遺留分が認められる代襲相続人
ざっくりポイント
  • 孫やひ孫が代襲相続人となった場合には遺留分が認められる
  • 兄弟姉妹の代襲相続人である甥姪には遺留分が認められない
  • 代襲相続人が複数いる場合は、被代襲者の遺留分を人数に応じて分ける
  • 遺留分侵害額請求には1年の時効と10年の除斥期間がある
目次

【Cross Talk 】遺留分が認められる代襲相続人

代襲相続人にも遺留分はあるのでしょうか。

はい。ただし、すべての代襲相続人に認められるわけではないので、順番に確認していきましょう。

遺留分が認められる代襲相続人
代襲相続人になったものの、自分に遺留分があるのか、どのくらい請求できるのか判断できず、悩む方もいるでしょう。代襲相続人の遺留分は、誰の代わりに相続人となったのかによって結論が変わります。

この記事では、遺留分が認められる代襲相続人の範囲、遺留分割合の計算方法、遺留分侵害額請求の流れ、生前にできる対策まで解説します。

代襲相続と遺留分の関係を理解したい方は、ぜひ参考にしてください。

代襲相続と遺留分の基礎知識

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺留分とは、相続人に法律上保障された最低限受け取れる遺産の割合いのこと
  • 遺留分が認められる代襲相続人と認められない代襲相続人がいる

代襲相続と遺留分はどのように関係しているのでしょうか。

まずはそれぞれの定義を理解したうえで、両者の関係について考えてみましょう。

代襲相続人とは?



遺産相続において、被相続人の直系卑属(子や孫)や配偶者には遺留分が認められることが原則です。しかし、子が既に亡くなっている場合、その子、つまり被相続人の孫が相続人となる「代襲相続」が発生することがあります。このような場合でも代襲相続人に遺留分は認められるのでしょうか。

「代襲相続」とは、本来相続人となるはずだった方が相続開始前に死亡している場合や、特定の理由で相続権を失った場合に、その子(孫や曾孫など)が代わりに相続権を取得する制度です。
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。

この制度は、相続権が世代を超えて受け継がれることを保障するための仕組みです。そして、代襲相続が認められるのは、以下の理由で本来の相続人(被代襲者)が相続権を失った場合です。

・相続人が相続開始前に死亡していた場合:被相続人の子が既に亡くなっている場合、その孫が相続人となる
・相続欠格(民法891条):相続人が被相続人の殺害などの重大な犯罪行為を行った場合
・相続廃除(民法892条):相続人が被相続人への虐待や重大な侮辱を行った場合

そして、代襲相続人になれる者の範囲は、直系卑属(子、孫、曾孫)に限られます。また、兄弟姉妹が代襲相続する場合は、その子(甥姪)までとなり、甥姪の子には代襲相続権はありません。

なお、相続人が「相続放棄」をした場合については、相続開始後の手続きであり、これにより放棄した方は最初から相続人ではなかったとみなされます。そのため、相続放棄の場合には代襲相続は発生しません。

遺留分とは?

「遺留分」とは、被相続人の財産のうち、法律で保護された最低限の相続分を指します。被相続人が遺言や贈与によって自由に財産を処分する一方で、相続人の生活保障や公平性を保つために設けられた制度です。これにより、相続人の生活基盤が守られることを目的としています。
第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一

引用元:民法 | e-Gov法令検索
遺留分を持つ相続人は、法律で限定されており、具体的に遺留分が保障されているのは、以下の相続人です(民法1042条1項)。なお、兄弟姉妹およびその子(甥姪)には遺留分は認められていません。

・配偶者:被相続人の夫や妻は常に遺留分権利者となる
・直系卑属:被相続人の子、孫、曾孫
・直系尊属:子や代襲相続人がいない場合に限り、親や祖父母が遺留分権利者となる

