配偶者のみに遺産を相続させる理由や、メリット・デメリットを解説いたします。
ざっくりポイント
  • 配偶者のみに相続させたい状況として、配偶者の生活を確保したい場合がある
  • 被配偶者のみに遺産を相続させると、相続争いを回避しやすい、配偶者控除で税負担が軽くなるなどのメリットがある
  • 遺留分侵害額請求の対象になったり、二次相続で相続税がかかったりなどのデメリットもある
目次

【Cross Talk 】配偶者のみに遺産を相続させると、どんなメリットやデメリットがあるの?

子どもたちはお互いに仲が悪く、私が病気になっても看病もしてくれませんでした。そこで、私の遺産を長年尽くしてくれた妻だけに遺産を相続させようと思っています。どんなメリットやデメリットがありますか?

配偶者だけに遺産を相続させる場合、相続争いを回避しやすいのがメリットです。ただし、他の相続人がいる場合に遺留分侵害額請求をされる可能性があるなどのデメリットもあります。

配偶者のみに遺産を相続させることは、メリットとデメリットがあるんですね。それぞれ詳しく教えてください!

配偶者のみに遺産を相続させる場合に、どのようなメリットやデメリットがあるかを解説します。

他の相続人と疎遠である、配偶者の生活を確保したいなどの理由から、配偶者のみに遺産を相続させたい場合もあるでしょう。
配偶者のみに遺産を相続させると、相続争いにならないなどのメリットがある反面、他の相続人から遺留分侵害額請求をされる可能性があるなどのデメリットもあります。
そこで今回は、配偶者のみに遺産を相続させるメリットやデメリットについて解説いたします。

配偶者のみに相続させたい場合は?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 配偶者のみに相続させたい状況として、配偶者の生活を確保したい場合がある
  • 子どもに相続させると争いになりそうな場合がある
  • 親に十分に財産がある場合などもある

配偶者のみに遺産を相続させたい場合として、どのような状況が考えられますか?

遺産相続によって配偶者の生活を確保したい場合や、子どもに相続させると相続争いになりかねない場合などが考えられますね。

配偶者の生活を確保したい

配偶者のみに遺産を相続させたい理由として、配偶者の生活を確保したい場合があります。
特に、配偶者が高齢だったり病気がちだったりする場合は、配偶者の生活を確保する必要性は高くなります。
配偶者以外の人に遺産を相続させると、その分だけ配偶者の取り分は少なくなりがちです。
例えば、遺産の総額が2,000万円の場合、配偶者と子どもに法定相続分で遺産を相続させると、それぞれの相続分は1,000万円ずつです。
しかし、配偶者のみが遺産を相続した場合、配偶者の相続分は2,000万円になります(ただし、詳しくは後述しますが、配偶者以外の相続人がいる場合は遺留分の侵害に注意しなければなりません)。
配偶者だけに遺産の相続をさせた場合、配偶者の取り分が増えるので、配偶者が生活資金を確保しやすくなるのです。

子どもに相続させると相続争いになりかねない

配偶者だけに遺産を相続させる理由として、子どもに相続させると相続争いになりかねない場合があります。
被相続人に子どもがいる場合、配偶者とともに子どもが相続人になります。
しかし、例えば被相続人の子どもとして長男と次男の2人がおり、兄弟の仲が悪い場合には、遺産をめぐって相続争いになってしまう可能性があります。
子どもに相続させると争いになりそうな場合は、遺言書によって配偶者だけに遺産を相続させれば、遺産をめぐる争いを防止しやすくなるのです。

親には十分に財産があるので配偶者に相続させたい

被相続人に子どもや孫などの直系卑属がいない場合、被相続人の親などの直系尊属が相続人になります。
配偶者だけに遺産を相続させる理由の一つに、親に十分な財産があることから、配偶者だけに遺産を相続させたい場合があります。
被相続人の親に十分な財産があり、遺産を相続させる必要がない場合は、遺言書によって配偶者だけに遺産の全てを相続させる方法があります。

兄弟姉妹に相続させるよりも配偶者に相続させたい

被相続人に子どもなどの直系卑属も、親などの直系尊属もいない場合は、配偶者とともに被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。
配偶者だけに遺産を相続させる理由として、兄弟姉妹に相続させるよりも配偶者だけに相続させたい場合があります。

しかし、兄弟姉妹と疎遠で遺産を相続させたくない場合などは、遺言書によって配偶者だけに遺産を相続させる方法もあるのです。

配偶者のみに相続させる場合のメリット

知っておきたい相続問題のポイント
  • 配偶者のみに遺産を相続させると相続争いを回避しやすい
  • 配偶者控除によって相続税がかからない場合もある

配偶者のみに遺産を相続させると、どのようなメリットがありますか?

