家賃収入のある相続について、注意点やポイントを解説いたします。

遺産の中に家賃収入のある不動産が存在する場合、家賃を受け取る権利が誰にあるのかを把握する必要があります。 また、遺産分割協議によって遺産を分配する場合は、家賃収入を含めて遺産分割のバランスに注意することも重要です。 そこで今回は、遺産の中に家賃収入がある場合の相続のポイントを解説いたします。

目次

不動産の家賃収入は誰のものになる?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺産分割協議前は相続人全員に当然に分割され、遺産分割協議後は不動産を取得した相続人のものになる
  • 遺言書がある場合は遺言書で指定された相続人のものになる

遺産に含まれる家賃収入は誰のものになるのでしょうか?

遺言書の有無と遺産分割協議の前後によって誰のものになるかが決まります。遺言書がない場合、遺産分割協議成立前の家賃収入は、相続人全員に当然に分割され、遺産分割協議成立後の家賃収入は、遺産分割によって不動産を取得した相続人のものになります。遺言書がある場合、相続開始後の家賃収入は遺言書で不動産を取得した相続人のものとなります。

遺産分割協議が成立する前|相続人全員に当然に分割される

相続が開始してから遺産分割協議が成立するまでの間の家賃収入は、遺産とは別の財産であり、各共同相続人がその法定相続分に応じて取得します。

遺産分割協議が成立した後|不動産を取得した相続人

遺産分割協議が成立して賃貸不動産を取得する相続人が決まった場合、遺産分割協議成立後の家賃収入は、賃貸不動産を取得した相続人のものになります。

なお、遺産分割は相続開始の時にさかのぼって効力を生じますが(民法909条)、遺産分割成立前に各相続人が取得した賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響は受けないとされているので(最判平成17・9・8民集59巻7号1931頁[直亘1.1])、遺産分割協議成立前の家賃収入は各共同相続人が法定相続分で取得することになります(相続人間の協議によって、相続開始の時にさかのぼって不動産を取得した相続人のものとすることはできます)。

関連記事:遺産分割協議の進め方について解説

遺言書がある場合|指定された相続人

遺言書がある場合、相続人による遺産分割協議は不要です。遺言書で賃貸不動産を取得すると指定された相続人が相続開始時から所有することになるので、相続開始後の家賃収入もその相続人のものということになります。

相続した不動産の遺産分割方法

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続した不動産を分割する場合は現物分割、代償分割、換価分割という方法がある
  • いったん相続人の共有にしておくこともできる

遺産の中に不動産が含まれる場合、どのように分割すればいいのでしょうか?

不動産の分割方法には、現物分割、代償分割、換価分割といった方法があります。相続人間で分割方法について意見がまとまらない場合は、いったん相続人全員の共有とする共有分割という方法もあります。

現物分割

不動産の現物を分ける方法を現物分割といいます。一筆の土地を各相続人の法定相続分を基礎に分筆して、各共同相続人が分筆された各土地を取得する場合などが現実分割の代表例です。

ただし、土地と違って建物は現実に分割することは困難ですし、土地は分割自体が可能でも分筆して細分化することで価値が下がることもあるので、現物分割がふさわしくない事例も少なくありません。

関連記事:相続不動産の遺産分割の際にはどのような方法があるのか

代償分割

共同相続人の中で特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人に対して代償金を支払う分割方法を、代償分割といいます。
代償分割には、不動産を売却せずに済むというメリットがある一方、そもそも誰が不動産を取得するかといったことや、代償金の適正な額はいくらかといったことについて相続人間でトラブルになりやすいなどがデメリットです。

関連記事:不動産相続の際の代償分割の要件や代償金の決め方などを解説!

