自筆証書遺言は方法として手軽ですが、法律が定める要式を守らないと遺言としての効力が認められないなど、いくつかの注意点があります。より安全に遺言を作成したい場合は、公正証書遺言という方法もあります。 そこで今回は、自筆証書遺言や公正証書遺言を作成する場合の注意点を解説します。

自筆証書遺言の場合の注意点

知っておきたい相続問題のポイント
  • 自筆証書遺言は法律の要式を守らないと遺言の効力が認められない
  • 不明瞭な記載をすると争いの原因になる可能性があるので、明確に記載する

自筆証書遺言を作成しようと思うのですが、どのような注意点がありますか?

法律が定める要式を満たさないと、せっかく作成しても無効になってしまうので注意しましょう。また、遺言の内容が不明瞭だと争いのもとになる可能性があります。

注意点1:要式は必ず守る

遺言書を作成する場合、法律が規定する要式に沿ったものでなければ遺言の効力が生じません。せっかく遺言書を作成しても、遺言の効力が生じなければ意味がないので、要式は必ず守りましょう。

自筆証書遺言を作成するうえで守らなければならない基本的な要式は、以下のとおりです(民法第968条第1項)。

・遺言の全文を遺言者が自書する ・遺言を作成した日付を自書する ・氏名を自書して印を押す

もっとも、相続財産の目録を添付する場合には、その目録については自署することを要しないとされています(民法第968条第2項)。

また、自筆証書遺言の訂正や削除をする場合も、以下のような要式を守る必要があります(民法第968条第3項)。
・遺言者が訂正を行う ・変更する箇所を指示し、変更した旨を付記する ・付記した部分に署名し、変更した箇所に印を押す

自筆証書遺言は自分で作成できるものの、要式を全て守ることは簡単ではない場合が少なくありません。自筆証書遺言を作成する場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

注意点2:不明瞭な記載は争いのもとに

自筆証書遺言は自分だけで作成することができますが、逆に言えば、記載内容について他の人がチェックしなくても作成できてしまうということです。

自筆証書遺言の記載が不明瞭な場合は、被相続人が亡くなって相続が開始した際に、遺言書の記載の意味をめぐって争いになる可能性があります。

たとえば、「遺産については全て長男に任せます」と記載された遺言があるとします。

この遺言の意味するところは、相続財産の全てを長男に相続させるのか、相続財産に関する手続の全てを長男に任せるのか、不明瞭です。遺言の内容が不明瞭なことで、長男と他の相続人の間で遺産をめぐって争いになる可能性があります。

自筆証書遺言を作成する場合は、記載された文章が不明瞭にならないよう、弁護士などの専門家に内容を確認してもらうことをおすすめします。

注意点3:高齢者の場合

高齢者の場合は、認知症の兆候などによって判断能力が低下し、自筆証書遺言を作成するのが難しくなる場合があります。

また、自筆証書遺言を作成したとしても、「認知症で判断能力がないのに、他の相続人が遺言書を無理矢理書かせた」などと相続人が主張して、遺言の効力が争われる可能性もあります。

なお、高齢で自書ができない場合は、基本的に自筆証書遺言を作成することはできません。自筆証書遺言は遺言者が自書しなければならないことが、法律で規定されているからです。

自書ができない場合は、公正証書遺言の方法で遺言をすることをおすすめします。公正証書遺言の場合は、遺言の内容を伝えれば公証人が作成してくれるので、自書ができなくても遺言が可能です。

また、公正証書遺言は公証人や証人が、遺言者の意思や状態をきちんと確認したうえで遺言書を作成するので、遺言の内容が気に入らない相続人などが遺言の有効性について争うことを防止しやすくなります。

注意点4:遺留分

遺言を作成する場合、相続財産に対する最低限の取り分である遺留分に注意することが重要です。

遺留分とは、一定の相続人(遺留分権利者)について、被相続人の財産から一定の割合を取得できることが法律上認められている取り分のことです。

たとえば、被相続人が亡くなってその配偶者と子の2人が法定相続人の場合、配偶者と子はそれぞれ相続財産の1/4を取得する遺留分が法律上認められています。

遺留分は遺言よりも優先されるので、たとえば「子に財産を全て相続させる」という内容の遺言をしたとしても、被相続人の配偶者は、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを子に請求することができます(遺留分侵害額請求権)。

