相続人が遺産分割協議に応じない場合や対策について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 相続人が協議に応じない場合として、遺産分割の内容に納得がいかない場合や、相続人の仲が悪い場合などがある
  • 遺産分割を終わらせないと、財産の散逸・銀行口座の凍結・相続税の申告で不利になるなどのデメリットがある
  • 応じない相続人がいる場合は、調停を利用する、弁護士を通じて交渉するなどの方法がある
目次

【Cross Talk 】相続人が遺産分割協議に応じない場合があるの?

被相続人が遺言書を作成しなかったので、遺産分割協議によって、どのように遺産を分割するかを決めなければなりません。相続人が遺産分割協議に応じない場合があるのでしょうか?

遺産分割の内容に納得がいかない場合などは、相続人が遺産分割協議に応じない可能性がありますね。遺産分割協議が成立しない場合は、調停を検討するなど、何らかの対策が必要です。

状況によっては、相続人が遺産分割協議に応じない可能性があるんですね。応じない場合の対策についても詳しく教えてください。

相続人が遺産分割に応じない場合の対策や、遺産分割が終わらない場合のデメリットについて解説

遺産分割協議を成立させるには、相続人全員の同意が必要なので、一人でも同意を欠く場合は協議を成立させることができません。 遺産分割協議が成立していない場合は、相続財産の散逸や銀行口座の凍結などのデメリットが生じる可能性があります。 そこで今回は、相続人が遺産分割協議に応じない場合や、応じない場合の対策について解説します。

遺産分割協議に応じない相続人がいる場合

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続人のうち一人でも同意しないと遺産分割協議は成立しない
  • 応じない場合として、遺産分割の内容に納得がいかない場合や、相続人の仲が悪い場合などがある

遺産分割協議に応じない相続人がいるのですが、どのような場合に応じないのでしょうか。

相続人のうち一人でも同意が欠けると、遺産分割協議は成立しません。協議に応じない場合として、遺産分割の内容に納得がいかない場合や、相続人の仲が悪い場合などがあります。

共同相続人の間の仲が悪い

遺産分割協議に応じない理由として、相続人の間の仲が悪い場合があります。 相続人の間の仲が極端に悪い場合、分割の内容自体にはそれほど関心がないものの、嫌いな相手の言うことだから納得できないという場合もあるのです。 分割の内容ではなく、私的な人間関係が原因で納得しない場合は、説得の交渉が難航する可能性があります。

すべての遺産は自分のものになるべきという考えである

遺産分割協議に応じない理由として、すべての遺産は自分のものになるべきという考え方を持っている相続人がいる場合があります。 例として、長男である自分がすべて相続すべきだと考え、他の方の相続を認めず、遺産分割協議をしても応じないといった場合があります。

生活に困っており遺産でなんとか立て直したい

遺産分割協議に応じない理由として、生活に困っており遺産でなんとか生活を立て直したいと考えている場合があります。 借金をしているような場合や、大きな費用の支出がある場合に遺産を充てにすることがあり、遺産分割協議でこれらの目的のために、自分の主張を絶対に曲げない結果、遺産分割協議について自分の主張にしか応じないという相続人がいる場合があります。

実は遺産を使い込んでしまっており遺産分割協議案は都合が悪い

遺産分割協議に応じない理由として、実は遺産を使い込んでしまっており、遺産分割協議案では都合が悪い場合があります。 例えば、被相続人と一緒に住んでおり、銀行のカードと暗証番号を知っていたため、遺産を使い込んでいるような場合があります。 遺産分割でその預金を他の相続人が相続することになった場合、遺産を使い込んでいるのがバレてしまうので、遺産分割協議に応じないことがあります。

特別受益や寄与分についての争いがある

遺産分割協議に応じない理由として、生前贈与や寄与分についての争いがある場合があります。 特定の相続人が、生前に私立の大学に行かせてもらった・結婚資金や住宅資金をもらったなど、生前贈与を受けているような場合、他の相続人として不公平と感じるでしょう。 また、同じように特定の相続人が、被相続人の介護をしていたり、家業を手伝っていたりするにもかかわらず、他の相続人と相続分が同じというのも不公平であるといえます。

これらを調整するための制度として、特別受益・寄与分があるのですが、これを認めるか、認めるとしてその額をいくらと計算するかについて争いがある結果、遺産分割に応じてもらえないことがあります。

遺産分割協議を早くすべき理由は?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺産分割協議がなかなか終わらないのですが、何かデメリットはありますか?
  • 銀行口座が凍結されたり、相続税の申告で不利になったりなどのデメリットもある

遺産分割協議がなかなか終わらないのですが、何かデメリットはありますか?

