目次

はじめに

「遺産分割の話し合いがまとまらない…」というときに利用されるのが、家庭裁判所での遺産分割調停です。
しかし、調停を申立てるには、戸籍や財産資料など、さまざまな書類を事前に揃える必要があります。
書類の不備があると手続きが進まず、調停が長引いてしまうこともあるので、しっかりと知識を身につけておくことが大切です。
本記事では、遺産分割調停に必要な書類の一覧とその取得方法、準備のポイントについて、わかりやすく解説します。
スムーズに調停を進めるために、ぜひ参考にしてください。

遺産分割調停の申立書類

遺産分割調停の申立ての主な必要書類は以下のとおりです。

  • 遺産分割調停申立書
  • 当事者目録
  • 遺産目録
  • 特別受益目録
  • 申立ての実情
  • 相続相関図

各書類の役割や記載内容について、詳しくみていきましょう。

遺産分割調停申立書

遺産分割調停申立書とは、家庭裁判所に「遺産分割調停を始めてほしい」と申し出るための正式な書類です。
遺産分割調停申立書には、主に以下のような内容を記載します。

  • 申請書を提出する家庭裁判所の名称と、作成年月日
  • 申立人の記名押印
  • 被相続人の氏名・亡くなった日・最後の住所
  • 申立ての趣旨・理由

申立書自体は簡潔で記載する事項も多くありませんが、補完するための別紙として、当事者目録などの書類の作成が必要です。

当事者目録

当事者目録は、遺産分割の対象となる当事者を一覧に表した書類です。
当事者には、被相続人だけでなく相続人も含まれ、一覧化することで、遺産分割について誰に対して考慮すればいいかを把握しやすくなります。
当事者目録の主な記載事項は、以下のとおりです。

  • 申立人か相手方か
  • 住所
  • 氏名
  • 生年月日
  • 被相続人との続柄

記載する際の注意点として、不動産登記記録上の住所・氏名が、住民票上の住所や戸籍上の氏名と異なる場合は、不動産登記記録上の住所・氏名も記載するようにしましょう。

遺産目録

遺産目録とは、遺産分割の対象となる遺産を一覧にした書類です。
遺産を一覧化することで、不動産や預貯金など、どのような遺産が遺産分割の対象になるかを把握しやすくなります。
遺産目録に記載する主な遺産の項目と記載のポイントは、以下のとおりです。

  • 不動産:登記事項証明書(未登記建物は固定資産評価証明書)のとおりに記載する、固定資産評価額は直近の年度の額を記載する
  • 預貯金:現在残高は必ず直近現在の残高証明書を取得し、そのとおりに記載する
  • 株式:原則として、証券会社などが発行する証明書などのとおりに記載する
  • 有価証券:原則として、金融機関などが発行する証明書などのとおりに記載する
  • 保険、現金、その他:保険金は解約返戻金額を記載する、被相続人以外が受取人である保険金は遺産として扱われない

特別受益目録

生前贈与や遺贈などによって、被相続人から受けた特別な利益のことを、特別受益といいます。
特別受益を受けた方がいる場合に、遺産を法定相続分でそのまま分割してしまうと、特別受益の分が上乗せされるため、不公平な結果になってしまいがちです。
そこで、特別受益を受けた分だけ相続分を減らすことで、公平な分割結果になるように調整します。
特別受益目録は、誰がどのような特別受益を受けたかを一覧として表す書類です。
特別受益があると主張する場合に、特別受益目録を記載して提出します。
特別受益目録の記載のポイントは、以下のとおりです。

  • 特別受益目録には、受益行為の内容と時期を具体的に記載する
  • 受益当時金額の欄には、贈与当時の金額を記載する
  • 裏付け資料がある場合は、甲1や甲2などの番号をつけて添付する

申立ての実情

申立ての実情とは、遺産分割調停の申立てをするに至った、具体的な事情を記載する書類です。
遺産分割調停申立書には詳細な事情を記載する項目がないため、申立てに至った事情を詳しく記載します。
申立ての事情に記載する項目例と、記載のポイントは以下のとおりです。

  • 遺産の範囲:遺産目録に記載されている以外に、申立人が把握していない遺産があるかなどを記載する
  • 遺言書の有無:遺言書の有無、種類、検認の有無などを記載する
  • 遺産の使用・管理状況:誰がどのような遺産を使用・管理しているかを記載する
  • 当事者間における分割協議の有無:当事者間で遺産分割協議をしたか、協議がまとまらなかった理由などを記載する

相続相関図

相続相関図とは、被相続人と相続人との関係をわかるようにした図のことです。
前婚の子どもとの間に相続人が居る、代襲相続が生じているなどの場合、相続関係が複雑になることがあります。

そのため、遺産分割協議で話し合いをする際に、相続人に誰がいて、どれだけの相続分があるかをきちんと把握しておかないと、相続分を勘違いして交渉していたといったことになりかねません。
そのために作成するのが相続相関図です。
法律上必須とされるものではないため、決まったフォーマットはありませんが、親子関係を実線で、婚姻関係を二重線でつないで作成するのが一般的です。
各相続人の氏名や続き柄、生年月日、既に亡くなっている場合には死亡した日なども併せて記載しておくようにしましょう。

添付書類・その他

遺産分割調停の申立てには、申立書などのほかに、以下のような添付書類が必要となります。

  • 身分関係資料
  • 不動産についての資料
  • 遺産についての資料
  • 収入印紙・予納郵券

遺産分割調停における添付書類は、当事者の身分関係やどのような遺産があるかなどを、客観的に証明するための資料です。
それぞれの書類の役割や記載内容について、詳しくみていきましょう。