「遺留分が侵害されている状態」とは、相続人が本来保障されるべき遺留分よりも少ない財産しか取得できなかった場合です。
たとえば、遺留分として1000万円が認められる相続人が、遺言書や贈与の結果として300万円しか受け取れない場合、700万円分の遺留分が侵害されています。この場合、遺留分侵害額請求を行うことで、不足分を金銭で請求できます。

代襲相続人にも遺留分は認められる場合がある

代襲相続人に遺留分が認められるかどうかは、被代襲者に遺留分が認められていたかによって決まります。

例えば、被相続人の子が既に亡くなっており、その子(被相続人の孫)が代襲相続人となる場合には、代襲相続人である孫にも遺留分が認められます。これは、被代襲者である子に遺留分が認められるためです。

一方、兄弟姉妹にはもともと遺留分が認められていないため、兄弟姉妹の子である甥や姪が代襲相続人となった場合は、遺留分は認められません。

以上から、遺留分が認められる代襲相続人と、そうでない代襲相続人をまとめると、次のようになります。

・遺留分が認められる:代襲相続人が孫・ひ孫など(被代襲者が子)
・遺留分が認められない:代襲相続人が甥・姪(被代襲者が兄弟姉妹)

遺留分が認められる代襲相続人・認められない代襲相続人

知っておきたい相続問題のポイント
  • 被相続人の子や孫が代襲相続した場合、遺留分が認められる
  • 被相続人の甥・姪が代襲相続した場合、遺留分が認められない

どのような代襲相続人に遺留分が認められるのでしょうか。

孫・ひ孫には遺留分が認められますが、甥・姪には遺留分が認められません。

遺留分が認められる代襲相続人

遺留分は、相続財産の一部を特定の相続人に最低限保証する制度です。代襲相続人もその一部として遺留分が認められる場合がありますが、全ての代襲相続人が認められるわけではありません。 被相続人の孫やひ孫も遺留分を侵害された場合には、遺留分侵害額請求を行使することが可能です。

代襲相続は、前述の通り本来の相続人が相続開始前に死亡したり相続権を失ったりした場合に、その直系卑属(子や孫)が代わりに相続する制度です。この際、代襲相続人は相続分だけでなく、遺留分も親から引き継ぐことができます。被相続人の子には遺留分が法律で保障されており、代襲相続人はその権利も相続分と同様に引き継いでいるのです。

遺留分が認められる代襲相続人の代表的な例として、被相続人の子が先に亡くなり、その子(孫)が代襲相続人となる場合です。また、孫も亡くなっている場合には、さらにその子(ひ孫)が代襲相続人となる「再代襲相続」においても同様に遺留分が認められます。

遺留分が認められない代襲相続人

上記に対して、甥や姪が代襲相続人となった場合には、遺留分が認められません。
甥や姪が代襲相続人となるのは、被相続人の兄弟姉妹が先に亡くなった場合です。この場合、代襲相続人となる甥や姪は、被代襲者(兄弟姉妹)の相続分を引き継ぎますが、遺留分を引き継ぐことができません。そもそも、被相続人の兄弟姉妹には、法律上遺留分が認められていません。遺留分は配偶者や子、直系尊属(親や祖父母)にのみ認められており、兄弟姉妹は対象外であり、甥や姪については、遺留分を請求する権利を持たないのです。

以上のように、遺留分が認められる代襲相続人は、孫やひ孫などの直系卑属に限られます。一方、甥や姪には代襲相続が認められても、遺留分は認められません。この違いを理解しておくことで、遺留分に関するトラブルを未然に防ぐことが可能です。具体的な対応が必要な場合には、専門家である弁護士等に相談することをおすすめ致します。

なぜ甥姪には遺留分がないのか?

