
- 寄与分が認められる場合とは?
- 寄与分には時効期間がある?
- 期間経過後も寄与分を主張できる場合とは?
【Cross Talk】寄与分には時効期間があるのでしょうか?
親が亡くなり自分に寄与分があるか気になっています。寄与分には時効があるのでしょうか?
寄与分は原則として相続開始から10年が経過すると遺産分割協議において主張できなくなります。
寄与分の時効について、詳しく教えてください。
被相続人の財産維持・増加に貢献した相続人に認められる相続分の増額分のことを寄与分と言いますが、寄与分は被相続人が亡くなってから何年経っても他の相続人に主張できるのでしょうか?また、寄与分には時効があるのでしょうか?この記事では、これらの疑問点について、弁護士がわかりやすく解説していきます。
寄与分とは?

- 寄与分とは?
- 寄与分が認められる場合とは?
そもそも、寄与分とはどのような場合に認められるものなのでしょうか?
ここでは、寄与分の概要や要件について解説していきます。
寄与分とは?
相続が発生した際、遺産は原則として法定相続分に従って分割されます。しかし、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人がいる場合、他の相続人と同様の相続分とするのは公平とはいえません。そこで、民法に定められているのが「寄与分」という制度です。
「寄与分」とは、特定の相続人が、被相続人の財産の維持または増加に特別な貢献をしたと認められる場合に、その貢献度に応じて、遺産分割においてその相続人の相続分を増額するという制度です(民法904条の2第1項)。
寄与分の金額は、原則として相続人全員の協議によって決定することができます。
しかし、寄与を主張する相続人と他の相続人との間で意見が対立し、協議がまとまらない場合には、最終的に家庭裁判所が審判によって寄与分の金額を決定します。その際、家庭裁判所は、寄与の時期、方法、程度、相続財産の額など一切の事情を考慮して判断します。
寄与分が認められる条件
寄与分が認められるのは、被相続人の事業を無償で手伝い、その事業の価値を高めた結果、被相続人の財産が増加した場合などが挙げられます。また、被相続人が病気や高齢で療養が必要な状態にあった際に、他の相続人には期待できないような献身的な介護を行い、看護費用を節約することで被相続人の財産の減少を防いだ場合なども寄与分が認められます。
寄与分を主張できるのは、被相続人の「法定相続人」に限られます。被相続人の財産の維持や増加にどれほど貢献したとしても、法定相続人以外の親族や第三者は、原則として寄与分を主張することはできません。ただし、法定相続人ではない親族による貢献については、「特別寄与料」という別途の制度で認められる場合があります。
た、相続人の貢献が、親族間において通常期待されるような協力の範囲を超えた「特別の貢献」である必要があります。例えば、同居している子どもが日常的な家事を手伝うといった行為は、一般的に期待される範囲内とされ、特別な貢献とは評価されにくい傾向にあります。
寄与分に時効はある?

- 寄与分に時効はある?
- 寄与分の主張には原則10年の期間制限がある
寄与分には時効があるのでしょうか?
寄与分の主張には原則として10年の期間制限が設けられています。
寄与分の期間制限は10年
寄与分の主張には期間制限が設けられていますが、これは正確には時効ではありません。2023年4月1日に改正された民法により、遺産分割における寄与分の考慮期間に関する規定が新たに設けられました。
これにより、遺産分割において寄与分を主張できる期間は、原則として相続開始(被相続人の死亡)の時から10年となりました(民法904条の3柱書)。
これは、長期間が経過した後の遺産分割においては、証拠の散逸や関係者の記憶の曖昧さなどから、公平な判断が難しくなることを考慮したものです。
したがって、被相続人が亡くなってから10年が経過すると、原則として寄与分を主張することはできなくなり、遺産は法定相続分に基づいて分割されることになります。
寄与分が期間制限により主張できない場合
相続開始から10年経過してしまうと、原則として遺産分割の際に寄与分を主張することはできません。これは、遺産分割協議や調停、審判といった手続きにおいても同様です。
また、民法改正前に相続が開始した場合については、経過措置が設けられています。 具体的には、相続開始から10年を経過した時点と、民法改正の施行日(2023年4月1日)から5年を経過した時点(2028年3月31日)のいずれか遅い方が、寄与分を主張できる期間の満了となります。
例えば、2015年5月1日に被相続人が亡くなった場合、相続開始から10年後は2025年4月30日ですが、民法改正から5年後は2028年3月31日となるため、寄与分の主張期限は2028年3月31日となります。
そして、寄与分を主張できなくなると、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人であっても、他の相続人と同様に法定相続分に基づいて遺産を分割することになります。
したがって、被相続人の財産の維持や増加に貢献したと考える相続人は、相続開始からできるだけ早期に、他の相続人と寄与分について協議を開始することが重要です。もし協議がまとまらない場合は、速やかに家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てるなどの対応を検討する必要があります。
10年経過後も寄与分の主張はできる?

