目次

はじめに

「相続税は誰が払うのか?」
「自分は相続人じゃないけど、納税義務があるのか?」
家族が突然亡くなり、葬儀や手続きに追われるなかで、相続税について疑問や不安を抱える方も少なくありません。
特に、受遺者や死因贈与で財産を受け取った人にとっては、納税義務の有無や課税対象かどうかが分からず困惑するケースもあるでしょう。
本記事では、相続税の納税義務者となる対象者の範囲や無制限納税義務者と制限納税義務者の違い、相続税が発生しないケースなどをわかりやすく解説します。

相続税の納税義務者とは?

相続税の納税義務者とは、相続税を国に納付しなければならない義務を負う人のことを指します。
相続や遺贈などによって財産を取得した場合は、相続税の課税対象者になります。
どのような場合に相続税の納税義務者になるかは、相続税法によって規定されています。

(相続税の納税義務者)
第一条の三 次の各号のいずれかに掲げる者は、この法律により、相続税を納める義務がある。
一 相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの
イ 一時居住者でない個人
ロ 一時居住者である個人(当該相続又は遺贈に係る被相続人(遺贈をした者を含む。以下同じ。)が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
二 相続又は遺贈により財産を取得した次に掲げる者であつて、当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの
イ 日本国籍を有する個人であつて次に掲げるもの
(1) 当該相続又は遺贈に係る相続の開始前十年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがあるもの
(2) 当該相続又は遺贈に係る相続の開始前十年以内のいずれの時においてもこの法律の施行地に住所を有していたことがないもの(当該相続又は遺贈に係る被相続人が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
ロ 日本国籍を有しない個人(当該相続又は遺贈に係る被相続人が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
三 相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するもの(第一号に掲げる者を除く。)
四 相続又は遺贈によりこの法律の施行地にある財産を取得した個人で当該財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(第二号に掲げる者を除く。)
五 贈与(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を除く。以下同じ。)により第二十一条の九第三項の規定の適用を受ける財産を取得した個人(前各号に掲げる者を除く。)
引用元:相続税法 | e-Gov 法令検索

相続税の納税義務者になる人

相続税の納税義務者について、詳しく解説します。

相続人|相続によって財産を受け継いだ人

遺産を遺して亡くなった人を被相続人と呼び、被相続人の遺産を相続できる権利をもった人を相続人と呼びます。
例えば、父親(被相続人)が亡くなって、配偶者と子どもが父親の遺産を受け継ぐ場合、配偶者と子どもは相続人にあたります。
被相続人の遺産を受け継いだ相続人は、相続税の納税義務者に該当します。

受遺者|遺贈によって財産を受け取った人

遺贈とは、被相続人が遺言書で相続人以外の人に遺産を譲ることです。
相続人になれる人は法律によって定まっていますが、遺贈には特に決まりはなく、友人、知人、団体、法人など血縁関係のない人や組織などにも遺産を譲ることができます。
遺贈によって財産を受け取った受遺者は納税義務者に該当します。

死因贈与の受贈者|死因贈与によって財産を受け取った人

死因贈与とは、贈与者(財産を譲る人)が亡くなることによって、受贈者(財産を受け取る人)が財産を受け取ることです。
死因贈与と遺贈の違いは、遺贈は相手の同意が不要なのに対して、死因贈与の場合は当事者双方の合意が必要なことです。
死因贈与によって財産を受け取った人は、納税義務者に該当します。

相続で財産を受け取った法人

法人が相続によって財産を受け取った場合、相続税の納税義務者に該当することがあります。
納税義務者に該当する可能性がある法人とは、人格のない社団または財団や、持分の定めのない法人などが該当します。
人格のない社団または財団とは、法人ではないが法人のような活動をしている集合体のことであり、クラブや研究会などが一般に該当します。
また、持分の定めのない法人とは、法人が倒産した際に、社員などが残余財産の分配や払い戻しを請求できない法人のことをいいます。

納税義務者には2種類ある

納税義務者には、無制限納税義務者と制限納税義務者がいます。
それぞれ解説していきます。

無制限納税義務者

無制限納税義務者とは、相続や遺贈によって財産を取得した人のうち、日本国内にある財産と国外にある財産のどちらについても、相続税の納税義務を負う人のことです。

相続や遺贈によって財産を取得した時点で日本国内に住所を有する場合は、原則として無制限納税義務者に該当します。
また、財産を取得した時点で日本国内に住所を有しない場合でも、一定の条件に該当する場合は、無制限納税義務者にあたる可能性があります。
例えば、相続が開始される前の10年以内に、日本国内に住所を有していた場合などです。
なお、外国籍であっても一定の条件を満たす場合は、相続税の納税義務者に該当することがあります。

制限納税義務者

制限納税義務者とは、相続または遺贈により日本国内にある財産を取得した個人で、その財産を取得した時において、以下の人を指します。
(1)日本国内に住所を有する人(居住無制限納税義務者を除きます。)、
(2)日本国内に住所を有しない人(非居住無制限納税義務者を除きます。)
無制限納税義務者との違いは、日本国外の財産について、相続税の課税対象になるかどうかです。
無制限納税義務者は国外の財産も課税対象となりますが、制限納税義務者の場合は、国外の財産は課税対象にはなりません。

納税義務者でも相続税を納めなくても良い場合

相続税には基礎控除(3,000万円+法定相続人の数×600万円)が設定されており、相続した遺産の総額が基礎控除の額を下回る場合、相続税は課税されません。
例えば、相続した遺産の総額が3,000万円であり、基礎控除の額が3,600万円の場合は、総額が基礎控除を下回るので、相続税を納めなくても問題ありません。
相続税には未成年者控除や障害者控除などの各種控除がありますが、控除によって相続税が0円になる場合あります。
なお、小規模宅地等の特例によって相続税がかからなくなる場合もありますが、特例を使う場合、相続税の申告自体は必要なので注意しましょう。

相続税の連帯納付義務

相続税の連帯納付義務とは、各相続人が連帯して相続税を納付しなければならない義務のことです。
連帯納付義務を負うのは、同じ被相続人から相続または遺贈によって財産を取得した全ての人です。
つまり、遺産を相続した相続人や遺贈によって財産を譲り受けた受贈者は、面識があるかどうかに関係なく、連帯して責任を負う必要があります。
ほかの相続人が遺産を使い切って相続税を納付できない場合や失踪して税務署と連絡が取れなくなった場合には、連帯納付義務によって相続税を負担しなければなりません。

さいごに

相続税は相続人に限らず、遺贈や死因贈与で財産を受け取った人、場合によっては法人にも納税義務が生じます。
さらに「無制限納税義務者」か「制限納税義務者」かによって課税対象となる財産の範囲も異なります。
本記事で紹介した内容を参考に、自身が納税義務者に該当するか、相続税が発生するかを確認し、必要に応じて専門家に相談しましょう。

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この記事の監修者

弁護士 岩壁 美莉第二東京弁護士会 / 東京第二弁護士会 司法修習委員会委員
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