甥や姪に遺留分が認められないのは、兄弟姉妹に遺留分が認められていないためです。

民法では「兄弟姉妹以外の相続人」に対して遺留分を認めており、明示的に兄弟姉妹を遺留分の対象から除外しています。これは、被相続人との関係が特に近い相続人の生活保障や相続への期待を保護することが、遺留分制度の趣旨であるためです。

そして、代襲相続人は被代襲者の地位を引き継ぐ制度なので、兄弟姉妹に遺留分が認められていない以上、その地位を引き継ぐ甥や姪にも遺留分は認められません。

代襲相続人の遺留分割合(一覧表)

知っておきたい相続問題のポイント
  • 代襲相続人は被代襲者の遺留分割合を引き継ぐ
  • 複数の代襲相続人がいる場合は遺留分を按分する

代襲相続があると遺留分割合はどうなるのでしょうか。

いくつかのパターンがあるので、法定相続人の組み合わせごとに遺留分割合を確認しましょう。

代襲相続でも遺留分割合は変わらない

代襲相続があった場合も、通常の相続と遺留分割合は変わりません。これは、代襲相続人が被代襲者の相続上の地位を引き継ぐためです。本来相続人となるはずだった人に認められていた遺留分割合は、代襲相続人がそのまま引き継ぐことになります。

例えば、被相続人の子が亡くなっており、その子である孫が代襲相続人となった場合、孫の遺留分割合は子と同じになり、子が存命であった場合と同じ割合で遺留分を計算します。

代襲相続があった場合の遺留分割合一覧表

代襲相続人の遺留分割合も、通常の相続と同じ方法で計算します。

まず法定相続分を確認し、その後に法定遺留分割合を掛けて個別の遺留分割合を算出します。法定遺留分割合は、直系尊属のみが相続人である場合は3分の1、それ以外の場合は2分の1です。

代表的なケースをまとめると、以下のとおりです。
相続人の構成 代襲相続人 法定相続分 法定遺留分割合 個別の遺留分割合
配偶者+子1人(子が死亡) 孫1人 配偶者1/2・孫1/2 1/2 配偶者1/4・孫1/4
配偶者+子2人(1人が死亡) 孫1人 配偶者1/2・子1/4・孫1/4 1/2 配偶者1/4・子1/8・孫1/8
配偶者+子2人(1人が死亡) 孫2人 配偶者1/2・子1/4・孫各1/8 1/2 配偶者1/4・子1/8・孫各1/16
子1人(子が死亡) 孫1人 孫1 1/2 孫1/2
子2人(1人が死亡) 孫1人 子1/2・孫1/2 1/2 子1/4・孫1/4
兄弟姉妹2人(1人が死亡) 甥・姪 兄弟姉妹1/2・甥姪1/2 遺留分なし

複数の代襲相続人がいる場合の按分

代襲相続人が複数いる場合は、被代襲者が取得するはずだった相続分や遺留分を人数に応じて均等に分けます。

例えば、配偶者と子2人が相続人で、そのうち1人が既に亡くなっており、代襲相続人として孫2人がいるケースでは、亡くなった子の法定相続分は4分の1です。そのため、2人の孫はそれぞれ法定相続分8分の1ずつを取得し、個別の遺留分割合は16分の1ずつとなります。

このように、複数の代襲相続人がいる場合は、まず被代襲者の相続分や遺留分を計算し、その後で代襲相続人の人数に応じて均等に按分します。

代襲相続が発生する3つのパターン

知っておきたい相続問題のポイント
  • 被相続人より先に相続人が死亡した場合に代襲相続が起きる
  • 相続欠格や相続廃除でも代襲相続が起きるが、相続放棄では代襲相続が起こらない

どのような場合に代襲相続が発生するのでしょうか。

被相続人より先に相続人が死亡した場合のほか、相続欠格や相続廃除があった場合などです。

パターン①:被相続人より先に死亡

代襲相続が発生する最も典型的なケースが、本来相続人となるはずだった人が被相続人より先に亡くなっている場合です。

例えば、被相続人に子がいたものの、その子が被相続人より先に死亡していた場合には、その子の子である孫が代わりに相続人となります。

また、被相続人に子や親などの相続人がおらず、兄弟姉妹が相続人となるケースで、その兄弟姉妹が既に亡くなっている場合には兄弟姉妹の子である甥や姪が代わりに相続人となります。