共有分割

相続人間で不動産の分割方法について意見がまとまらない場合には、いったん不動産を相続人全員の共有とする共有分割という方法があります。
もっとも、共有分割は問題の先送りと言えるので、後日、相続人間で共有不動産の管理や処分について争いが生じるリスクがあるので理解しておきましょう。

換価分割

不動産を売却して諸費用を差し引いた残額を相続人間で分けることを換価分割と呼び、相続人全員が遺産に含まれる不動産を利用するつもりがない場合などに行われます。
代償分割の場合、不動産の評価を巡って争いになることが多い(不動産を取得する相続人は代償金を安くするため不動産を低く評価しようとするのに対し、代償金をもらう相続人は代償金を高くするために不動産を高く評価しようとする)のですが、換価分割では不動産が高く売れることが相続人全員にとっての利益となるため、不動産の評価を巡る争いが生じにくいのがメリットです。
また、代償分割のように相続人が代償金を用意する必要がないので、相続人に経済的な余裕がない場合にも利用できます。

家賃収入がある不動産を相続した場合に必要な確定申告について

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続開始後の家賃収入は相続人自身の確定申告が必要になる
  • 被相続人が亡くなるまでの被相続人の家賃収入は準確定申告をしなければならない

家賃収入がある不動産を相続した場合、確定申告はどうすればいいのでしょうか?

相続開始後の家賃収入については、それを取得した相続人自身の確定申告が必要になります。また、被相続人が亡くなるまでの間の家賃収入は、相続人が被相続人に代わって申告をする必要があります。これを準確定申告といいます。

相続人自身の所得税を申告する確定申告

相続開始後の家賃収入は、遺産とは別個の財産であり、相続人自身の収入になるため、家賃収入を得た相続人自身が確定申告をする必要があります。

亡くなった方の所得税を申告する準確定申告

被相続人が亡くなるまで(1月1日から亡くなった日まで)の間の家賃収入は、被相続人の収入になります。

そのため、被相続人の確定申告が必要になるのですが、亡くなった方がご自身で確定申告をすることはできないので、相続人が代わりに申告をする必要があります。これを準確定申告といいます。 準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内にしなければならないことに注意が必要です。

家賃収入がある不動産を相続した場合の注意点

知っておきたい相続問題のポイント
  • 速やかに相続登記をする
  • 家賃の振込先口座や各種保険の名義変更の手続きをする

家賃収入がある不動産を相続した場合、どのようなことに注意をすればいいでしょうか?

法律で定める期限内に相続登記をしないと過料が科されるおそれがあることに注意が必要です。また、家賃の振込先口座や各種保険の名義変更の手続きも必要になります。

相続登記を行う

不動産を相続した場合、速やかに相続登記をする必要があります。

相続登記は、自己のために相続が開始したことを知り、かつ不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内にしなければならず、正当な理由なくこの期限を徒過すると10万円以下の過料が科される可能性があります。

家賃の振込先口座を変更する

従前、家賃の振込先口座として被相続人名義の口座が指定されていたはずですが、被相続人が亡くなったことを金融機関に伝えると、金融機関が被相続人名義の口座を凍結してしまいます。

口座が凍結されると、相続手続きが終わるまでその口座から引出しができなくなるので、賃借人に通知して家賃の振込先口座を相続人名義の口座に変更する必要があります。

各種保険の名義を変更する

被相続人が不動産について火災保険、地震保険などの各種保険に加入していた場合、速やかに各種保険の名義変更をが必要です。
保険会社が分からない場合には、遺品の中から保険証券を探す、通帳の記載から保険会社名義の引落しを探すなどして保険会社を特定し、名義変更の手続きについて問い合わせるようにしてください。

まとめ

本記事では、遺産の中に家賃収入がある場合の相続について解説しました。 遺産の中に、家賃収入のある不動産が存在する場合、誰に家賃を受け取る権利があるかを把握することが重要です。 遺産分割協議によって、家賃収入のある不動産を誰が相続するかを決める場合は、遺産分割のバランスに注意しなければなりません。

他の相続人に差額を支払う代償分割や、不動産を売却して代金を分配する換価分割など、バランスを取るための方法は様々です。 相続をめぐってのトラブルを防止するには、相続問題の経験が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

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この記事の監修者

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弁護士 髙橋 知稀千葉県弁護士会
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