戸籍謄本ってどんなもの?取得方法について解説
ざっくりポイント
  • 戸籍とはどのようなものか
  • 戸籍の種類にはどのようなものがあるか
  • 戸籍の収集方法
目次

【Cross Talk】戸籍ってよく聞くけど…何が書いてあって、どうやって取るのか?

先日父が亡くなりました。相続手続きをすすめるにあたり、銀行や法務局に提出する書類として戸籍の証明書が必要だということがわかったのですが、ホームページを見ていてもよくわからなくて…

戸籍は親族関係に関することを記載した公文書です。戸籍が管理されている役所で戸籍謄本をもらい提出をします。収集には少しコツもあるのでお教えしますね。

親族関係を証明するための戸籍収集について知ろう

戸籍は国民を登録するために管理されている公文書で、そこには親族に関する事項が記載されています。 戸籍謄本を手に入れることで、親族関係を証明することができるので、相続手続において用いられます。取得する戸籍謄本にはいくつかの種類がありますが、基本的には直近のものから順番に遡っていくことになります。

戸籍とは?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 戸籍とはどのようなものか?種類は?
  • 戸籍が必要な理由
  • 戸籍の取得方法

戸籍とはどんなものを指すのか教えてください。

戸籍とは法務局で保管している公文書です。取得するのは戸籍謄本と呼ばれている書類になりますが、戸籍謄本にもいくつかの種類があります。

まず戸籍とはどのようなものかを確認しましょう。

戸籍とは

戸籍とは、国が国民を登録するために用いられている公文書です。 「戸」という字が表しているように、登録は家族という集団を単位にして行われているという特徴があり、世界的には日本や台湾といった一部の地域で運用されているものになります。

国民の登録を目的としているので、アメリカの社会保障番号のように年金に関するデータの管理を目的とするものとも異なるといえます。 戸籍に記載されている情報を提出するときには、「戸籍謄本」と呼ばれる書類を市区町村役場の市民課で発行してもらいます。また、市区町村によってはコンビニでの発行も可能となっています。

戸籍の種類

戸籍に関する証明をするために「戸籍謄本」を取得するのですが、戸籍謄本は戸籍が紙で管理されているものについての証明書です。実務上、戸籍謄本と呼ばれるものについては次のようなものがあります。 現在、戸籍はコンピューターで管理されており、コンピューターで管理されている戸籍の情報を求める場合には、戸籍全部事項証明書が必要になります。

また、戸籍は家族単位で管理されているため、利用目的によっては不要な情報も記載されています。そのため、自分に関する一部分の戸籍情報のみ必要な場合には、戸籍抄本(コンピューター管理されているものについては戸籍一部事項証明書)を取得します。なお、戸籍抄本・戸籍一部事項証明書は基本的に相続では利用しません。 戸籍上にいる方が全員死亡している場合、転籍して現存していない場合、戸籍は除籍となります。除籍した戸籍に関する証明が必要な場合には除籍謄本を取得します。

最後に、戸籍法と法務省令の改正によって様式が変更された場合に戸籍を書き換えることがあります。この戸籍の書き換えを「改製」と呼んでおり、改製前の戸籍に関する証明が必要になった際には改製原戸籍謄本を取得します。

相続において戸籍が必要な理由

相続において戸籍に関する書類が必要な理由は親族関係を証明してくれる文書であるからです。 例えば、被相続人名義の銀行預金口座を解約する場合、遺産分割協議書と各人の印鑑証明だけでは、本当にその方たちが相続人かどうか判断できません。

仮に相続人ではない方に解約した口座の預貯金を渡してしまうと、本当の相続人から請求をされた際に再度支払いをしなければなりません。 また後述するように、戸籍に関する書類は生まれてから亡くなるまで、少なくとも子どもがいる可能性がある13歳頃まで遡って取得します。これによって、遺産分割協議に参加していない相続人がいないか、ということも確認できるようになるのです。

相続手続きで戸籍が必要になる場面

戸籍謄本は相続に関するあらゆる場合で必要となります。

  • 遺産分割協議の前提として相続人の調査に利用する
  • 預貯金の払い戻し
  • 証券口座の相続
  • 相続放棄・限定承認の申述のための添付書類
  • 相続登記の申請のための添付書類
  • 相続税申告の添付書類
  • 公正証書遺言の作成
  • どの手続をするにあたっても相続関係を証明するために戸籍に関する書類は必要とされます。

