遺言書に日付が記載されている理由や、日付についてトラブルになった事例を解説いたします。
ざっくりポイント
  • 自筆証書遺言は自分で日付を記載するのでミスに注意
  • 秘密証書遺言公正証書遺言公証役場で手続きをするので、基本的に日付の心配はない
  • 日付が特定できる場合は遺言書として認められるが、特定できないと認められないので注意
目次

【Cross Talk 】遺言書の日付はなぜ必要なの?

遺言書を作成したのですが、日付を記載するのを忘れてしまいました。遺言書として問題ありませんか?

遺言書は3種類あり、自筆証書遺言の場合は日付が特定できないと無効になってしまうので、注意してください。

自筆証書遺言は日付の記載が重要なんですね。日付についてどんなトラブルがあるかも教えてください!

なぜ遺言書に日付が記載されるのか、日付についてのトラブル事例などを解説いたします。

遺言書は要式として日付が要求されますが、日付を特定できない場合は遺言書としての効力が認められません。 「満70歳の誕生日」や「9月吉日」など、特定の日付が記載されていない場合に、有効な日付といえるかが問題となります。 そこで今回は、遺言書に日付が記載されている理由や、トラブルになった事例などを解説いたします。

遺言書には必ず日付が記載される

知っておきたいポイント
  • 遺言書に日付を記載しないと、無効になってしまうと聞いたのですが?付を自書しなければならない
  • 秘密証書遺言と公正証書遺言は公証役場で手続きをするので、基本的に日付を心配する必要はないる

遺言書に日付を記載しないと、無効になってしまうと聞いたのですが?

遺言書には3種類あります。自筆証書遺言は自分で日付を自書するので要注意です。秘密証書遺言と公正証書遺言は公証役場で手続きをするので、日付は基本的に心配する必要はありません。

自筆証書遺言

自筆証書遺言書を作成する場合、遺言者(遺言をする方)が日付などを自書することが必要です(民法第968条)。 法的に有効な遺言書として認められるには、民法が規定する要式を満たしていなければなりません。

自筆証書遺言とは、遺言書が文章や日付などを自書する遺言の方式です。自分で手軽に遺言書を作成できる反面、民法の要式を自力で満たす必要があるので、遺言書としては難易度が高いといえます。 自筆証書遺言は自分で日付を記載するので、日付を記載するのを忘れたり、誤って存在しない日付を記載したりしないように注意しましょう。

秘密証書遺言

秘密証書遺言書を作成するには公証役場で手続きをするため、遺言書の日付について基本的に心配する必要はありません。

秘密証書遺言とは、遺言に記載した内容を誰かに知られることなく、遺言書を作成できる遺言の方式です。 秘密証書遺言書を作成するには、公証役場という役場で手続きをする必要があります。 公証役場で秘密証書遺言書を作成する際には、遺言者の氏名や日付などが封筒に記載されるので、秘密証書遺言の場合は日付について心配する必要は基本的にありません。

公正証書遺言は公証人が必ず日付を記載する

公正証書遺言書を作成する場合、公証役場の公証人が日付を記載するので、遺言書の日付について心配する必要はありません。 公正証書遺言とは、公証人という法律の実務のプロフェッショナルによって遺言書が作成される方式です。 公正証書遺言書を作成するには、秘密証書遺言と同様に必ず公証役場で手続きをしなければなりません。 公正証書遺言書は公証人によって作成されるため、遺言書としての要式を満たすかどうか心配する必要がない、公証役場で保管されるので紛失の心配がない、などのメリットがあります。 公正証書遺言の場合、公証人によって日付が記載されるので、遺言書としての日付を心配する必要はありません。

日付の記載方法

では日付を記載する場合の記載方法について確認しましょう。

和暦・西暦は問わない

日付の記載方法には、和暦(令和6年)と西暦(2024年)という2つの記載方法があります。
日付の記載は後述するように遺言をした日時を特定できれば良いので、和暦・西暦どちらでも構いません。

他の紀年法(皇紀・イスラム暦など)でも特定は可能なのですが、遺言が冗談なのではないのか・遺言をしたときの精神状態はどうだったのか、などトラブルに発展する可能性もあるので、和暦か西暦で記載するのが良いでしょう。 令和6年は「R6」といった省略の仕方をすることもありますが、このような省略をすることにメリットもないので、きちんと省略せずに記載しましょう。

遺言書が数枚にわたっている場合

遺言書が数枚にわたっている場合には、日付はどうするのでしょうか。
京都地方裁判所平成16年8月9日判決で、「必ずしも1枚ごとになされる必要はない」としており、複数枚ある遺言書のどこかで日付を記載していれば良いとされます。
参考1:広尾総合法律事務所「8月9日の判決 一枚の紙に日付,署名押印があれば有効」
参考2:国立国会図書館サーチ「裁判例分析 遺言書が数葉にわたる場合と各葉に日付、署名、押印することの要否」

日付を記載する場所

日付を記載する場所については特に指定はありません。 最初に書く場合、最後の氏名の前に書く場合が多いでしょう。

遺言書に日付を記載する理由

知っておきたいポイント
  • 遺言書に日付を記載する理由の一つは、複数の遺言書の前後関係を判断するため
  • 複数の遺言書の内容が抵触する場合、後の日付の内容が優先される

日付を記載しなければ遺言書が成立しないのは、なぜでしょうか?

