
- アパート・マンションの賃貸経営をしている場合の相続の方針の基本戦略の立てかた
- 賃料についての法律関係
- 賃貸マンション・アパートを相続したときの手続き
【Cross Talk】親が賃貸マンション・アパートの大家である場合の相続について教えて!
先日父が亡くなり、母・私・妹で相続をすることになりました。父は賃貸マンション・アパートを保有しており、特に遺言等も無かったのですが、この場合何から手をつければ良いのでしょうか…。
どうやって相続するかを決めて、あとは手続を行うことになります。順番に追っていきましょう。
被相続人が賃貸マンション・アパートを所有していた場合にはどのようにすれば良いのでしょうか。大きな資産を持っていることになるのですが、一方で借金を抱えて赤字という可能性もありますので、まず相続をするかどうかを決める必要があります。そのうえで相続した賃貸マンション・アパートの賃貸経営を続けるのか、売却をしてしまうのか、ということを決めて手続きをしていくことになります。 法律関係として知っておくべきことは、相続が発生したときの賃料がどのようになるかという点です。 このページでは賃貸マンション・アパートを相続した場合についての基礎知識を知りましょう。
まず賃貸マンション・アパートを相続するかどうかを考えよう

- まず賃貸マンション・アパートの相続をするかどうかをきめる
- 承認、限定承認、相続放棄の概要
私の父の場合のように賃貸マンション・アパートがある相続はまず何を検討すべきでしょうか。
賃貸経営というとお金が入るイメージがありますが、建物の修繕など費用がかかるものでもあります。賃貸マンション・アパートを購入する際に借り入れをしたけれども収支が合わないような場合には相続をすると支払いができないこともあります。そこでまずは相続をするかしないかを決めましょう。
賃貸マンション・アパートを購入した際に、まず考えるべきことは、「相続をするかどうか」ということで、具体的には相続を承認するのか、相続放棄をするのかを決める必要があります。 賃貸マンション・アパート…といえば賃貸収入で安泰、というイメージもありますが、購入時に借り入れをして購入しても空室が埋まらないような場合には赤字となることもあります。 また、古い物件の借り入れをする場合には、修繕などの必要も出てきます。 もし賃貸マンション・アパートを相続しても賃貸経営が成り立たないような場合には、相続放棄をして相続をしないということも検討すべきといえます。
賃貸マンション・アパートを相続するなら単純承認か限定承認
まず賃貸マンション・アパートを相続する場合には、相続を承認することになります。 相続の承認の方法ですが、普通に相続をする単純承認と、プラスの財産の範囲で相続をする限定承認という方法があります。 相続においては財産だけではなく負債も相続することになるのですが、個人的な借金や家族に内緒にしているものなど、相続当初には借金が不明であることもあります。 相続放棄をしてしまえば借金を負うことはありませんが、そうすると相続することもできませんので、もし負債があったとしても、責任を負う、つまり返済をするのは相続したプラスの資産の範囲内で良いとするのが限定承認です。 負債があるのは確実だけども、その額が不明であるような場合に利用します。賃貸マンション・アパートを相続しないなら相続放棄
負債が明らかで相続をしたくない、賃貸は他の相続人にまかせてしまって自分は相続に加わらない、という場合には相続放棄をします。 相続放棄の手続きによって相続開始のときから相続人ではなかったという扱いになりますので、賃貸マンション・アパートを相続することがなくなります。相続した賃貸マンション・アパートの取り扱い