    戸籍の取得方法

    では戸籍はどのように取得するのでしょうか。 そもそも、戸籍を取得する目的は、

    • 相続人と主張する人が相続人であることを証明すること
    • 他に相続人はいないことを証明すること

    です。

    そのため、被相続人の生まれてから亡くなるまでにおける親族関係や、相続人に被相続人の相続権があることを証明できる戸籍を全て取得することが必要です。 まずは、直近の戸籍を取得します。 例えば結婚をして新しい戸籍を編製した場合、どの戸籍から移転してきたのかが戸籍上に記載されていますので、その戸籍が存在する市区町村に請求をします。

    改製による新戸籍編製という記録がある場合には、同じ住所の改正原戸籍を取得します。戸籍の取得は直接市区町村の市民課に出向いてもできますし、手数料を定額小為替で納める郵送による取得もできます。

    戸籍を取得するために必要な書類

    戸籍を取得するために必要な書類は次の通りです。

    • 戸籍に関する証明交付申請書
    • 本人確認書類
    • 手数料
    • 疎明資料(本人以外からの請求の場合)
    • 返信用封筒(郵送で請求する場合)
    • 定額小為替(郵送で申請する場合)
    • 委任状(代理人が請求する場合)

    まず、戸籍に関する証明交付申請書を作成・提出する必要があります。
    直接窓口に出向く場合には窓口に備え付けられていますので、それを利用します。
    事前に作成しておく場合や、郵送で請求する場合には、市区町村のホームページからダウンロードしましょう。

    本人確認書類としては、運転免許証やマイナンバーカードのように顔写真付きのものであれば1枚で足りますが、健康保険証のように顔写真が確認できないものしかない場合には、社員証のような民間が発行している身分証明書と合わせて本人確認書類とします。

    なお、手数料は自治体、取得する戸籍に応じて異なることがありますので事前に確認したほうが良いでしょう。

    例えば東京都新宿区の場合、戸籍謄本(戸籍事項全部証明書)が1通につき450円、除籍謄本・改正原戸籍謄本が1通につき700円です。
    本人以外からの請求をする場合には、なぜその請求が必要かの疎明(いちおう確からしいという心証をもたせること)するための資料が必要です。
    書類の名前は自治体によって案内方法が違うので、自治体のホームページを確認してください(新宿区:請求理由が分かる資料)。
    郵送で請求する場合には、返信用封筒の同封が必要であり、郵送で請求する場合には、手数料の代わりに定額小為替を購入して同封します。
    代理人により請求する場合には、委任状が必要です。

    なお、弁護士等の国家資格を持っている専門家に依頼して戸籍を取得してもらう場合には、弁護士等は業務上必要であれば、職務上請求書という書類で取得することができるので、委任状は不要です。

    戸籍謄本の有効期限

    戸籍謄本自体に有効期限はありません。 しかし、銀行などで提出を求める機関によっては、発行の日から6ヶ月以内のもの、といった制限をしている場合もありますので注意が必要です。

    相続における戸籍の見方

    知っておきたい相続問題のポイント
    • 戸籍の見方を確認する

    試しに戸籍謄本をとってきたのですが、どう見ればいいのでしょうか。

    戸籍の見方をお伝えいたします。

    戸籍全部事項証明書を例に見方をお伝えいたします。

    戸籍事項

    戸籍事項については戸籍が作られた日とその理由について記載されています。転籍してきたときには転籍とその従前の戸籍がどこにあるかが記載されています。 改製がされたときには、改正日が記載されています。 ここの記載によって、一つさかのぼる戸籍がどこにあるのかを判断します。

    戸籍に記載されている方

    戸籍に記載されている方の出生年月日、父、母、続柄等が記載されています。

    身分事項

    出生日、出生地、婚姻に関する事項が記載されています。 婚姻によって新たな戸籍が作られるのですが、従前の戸籍と筆頭者の記載が婚姻の欄にあるので、一つさかのぼるときの筆頭者を確認することができます。

    相続における戸籍謄本の提出先

    知っておきたい相続問題のポイント
    • 戸籍謄本をどこに提出するか

    取得した戸籍謄本はどこに提出すれば良いのでしょうか。

    手続きをする機関の窓口に提出することになります。

    取得した戸籍謄本は手続きをする機関に提出をします。

    金融機関

    被相続人の預貯金を相続人が引き出すための手続きであれば、対象の金融機関にて相続の手続きを行う必要があります。金融機関が求める各書類と一緒に戸籍謄本を提出します。提出した戸籍謄本等は、他の手続きでも使うため、預けた後に金融機関でコピーをとってもらい返還を受けることも可能です。

