延命治療を拒否するための尊厳死宣言公正証書ってどんなもの?
ざっくりポイント
  • 遺言の内容は死後に効力が生じるので生前のことを書いても意味がない
  • 延命治療を拒否するために作成される尊厳死宣言公正証書とは
  • 医師の治療を拘束する効力まではない
目次

【Cross Talk】遺言で延命治療を拒否しても無駄?尊厳死宣言公正証書って何?

終活をしているのですが、延命治療をしたくないので遺言に記載しておくのが良いのでしょうか?また、調べていたら「尊厳死宣言公正証書」というのを見つけたのですが、どのように違いますか?

遺言は死後の財産の処置などについての記載をするもので、その効力は死後に発生します。遺言書自体、死後に見られるのが通常なので、記載しておいても見てもらえない場合もあります。 一方、延命治療を望まない旨を公正証書として作成するのが尊厳死宣言公正証書です。

そうなのですね。詳しく教えてください。

遺言で延命治療を拒否しても意味がない?尊厳死宣言公正証書とは?

回復の見込みのない末期の状態になったときに、過度な生命維持治療を控えてもらい、人間としての尊厳を保ちつつ最期の時を迎えることを尊厳死といいます。 問題になるときにはすでに意識がない、あるいは苦痛により正常な意思表示をすることができないなどの理由から、意思表示をきちんとできる段階のときでないと延命治療の拒否を表明することはできません。

終活を検討される場合に問題となることから、遺言に書けばいいのでは?と思う方も多いのですが、遺言は亡くなるまでその内容が明らかにされないことが多く、また、そもそも死後の法律関係について書いたものであるので用途が違います。このような場合に作成するのが尊厳死宣言公正証書というものです。 尊厳死宣言公正証書について見てみましょう。

遺言が延命治療の拒否に向かない理由

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言は自分の遺産に関する法律関係についての最終的な意思表示
  • 死後にはじめて効力が発揮されるもので延命治療を拒否するために利用するのは適切ではない

遺言というのはどういったものなのでしょうか。延命治療の拒否には使えないのですか?

法律上の遺言は、自分の死後における財産の法律関係を定めるものです。死後に効力を発揮するものなので、見られるのも一般的には死後となり、死ぬ前の問題である延命治療の拒否・尊厳死には向かないということになります。

終活を検討されている方の中には、遺言書の中に延命治療をしない旨の記載をすれば良いのではないか?と考える方も多いのではないでしょうか。しかし、結論として遺言は延命治療の拒否に向きません。

遺言の効果はいつ発生するか

遺言が延命治療の拒否に向かない理由として、遺言の効力が発生する時期が挙げられます。 遺言は人の遺産の死後の法律関係を定めるものです。遺言で書かれた内容に関する効力は、遺言者が死亡した時に発生します(民法985条)。

遺言で延命治療を拒否することはできない

遺言は、遺言者の財産の死後の法律関係について定めるものですから、財産を誰に譲るか、どのような割合での相続に変更するか、といったことを記載するのが基本です。

ここに仮に延命治療の拒否について記載をしたとしても、法律に「遺言で延命治療を拒否する場合には、延命治療を行ってはならない」とするようなものがあるわけではありません。 さらに、遺言自体が遺言者の死後の遺産の法律関係を書いたものになるので、そこに延命治療の拒否について記載をしていても、生前にこれを家族・医師が見るということもあまり期待できません。

よって延命治療の拒否を遺言書に記載しておくことは現実的ではありません。

尊厳死宣言公正証書とは?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 尊厳死と延命治療の拒否
  • 尊厳死宣言公正証書とはどのようなものか

それでは、延命治療を拒否するためにはどのようにすれば良いでしょうか。

人としての尊厳を守るために延命治療を拒否することを尊厳死といいます。尊厳死宣言公正証書という書類を作成するという方法が考えられます。

尊厳死という概念とそのための尊厳死宣言公正証書について確認しましょう。

尊厳死とは?

医療技術が高度化するようになり、意識のないいわゆる植物状態になってもなお生き続けるようなことが可能になりました。 しかし、そのような状態になってまで費用をかけ、またそのような状態を家族に見せることになってまで、生き永らえることが患者本人の希望であるとは限りません。

終末期の医療についての自己決定権の一環として、回復の見込みのない状態になったときに、延命治療を中止してもらい、尊厳を保って死を迎えることを尊厳死といいます。 延命治療を中止してもらうという意思を示す内容になるため、医師の積極的な行為によって死を迎える「安楽死」とは別のものです。

延命治療を拒否するために必要なこと

尊厳死は自己の尊厳を保つことを目的としています。 延命治療が自己の尊厳を保つことを否定しているかどうかは、本人でないとわからないといえます。 そのため、延命治療を拒否したい希望がある場合には、意識がなくなる・意思表示ができなくなる前にきちんと延命治療を拒否する意思表示をしておくことが肝要です。 その意思表示は一般的に、「リビングウィル(LW)」といわれます。

尊厳死宣言公正証書とはどのようなものか

尊厳死宣言公正証書は、尊厳死を希望する旨の宣言をする公正証書です。 公正証書は、公証人が作成する公的な書類です。本人が公証人に対して尊厳死を希望している旨を述べ、聴取した公証人が書類作成の嘱託を受けるという形で、本人が尊厳死を希望していることを外部に示す書類として作成するものです。 作成には、一般的に、基本手数料として11,000円、正本代750円が必要となります。 尊厳死宣言公正証書のサンプルについては、京橋公証役場のホームページに記載されていますので、そちらを参考にしてください。

参考:京橋交渉役場「尊厳死宣言公正証書」

医師の治療を拘束する効力までは有しない

尊厳死宣言公正証書をつくる、あるいは任意の書面としてリビングウィルを作成した場合には、医師は延命治療を中止しなければならないのでしょうか。 現状このような書面があったからといって、医師が必ず延命治療を中止しなければならない、となるものではありません。ただ、尊厳死に関する認知は医師の間でも広まっており、医師が任意に延命治療を中止することを期待できる可能性は非常に高まります。 実際、公益財団法人日本尊厳死協会の2018年のアンケートによると93%の遺族がリビングウィルを受け入れられたと回答しています。

参考:公益財団法人日本尊厳死協会「会員様・ご家族様からの声・2018年ご遺族アンケートより」

このアンケートはリビングウィルに関するものですが、公証人が本人からきちんと嘱託を受けて作成する尊厳死宣言公正証書は、より強く受け入れられることが期待できます。

まとめ

このページでは、延命治療の拒否・尊厳死宣言公正証書についてお伝えしました。 死後のことについて書く遺言は延命治療を拒否するためのものとしては適していません。遺言に何を書くべきか、遺産の残し方については、専門的な内容なので、弁護士に相談することをお勧めします。 延命治療拒否を望むのであれば尊厳死宣言公正証書で意思表示をしておくという方法を検討されると良いでしょう。

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