目次

はじめに

親が認知症になった場合、以下のような不安を感じる方は少なくありません。

  • 認知症の状態で遺言書を作れるのだろうか
  • 遺言書を作成する際の注意点が知りたい

特に相続人が複数いる場合には、トラブルを避けるためにも法的に有効な遺言を残せるかどうかは重要なポイントです。
本記事では、成年後見制度の概要や成年被後見人でも遺言書が作成できる条件、公正証書遺言をすすめる理由などをわかりやすく解説します。

成年被後見人とは

成年後見制度は、判断能力が低下している人を対象に成年後見人が代理人として取引をすることによって、本人を保護しつつ相手の取引にも配慮する制度のことです。
成年被後見人は、成年後見制度によって保護の対象として取引を制限された人のことをいいます。
日常生活に必要な買い物から自宅を売却するなどの大きな契約をする際にも、正常な判断能力が不可欠です。
一方で、加齢・認知症などの疾患によって、正常な判断能力は低下してしまいます。
自分が行っている取引行為がどういうことなのかを判断する能力のことを意思能力といい、意思能力がないと判断された場合は無効とされます。
しかし、取引の相手方に意思能力があるのかどうかを一つひとつ確認できませんし、万が一意思能力がないとされると、取引ができなくなり日常生活に支障をきたしてしまいます。
そこで、加齢・認知症などで意思能力に影響が出ている人を保護しつつ、必要な取引をスムーズに行うために、成年後見人が保護者となって代理で取引行為をすることで、日常生活に支障をきたさないようにしたのが成年後見の制度です。

成年後見を申し立てるための要件

民法第七条では、成年後見の開始について以下に規定されています。

  • 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者
  • 利害関係人から家庭裁判所に申立て
  • 家庭裁判所への請求
(後見開始の審判)
第七条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
引用元:民法 | e-Gov 法令検索

これをわかりやすく表現すると、「自分のしていることが良いのか悪いのかわからなくなってきている状態にある場合に、家庭裁判所での手続をとって認められるもの」と考えてください。

成年後見を申し立てるとどうなるのか

成年後見人には代理権が与えられているので、成年被後見人のために各種取引をすることになります。

第八百五十九条 後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。
引用元:民法 | e-Gov 法令検索

つまり、飲食や日用品の買い物は一人でできる状態にしつつ、それ以上の判断能力が必要なもの、例えばリフォームや施設の賃貸、ヘルパーとの契約などについては、成年後見人をとおして行うこととなります。

成年被後見人の「日用品の購入その他日常生活に関する行為以外の法律行為」は取り消すことができます。

第九条 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
引用元:民法 | e-Gov 法令検索

成年被後見人が遺言を作成するには

遺言の作成は単なる財産上の行為ではなく、身分行為(家族に関する法律問題に関する行為)も含むものであるため、代理して遺言を作成することはできません。
そのため、遺言の作成は成年被後見人が行うしかありませんが、成年被後見人は遺言を作成するための能力が回復しているときに遺言を作成する必要があるため、これを確認する医師2名以上の立会いが必要だと民法に規定されています。

(成年被後見人の遺言)
第九百七十三条 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
引用元:民法 | e-Gov 法令検索

認知症は現在では治療によっても回復するのは難しいとされており、進行を遅くするなど生活の質を上げることが中心になります。
そのため、判断能力が十分な状態で遺言を作成できない可能性が高いといえるでしょう。
しかし、精神疾患のような回復が有り得る場合には、回復した際に遺言を作成することができる可能性が高いです。
いずれにしても、遺言を作成できる場合の判断は一様ではないので、まずは弁護士に相談をしてみましょう。

遺言を作成する場合には公正証書遺言を利用すべき

遺言を作成できる場合でも、できる限り公正証書遺言を作成するのをおすすめします。
遺言を作成できるのであれば、どの方式をとっても法律上は問題がありません。
しかし、自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合、作成者本人が成年被後見人となっていると「本当にそのような内容の遺言を本人が作ったのか?」という点で紛争になる可能性があります。
公正証書遺言は、遺言書を作成するのが公証人であり、公証人が本人から遺言の内容を聞き取りしながら作成をします。
公証人が作成するからといって、必ずしも遺言書が有効になるというわけではありませんが、公証人が作成したことで社会的な信頼も高く、紛争に至るのを未然に防ぐことが可能です。
公正証書遺言を作成する際には、公証人と事前にやりとりをして、書類や遺言書案の手配をする必要がありますので、弁護士に依頼をして作成するのが望ましいでしょう。

さいごに|成年被後見人の遺言作成は弁護士に相談

親が認知症となった場合、遺言書の作成には法律上の制約があるため、慎重な判断が求められます。
トラブルを未然に防ぐためにも、早い段階で弁護士に相談し、適切なサポートを受けることをおすすめします。

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この記事の監修者

弁護士 岩壁 美莉第二東京弁護士会 / 東京第二弁護士会 司法修習委員会委員
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