- 賃貸マンション・アパートの相続をする場合に次に決めるのは相続後のこと
賃貸マンション・アパートを相続したら次に何をすれば良いでしょうか。
相続した賃貸マンション・アパートで賃貸経営をするか、相続した賃貸マンション・アパートを売却するかを考えましょう。
賃貸マンション・アパートを売却した後には、相続した物件で経営を続けるか、売却をするかを考えましょう。
賃貸マンション・アパートの経営をする
選択肢の一つはこの賃貸マンション・アパートの賃貸経営を続けることです。賃貸マンション・アパートを相続して経営を続けるメリット
賃貸マンション・アパートを相続して経営を続けるメリットとしては次のようなものが挙げられます。
- 相続人の収入源となる
- 老後の収入となる
- 景気に左右されず資産を守れる
賃貸マンション・アパートを相続する場合、家賃収入を手にすることができるので、相続人の新たな収入源となります。
また、有価証券のように景気に左右されやすい資産と異なり、賃貸マンション・アパートは相対的に資産価値が高いまま維持できるので、景気に左右されずに資産を守ることができるというメリットもあります。
賃貸マンション・アパートを相続して経営を続けるデメリット
賃貸マンション・アパートを相続して経営を続けるデメリットとしては次のようなものが挙げられます。
- アパマン経営のノウハウが必要
- 時間とともに収益性が落ちる
- ローンが残っている場合がある
当然ですが、不動産会社との付き合いや、修繕など賃貸物件の管理などに関する決定をするなどの必要がありますので、そういったものに対するノウハウが必須になってきます。
また、マンション・アパートは築年数が経つことによって借り手が付きづらくなったり、リノベが必要となったりするので、収益性が落ちます。
また、ローンが残っている場合にはローンも一緒に相続することになるので注意が必要です。
賃貸マンション・アパートを売却する
賃貸経営に自信がない場合は、これらの物件を売却してしまうことも一つの手です。賃貸マンション・アパートを売却するメリット
賃貸マンション・アパートを売却するメリットとしては次のようなものが挙げられます。
- 現金が手に入る
- 経営・維持の負担から解放される
- ローンを完済できる
まず、売却をすることで現金を手に入れることができます。
別の投資方法に利用したり、生活費やその他の資金需要に対応したりすることができ売却してしまえば、アパマン経営や維持をするための費用負担から解放されます。
不動産ですので持っているだけで固定資産税・都市計画税がかかりますし、不動産会社に管理を委託している場合には委託料もかかります。
賃料収入がある場合には確定申告が必要であり、負担に感じる方も多いでしょう。
また、ローンが残っている場合にはローンを完済してしまうことができます。
賃貸マンション・アパートを売却するデメリット
一方で、賃貸マンション・アパートを売却するデメリットには次のようなものがあります。
- 家賃収入を得ることはできない
- マンション・アパートを担保にお金を借りることができない
当然ですが売却してしまえば家賃収入を得ることができなくなります。
そして、売却してしまえば自分のものではなくなるので、マンション・アパートを担保にお金を借りることができなくなります。
マンション・アパート経営を続けるかどうかの判断基準
では実際にマンション・アパート経営を相続して続けるかどうかはどのように判断すれば良いのでしょうか。
下記のような事項を判断基準にしてみましょう。
マンション・アパートの立地
マンション・アパートの立地から検討してみましょう。
よく土地の相続税対策にマンション・アパートを建てることがあるのですが、あまりにも立地が悪く借り手がいないことがあります。
一方で立地が良い場所では、築年数が古くなっても借り手がつきやすいです。
また、開発計画があるような場合には、将来的には借り手がつきやすくなり、かつマンション・アパートの価格の上昇も見込めます。
マンション・アパートの立地はマンション・アパート経営を続けるかどうかの判断に大きく影響するといえるでしょう。
マンション・アパートの管理状況
マンション・アパートの管理状況は、マンション・アパート経営を続けるかどうかの判断に影響します。
マンション・アパートの物理的な劣化のほか、きちんと管理しながら経営できているかを検討します。
物理的な劣化が著しい場合には、修繕のための費用がかかることになるので、引き継いだ後に管理費用が多額にかかる可能性が否定できません。
また、管理が不十分でエントランスや共用部が劣化している場合借り手がつきにくくなってしまいます。
費用問題をはじめ、そもそも管理できるのか、といった問題はマンション・アパート経営を続けるかどうかに影響するでしょう。
入居状況(空室の状況)
現在の入居状況(空室状況)は、マンション・アパート経営を続けるかどうかの判断に影響します。
空室なく入居しており、長期間賃貸が見込める場合には、空室損失を気にする必要がありません。
一方で、現在空室が多いような場合で、空室が埋まるような見通しも立たない場合には、将来的にも空室損失が見込まれます。
入居状況・空室の状況は、マンション・アパート経営を続けるかどうかに影響するでしょう。
ローンの残債がいくらか
ローンの残債がいくらかという点もマンション・アパート経営を続けるか判断する上で重要な要素です。
ローンの残債があると、それを毎月返済しなければなりません。
現在入居がどれくらいあって、そこから賄えない場合には、差額を自分で負担する必要があるため、費用がかさみます。
ローンの残債がいくらで、毎月の支払いがいくらかは、毎月の賃料収入との兼ね合いで、マンション・アパート経営を続けるかどうかに影響するでしょう。
マンション・アパートの不動産所得の状況
マンション・アパートの不動産所得の状況も、マンション・アパート経営を続けるかどうかに影響します。
上述したようにローンが残っているような場合には、賃料収入から返済できなければ、赤字分を負担する必要があります。
また、修繕費用やリノベ費用も考えて、リターンがあるのかをしっかり見極める必要があります。
賃貸マンション・アパートを相続した場合に賃料は誰が取得する?