    法務局

    不動産を相続したときには、相続登記を行います。相続登記をする際に必要な登記申請書と一緒に戸籍謄本を提出します。登記する際にも原本還付という方法で戸籍謄本を返してもらえることになっています。

    税務署

    相続税の申告にも戸籍謄本を提出します。 なお、平成30年4月1日より、戸籍謄本はコピーでも良いこととなりました。

    裁判所

    相続に関する調停の申立てをする際や、相続放棄、限定承認の申述をする際には、戸籍謄本を添付します。 原本還付をしてもらえるかどうかは、手続きや裁判所ごとの取り扱いによって異なり、還付してもらえない場合もあるため注意をしましょう。

    大量の戸籍謄本が必要になる具体例

    知っておきたい相続問題のポイント
    • 兄弟姉妹の代襲相続が発生している場合
    • 長い間登記をしていない不動産がある場合
    • 弁護士などに依頼すると職務上請求書という書類で取得できるのでスムーズ

    大量に戸籍謄本をとらなければいけないような場合ってありますか?

    第三順位の相続でかつ兄弟姉妹の代襲相続が発生しているような場合や、長い間登記をしていない不動産がある場合には、相続人が誰なのかを確定させるために必要な戸籍謄本が大量となることがあります。

    相続の中でも大量の戸籍謄本が必要となる場合として、次の2つを見てみましょう。

    兄弟姉妹の代襲相続が発生しているような場合

    相続人の中でも子ども・親や祖父母などの直系血族がいない場合には兄弟姉妹が相続人となります。 また、相続人となる人が相続開始前に死亡し、かつその子どもがいる場合には代襲相続が発生します。

    例えば、Aの相続の場合で、
    ・AはBと婚姻した
    ・AとBの間には子どもC・Dがいたがいずれも既に死亡
    ・Cには子どもはなく、Dには子どもEがいたが相続放棄をした
    ・Aの親F・Gは既に死亡
    ・Aの兄弟姉妹にはH・IがいるがHは既に死亡
    ・Hには子どもJ・Kがいる
    というような場合でのAの相続を想定しましょう。
    この場合には登場するAからKまでの全員の戸籍が必要となり、大量の戸籍が必要となります。

    長い間登記をしていない不動産がある場合

    遺産に不動産がある場合で、あまり用途がないと思われる誰も使わない山奥の土地があるような場合に、遺産分割の対象にもせず誰も管理する方がいない状態で、長い間登記をしていないような場合があります。

    中には所有者が明治やその一つ前の慶応生まれであるような場合もあります。 このような場合に、その不動産について適正な処理をするために、所有者を探すには非常にたくさんの戸籍が必要となる場合があります。

    法定相続情報一覧図の作成を検討する

    戸籍があまりにも多い場合には法定相続情報一覧図の作成も検討しましょう。
    法定相続情報一覧図とは、相続関係をまとめて一覧に表した関係図です。

    戸籍謄本の収集、提出は、誰が被相続人の相続人であるかを確定するために行うもので、必要な戸籍を収集し、自分で作成した法定相続情報一覧図を登記所に提出すると、法務局が、被相続人の相続関係が正しいかどうか確認し、認証文言を付けた一覧図の写しを交付してくれます。この制度を法定相続情報証明制度と言います。この制度を使って交付された相続情報一覧図の写しは、戸籍の代わりに各機関に提出して手続きに使うことができます。

    この制度を使わないと、戸籍があまりにも多い場合、戸籍をすべて集めてまとめて提出すると手間がかかり、また手続きの数だけ提出するのも取得が大変で費用がかかります。

    必要な戸籍を1通ずつ取得して、それを使いまわすことも可能な場合はありますが、相続の手続きに必要な各機関(法務局や銀行、証券会社等)に戸籍の原本を提出し、それが還付されるまで待ってから次の手続き、という流れになるので非常に時間がかかります。

    法定相続情報証明制度を使えば、法定相続情報一覧図の提出で戸籍謄本の提出に替えることができ、相続手続きにかかる時間や手間を省くことが可能となります。

    まとめ

    このページでは、相続における戸籍の利用についてお伝えしました。 戸籍は相続に不可欠な親族関係を証明するもので、相続手続きに必須のものです。 手続きに躓くことがないように、慎重にすすめていくようにしましょう。 さらに詳しく知りたい方は、一度弁護士に相談することをおすすめします。

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