遺言書があると相続手続きはどうなる?
ざっくりポイント
  • 遺言書がある場合、原則として遺言の内容に従って相続手続きが進められる
  • 全員の合意があれば遺言と異なる遺産分割も可能
  • 遺言に納得がいかない場合は遺留分侵害額請求で対処できる
目次

【Cross Talk 】遺言書があると相続手続きはどうなる?

遺言書がある場合、相続手続きはどうなるのでしょうか。

原則として遺言書に従って相続が進められますが、例外もあります。

遺言の内容に納得がいかない場合もありますよね。

そうですね。その場合の対処法も含め、詳しく解説していきましょう。

遺言書があると相続手続きはどうなる?

相続が発生した際、遺言書が見つかることがあります。遺言書がある場合、相続手続きはどのように進めれば良いのか、遺言書にはどのような法的効力があるのか、疑問に思う方もいるでしょう。また、遺言書の内容に必ず従わなければならないのか、納得がいかない場合はどうすれば良いのかなど、状況次第で様々な悩みが生じます。 本記事では、遺言書がある場合の相続手続きの流れ、遺言書の種類や効力の確認方法、そして遺言の内容に納得がいかないときの対処法について解説します。 本記事を読めば、遺言書がある場合の相続について正しく理解でき、適切に対応できるようになります。

遺言書がある場合の相続はどうなる?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言書がある場合、基本的には遺言の内容に従って相続が行われる
  • 遺言の内容通りでないと、遺産分割協議がやり直しになることもある

相続において、遺言書はどのように取り扱われるのですか。

遺言書には遺産分割の方法を決めるという重要な役割があります。

遺言書とは、亡くなった方が相続に関する自分の意思を書き残した、法的な文書です。遺言書には自分の財産を誰にどのように分けるかなどを記載し、民法で定められた形式要件を満たせば法的な効力が認められます。 遺言書がある場合、原則としてその内容に従って相続手続きが進められます。例えば、「長男に自宅を、次男に○○銀行の預金を相続させる」と遺言書に書かれていた場合、その内容通りに財産が分配されます。一方、遺言書がない場合には、法律で定められた相続人全員で「遺産分割協議」を行い、誰がどの財産を相続するかを話し合って決めます。 このように、遺言書の有無によって相続手続きの進め方が異なるため、相続が発生したらまずは遺言書の有無を確認することが重要です。遺言書の存在を知らずに遺産分割協議を進めてしまい、後から遺言書が見つかると、手続きをやり直さなければならないこともあります。

遺言書がある場合の相続で必要な手続

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言書には3種類ある
  • 遺言書の内容や効力を理解することが大事

遺言書がある場合、相続はどのような流れで進めれば良いでしょうか。

まずは遺言書の種類や効力を確認し、遺言の内容を理解することが大事です。

遺言執行者の有無も大事そうですね。これらについて、詳しく教えてください。

遺言書の種類を確認

民法で定められた遺言書には、主に以下の3つの種類があります。
  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言
  • 自筆証書遺言は、遺言者が自分で全文、日付、氏名を手書きで作成する遺言書です。費用がかからず手軽に作成できる反面、形式不備や紛失のリスクがあります。 公正証書遺言は、公証人が遺言者の口述をもとに作成し、公証役場に原本が保管される遺言書です。確実性が高く、偽造や紛失の心配がないのが公正証書遺言の特徴です。 秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたままで、その存在だけを公証人に証明してもらう遺言書です。秘密証書遺言の作成には2名の証人を用意しなければならず、手続きに手間がかかるため、一般的にはあまり利用されることがありません。 また、自筆証書遺言と秘密証書遺言については、家庭裁判所での「検認」という手続きが必要です。検認とは、遺言書の存在と内容を明確にし、偽造や変造を防ぐ手続きです。もっとも、法務局の遺言書保管制度を利用している自筆証書遺言については検認が不要です。 一方、公正証書遺言は公証人が作成し公証役場に保管されているため、検認の必要がありません。 このように、遺言書の種類によって必要な手続きや取り扱いが異なるため、まずはどの種類の遺言書であるかを明確にすることが重要です。 関連記事:遺言書の種類別にどのような費用がかかるかを解説

    遺言書の効力を確認

    遺言書には法律で定められた要件があり、これを満たしていない場合は無効となります。遺言書が無効になるのは、以下のようなものがあります。
  • 形式的な不備がある場合
  • 内容が不明確な場合
  • 遺言者に遺言能力がなかった場合
  • 脅迫や詐欺、錯誤によって作成された場合
  • 形式的な不備とは、自筆証書遺言で全文が自筆でない、日付や署名がない、押印がないなどが当てはまります。このような民法で定められた形式要件を満たしていなければ、遺言書として認められません。また、内容が不明確な場合とは、例えば「財産の一部を長男に」といった曖昧な記載のことであり、どの財産を指しているのか特定できない状況です。 遺言能力がないというのは、遺言作成時に認知症などで判断能力が著しく低下している場合です。遺言は本人の真意に基づいて作成される必要があるため、遺言能力がなければ無効となります。そして、遺言書の作成過程で脅迫や詐欺、錯誤などがあった場合も、本人の真意に基づかないため無効となります。 このように、遺言書があっても無効となる可能性があるため、相続手続きを進める前に遺言書の効力を確認することが重要です。

    遺言執行者の有無を確認

    遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う方のことです。遺言執行者は、相続財産の目録の作成、不動産の名義変更手続き、預貯金の解約や払い戻し、各種手続きの代理など広範な権限があり、相続手続きを進めるうえで主導的な役割を果たします。 遺言執行者の有無によって相続手続きの進め方が異なるため、遺言書を確認する際には遺言執行者の指定があるかどうかを確認する必要があります。 遺言執行者が指定されていない場合、相続人全員が協力して遺言内容を実現します。この場合、相続人間で意見が対立すると手続きが滞る可能性もあるため、一般的には遺言執行者が指定されているほうがスムーズに手続きが進むことが多いでしょう。 関連記事:遺言執行者は必要?メリット・デメリットや選任した方が良い場合について

    遺言書に従わなくても良いのはどんな時?