身分関係資料

身分関係資料は、遺産分割調停の当事者について身分関係を証明するための資料です。
身分関係資料の代表例として、以下のものがあります。

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本類(戸籍謄本・除籍謄本・改正原戸籍謄本など)
  • 被相続人の住民票除票または戸籍の附票(被相続人が亡くなったことの証明)
  • 相続人全員の現在の住民票と戸籍謄本(相続人全員の生存や身分関係の証明)

不動産についての資料

遺産目録に記載した遺産のうち、不動産について証明するための資料です。 不動産についての必要書類の代表例としては、以下のようなものがあります。

  • 登記簿謄本又は登記事項証明書(不動産についての詳細情報を証明するもの)
  • 固定資産税評価証明書(不動産の評価額の資料となるもの)
  • 建物の配置を書き込んだ公図、または住居表示のある住宅地図(不動産の周辺状況の資料となるもの)

遺産についての資料

遺産目録に記載した遺産のうち、不動産以外について証明するための資料です。
不動産以外の遺産についての必要書類の代表例として、以下のものがあります。

  • 預貯金の残高を証明する書類(証書の写しや残高証明書など)
  • 株式について証明する書類(預かり証や取扱証券会社の残高証明書など)
  • 自動車について証明する書類(車検証や登録事項証明書など)
  • 相続税に関する書類(既に相続税の申告をしている場合)
  • 遺言書がある場合の遺言書

収入印紙・予納郵券

遺産分割調停をする際には、収入印紙と予納郵券が必要です。
遺産分割調停の手数料は1,200円で、この手数料を収入印紙の申立書に貼って納めます。
また、裁判所が郵送のために用いる切手(郵券)をあらかじめ納める必要があり、この郵券のことを予納郵券と呼んでいます。
予納郵券は裁判所が指定する券種の郵券を購入して納めることになっており、裁判所によって異なるので、申立てをするときに確認しましょう。
おおむね合計2,000円~4,000円程度です。
例えば、東京家庭裁判所に申立てをする場合には、相手が5名以内であれば、100円切手を10枚、84円切手を10枚、50円切手を10枚、20円切手を10枚、10円切手を20枚、10円切手を2枚の合計2,760円分の切手を購入します。
なお、裁判所には収入印紙や予納郵券を購入するための売店があり、予納郵券についてはこれらのセットになったものを用意してくれているので、申立て時に裁判所で購入するのがよいでしょう。

申立て時の注意点

遺産分割調停を申立てる際の注意点には次のものがあります。

  • 書類の提出先
  • 書類の提出方法
  • 資料の収集には時間がかかる
  • 遺産分割調停にかかる期間
  • 調停がまとまらないとどうなるか

それぞれの注意点について、詳しくみていきましょう。

書類の提出先

遺産分割調停を申立てるのに作成した書類は、遺産分割調停を管轄する家庭裁判所に提出します。
どこの裁判所でもよいわけではないので注意しましょう。
管轄の裁判所は、裁判所のホームページで確認できます。

なお、管轄は基本的に相手の住所地を管轄する家庭裁判所になり、相続人が複数いる場合は、相続人のうち1人が居住する裁判所となります。

書類の提出方法

書類の提出方法として、直接持参する方法と郵送する方法があります。
自分で申立てをする場合には、直接持参するのが確実です。
管轄の裁判所が遠方である場合や、平日に持参する時間がない場合には、郵送でもかまいません。

資料の収集には時間がかかる

資料の収集には時間がかかる点にも注意しましょう。
仮に戸籍謄本の収集は遺産分割協議までに済んでいたとしても、遺産についての資料の収集には時間がかかることが通常です。
また、相続人全員の住民票をすぐに取得したものの、ほかのものがなかなか集まらず時間がかかってしまう場合もあります。
住民票は発行から3カ月以内のもの提出する必要があるので、その期限を過ぎてしまった場合には再度住民票を取得しなければならない点に気をつけましょう。
遺産分割調停の申立てを検討する場合には、資料の収集には時間がかかることはもちろん、取得する書類の順番にも気を配るようにすると安心です。

遺産分割調停にかかる期間

遺産分割調停の期間を考えるにあたって次のことを知っておきましょう。

  • 申立てから初回の期日まで1カ月程度かかる
  • 期日は1カ月~2カ月ごとに1回開かれる

例えば、遺産分割調停の申立てをしてから3回の期日で合意ができた場合には、4カ月程度かかることになります。
一方、遺産分割調停の話し合いがまとまらなければ、1年を超えるようなこともあります。
相続税申告が必要な場合には、一旦法定相続分で申告を行い、後に更正の請求を行う必要があるので注意しましょう。

調停がまとまらないとどうなるか

遺産分割調停で話し合いを進めようとしても、当事者の一方が絶対に妥協しないような場合や、細かい条件で全く折り合えない場合があります。
このような場合には調停での解決をあきらめて、遺産分割審判において遺産分割を決めなければなりません。
遺産分割審判では当事者の合意がなくとも、裁判所が遺産分割についての判断を下すので、最終的な遺産分割ができるようになります。

さいごに

遺産分割調停を申立てるには、様々な書類を提出しなければなりません。
遺産分割調停申立書は必要書類のベースとなるもので、補完するための別紙として当事者目録や遺産目録などがあります。
申立書などに記載した事項が正しいことを証明するための資料は、身分関係資料や遺産についての資料などです。
いずれにせよ、遺産分割調停をスムーズに進めるには、必要書類をきちんと揃えることが重要となりますので、気になる方は弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

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この記事の監修者

弁護士 田中 理莉子第二東京弁護士会
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