パターン②:相続欠格

相続欠格とは、相続に関して重大な不正行為を行った人について、法律上当然に相続権を失わせる制度です(民法891条)。相続欠格によって本来の相続人が相続権を失った場合にも、代襲相続が発生します。

例えば、被相続人を故意に死亡させた場合や、遺言書を偽造・変造した場合などに、相続欠格が認められる場合があります。

この場合、相続欠格となった本人は相続人になれませんが、相続欠格者の子が代襲相続人として相続権を取得します。

パターン③:相続廃除

相続廃除とは、被相続人に対する虐待や重大な侮辱、その他著しい非行があった推定相続人について、家庭裁判所の審判によって相続権を失わせる制度です(民法892条)。相続廃除によって相続権を失った場合も、代襲相続が発生します。

例えば、長期間にわたる虐待や深刻な家庭内トラブルがあった場合などに、被相続人が家庭裁判所へ廃除の申立てを行い、審判が確定すると、相続廃除が認められる場合があります。

相続放棄では代襲相続は発生しない

相続放棄とは、相続人が家庭裁判所へ申述を行い、相続に関する権利や義務を一切引き継がないようにする手続きです。相続放棄をした相続人は、法律上初めから相続人ではなかったものとみなされるため、代襲相続が起こりません。

例えば、被相続人の死亡後に子が相続放棄した場合でも、その子の子である孫が代襲相続人となることはありません。

相続放棄と代襲相続は混同されやすいポイントですが、相続放棄では代襲相続は発生しないと理解しておきましょう。

【ケース別】具体的な遺留分の計算シミュレーション

知っておきたい相続問題のポイント
  • 代襲相続人は被代襲者の有していた遺留分を引き継ぐ
  • 複数の代襲相続人がいる場合はそれぞれ均等な割合で分割して承継される

遺留分はどのように計算するのでしょうか。

いくつかのケースを参考に、計算方法をシミュレーションしてみましょう。

ケース①:被相続人の配偶者+孫(直系尊属なし)



被相続人に配偶者がおり、本来相続人となるはずだった子が被相続人より先に死亡していたため、その子(被相続人の孫)1人が代襲相続人となったケースを考えてみましょう。

なお、ここでは遺留分を算定するための財産の価額を4,000万円と仮定します。

「法定相続分」
・配偶者:2分の1
・孫:2分の1

「法定遺留分割合」
・2分の1

「個別の遺留分割合」
・配偶者:2分の1×2分の1=4分の1
・孫:2分の1×2分の1=4分の1

「遺留分額」
・配偶者:4,000万円×4分の1=1,000万円
・孫:4,000万円×4分の1=1,000万円

以上より、このケースでは配偶者と孫にそれぞれ1,000万円の遺留分が認められます。

ケース②:孫のみ2人

被相続人に配偶者や親はおらず、亡くなった子に代わって孫2人が相続人となるケースです。

ここでも、遺留分を算定するための財産の価額は4,000万円とします。

「法定相続分」
・孫A:2分の1
・孫B:2分の1

「法定遺留分割合」
・2分の1

「個別の遺留分割合」
・孫A:2分の1×2分の1=4分の1
・孫B:2分の1×2分の1=4分の1

「遺留分額」
・孫A:4,000万円×4分の1=1,000万円
・孫B:4,000万円×4分の1=1,000万円

以上より、このケースでは孫2人にそれぞれ1,000万円の遺留分が認められます。

ケース③:被相続人の配偶者+孫(直系尊属あり)

被相続人に配偶者と親がおり、本来相続人となるはずだった子が既に死亡したためその子(被相続人の孫)が代襲相続人となるケースを考えてみましょう。この場合、孫は直系卑属として相続人になるため、親などの直系尊属は相続人になりません。

