申告期限が4カ月の準確定申告の概要を解説
準確定申告の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から4カ月以内です。
準確定申告の概要について説明しましょう。
準確定申告とは
準確定申告とは、亡くなった被相続人の所得について申告する手続きのことです。
存命の方で一定の所得がある場合には年度(1月1日から12月31日の間)の所得について翌年に申告する確定申告が必要となります。
しかし、年度の途中で亡くなった場合、亡くなった方が自身で所得を申告することはできません。
亡くなった被相続人に代わって相続人が被相続人の所得について申告する手続きを準確定申告といいます。
準確定申告が必要な方の見分け方
準確定申告が必要かどうかの見分け方は、被相続人が生前に確定申告が必要であったかどうかです。
被相続人が生前に確定申告が必要であった場合は、一般的に準確定申告をする必要があります。
一般的に準確定申告が必要になる例として、以下のような場合があります。
・2カ所以上から給与を得ている場合
・給与所得と退職所得以外の所得が20万円以上ある場合
・給与の年間収入が2,000万円以上ある場合
・公的年金などによる収入が400万円を超える場合
・雑所得が20万円を超える場合
・土地建物や株式につき譲渡所得がある場合
・不動産所得がある場合
・貸付金の利子収入を得ていた場合
・家賃などの不動産収入を得ていた場合
また、医療費控除の対象となる医療費を支払っていた場合などは、準確定申告をすることで還付金を受け取れる可能性があります。
準確定申告が必要な方の例
準確定申告が必要になるのは、以下の場合があります。
① 被相続人が納めるべきであった所得税等を納付しなければならない場合
② 還付を受けることができる場合です。
① の例としては、以下が挙げられます。
・被相続人に事業所得があった場合
・被相続人に不動産収入があった場合
・被相続人が不動産や株式を売却して利益を得ており、譲渡所得税が発生していた場合。
② の例としては、以下が挙げられます。
・被相続人が生前に高額な医療費を支払っていた場合
・被相続人が年末調整を受ける前に死亡していた場合
・自治体等に寄付をしていた場合など、控除が利用できる場合。
準確定申告が不要な方の例
被相続人が以下に該当する場合、準確定申告をする必要はありません。
・会社員で、給与が年間2000万円以下であり、副業もしていなかった方
・年金の受給額が年間400万円以下で、年金以外に収入がない方
準確定申告の期限は4カ月
被相続人が亡くなると相続が開始されるので、「相続が開始したことを知った日=被相続人が亡くなったことを知った日」という意味です。
そして、準確定申告の申告期限は、相続が開始したことを知った日の翌日から4カ月以内です。
相続開始を知った日から起算するのではなく、知った日の翌日から起算する点に注意しましょう。
例えば、被相続人が亡くなったことを知ったのが12月2日の場合、その翌日から起算するので、準確定申告の申告期限は12月3日から4カ月以内になります。
準確定申告の期限を過ぎたときに還付申告はできるか
準確定申告の期限は相続が開始したことを知った日の翌日から4カ月以内ですが、還付請求権の時効は5年とされています。
したがって、準確定申告の期限を過ぎてしまった場合でも、5年以内であれば還付申告をして還付請求をすることは可能です。
また、準確定申告の期限4カ月を徒過したことについてのペナルティもありません。
準確定申告の期限を過ぎたら
準確定申告の申告期限に間に合わないから期限を延長したいという方もいるかもしれません。
しかし、準確定申告の申告期限は、原則として延長することはできません。
申告期限を過ぎた場合は、延滞税などのペナルティが課される可能性もあるので、注意が必要です。
期限は延長できない
準確定申告の申告期限は、原則として延長することはできません。
確定申告の申告期限を原則として延滞できないのと同様に、準確定申告についても、一般的な理由だけでは申告期限を延滞できないのです。
しかし、例外として災害などの特別な理由によって期限までに申告できない場合には、その理由がなくなった日から2カ月以内を範囲として、申告期限を延長できる制度があります。
災害による被害が広範囲に及ぶ場合に、一律で延長する地域指定や一定の対象者の期限を延長する対象者指定などです。
ただし、申告期限を延長できるのは、あくまで災害などの特別な場合に限られることに注意しましょう。
加算税