自筆証書遺言は自分だけでも作成できるので、遺留分については見落としがちです。遺留分をめぐる争いが予想される場合は、弁護士などの専門家に早めに相談するのがおすすめです。

注意点5:保管方法

自筆証書遺言の作成が終わったら、相続が開始するまで遺言書を紛失しないようにきちんと保管しなければなりません。

自筆証書遺言を紛失してしまった場合、遺言書が存在しないのと同様の状態なので、遺言の効力が認められません。また、遺言者が紛失してしまうだけでなく、遺言を気に入らない相続人などが破棄しないように注意する必要があります。

自筆証書遺言を安全に保管する方法として、自筆証書遺言書保管制度があります。2020年7月に始まった制度で、自筆証書遺言を法務局が保管してくれます。

従来は自分で保管方法を確保するしかなかった自筆証書遺言を利用しやすくしたもので、遺言書を安全に保管するには有用です。ただし、自筆証書遺言の要式や内容までは確認してくれない点には注意しましょう。

自筆証書遺言の紛失によるトラブルを防止するには、相続に詳しい弁護士に遺言執行者(遺言の内容を実現するための手続を行う者)になってもらい、遺言書の保管を委託する方法もあります。

公正証書遺言の場合の注意点

知っておきたい相続問題のポイント
  • 公正証書遺言は安全性が高いが、専門家に依頼したほうがスムーズに進みやすい
  • 公正証書遺言を撤回するには、そのための公正証書遺言を新しく作成するのが安全

やはり公正証書遺言にしようかと思うのですが、注意点はありますか?

公正証書遺言は安全性が高いですが、専門家に依頼したほうがスムーズに進みやすくなるでしょう。ただし安全な分、遺言を撤回するための手続は少し複雑です。

専門家に依頼したほうがスムーズ

公正証書遺言とは、公証役場の公証人の関与によって遺言を作成する方法です。公正証書遺言を作成するには、公正証書役場で手続をする必要がありますが、自筆証書遺言と比べて以下のメリットがあります。
・公証人が要式や内容を確認するので、遺言としての効果が無効になる心配がない ・遺言書が公証役場で保管されるので、紛失や改ざんを防止できる
公証役場や公証人が手続をサポートしてくれるので、基本的には注意点はありませんが、遺産の金額が大きかったり遺言の内容が複雑だったりする場合は、弁護士などの専門家に依頼するほうがスムーズに進みやすくなります。

遺言をやり直す場合

一度遺言をした後にやり直したくなった場合、自筆証書遺言は遺言書を破棄するだけでよいですが、公正証書遺言の場合は少し複雑です。

公正証書遺言の原本は公証役場に保管されているので、遺言書を破棄することができません。そこで、古い遺言を撤回するために、新しい遺言をします。新しい遺言をすれば、古い遺言よりも優先されるからです。

公正証書遺言を撤回するための方法は、公正証書遺言である必要はありません。新しく自筆証書遺言を作成すれば、古い公正証書遺言を撤回することができます。

ただし、新しく作成した自筆証書遺言の要式が守られていない場合は、遺言の撤回の効力が認められないので注意しましょう。万全を期すのであれば、遺言の撤回も公正証書遺言の方式で行うことをおすすめします。

まとめ

自筆証書遺言は法が定める要式を満たさなければならないうえに、不明瞭な記載をすると相続をめぐって争いになる可能性があるので、弁護士などの専門家に相談したうえで作成するのがおすすめです。 公正証書遺言は自筆証書遺言に比べると無効になりにくい、紛失や改ざんのリスクがないなどのメリットがありますが、遺言の内容が複雑な場合や遺言の撤回をする場合などは、同じく弁護士に相談することをおすすめします。

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この記事の監修者

弁護士 岩壁 美莉第二東京弁護士会 / 東京第二弁護士会 司法修習委員会委員
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