遺留分を算定するための財産の価額は4,000万円とします。

「法定相続分」
・配偶者:2分の1
・孫:2分の1

「法定遺留分割合」
・2分の1

「個別の遺留分割合」
・配偶者:2分の1×2分の1=4分の1
・孫:2分の1×2分の1=4分の1

「遺留分額」
・配偶者:4,000万円×4分の1=1,000万円
・孫:4,000万円×4分の1=1,000万円

以上より、このケースでは配偶者と孫にそれぞれ1,000万円の遺留分が認められます。なお、親などの直系尊属は相続人にならないため、遺留分も認められません。

ケース④:配偶者+甥姪

被相続人に配偶者がおり、子や親がおらず兄弟姉妹も既に死亡していたため、甥・姪が代襲相続人となるケースを考えてみましょう。

遺留分を算定するための財産の価額は4,000万円とします。

このケースのポイントは、甥姪には法定相続分は認められますが、遺留分が認められないということです。

「法定相続分」
・配偶者:4分の3
・甥姪:4分の1

「法定遺留分割合」
・2分の1

「個別の遺留分割合」
・配偶者:4分の3×2分の1=8分の3
・甥姪:遺留分なし

「遺留分額」
・配偶者:4,000万円×8分の3=1,500万円
・甥姪:なし

以上より、このケースでは配偶者に1,500万円の遺留分が認められます。一方、甥姪は代襲相続人であっても遺留分権利者ではないため、遺留分は認められません。

ケース⑤:孫が複数+ひ孫

被相続人の配偶者や親、子が既に死亡していたケースです。また、孫3人のうち1人も既に死亡しており、その子であるひ孫が再代襲相続人となるケースを考えてみましょう。

遺留分を算定するための財産の価額は4,000万円とします。

この場合、本来は孫A・孫B・孫Cがそれぞれ3分の1ずつ相続することになります。しかし、孫Cが既に死亡しているため、その相続分3分の1をひ孫Cが再代襲相続します。

「法定相続分」
・孫A:3分の1
・孫B:3分の1
・ひ孫C:3分の1

「法定遺留分割合」
・2分の1

「個別の遺留分割合」
・孫A:3分の1×2分の1=6分の1
・孫B:3分の1×2分の1=6分の1
・ひ孫C:3分の1×2分の1=6分の1

「遺留分額」
・孫A:4,000万円×6分の1=約667万円
・孫B:4,000万円×6分の1=約667万円
・ひ孫C:4,000万円×6分の1=約667万円

以上より、このケースでは孫A、孫B、ひ孫Cにそれぞれ約667万円の遺留分が認められます。

代襲相続人が遺留分侵害額請求をする方法

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺留分侵害額請求の意思表示は内容証明郵便で行う
  • まずは協議で解決を図り、協議で解決できない場合は調停や訴訟に進む

遺留分侵害額請求はどのように行うのでしょうか。

まずは相手方へ請求してから協議を行い、協議で解決しなければ調停も検討します。

遺留分は請求しないともらえない

代襲相続人に遺留分が認められる場合でも、遺留分侵害額請求をしなければ不足分を受け取ることはできません。そのため、遺言や生前贈与によって遺留分を侵害されている場合には、自ら遺留分侵害額請求を行う必要があります。

時効1年・除斥期間10年

代襲相続人による遺留分侵害額請求にも、通常の遺留分侵害額請求と同じく時効と除斥期間があります。

まず、遺留分侵害額請求権は相続の開始と遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時から1年で消滅時効が完成します。時効が完成すると、原則として遺留分侵害額請求を行うことができなくなります。

また、時効とは別に相続開始の時から10年の除斥期間もあり、除斥期間が経過した場合も遺留分侵害額請求はできなくなります。

代襲相続人が遺留分侵害額請求を検討している場合は、時効や除斥期間の経過にも注意しましょう。

内容証明郵便で請求の意思表示をする

遺留分侵害額請求を行う場合は、まず相手方に対して請求の意思を伝えます。請求方法に特別な決まりはありませんが、実務では内容証明郵便を利用することが一般的です。

内容証明郵便とは、送った文書の内容や発送日などを証明できる郵便です。遺留分侵害額請求では、あとになって請求の有無が争いになることもあるため、請求した事実を明確に残しておくことが重要です。そのため、実務では送付した文書の内容や発送日などを証拠として残せる内容証明郵便が推奨されます。

