理不尽な遺言書に対してどのような主張ができるかを解説いたします。
ざっくりポイント
  • 遺言書の無効を主張する方法として、遺言無効確認訴訟がある
  • 遺留分を侵害された場合、相当する金額の支払いを相手に請求することができる
  • 遺産について理不尽な配分をしなければならない場合は、付言事項やエンディングノートで説明すべき
目次

【Cross Talk 】理不尽な遺言書に納得できない場合、どんな主張ができる?

父が亡くなって遺言書を確認したのですが、兄である長男に全ての遺産を相続させると書かれていました。こんな遺言書には納得できません。

遺言書に納得できない場合は、遺言書の無効を主張する方法があります。遺言書によって自分の遺留分を侵害された場合は、遺留分の金額を請求する方法もありますね。

遺言書に納得できない場合には、色々な主張ができるのですね。それぞれの方法について詳しく教えてください!

遺言書に納得できない場合にどんな主張ができるかと、理不尽な遺言書をしなければならない場合の対策を解説

一人の相続人に遺産を全て相続させるなど、他の相続人からすると、納得できないような内容の遺言書が作成される場合があります。 遺言書の内容に納得できない場合は、遺言書が無効であると主張したり、侵害された遺留分の金銭を請求するなどの方法があるのです。 そこで今回は、理不尽な遺言書に納得いかない場合に、主張できることについて解説いたします。

遺言書が理不尽である場合遺言書の効力を争う

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言書が無効になる場合として、方式を満たしていない場合や、意思能力なく作成された場合がある
  • 遺言書の無効を主張する方法として、遺言無効確認訴訟がある

遺言書の内容に納得いかないので、遺言書の効力を争いたいと思います。どのような方法がありますか?

方式を満たしていない場合や、意思能力なく作成された場合などは、遺言書が無効になります。遺言書の効力を争うには、遺言無効確認訴訟を裁判所に提起する方法があります。

遺言書が無効になる場合

遺言書が無効になる場合として、以下の2つの場合があります。
  • 法律が定める遺言書の方式を満たしていない場合
  • 遺言者に意思能力がない状態で作成された場合
遺言書は法律で定められた方式を満たさなければならず(民法第960条)、方式を満たしていない遺言書は、遺言書としての効力が認められません。 一般的な方式による遺言書の種類は、自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言の3種類があり、それぞれにつき定められた方式を満たす必要があります。

遺言書を作成するには、遺言書が作成された時点において、遺言者(遺言を作成する方)に遺言能力がなければなりません(民法第963条)。 遺言能力とは、遺言書の内容を理解できるだけの判断能力を有することです。 重度の認知症の状態で遺言書を作成した場合などは、遺言能力を有していなかったとみなされる可能性があります。

遺言書が無効であると主張する方法

遺言書が無効であると主張する方法として、遺言無効確認訴訟があります。 遺言無効確認訴訟とは、遺言書が法的に無効であることを裁判所に確認してもらうために、裁判を起こす手続きです。

遺言書が方式に基づいて行われなかったり、遺言能力がないまま作成されたりなど、遺言書が無効になる原因がある場合は、その原因に基づいて遺言無効確認訴訟をします。 裁判の結果、遺言書が無効であるとの判決が確定した場合、その遺言書は法的に無効になります。 なお、一定の家事事件(家庭裁判所が管轄する事件)は、訴訟をする前に調停をしなければならないのが原則であり、これを調停前置主義といいます。

調停とは、中立の立場である調停委員を交えて当事者が協議をして、争いを解決する道を探る手続きです。 調停が成立するには当事者双方の同意が必要であり、同意がない場合は調停から訴訟に移行します。 遺言無効確認訴訟は調停前置主義の対象なので、訴訟を起こす場合は、原則としてまず遺言無効確認調停をしなければなりません。

遺言の内容と異なる遺産分割協議を行う

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言の内容と異なる遺産分割協議を行うことで納得いかない遺言の効力を覆せる
  • 受遺者・遺言執行者がいるときにはこれらの方にも同意をしてもらう必要がある

遺言書がなかったものとして遺産分割協議をすることはできないのでしょうか。

相続人全員が合意できれば可能ですが、受遺者・遺言執行者がいる場合にはこれらの方の合意も必要です。

遺言の内容と異なる遺産分割協議をすることができるのでしょうか。

遺言の内容と異なる遺産分割協議

遺言がある場合には、遺言の内容が法律の規定に優先されることになります。
しかし、相続人全員がこれに反対する場合にまで、遺言の内容を優先しなければならないというのは不合理です。
そのため、遺言の内容と異なる遺産分割を相続人全員が合意のうえで行なった場合には、遺産分割をすることが可能です。