配偶者のみに遺産を相続させると、一般に相続争いを回避しやすくなります。また、配偶者控除によって相続税がかからないことも期待できます

相続争いが起きなくなる

配偶者のみに遺産を相続させると、一般に相続争いを回避しやすくなるのがメリットです。
配偶者以外の相続人いる場合、誰が何をどのくらい相続するかをめぐって、相続争いが発生する可能性があります。
例えば配偶者以外に子どもが相続人だったとしても、両親の財産を両親が継ぐのであれば、心情的に納得がしやすいため紛争化しないこともありますし、また、子どもからすると継いだ配偶者が亡くなった場合には、今度こそ自分が財産を継ぐことができるため、一次相続ではあまりこだわらないことも紛争化しない理由の一つに挙げられます。

配偶者控除で相続税がかからないことも

配偶者のみが遺産を相続する場合、配偶者控除によって、原則として相続税がかからないのがメリットです。
配偶者控除とは、配偶者が相続した遺産のうち、以下のいずれかを満たす部分については相続税が課税されない制度です。

  • 相続税の対象となる遺産が1億6000万円以内である
  • 相続税の対象となる遺産が1億6000万円を超えているが、配偶者の法定相続分の範囲内である

例えば、配偶者が相続する遺産の総額が5000万円の場合、1億6000万円以内なので、相続税は課税されません。
次に、配偶者が相続する遺産の総額が2億円の場合、1億6000万円を超えています。
しかし、1億6000万円を超えていても、配偶者の法定相続分の範囲内であれば、相続税は課税されません。
例えば、被相続人の遺産の総額が5億円であり、配偶者と長男が相続人の場合、配偶者の法定相続分は2億5000万円です。
上記の場合において配偶者が2億円を相続する場合、法定相続分である2億5000万円以内なので、配偶者に相続税は課税されません。
なお、被相続人の両親・子ども・兄弟姉妹などがおらず、法定相続人が配偶者1人だけの場合は、配偶者が相続する遺産の金額に関係なく、相続税は課税されません。
配偶者の法定相続分以内であれば相続税は課税されないところ、法定相続人が配偶者1人だけの場合は、遺産の全てが法定相続分になるからです。

配偶者のみに相続させる場合のデメリット

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺留分侵害額請求の対象になる可能性がある
  • 二次相続で相続税が余計にかかる場合がある

配偶者のみに相続させる場合に、どのようなデメリットがあるかを教えてください。

配偶者のみに相続させる場合、遺留分侵害額請求の対象になったり、二次相続で相続税が余計にかかったりなどの可能性があります。

遺留分侵害額請求の対象になる

配偶者のみに相続させる場合、遺留分侵害額請求の対象になる可能性があることに注意しましょう。
被相続人の子どもや父母などの一定の法定相続人には、遺産の最低限の取り分が法律で認められており、遺留分といいます。
遺留分を侵害された相続人は、遺留分を侵害するような相続をした相続人に対して、遺留分の金銭の支払いを求めることができ、遺留分侵害額請求といいます。
配偶者以外の法定相続人がいる場合に、配偶者のみに遺産を相続させたとき、配偶者が遺留分侵害額請求をされる可能性があるので注意しましょう。

二次相続で相続税が余計にかかることもある

配偶者のみに遺産を相続させた場合、二次相続において相続税が余計にかかる可能性があるので注意しましょう。
被相続人が亡くなって配偶者のみが遺産を相続(一次相続)した後、遺産を相続した配偶者が亡くなって、子どもなどが配偶者の遺産を相続する場合があります(二次相続)。
配偶者のみが遺産を相続する場合、配偶者控除によって相続税の負担が軽減されるのが一般的です。
しかし、配偶者が被相続人となる二次相続においては、配偶者控除が使えないので、相続人の税負担が重くなってしまいます。
また、一次相続において配偶者が多くの遺産を相続し、それらの遺産を維持したまま配偶者が亡くなった場合、相続人に多額の相続税がかかる可能性が高くなります。
以上のように、配偶者のみが全ての遺産を相続した場合、二次相続において相続税の負担が重くなる可能性があるので、注意が必要です。

まとめ

配偶者のみに遺産を相続させることは、他の相続人との相続争いを回避しやすい、配偶者控除によって相続税の負担を軽減しやすいなどのメリットがあります。
一方、他の相続人から遺留分侵害額請求をさせる可能性がある、二次相続の相続税の負担が重くなる場合があるなどのデメリットもあります。
配偶者のみに遺産を相続させたい場合は、メリットとデメリットを把握したうえで判断する必要があるので、相続問題に詳しい弁護士に相談するのがおすすめです。

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この記事の監修者

弁護士 手柴 正行第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 法教育委員会委員
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