協議・調停・訴訟の流れ

内容証明郵便によって遺留分侵害額請求を行ったあとは、まず当事者同士で話し合いによる解決を目指します。話し合いによって支払額や支払方法について合意できれば、その内容を書面にまとめて解決です。

一方、話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所へ遺留分侵害額請求調停を申し立てることもできます。調停では、調停委員を介して話し合いを進めながら合意を目指します。

それでも合意に至らない場合、最終的に訴訟を提起し、裁判所の判決によって解決を図ることになります。このように、遺留分侵害額請求は協議、調停、訴訟の順で進みます。

代襲相続人に遺留分を請求されたくない場合の生前対策

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言書の付言事項を活用できるが、法的な拘束力はない
  • 生命保険の死亡保険金は原則として相続財産には入らないため、遺留分侵害額請求の対象にならない

遺留分を請求されないための対策はあるのでしょうか。

はい。遺言書や生前贈与などを活用した対策があるので、場合に応じて使い分けましょう。

遺言書の「付言事項」で配慮を求める

付言事項とは、遺言書の中で相続人に対する感謝の気持ちや、遺産の分け方についての考えなどを記載する部分です。例えば、「長年介護をしてくれた長男に多くの財産を残したい」「相続人同士で争わずに話し合ってほしい」といった思いを記載することがあります。

付言事項には法的拘束力はありません。そのため、付言事項に「遺留分侵害額請求をしないでほしい」と書いたとしても、それだけで代襲相続人が遺留分侵害額請求をできなくなるわけではありません。

もっとも、被相続人の考えや遺産の分け方の理由を伝えることで理解が得られやすくなり、相続トラブルの予防につながる可能性があるので、代襲相続人に遺留分を請求されたくない場合のひとつの有効な対策となるでしょう。

遺留分の対象外となる生命保険金を活用する

生命保険金は被相続人の遺産ではなく、受取人固有の財産として扱われるため、原則として遺留分を計算する際の基礎となる相続財産には含まれません。例えば、長男を生命保険金の受取人に指定しておけば、長男は遺産とは別に生命保険金を受け取ることができます。

もっとも、生命保険金であっても他の相続人との間に著しい不公平が生じるような場合には、特別受益に準じて遺留分算定の基礎となる財産へ持ち戻しが認められる可能性があります。実際に対策を行う際は、他の相続人との公平を図りながら不満が出ない形で運用することが重要です。

養子縁組で相続人の人数を調整する

養子は実子と同じ相続権を持ち、養子縁組によって法定相続人が増えることになります。結果として、個々の相続人の遺留分が減るため、遺留分侵害額請求の金額を抑えることが可能です。

例えば、配偶者と子1人が相続人である場合に養子を1人迎えると、子の相続分は2分の1から4分の1ずつへ変わります。これに伴い、子1人あたりの遺留分も小さくなります。

そのため、事業承継などのために特定の相続人へ財産を多く残したい場合には、養子縁組が相続対策として利用されることがあります。

生前贈与で財産を移転する

不動産や現金などを生前贈与しておけば、相続開始時点での遺産が減るため、遺留分侵害額請求の対象となる相続財産を減らすことができます。

ただし、遺留分の計算では一定の生前贈与が相続財産に加算されます。具体的には、相続人に対する特別受益に当たる贈与は原則として相続開始前10年以内、相続人以外の第三者に対する贈与は原則として相続開始前1年以内の贈与が、遺留分算定の基礎となる財産に加算されます。

生前贈与は有効な相続対策となる場合がある一方で、贈与の相手や時期によっては期待した効果が得られない場合もあるため注意が必要です。

よくある質問・まとめ

知っておきたい相続問題のポイント
  • 養子は実子と同じ相続権を持つため、養子にも代襲相続は発生する
  • 孫が複数いる場合、代襲相続が発生したら遺留分は孫の人数に応じて均等に分けられる

養子と代襲相続の関係や、相続放棄した場合の取扱いなどについて知りたいです。

それらはよくある質問なのでまとめて整理し、理解しておきましょう。

Q1.養子は代襲相続できる?

