- 遺言の捏造をした場合どのようになるか
- 遺言の捏造をした方に対しての主張方法
- 遺言の捏造を疑われないためには公正証書遺言を活用する
【Cross Talk 】他の相続人が遺言書を捏造したのではないかと思っているのですが
先日母が亡くなり、私たち子ども2人で相続をすることになりました。弟は母が遺言書を書いていたと言って遺言書を出してきたのですが、母は認知症を患っていて遺言書を作成できる状況ではなかったのです。遺言書は捏造されたものだと思うのですが、このような場合に弟はどうなるのでしょうか?また、私はどのような方法で遺言書が無効であると主張すれば良いですか?
遺言書を捏造してもそれは無効ですし、弟さんは相続欠格となる可能性がありますね。きちんと証拠を集めて遺言無効確認の訴えを起こしましょう。
詳しく教えてください。
被相続人が高齢で寝たきりであった・認知症で意思決定をできる状況ではなかったというような場合で遺言を捏造したという事例があります。
このような場合に遺言を捏造したと思われる相手に、どのような主張をすることができ、その主張をどのような方法で行うのでしょうか。このページでは、遺言を捏造した相手に主張できる内容と、その方法についてお伝えいたします。
遺言を捏造した場合の法律関係
- 遺言は本人が行わなければ無効
- 刑事罰の対象にもなる
遺言を捏造したような場合は当然に無効ですよね?
もちろんです。刑事罰にもなりうるものです。
遺言を捏造した場合の法律関係はどのようになるのでしょうか。
遺言は本人が自分の意思で行わなければならず、捏造されたものは無効
当然ですが、遺言は捏造できず、本人が自分の意思にしたがって行わなければなりません。たとえ、本人が認知症等によって意思表示をすることができない状況になっても、他人が行うことができるものではありません。
遺言を捏造したような場合は無効です。
検認によって有効になるわけではない
遺言書の中でも公正証書遺言は、遺言者の意思を確認しながら公証人が作成するものなので、遺言の捏造は自筆証書遺言・秘密証書遺言で発生します。自筆証書遺言や秘密証書遺言がされた場合、遺言書の検認という手続きが家庭裁判所で行われます。
遺言書の検認は、家庭裁判所で遺言書を調べるという手続きですが、遺言書の形状や内容の確認を行うのみで、遺言書の有効性を判断するものではありません。
遺言書の捏造をした相続人は相続欠格に
遺言書の捏造をしたのが相続人である場合には、相続欠格となって相続人になることができません。民法891条各号に該当する場合には、相続をさせるのが不適切であるとして、相続人になることができない旨が規定されています。
民法891条5号では、「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者」としています。
そのため、相続人が自筆証書遺言や秘密証書遺言を捏造したような場合は、その相続人は相続をすることができなくなります。
刑事罰
自筆証書遺言や秘密証書遺言を捏造した場合には刑事事件として刑事罰が科せられる可能性があります。遺言書は私文書にあたり、捏造をした場合には、有印私文書偽造罪が成立します(刑法159条1項・2項)。捏造された遺言書を利用した場合には、有印私文書行使罪が成立します(刑法161条)。
遺言書の破棄
遺言書の破棄が行われた場合、上述した相続欠格には、破棄も含まれているので同様に相続欠格となります。また、遺言書の破棄については、私用文書毀棄罪(刑法259条)が成立することになります。
本人が破棄・変造
本人自身が作成した遺言書を破棄することで、効力が生じなくなります。もっとも、公正証書遺言や自筆証書遺言署保管制度による自筆証書遺言の場合は、原本はそれぞれ公証役場・法務局にあるので、自分で破棄ができません。
その遺言を取り消したい場合には、遺言の内容を取り消す旨の遺言をしたり、遺言の内容に抵触する遺言書を作成したりする必要があります。
また、自分で内容を書き換えることも自由です。
もっとも、自筆証書遺言の場合は、法律に則った形での訂正をしなければ効力が発生しません。
また、公正証書遺言・自筆証書遺言書保管制度による自筆証書遺言の場合は原本が公証役場・法務局にあるので変造ができません。
遺言の捏造を争うためには
- 遺言の捏造を争うためにはまず証拠を集める
- 遺言無効確認の訴えで捏造された遺言が無効であることを主張する
遺言の無効を争うにはどうすればいいですか?