    知っておきたい相続問題のポイント
    • 相続人・受遺者全員の合意があれば遺言書と違う遺産分割が可能
    • 遺言書が無効の場合は遺産分割協議を行う

    遺言書がある場合、必ず遺言書の通りに遺産分割しなければならないのでしょうか。

    原則はそうですが、例外的に遺言の内容と異なる遺産分割ができる場合もあります。

    相続人・受遺者全員の合意がある

    遺言書がある場合でも、相続人および受遺者全員が合意すれば、遺言内容とは異なる遺産分割を行うことができます。 このときは、遺言書の内容よりも、相続人・受遺者全員の合意が優先されます。 ただし、遺言書によって利益を受けている相続人や受遺者が同意するとは限りません。そのため、実際には他の相続人が話し合いを重ね、なぜ遺言内容を変更する必要があるのかを丁寧に説明して合意を得ることが重要です。 遺言書の趣旨を十分に理解し、その上で「より公平で現実的な分割方法」であることを説明できれば、全員の同意により遺言内容を変更することも可能でしょう。

    遺言書が無効である

    先ほど説明したように、遺言書が法律で定められた要件を満たしていない場合は無効となります。遺言書が無効である場合、その内容に法的な効力はないので、従う必要はありません。この場合、相続人全員で遺産分割協議を行ったうえで、誰がどの財産を相続するかを話し合って決めることになります。 もっとも遺言書の有効性については法的な判断が必要であるため、判断に迷ったら弁護士などの専門家に相談し、確認することをおすすめします。 関連記事:遺言書を無効にしたい!必要な手続きについて確認

    遺言の内容に納得がいかないときの対処法

    知っておきたい相続問題のポイント
    • 相続人は遺留分によって最低限度の相続分が保障されている
    • 遺言に納得がいかない場合は遺留分侵害額請求で対応できる

    遺言の内容に納得がいかない場合の対処法はありますか。

    遺留分侵害額請求を行うことで、最低限の相続分を確保できます。

    遺留分侵害額請求とは

    遺留分とは、一相続人に保障された最低限の遺産取得分のことです。被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分が保障されており、遺留分侵害額請求を行うことで遺留分に相当する金銭の支払いを求めることができます。 例えば、「全財産を長男に譲る」という遺言を残して亡くなった場合、遺言書自体に形式的な問題がなければ有効な遺言となりますが、次男や配偶者には遺留分があります。そのため、遺産を受け取れなかった次男や配偶者は長男に対して遺留分侵害額請求を行い、自分の遺留分に相当する金額を請求できます。 このように、遺言の内容に納得がいかない場合でも、遺留分侵害額請求という手段があることで法定相続人の最低限の権利が守られています。 関連記事:遺留分侵害額請求権とは?行使方法・時効・計算方法を弁護士が解説

    遺留分侵害額請求の流れ

    遺留分侵害額請求は、以下の流れで進めていきます。
  • 内容証明郵便による意思表示
  • 相続人同士での話し合い
  • 家庭裁判所での調停
  • 遺留分侵害額請求訴訟
  • まず、遺留分を侵害している相手に対して内容証明郵便を送付し、請求の意思を伝えます。次に、相続人同士で話し合いを行い、支払う金額や支払時期、支払方法などを協議し、双方が合意に至れば合意書を作成します。 そして、話し合いで解決できない場合は家庭裁判所に調停を申立てます。調停では調停委員が双方の主張を聞きながら、解決に向けた調整を行います。ただし、調停はあくまで話し合いによる解決を目指すものなので、双方が合意できなければ不成立となります。 調停でも解決しなければ、裁判所に訴訟を提起します。訴訟では、遺留分がどれだけ侵害されているかを証拠に基づいて立証していく必要があります。訴訟には法的な知識が必要となるため、弁護士に依頼することが望ましいでしょう。 関連記事:遺言書に納得できない!遺言書と異なる遺産分割はできる?

    まとめ

    相続が発生したらまず遺言書の有無を確認し、見つかった場合は種類を特定したうえで検認が必要かどうかを判断しましょう。遺言書がある場合、原則としてその内容に従って相続手続きを進めることになります。 ただし、遺言書があっても必ずその通りにしなければならないわけではありません。相続人・受遺者全員が合意すれば、遺言とは異なる内容での遺産分割も可能ですし、遺言書が無効であれば遺産分割協議を行うことになります。 また、遺言の内容に納得がいかない場合、遺留分侵害額請求も可能です。兄弟姉妹以外の法定相続人には最低限の取り分が保障されているため、侵害された場合は適切に権利を主張できます。 遺言書がある相続では法的な判断が必要になる場面も多いため、少しでも不安がある場合は弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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