受遺者がいる場合

遺言で相続人以外の者が受遺者になっている場合には、受遺者の同意も必要です。
相続人の意思だけでは受遺者の権利を奪うことは認められていません。
なお、この場合受遺者は遺贈の放棄をすることが基本で、包括遺贈の場合には相続放棄のように家庭裁判所への申述をすることになります。

遺言執行者がいる場合

遺言執行者には、遺言の内容を実現する権利と義務があります。
相続人でこれを奪うことも適切ではないため、遺言執行者がいる場合には遺言執行者の同意も必要となります。

理不尽な遺言書が遺留分を侵害している場合には遺留分侵害額請求を行う

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺留分を侵害された場合、相当する金額の支払いを相手に請求することができる
  • 遺留分侵害額請求をするには、直接相手に請求する方法と、訴訟を起こす方法がある

遺言書によって遺留分を侵害されてしまいました。遺留分を取り戻すにはどのような方法がありますか?

遺産の最低限の取り分である遺留分を侵害された場合は、遺留分を侵害した相手に対して、遺留分侵害額請求をすることができます。

遺留分侵害額請求とは

遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分に相当する金額を相手に請求することです。 配偶者や子どもなど一定の法定相続人には、遺産に対する最低限の取り分を受け取る権利が法律で認められており、これを遺留分といいます。

自分の遺留分を侵害された遺留分権利者(遺留分の権利を有する方)は、遺留分を侵害した相手に対して、侵害された遺留分に相当する金額の支払いを請求することができ、これを遺留分侵害額請求といいます。

遺留分侵害額請求については、「遺留分侵害額(減殺)請求権とは?行使方法、時効、計算方法を解説!」 で詳しく解説していますので、気になる方はご確認ください。

例えば、「長男に遺産を全て相続させる」という遺言書によって、長男が全ての遺産を相続したことで、次男が200万円の遺留分を侵害されたとしましょう。 遺留分を侵害された次男は、遺産を全て相続することで自分の遺留分を侵害した長男に対して、遺留分に相当する金額である200万円の金銭を支払うように請求できます。

遺留分侵害額請求を行う方法とは

遺留分を侵害された場合、まずは遺留分を侵害した相手と直接交渉して、侵害された分の金額を支払ってもらう方法があります。 交渉だけで相手が支払いに応じれば良いのですが、応じない場合は、内容証明郵便を使って相手に請求する方法もあります。

内容証明郵便は、発送した日時や記載した内容が郵便局によって記録されるので、相手に文章を送付したことの証拠にできるのがメリットです。 交渉や郵便による請求でも相手が応じない場合は、裁判所の手続きを利用して相手に請求する方法があります。

遺留分侵害額調停は、調停委員という中立の立場の第三者を交えて、遺留分を請求する側と請求された側が話し合いをして、解決の方法を探ります。 調停の内容に相手が合意すれば遺留分を支払ってもらうことができますが、合意しない場合、調停は成立しません。 相手が調停に応じない場合は、最終的な手段として、遺留分侵害額請求訴訟があります。 遺留分侵害額請求訴訟では、遺留分侵害額請求が認められるかどうかが、訴訟という形で判断されます。

遺言書の無効を主張する場合の遺留分侵害額請求の時効との関係

遺留分侵害額請求をする前に、まずは遺言書の無効を主張することが考えられます。
遺言書の無効を徹底的に争う場合、1年を超える期間になることもあり、この間に遺留分侵害額請求の時効期間である1年を超える可能性があります。
この時効期間については、遺言の無効を争っていたことを理由に延期されるなどはありません。
そのため、遺言の無効を争う場合には、遺留分侵害額請求についても時効にかからないように内容証明で請求をしておくようにしましょう。
なお、遺留分侵害額請求は遺言が有効であることを前提とするものですが、遺留分侵害額請求の内容証明を送ったからといって、遺言を有効と認めたことにはなりません。

遺言書で一見理不尽な配分を行うときに争いを避けるための方法

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 事情があって、遺言書によって理不尽な配分をしなければならない場合がある
  • 理不尽な配分をする場合は、付言事項やエンディングノートで理由を説明すべき

不満を抱く相続人がでるとわかっていますが、事情があって、不平等な配分をしなければなりません。相続人の争いを避ける方法はありますか?