養子は相続に関して実子と同じ権利を持ち、第一順位の相続人となります。そのため、養子が被相続人よりも先に死亡していた場合には、その子が代襲相続人となることもあります。

なお、養子縁組をしたあとに生まれた子は代襲相続人となりますが、養子縁組をする前に生まれた子については代襲相続人とはなりません。養子縁組の時期によって代襲相続できるかどうかの結果が異なる点には注意が必要です。

Q2.孫が複数いる場合の遺留分は?

代襲相続人である孫が複数いる場合には、被代襲者が取得するはずだった遺留分を孫の人数に応じて均等に分けます。

例えば、本来相続人となるはずだった子に4分の1の遺留分が認められるケースで、代襲相続人である孫が2人いる場合にはそれぞれ8分の1ずつの遺留分を取得します。

このように、代襲相続人が複数いる場合はまず被代襲者の遺留分を計算し、その後で人数に応じて均等に按分することになります。

Q3.代襲相続人が相続放棄したら?

代襲相続人が相続放棄をした場合、その人は初めから相続人ではなかったものとみなされます。そのため、相続放棄をした代襲相続人は、相続財産だけでなく遺留分を請求する権利も失います。

また、代襲相続人が相続放棄をしたら、その子に再び代襲相続が発生することもありません。

Q4.再代襲はどこまで認められる?

直系卑属については、再代襲に回数制限はありません。例えば、子が死亡していれば孫、孫も死亡していればひ孫、ひ孫も死亡していれば玄孫というように、下の世代へ順番に相続権が引き継がれます。

一方、兄弟姉妹の代襲相続については甥姪まで代襲相続が発生し、再代襲相続は発生しません。

したがって、直系卑属は世代が続く限り再代襲が認められますが、兄弟姉妹の代襲相続は甥姪までに限られます。

まとめ

代襲相続とは、本来相続人となるはずだった方が相続開始前に死亡している場合や、特定の理由で相続権を失った場合に、その子(孫や曾孫など)が代わりに相続権を取得する制度です。
被相続人の子が先に亡くなり、その子(孫)が代襲相続人となる場合や、孫も亡くなっている場合、さらにその子(ひ孫)が代襲相続人となる「再代襲相続」の場合では、被代襲者と同様の遺留分が認められます。一方、甥や姪が代襲相続人となった場合には、遺留分が認められません。

代襲相続人の遺留分が侵害されている場合には、他の相続人に対して、遺留分侵害額請求を行う必要があります。遺留分侵害額請求は、被相続人が亡くなった事実及び、遺留分が侵害されている事実を知った時から1年以内に行う必要があるため、迅速に適切な対応をとらなければなりません。そのため、遺留分が侵害されているのではないかと不安な代襲相続人の方は、弁護士に相談して確認してみましょう。
当事務所には、遺留分の問題を含む相続トラブルの解決実績のある弁護士が在籍しておりますので、お困りの場合は、ご相談ください。
一つでも当てはまる方はご相談ください
  • 相手が遺産を独占し、自分の遺留分を認めない
  • 遺言の内容に納得できない
  • 遺留分の割合計算方法が分からない
  • 他の相続人から遺留分侵害額請求を受けて困っている
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この記事の監修者

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弁護士 丸井 駿第二東京弁護士会
葬式の準備、役所の手続き、親族の話し合い…等々、慌ただしい中で法律的なことを色々考えて動くことは大変なご苦労があると思われます。そのご苦労を少しでも肩代わりできるようお手伝いさせていただきます。

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