
- 寄与分とは?
- 寄与分の計算方法とは?
- 寄与分がある場合の相続分の計算方法とは?
【Cross Talk 】遺産分割における寄与分の計算方法を教えてください。
遺産分割における寄与分はどのように計算すればいいのでしょうか?
相続の寄与分の計算方法は、寄与の形態や事情によって異なります。
寄与分の計算方法について、詳しく教えてください。
寄与分とは、被相続人の財産維持や増加に貢献した相続人が、法定相続分に加えて受け取れる相続分です。相続人間の公平を図るために設けられた制度ですが、その計算方法は、寄与の形態や事情によって異なります。それでは、具体的に寄与分はどのように計算すればいいのか、寄与分がある場合の相続分はどうなるのでしょうか?この記事では、これらの疑問点について、弁護士がわかりやすく解説していきます。
寄与分とは?

- 寄与分とは?
- 寄与分が認められる条件とは?
そもそも、寄与分とはどのようなものなのでしょうか?
ここでは、寄与分の概要や認められる条件について解説していきます。
寄与分が認められる条件
寄与分とは、特定の相続人が被相続人の財産の維持または増加に特別な貢献をした場合に、その貢献度に応じて、その相続人の相続財産を増額する制度です。民法904条の2に規定されており、共同相続人間における公平性を図ることを目的としています。 ただし、単に被相続人と親族関係にあるというだけでは認められず、相続人自身の「特別の寄与」が必要とされます。この「特別の寄与」と認められるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。 まず、寄与行為が、被相続人と相続人という身分関係から通常期待される範囲を超える貢献でなければなりません。例えば、夫婦間の協力扶助義務に基づく日常的な家事労働や、親族間の扶養義務に基づく通常の介護などは、原則として「特別の寄与」とは認められにくいと考えられています。
次に、その寄与行為によって、被相続人の財産の維持・減少を防いだ、または増加、すなわち財産を増やしたという明確な因果関係が必要です。単に精神的な支えとなったといった貢献は、経済的な財産の維持・増加に直接結びつかないため、寄与分として考慮されません。 また、寄与行為は相続開始時までに行われたものでなければなりません。 さらに、その寄与行為に対して、被相続人から適切な対価を受けていないことも重要な要件です。もし、貢献に見合うだけの報酬や弁償を受けていた場合、それは特別の寄与とは評価されません。 これらの厳しい要件を全て満たして初めて、相続人は寄与分を主張し、自身の相続分を増やすことができるのです。なお、寄与分を主張できるのは原則として相続人に限られますが、相続人以外の親族で一定の要件を満たす場合は、「特別寄与料」の支払いを請求できる制度が2019年7月1日に施行されています。関連記事:寄与分と遺留分は関係する?弁護士が解説!
寄与分の計算方法

- 寄与分の計算方法とは?
- 5つのタイプ別の計算方法がある
寄与分の計算方法について教えてください。
ここでは、5つのタイプに分けて寄与分の計算方法を解説していきます。
家事従事型
被相続人の家業を無償で手伝うことで財産の維持・増加に貢献した場合に適用されます。標準的な計算式は以下の通りです。 ・本来得られたはずの年間給与額 × (1 - 生活費控除割合) × 寄与年数 「本来得られたはずの年間給与額」は、同業種・同年齢の平均賃金(賃金センサスなどを参考に算出)を基準とします。「生活費控除割合」は、被相続人から生活費の援助を受けていた場合に、その割合を差し引くものです。金銭等出資型
被相続人に金銭や不動産などの財産を提供した場合に適用されます。出資の種類や態様によって計算式が異なります。療養看護型
寝たきりの被相続人を自宅で介護するなど、特別な療養看護を行った場合に適用されます。標準的な計算式は以下の通りです。 ・療養看護の報酬相当額(日当) × 看護日数 × 裁量的割合 「療養看護の報酬相当額(日当)」は、介護保険の介護報酬基準額などを参考に、要介護度に応じて算出されます。「裁量的割合」は、親族関係や介護の程度を考慮して5~9割程度で調整されることが多いです。扶養型
身体的または経済的に扶養が必要な被相続人の生活の面倒を見た場合に適用されます。標準的な計算式は以下の通りです。 ・負担した扶養料 × 扶養期間 × (1 - 寄与者の法定相続分割合) 「負担した扶養料」は、仕送り額や生活費の負担額などが該当します。「(1 - 寄与者の法定相続分割合)」は、親族間の扶養義務を考慮して、寄与者の法定相続分に相当する部分を差し引くためのものです。財産管理型
被相続人に代わって賃貸物件の管理をした場合、代わりに不動産の売却手続きを行い、占有者の立ち退き交渉をした場合など、財産の維持・管理に特別な貢献をした場合に適用されます。標準的な計算式は以下の通りです。 ・第三者に委任した場合の報酬額 × 裁量的割合 「第三者に委任した場合の報酬額」は、管理委託料や仲介手数料などを参考に算出されます。「裁量的割合」は、管理の程度や労力を考慮して個別に判断されます。寄与分がある場合の相続分の計算方法