きちんと証拠をあつめて遺言無効確認の訴えを起こしましょう。
では、捏造された遺言が無効であると争うための方法はどのようなものでしょうか。
証拠を集める
遺言が捏造されたものであることを主張するためには、それを裏付ける証拠が不可欠となります。遺言当時に認知症であったなどで、意思表示をすることができなかったというのであれば、遺言をした当時のカルテの取り寄せをする必要があります。
自筆証書遺言がある場合には、文字が本当に本人のものなのかを調べるため、筆跡鑑定を利用します。
その際、遺品の中に遺言者が記載した手紙や日記など、本人の筆跡が確認できるものを探し、鑑定に出す必要があります。
その他、事情に応じて遺言が捏造であるという認定ができる証拠をしっかり収集しましょう。
遺言無効確認の訴え
遺言が捏造であるという認定ができる証拠が集まったら、遺言無効確認の訴えを提起します。裁判で遺言が無効であると確認されると、その遺言書を使って相続手続をすることができなくなります。
被害届・刑事告訴
合わせて、遺言を捏造した方に対して、被害届・刑事告訴をすることも併せて検討しましょう。刑事告訴は所轄の警察署長宛てに行います。
被害届は単に被害にあったことを申告するものですが、刑事告訴は処罰を求める意思表示を含み、警察が捜査をする義務を負うものです。
そのため、刑事告訴については受理をしてもらえない、ということもあるので、告訴を求めたい場合には弁護士に相談をしてみてください。
遺言書の捏造によるトラブルを防ぐためには?
- 捏造を防ぐためには公正証書遺言・自筆証書遺言書保管制度を利用する
- 自筆証書遺言書・秘密証書遺言書を専門家に預ける
遺言書を捏造されることによるトラブルを避けるにはどのような方法がありますか?
公正証書遺言・自筆証書遺言書保管制度の利用をすればそもそも捏造ができません。また、作成した遺言書を弁護士などの専門家に預かってもらうことも検討しましょう。
公正証書遺言を利用する
公正証書遺言では、遺言書の原本を公証人が作成し、そのまま公証役場で原本を保管します。作成時に遺言者は遺言書を持ち帰りますが、これは謄本なのでこれを捏造しても効力は変わりません。
自筆証書遺言書保管制度を利用する
自筆証書遺言書保管制度を利用すると、原本は法務局で保管されるので、捏造の心配がありません。なお、公正証書遺言書・自筆証書遺言書保管制度をつかった自筆証書遺言書は捏造の心配がないので、遺言の検認も不要とされています。
遺言書を専門家に預かってもらう
作成した自筆証書遺言書・秘密証書遺言書について、専門家に預かってもらうことも検討しましょう。弁護士・行政書士といった遺言作成に関わる専門家に、遺言書の保管を依頼することができることがあります。
また、遺言執行者に指定している専門家は、遺言執行を行うために遺言書を預かるのが通常です。
専門家に預かってもらうことで、捏造を防止することができます。
まとめ
このページでは遺言の捏造についてお伝えしました。
捏造された遺言は無効であることはもちろん、相続できなくなる相続欠格に該当したり、刑事罰が科せられる重大な行為であるといえます。
遺言無効確認の訴えで争うのですが、そのためには裁判をして捏造されたものであると認定してもらえる証拠が不可欠です。
不明な点があれば弁護士にご相談してみてください。
- 死亡後の手続きは何から手をつけたらよいのかわからない
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