遺言書を作成するにあたって、「預金(貯金)はどのように書き残せばいいのか?」と悩む方は多いのではないでしょうか。
金融機関名や口座番号は書くべきか、全額を一人に相続させると明記すればいいのか、それとも割合で分けるべきかなど、記載方法によってはトラブルの原因になることもあるため、正しい知識を身に着けておくことが大切です。
本記事では、遺言書で預金について記載する際の基本ルールや注意点、円滑な相続のための具体的な書き方をわかりやすく解説します。
目次

預金(貯金)とは

預金とは、厳密には金銭自体ではなく、お金を引き出すことを金融機関に要求できる権利のことです。

正確には「預金債権」と呼ばれることもあります。

顧客が銀行で口座を開設すると預金ができるようになりますが、これは法的には顧客と金融機関が預金契約という契約を締結している状態です。 この預金契約によって、顧客は預け入れた金銭と同種同額の金銭を引き出せるという債権を持つことになります。 一方、金融機関は顧客から引き出しの要求があった場合は、それに応じて同種同額の金銭を返還するという債務を負うことになるのです。

たとえば、顧客が銀行口座に1万円札を預け入れた場合、顧客はその1万円札自体を引き出せるのではなく、それと同種同額の1万円という金額を引き出せる、という債権を持っていることになります。

このように、預金は一種の債権であり、金銭そのものである現金とは異なるものとして扱われることを覚えておきましょう。

なお、預金は相続の対象ですが、たとえば「300万円の預金を相続する」とは、300万円の金銭自体を相続するのではなく、「300万円という金額を金融機関から引き出せる債権」を相続するということです。

金融機関によっては「預金」ではなく「貯金」という言葉を用いますが、どちらも債権であることに変わりはありません。これはそれぞれの金融機関の根拠となる法律が預金という言葉で定義しているか、貯金という言葉で定義しているかによります。

遺言書での預金についての記載方法

預金について遺言書に記載する場合、どの預金かを特定できるように、金融機関名や口座番号などの情報を正確に記載しましょう。

「私が有する全ての預金」という抽象的な文言を使ってしまうと、相続の際に相続人などが金融機関を調べて特定しなければならなくなり、預金を相続するために労力がかかってしまいます。

預金について遺言書に記載するには金融機関名、支店名、口座の種類(普通預金か定期預金か)、口座番号などの具体的な情報を記載して、どの預金かを特定できるようにしましょう。

また、記載した情報に誤りがあった場合、その口座には遺言の効力が及ばない可能性があるので、口座の種類や口座番号などは間違いがないように、通帳などを参照して正確に記載してください。

ただし、預金口座に入金されている金額までは記載する必要はありません。預金口座の金額を遺言書に記載してしまうと、相続の際にトラブルになる可能性があるからです。 たとえば、A口座に預金が現在100万円あるからといって、「A口座の預金100万円を長男に相続させる」と遺言書に記載してしまうと、将来的に口座の預金額が増加した場合に、増加分については遺言による指定の効力が及ばないと判断される可能性があります。

増加分について誰が相続できるかなどでトラブルにならないように、預金の金額は遺言書には記載しないことをおすすめします。

遺言書で預金を取り扱う場合の注意点

遺言書で預金の相続について言及する場合、以下のような点に注意しなければなりません。
・預金を相続できない人の金銭負担に配慮
・遺言書に記載されていない預金はあらためて遺産分割対象となる
それぞれの注意点について、以下で詳しく見ていきましょう。

預金を相続できない人の金銭負担に配慮

遺言書で預金の相続に言及する場合は、預金以外の遺産を相続する人への配慮が必要です。 たとえば、相続した不動産の価格が高額な場合などは、相続税を納めなければならないケースがあります。

現金や預金を相続していればそこから相続税を捻出することができますが、不動産しか相続していない場合は手持ちの資金で支払わなければならないので、相続をしても大きな金銭負担になる場合があるでしょう。また、遺言によって特定の方にほとんどの財産を相続させた場合などは、その方が他の法定相続人から遺留分侵害額請求を受けて、金銭を支払わなければならなくなる可能性もあります。

いずれにせよ、相続によって特定の相続人が金銭を支払わなければならなくなる可能性を考慮しつつ、預金をどのように配分するかを考えることが大切です。

遺言書に記載されていない預金はあらためて遺産分割対象となる

遺言書に記載しなかった預金については、遺産分割協議によってその預金をどうするかを相続人全員で話し合って決めなければなりません。 そうなると、協議のために時間や手間がかかるだけでなく、預金の処分をめぐって相続人間で争いになる可能性もあります。

遺言書を作成したのに、預金について記載し忘れたことでトラブルが発生しては元も子もありません。 手持ちの預金口座の情報は漏れなく記載するように注意しましょう。 なお、預金についての記載漏れが発生しやすい例としては、同一の銀行に普通預金口座と定期預金口座の両方を持っている場合に、定期預金口座について記載していないケースです。 遺言書に普通預金口座の情報しか記載しなかった場合、定期預金口座については指定がないとみなされて相続人が話し合う必要が出てくるので、定期預金口座についても忘れずに記載しましょう。

また、開設したもののほとんど使っていない口座が複数ある場合は、口座を解約して整理しておくのがおすすめです。 なお、遺言書に書き漏らしがあった場合に備えて、「記載していない財産は〇〇に相続させる」などと書いておくと、書き忘れた財産の処分をめぐるトラブルを防止しやすくなります。

さいごに|遺言書には預金口座の情報を正確に記載!

遺言書の中で預金について記載する場合、どの預金なのかが特定できるように、金融機関名や口座番号などの情報は正確に記載する必要があります。
ただし、預金の金額を記載してしまうと変化があった場合にトラブルになりやすいので、金額を記載することは避けましょう。
その他、預金を相続しない人の金銭的負担に配慮する、あまり使わない口座は解約して整理しておくなどの工夫も大切です。

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