準確定申告の申告期限を過ぎてしまうと、加算税が課税される場合があります。
加算税とは、期限までに申告をしなかったり、過少申告をしたりした場合に加算される、ペナルティとしての税金です。
加算税には以下の4種類があります。
加算税の種類 | 概要 |
---|---|
過少申告加算税 | 期限内に申告をしたものの、本来すべき金額よりも申告額が少なかったために、修正申告や更正が必要になった場合などに課税されます。 |
無申告加算税 | 納付すべき税金があったにもかかわらず、期限までに申告しなかった場合にペナルティとして課される税金です。 |
不納付加算税 | 源泉徴収などによって徴収した源泉所得税が期限までに納付されなかった場合に、ペナルティとして課税される税金です。 |
重加算税 | 各種の加算税が課される場合において、仮装・隠蔽による申告等内容が悪質な場合などに、ペナルティとして課される税金です。 |
準確定申告をしなかった場合、上記の加算税のうち、無申告加算税が課される可能性があります。
無申告加算税が課される割合は、以下のいずれかによります。
・納付額が50万円以下の場合:15%
・納付額が50万円を超える部分:20%
・税務署に指摘される前に自主的に申告した場合:5%
ただし、平成29年1月1日以後に申告期限が到来する場合は、納付額が50万以下の場合は10%、50万円を超える部分は15%の割合で課されます。
延滞税
準確定申告の申告期限を過ぎてから申告した場合、延滞税が課税されることがあります。
延滞税とは、定められた期限までに税金が納付されない場合などに、ペナルティとして課される税金です。
課される延滞税の割合は、準確定申告の対象となる期間によって異なります。
納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、以下の割合によって課税されます(令和4年1月1日から令和4年12月31日までの期間の場合)。
・納付期限の翌日から2カ月を経過する日までの場合:年2.4%
・納期限の翌日から2カ月を経過した日以後の場合:年8.7%
例えば、納付期限が令和4年4月1日であり、納付したのが同年7月1日であった場合は、納付期限の翌日から2カ月を経過しているので、延滞税の割合は年8.7%です。
準確定申告の流れと必要書類
準確定申告は、相続人全員で行うため、まず相続人全員と連絡を取る必要があります。
なお、相続放棄をした方は初めから相続人ではなかったものとみなされるので、準確定申告に加わる必要はありません。
次に、必要書類を集めて作成する必要があります。
・被相続人の源泉徴収票
・被相続人の控除証明書
・所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
・被相続人の医療費の領収書
・相続人全員の本人確認書類
・委任状
準確定申告をする際、申告書は必ず提出しなければなりません。
申告書の種類は、被相続人が給与または年金所得のみであったか、事業所得や不動産収入があったか否かによって異なります。
また、相続人が複数いる場合は、確定申告書付表(兼相続人の代表者指定届出書)も必要です。
どちらの書式も国税庁のホームページからダウンロードすることができます。
さらに、相続人全員の本人確認書類も必要になります。
準確定申告にはこれらの書類のほかに、被相続人の事情に応じて被相続人の所得に関する書類、費用(経費)に関する書類、医療費等の控除に関する書類等も必要です。
たとえば、被相続人が2,000万円を超える給与を受けていたために準確定申告が必要な場合、源泉徴収票が必要になります。
被相続人が個人事業主であった場合、収入から費用(経費)を差し引いた所得を算出する必要があるので、青色申告決算書または収支内訳表を作成して提出しなければなりません。
医療費控除の対象となる場合には、医療費の領収書が求められるので用意しておきましょう。
さいごに
準確定申告が必要な場合、相続が開始したことを知った日の翌日から、4カ月以内に申告しなければなりません。
準確定申告の申告期限を過ぎてしまうと、ペナルティとして無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。
災害などの特別な事情をのぞいて、準確定申告の申告期限は延長できないので、必ず期限までに申告しましょう。


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本記事では、準確定申告の概要から判断基準、必要書類、注意点までを詳しく解説します。