遺産分割協議を終わらせないと、使い込みなどで財産が散逸する危険性があります。また、被相続人の銀行口座が凍結されたり、相続税の申告で不利になったりなどのデメリットもあります。

相続財産が散逸する

遺産分割協議が終わらないと、相続財産(相続の対象となる財産)が散逸する危険性が高くなります。 例えば、特定の相続人が被相続人の預貯金口座の暗証番号などを把握している場合、口座から勝手にお金を引き出して、使い込みをしてしまう可能性があります。 使い込みに対しては裁判外で返還を請求する方法や裁判所の手続きとして調停や訴訟をする方法がありますが、いずれにせよ手間や費用がかかります。

また、使い込みをした相続人にめぼしい財産がなく、ギャンブルなどで消費して金銭が手元にない場合は、請求をしても回収できない可能性もあります。 いずれにせよ、遺産分割が長引くほど相続財産が散逸する可能性が高くなるので、早めに分割を終わらせるべきです。

銀行口座が使えず生活に支障をきたす

遺産分割協議が終わっていない場合、銀行口座が使えなくなることで、生活に支障をきたすことがあります。 被相続人が亡くなったことを銀行が把握した場合、被相続人名義の預貯金口座が凍結されて、預貯金の引き出しなどができなくなってしまいます。 預貯金の凍結を解除するには名義変更の手続きが必要ですが、手続きをするには、遺産分割協議を終わらせなければなりません。

当面の生活費や葬儀費用などのために、遺産分割が終わる前でも預貯金の一部を引き出せる制度がありますが、金額に上限があるのがデメリットです。 遺産分割協議を終わらせておけば、被相続人の預貯金口座の手続きをスムーズに行うことができます。

相続税の申告で不利になる

遺産分割協議が終わっていないと、相続税の申告において不利になってしまいます。 相続税の申告期限は、相続の開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10ヶ月以内です。 相続税の申告においては、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、各種の減税措置があります。 しかし、遺産分割協議が終わっていない場合は、各種の減税措置を適用することができません。 一部の減税措置については特別な申告をすることで適用することもできますが、遺産分割が終わっていれば、手間をかけて特別な申告をする必要がありません。

なお、遺産分割が終わらないままで相続税の申告期限が過ぎてしまう場合は、いったん法定相続分で相続した形で申告をする方法があります。 相続税の申告をした後に遺産分割を終わらせれば、遺産分割の内容に従って申告を修正することもできますが、手続きに手間がかかるのが難点です。 相続税の申告までに遺産分割を終わらせておけば、申告を修正する手間がかかりませんし、各種特例をスムーズに適用することができます。

二次相続が発生してしまうと手間が多くなる

二次相続が発生してしまうと手間が多くなります。 二次相続とは、親族が亡くなったことで相続人になった人が更に亡くなった際に発生する相続をいいます。例えば、父・母・子ども2人の家庭で、父が亡くなった後に母が亡くなった場合の母の相続のことをいいます。 父の相続についての遺産分割が終わらないうちに母が亡くなってしまうと、一度父の分の相続について終わらせて、母の分の相続を終わらせる必要がありますが、その処理に要する手間は多大です。 そのため、一次相続の時点で早めに遺産分割協議を終わらせる必要があります。

遺産分割協議に応じない相続人がいる場合の対応方法

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 遺産分割に応じない場合は、調停を利用する方法がある
  • 弁護士に交渉を依頼するとうまくいく場合もある

相続人の1人がどうしても遺産分割協議に応じてくれません。なにか良い対処法はありますか?