事情があって理不尽な配分をしなければならない場合は、付言事項やエンディングノートを利用して、理由を説明することをおすすめします。

どうしても理不尽な割り振りをしなければならない場合もある

遺産をどのように分けるかを遺言書で指定する場合、できるだけ平等な割り振りをしたほうが、相続争いになる可能性は低くなります。

しかし、どうしても理不尽な割り振りをしなければならない場合もあります。 例えば、長男が事業に失敗して借金に苦しんでいるので、他の相続人よりも多く遺産を与えるなどです。

遺言書の付言事項・エンディングノートで理由を説明する

理不尽な割り振りをしなければならない場合は、遺言書の付言事項やエンディングノートで理由を説明すると、相続争いを防止しやすくなります。 遺言書の付言事項とは、遺言書に記載された事項のうち、法的な効力が生じない事項のことです。

付言事項には法的な拘束力はありませんが、遺族にあててメッセージを書いたり、なぜそのような遺言書を作成したかを説明したりなど、様々な使い方があります。 エンディングノートは、遺言書とは別に作成するノートであり、自分の死後に備えて伝えておきたいことを記載します。 エンディングノートに何を書くかは自由ですが、自分が病気になったときの介護方法など、生前の事項について記載することもあります。

理由が不明なまま、遺言書によって理不尽な割り振りだけを指定された場合は、相続人が不満を抱いて争いに発展する可能性が高くなります。 しかし、付言事項やエンディングノートを使用して、なぜ理不尽な割り振りをしなければならないかを説明すれば、相続人が納得してくれる可能性が高まるのです。

納得できない遺言書があった場合の注意点

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 納得できない遺言書があった場合の注意点
  • 検認・相続税の修正申告の可能性があること・遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合など

納得できない遺言書があったときの取り扱いで、何か注意すべき点はありますか?

いくつか注意点があるので確認しましょう。

遺言書に封がしてある場合・自筆証書遺言書・秘密証書遺言書の場合の検認

遺言書に封がしてある場合の開封や、みつかった遺言書が自筆証書遺言書(自筆証書遺言書保管制度を利用したものを除く)・秘密証書遺言である場合には、家庭裁判所の検認を受ける必要がある点に注意しましょう。
検認を受けない場合には過料を科すことにもなっており、その後の手続きでも検認を受けたときの検認済証が必要になるので注意が必要です。

遺言書の破棄・偽造をすると相続権を失う

見つかった遺言書が納得いかないからと破棄・偽造を行うと相続権を失います。
民法は相続人としてふさわしくない行為を行なった者について相続欠格というものを定めており、遺言書を破棄・隠匿・偽造・変造したような場合には相続欠格となる旨を規定しています。
遺言が無効になったとしても相続権を失うことになり何も相続できなくなるので注意が必要です。

相続登記をやり直す場合もある

遺言に沿って相続登記などをしていた場合に、遺言が無効になったり新たな遺産分割協議を行なったりすることで、相続登記をやり直す場合もあります。
この場合、遺言に沿った相続登記の抹消を行なって、相続登記を行う前の状態に戻したうえで、新しい相続登記を行う必要があり、登録免許税や司法書士への費用がかかることになります。

相続税の修正申告を行う必要がある場合もある

相続税の修正申告を行う必要がある場合があることに注意が必要です。
遺言により多くの遺産を得て居た方が、遺言が無効となり遺産分割したことで得られる遺産が減ることになります。
遺言に基づく相続税申告・納税をしていた場合に、あらたに遺産分割をした内容での修正申告をして還付を受けた場合、遺産が増えた相続人は修正申告をしてその差額を納める必要があります。

既に払い戻した預貯金は取り消せない

公正証書遺言の内容に基づいて預貯金を解約して相続人・受遺者が金銭の払い戻しを受けた場合、あとから遺言が無効になった・遺産分割協議をやりなおした場合でも、払い戻しを取り消すことはできないとされています。
この場合、預貯金を取得した相続人などに対して金銭を請求することになります。

遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合

遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合でも、遺言書の内容は相続に関する規定に優先するため、遺言書の内容に従うことになります。
基本的には遺言書の内容を実現するようにすることになりますが、相続人全員や受遺者・遺言執行者の同意を得て既に行なった遺産分割協議の内容で相続を確定する旨を決めても良いです。

まとめ

遺言書が方式を満たさない場合や、遺言能力を欠いた状態で作成された場合は、遺言無効確認訴訟を起こすことで、遺言書の無効を主張できます。 遺言書に基づく相続によって遺留分が侵害された場合は、侵害した相手に対して、遺留分侵害額請求をすることが可能です。 遺産についてどうしても理不尽な割り振りをしなければならない場合は、付言事項やエンディングノートを活用し、遺言書の理由を説明することが重要です。 相続トラブルを防止するためにどのような遺言書を作成すべきか知りたい場合は、相続問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめいたします。

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この記事の監修者

弁護士 宮﨑 聖也埼玉弁護士会
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