- 10年経過後も例外的に寄与分の主張ができる場合とは?
寄与分は10年経過してしまうと絶対に主張できないのでしょうか?
例外的に10年経過後も寄与分の主張ができる場合があります。
10年経過前に家裁に遺産分割を申し立てていた場合
相続人が期間内に自身の権利を行使する意思を示していれば、期間経過後であっても寄与分を主張できます。具体的には、寄与分の主張制限期間である10年が経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割を請求する申立てを行っていた場合は、その後、遺産分割の手続きが10年を超えて長引いたとしても、寄与分の主張をすることができます(民法904条の3第1号)。
例えば、10年以内に遺産分割調停を申し立てたものの、相続人の間で意見の対立が解消せず、調停が長期にわたっているような場合です。この際、10年を経過したからといって、それまでに行ってきた寄与分の主張が無駄になるわけではありません。
もし、寄与分の主張を検討しており、10年の期間が迫っていると感じる場合には、まずは家庭裁判所に遺産分割の請求を申し立てることを検討してください。
制限期間満了の6か月以内にやむを得ない事情があった場合
相続開始時から10年の期間の満了前6か月以内に、相続人が遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由があった場合にも、10年経過後であっても一定期間内に遺産分割の請求をすることで、寄与分を主張することが可能です(民法904条の3第2号)。この場合、そのやむを得ない事由が消滅した時から6か月以内に、家庭裁判所に遺産分割の請求をする必要があります。
ここでいう「やむを得ない事由」とは、被相続人が長期間行方不明であり、死亡の事実が確定せず遺産分割の手続きを開始できなかったような場合や、遺言によって一定期間遺産分割を行うことが禁じられていたような場合が考えられます。単に相続人の間で連絡が取れなかったり、感情的な対立があったりするだけでは、「やむを得ない事由」とは認められません。
遺産分割協議で相続人全員の同意がある場合
遺産分割は、相続人全員の合意があれば、法律の規定にとらわれず、どのような方法で行うことも可能です。したがって、遺産分割協議において、相続人全員が寄与分の主張に同意している場合は、たとえ相続開始から10年が経過していたとしても、寄与分を考慮した遺産分割を行うことができます。
この場合、家庭裁判所の手続きによることなく、相続人全員の合意に基づいて遺産分割協議書を作成し、その内容に従って遺産分割を進めることができます。
寄与分の請求を弁護士に相談すべき理由

- 寄与分の請求を弁護士に相談するメリットとは?
- 相続人との交渉や、調停・訴訟を任せられる
寄与分の請求を考えている場合、弁護士に相談すべきなのでしょうか?
ここでは、寄与分の請求を弁護士に相談するメリットについて解説していきます。
寄与分の有無や適切な金額を判断してもらえる
弁護士に相談することで、ご自身の行為が「特別な寄与」に該当するのか、また該当する場合にどの程度の金額が相当なのかを、法的な知識と経験に基づいて適切に判断してもらうことができます。
一般の方が主観的には貢献したと考えていても、法律上の寄与分の要件を満たさないケースも少なくありません。弁護士に相談すれば、具体的な状況を詳細にヒアリングし、関連する証拠の有無や内容を分析することで、寄与分が認められる可能性や、主張すべき適切な金額について専門的な見解を示してもらえます。
相続人との話し合い・交渉を任せられる
寄与分の主張は、他の相続人との間で感情的な対立を生じさせる可能性があり、当事者同士での話し合いが難航することも少なくありません。弁護士に依頼することで、ご自身の代理人として他の相続人との交渉を任せることができます。
弁護士は、法的な根拠に基づき冷静かつ客観的に主張を行うことで、他の相続人の理解を得やすくなり、円滑に遺産分割を成立させることが期待できます。
調停や審判など裁判手続きを一任できる
遺産分割協議がまとまらず、家庭裁判所での調停や審判といった裁判手続きに移行した場合、複雑な書類作成や法廷での主張など、専門的な知識と対応が求められます。弁護士に依頼することで、これらの煩雑な手続きを一切任せることができます。
弁護士は、法的な根拠に基づいた主張書面を作成し、必要な証拠を収集・提出するなどの立証活動を的確に行うため、有利な結果を得られる可能性が高まります。
まとめ
寄与分は、民法改正により原則として相続開始から10年で主張できなくなりました。
ただし、10年以内の遺産分割請求、期間満了前6ヶ月以内のやむを得ない事情、相続人全員の合意がある場合は例外的に主張が可能です。
ご自身の貢献が寄与分に該当するか、期間満了がいつになるかなど、判断に迷う場合は早期に弁護士にご相談ください。当事務所には、寄与分の問題を含む相続事件に強い弁護士が在籍しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。


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