遺産分割協議に応じない相続人がいる場合、早めに調停を利用することで、早期解決に繋がる可能性があります。また、弁護士を通じて交渉することでうまくいく場合もあります。

早めに調停を利用する

遺産分割協議に応じない相続人がいる場合は、遺産分割調停の手続きを利用する方法があります。 遺産分割調停は家庭裁判所による手続きであり、調停委員と呼ばれる第三者が間に入って調整をすることで、相続人全員による合意を目指します。 当事者だけで協議をしてもまとまらない場合は、中立的な立場である裁判所による調停の手続きを利用することで、遺産分割の問題を解決できる可能性があります。

遺産分割調停の流れ

遺産分割調停は相続人が家庭裁判所に申立てをして行います。 申立てが行われると、家庭裁判所から他の相続人へ、調停を行う旨と、期日の日付が記載された通知が届きます。 調停期日では当事者が集まり、調停委員と意見をかわしながら妥協案を探ります。

全員の合意ができるまで、1ヵ月~2ヵ月に1回程度の頻度で調停の期日が開かれますが、合意ができると合意の内容を書面化した調停調書が作られます。

相手が遺産分割調停に応じない場合

全員の合意が出来ない場合は、裁判官による遺産分割審判に移行します。 なお、そもそも遺産分割調停に出席しない相続人がいる場合は、出席しない方に5万円以下の過料が課されるる可能性はありますが、通常の民事裁判のように敗訴と扱われる訳ではありません。

相続放棄で相続争いから離脱する

相続放棄で相続争いから離脱することも検討しましょう。 相続放棄をすれば、その方は最初から相続人ではなかったと扱われることになります(民法939条)。 相続人でなければ、遺産分割調停に出席する必要もなく、相続争いからは離脱することができます。 遺産を得ることのメリットがあまりないような場合には、相続放棄で相続争いから離脱することも検討しましょう。

なお、相続人が被相続人よりも先に亡くなっていたり、相続欠格・推定相続人が廃除されていたりする場合には、その子どもが代襲相続することになるのですが、相続放棄の場合には代襲相続は発生しないことになっています。そのため、相続放棄をした方の子どもが相続争いに代わりに巻き込まれることにはなりません。

弁護士を通じて交渉をすることでうまくいく場合も

遺産分割協議に応じない相続人がいる場合、弁護士を通じて交渉することでうまくいく場合もあります。 相続問題に詳しい弁護士に依頼すると、相続人の間の関係や相続財産の内訳など、事情を把握したうえで 法的な主張・交渉をするので、相続人が納得して応じてくれる可能性が高まります。

また、当事者同士で話し合いをしようとすると、つい感情的になってしまいがちですが、弁護士に依頼するとお互いに顔を合わせる必要がないので、精神的な負担が軽減されて、交渉がスムーズに進む可能性もあります。

弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼するメリットとしては、次の3つが挙げられます。
  • 遺産分割調停をしなくても良い可能性
  • 遺産分割調停の申立てをスムーズに行う
  • 遺産分割調停を有利にすすめる
まず、弁護士に依頼すれば、当事者が面と向かって交渉する必要がなくなり、冷静に交渉することができるので、そもそも遺産分割調停を利用せずに、協議で遺産分割を終わらせられる可能性があります。 遺産分割調停をする場合でも、申立書の作成や添付書類の収集をスムーズに行うことができます。

また、遺産分割調停では、主張を正しく調停委員に伝え、調停委員との受け答えを確実に行う必要があるので弁護士に依頼すれば確実にこれらを行ってもらえます。

弁護士に依頼するデメリット

弁護士に依頼するデメリットとしては、弁護士費用がかかるという点が挙げられます。 弁護士に依頼するにあたってはどうしても費用がかかってしまいます。 弁護士費用を払うのであれば、相続に関して知識・経験のある弁護士に相談・依頼することが重要であるといえるでしょう。

まとめ

相続人が遺産分割協議に応じない場合として、分割の内容に納得がいかない場合や、相続人の間の仲が悪い場合などがあります。 遺産分割協議が成立しないと、財産の散逸や口座の凍結などのデメリットが生じる可能性が高まります。 遺産分割協議が成立しない場合は、遺産分割調停を申立てる、弁護士に交渉を依頼するなどの対策が重要です。

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この記事の監修者

弁護士 丸井 駿第二東京弁護士会
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