- 寄与分がある場合の具体的な相続分の計算方法とは?
- これが最終的に相続人の受け取れる財産
寄与分がある場合に最終的に受け取れる財産は、どのように計算すればいいのでしょうか?
ここでは、寄与分がある場合の相続分について解説していきます。
寄与分がある場合の相続分の計算方法
寄与分がある場合の基本的な相続分の計算は、以下の手順で行います。 1.相続財産の総額から、寄与分として認められた金額を差し引きます。この金額を「みなし相続財産」といいます。 2.みなし相続財産を、各相続人の法定相続分に応じて分割します。 3.寄与が認められた相続人については、②で計算された法定相続分に、自身の寄与分を加算した金額が最終的な相続分となります。 以下のような事例で、考えてみましょう。遺産総額:5,000万円 相続人:配偶者A、長男B(寄与分1,000万円)、次男C(寄与なし) 法定相続分:配偶者A 1/2、長男B 1/4、次男C 1/4
まず、みなし相続財産は、以下の計算式により算出できます。 5,000万円 - 1,000万円(長男Bの寄与分) = 4,000万円次に、各相続人の法定相続分は以下の通りです。 配偶者A:4,000万円 × 1/2 = 2,000万円 長男B:4,000万円 × 1/4 = 1,000万円 次男C:4,000万円 × 1/4 = 1,000万円
寄与分を考慮した最終的に受け取ることができる具体的相続分については、以下のようになります。 配偶者A:2,000万円 長男B:1,000万円(法定相続分) + 1,000万円(寄与分) = 2,000万円 次男C:1,000万円遺贈がある場合は?
被相続人が遺言によって特定の相続人または第三者(受遺者)に財産を遺贈している場合、遺贈と寄与分はどちらが優先するのでしょうか。この点、民法904条の2第3項には、「寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない」と定められているため、遺贈が寄与分に優先すると考えられています。以下の事例で考えてみましょう。 遺産総額:3,000万円 相続人:長男A(寄与分2,000万円)、次男B(遺贈2,000万円)
寄与分の計算に不安がある場合には弁護士に相談すべき

- 寄与分について弁護士に相談するメリットとは?
- 将来に対応するためにも早めに相談すべき
寄与分の計算に不安がありますが、弁護士に相談した方がいいのでしょうか?
ここでは、寄与分の問頼について弁護士に相談するメリットを解説していきます。
弁護士に相談することには、以下のようなメリットを得られます。
寄与分の確保についてアドバイスを受けられる
まだ相続が発生していない段階でも、現在行っている被相続人の事業の手伝いや介護などの貢献が、将来的に寄与分として認められるか不安に感じる方もいるでしょう。弁護士に事前に相談することで、どのような貢献が寄与分として認められやすいのか、また、その貢献を記録しておくべき方法などについて具体的なアドバイスを得ることができます。 これにより、将来の相続を見据えた適切な行動をとることが可能になります。遺産分割協議を円滑に進めるためのサポートを受けられる
寄与分の主張は、他の相続人の理解と協力が不可欠です。 既にご説明しましたように、寄与分が認められるには、複数の要件を充たす必要がありますし、ご自身で計算するには複雑な場合もございます。 弁護士にご依頼いただければ、弁護士が法的な根拠に基づき、あなたの寄与分が正当に評価されるよう他の相続人と交渉し、合意形成を支援します。 感情的な対立が生じやすい遺産分割協議において、弁護士が間に入ることで、冷静かつ建設的な話し合いが期待でき、早期解決に繋がる可能性があります。関連記事:遺産分割協議のやり直しはできる?期限はある?
まとめ
調停や審判で有利な主張・立証をしてもらえる 協議が不調に終わった場合、家庭裁判所での調停や審判といった法的手続きが必要です。 弁護士は、どのような証拠が有効であるかを熟知しており、依頼者に代わって証拠収集や主張書の作成、裁判所とのやり取りを行います。専門的な知識と経験に基づいた弁護士のサポートにより、寄与分が認められる可能性が高まるでしょう。 寄与分は、被相続人の財産維持・増加に貢献した相続人に、その貢献度に応じて相続分を増やす制度です。 寄与分の計算方法は、家事従事型、金銭等出資型、療養看護型、扶養型、財産管理型など、貢献の態様によって異なります。 寄与分を考慮した相続分の計算は、遺産総額から寄与分を差し引いた「みなし相続財産」を法定相続分で分配し、寄与者にその寄与分を加算する形で行います。 ご自身の貢献が寄与分に該当するか、また、その金額をどのように計算すべきかご不明な場合は、当事務所の弁護士にご相談ください。専門的な知識と経験に基づき、適切なアドバイスと手続きのサポートを提供いたします。

- 死亡後の手続きは何から手をつけたらよいのかわからない
- 相続人の範囲や遺産がどのくらいあるのかわからない
- 手続きの時間が取れないため専門家に任せたい
- 喪失感で精神的に手続をする余裕がない
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