- 賃貸マンション・アパートの相続をする場合に発生する賃料の取り扱いについて知る
賃貸マンション・アパートを相続するということは賃料が発生しますよね?これは相続人の誰が受け取ることができるのでしょうか。
いつ賃料を受け取っていたかによって取り扱いが異なりますので確認しましょう。
賃貸マンション・アパートを保有しているということは、賃借人から賃料を受け取ることになります。 相続に前後する賃料の受け取りがどのような法律関係になるのかを確認しましょう。
被相続人の死亡前に被相続人が賃料を受け取っていた場合
まず、被相続人が自分の口座や直接手渡しで受け取っていた賃料については、被相続人が所有している預金・現金としての取り扱いになります。被相続人が死亡前に相続人が賃料を受け取っていた場合
同居している相続人が、被相続人の同意のもとで賃借人から手渡しで賃料を受け取って、そのままそのお金をもっているような場合には、その受け取った金銭については、被相続人から生前贈与を受けたものと判断することになります。被相続人の死亡後遺産分割協議終了前の賃料
被相続人が死亡した後の賃料については、平成17年9月8日に最高裁判所が判決によって実務上処理されます。 この判決によると、賃料債権は一つ一つ相続分に応じた分割の金銭債権として受け取ることでき、その後に遺産分割がされてもその債権については影響を受けないとされています。 たとえば、20万円の賃料について、母と子2人で相続した場合には、母は10万円・子どもは5万円ずつ受け取ることができ、あとで遺産分割をしたからといって、受け取った賃料については影響を受けないということになります。遺産分割協議終了後の賃料
遺産分割終了後の賃料については、遺産分割により不動産を取得した所有権者に帰属することになります。賃貸マンション・アパートを相続した場合の手続きの流れ

- 賃貸マンション・アパートの相続をする場合の手続き
賃貸マンション・アパートを相続するにあたってはどのような手続きがあるのでしょうか。
不動産の移転登記をはじめ、様々な手続きがありますので確認しておきましょう。
賃貸マンション・アパートを相続した際に必要な手続きについて知っておきましょう。
マンション・アパートのローン残債を確認
まず、マンション・アパートのローン残債を確認しましょう。
ローンの財産がいくらあるのか、毎月いくら返済する必要があるのか、および被相続人が団体信用生命保険に入っていなかったかを確認します。
もし団体信用生命保険に加入している場合は、ローン残債を完済してもらえるので、残債の無い状態でマンション・アパートを引き継ぐことができます。
マンション・アパートを管理している不動産会社・銀行に連絡する
マンション・アパートを管理している不動産会社および関係している銀行に連絡をして、不動産会社に遺産分割協議をしている間の管理について確認をします。
団体信用生命保険がある場合には銀行に相談をして、ローンを完済してもらう手続きをしてもらうことになります。
アパート・マンションの賃借人に連絡する
まず、アパート・マンションの賃借人に連絡をします。 不動産管理会社に依頼をしているような場合には管理会社が代行してくれることもありますが、そうでない場合には賃借人に連絡をしておいて、別の相続人からの二重請求などの手違いが起きないように、相続が発生したことを知らせておきましょう。遺産分割協議をする
次に遺産分割協議を行います。 不動産は誰の所有にするかをはじめとした遺産についての話し合いを行います。協議の結果は相続登記に必要となりますので、遺産分割協議書を作成して残します。遺産分割通りの相続登記をする
遺産分割協議書に従って相続登記を行います。遺産分割通りの内容を賃借人に連絡する
遺産分割の内容を賃借人に連絡します。この連絡にあたって以後の賃料の支払先や支払方法についても伝えることになるのが通常です。関係業者への連絡
不動産管理業者・銀行の担当者など賃貸マンション・アパートの経営に携わっている関係者にも連絡を行います。固定資産税についての相続人代表者指定届
遺産分割協議が長引く場合には、役所に対して、相続人の中で不動産の固定資産税の支払いについての相続人の窓口となる相続人代表者指定届を提出しておきます。なお、相続人代表者指定届の提出は、納税通知書を受け取る方を指定する手続きに過ぎず、その代表者が相続したことになるわけではありません。準確定申告
被相続人が亡くなるまでに得ていた賃料収入については、相続人が、被相続人の所得として準確定申告を行う必要があります。準確定申告は相続を知った日の翌日から4ヶ月以内に行う必要があります。相続税申告
賃貸マンション・アパートを持っているような場合には、遺産が相続税の基礎控除の額を超えることが多いです。 その場合には、相続税申告も必要となります。 相続税申告は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。賃貸している不動産についての計算式は非常に難しいので、税理士に相談・依頼することを考えておきましょう。まとめ
このページでは、賃貸マンション・アパートを持っている場合の相続についてお伝えしてきました。 どのように相続をするかの決め方と、手続について確認をして、漏れのないようにし、手続に不明点がある場合には弁護士に相談するのが良いでしょう。

- 相続対策は何から手をつけたらよいのかわからない
- 相続について相談できる相手がいない
- 相続人同士で揉めないようにスムーズに手続きしたい
- 相続の手続きを行う時間がない
無料
この記事の監修者
最新の投稿
- 2025.10.29相続全般親が経営していた賃貸マンション・アパートを相続したときの手続きなど解説
- 2025.10.29成年後見相続人に認知症の方がいる場合どうするの?成年後見人制度とは?
- 2025.10.20相続全般相続した不動産を兄弟で分ける方法!兄弟間で揉める原因と円満に進めるポイント
- 2025.09.19相続全般相続をする際に今住んでいる家に住み続ける方法