理由の一つとして、複数の遺言書がある場合の前後関係を判断するためです。複数の遺言書の内容が抵触する場合は、後の日付の遺言書の内容が優先されます。

日付を記載しなければ遺言書が成立しない主な理由として、以下の2点があります。

  • 遺言書を書いた時点の遺言能力の有無を判断するため
  • 遺言書が複数存在する場合に、前後関係を判断するため

遺言書が複数ある場合、以下の2つのルールによって処理されます。

  • 前の日付の遺言書の内容と後の日付の遺言書の内容が抵触する場合は、後の日付の内容が優先される
  • 前の日付の遺言書の内容と後の日付の遺言書の内容が抵触しない場合は、どちらも遺言として有効

例えば、令和3年9月16日付の遺言書に「土地Aは長男に相続させる」と記載されているとします。 同年9月21日付の遺言書に「土地Aは次男に相続させる」と記載されていた場合、9月21日付の遺言書の内容によって相続されます。

遺言書の日付について争いになった事例

知っておきたいポイント
  • 具体的な日付がなくても、日付を特定できれば原則として有効
  • 日付が特定できない場合は、遺言書として認められないので注意

遺言書の日付で争いになる場合について教えてください。

具体的な日付がなくても、日付が特定できる記載であれば原則として有効な遺言書として認められます。しかし、日付が特定できない場合は認められないので、注意しましょう。

○○歳の誕生日に

「○○歳の誕生日に」という記載であっても、日付が特定できるのであれば、原則として有効な遺言書であると認められます。

遺言書として有効に成立するには日付が必要ですが、「何年何月何日」などの記載でなくても、日付自体が特定できるのであれば、有効な日付が記載されているといえるからです。 例えば、「満70歳の誕生日に」という記載がある場合、遺言者の70歳の誕生日がいつかは特定できるので、原則として有効な遺言書であると認められます。

○月吉日

「○月吉日」という記載の場合は、原則として有効な遺言書であるとは認められません。

具体的な日付の記載がなくても日付自体を特定できれば、有効な遺言書として認められます。 しかし、日付が特定できない場合は日付が記載されているとはいえないので、有効な遺言書とは認められません。 「吉日」という言葉は特定の日付を示す言葉ではなく、「9月吉日」などと記載しても具体的な日付が特定できないので、有効な日付があるとは認められないのです。

後から日付を足した

後から日付を追加した場合は、原則として、追加した日付の日に遺言が成立するとされます。 9月の第一週に遺言書を作成(9月とのみ記載)したものの、日付を記載するのを忘れたことに気づいて、9月18日に「18日」と日付を追加した場合、遺言書は9月18日に成立したとされるのです。

これは実際の裁判例に基づくもので、日付を記載していない場合はまだ有効な遺言書として成立しないところ、日付を記載した時点において、有効な遺言書として成立したものと考えられます。 ただし、数年後に追加するなど、日付を記載するのがあまりに遅い場合などは、有効な遺言書であると認められない可能性があるので、遺言書を最初から書き直したほうが安全性は高いといえるでしょう。

9月31日…など存在しない日付

9月31日など、実際には存在しない日付が記載されている場合は、遺言書の有効性について争いの可能性があります。

この点、実際の裁判例においては、記載された日付が誤記であることと、実際の作成日が遺言書の記載などから容易に判明する場合には、遺言として無効にならないと判断された事例があるのです。 9月31日という日付は実際には存在しませんが、末日である9月30日を意図して記載されたものであると読み取れるのが一般的なので、有効な遺言であると認められる可能性があります。

ただし、有効な遺言書と認められるかは状況によって異なるため、日付を記載する際は誤りがないように、正確に記載することが重要です。

まとめ

秘密証書遺言や公正証書遺言の場合、基本的に日付の記載を気にする必要はありませんが、自筆証書遺言は有効な日付を記載することが重要です。 具体的な日付が記載されていなくても、日付が特定できれば有効ですが、日付が特定できない場合は有効な遺言書として認められません。 遺言書としての効力が認められるには様々な要式を満たす必要があるので、相続に詳しい弁護士に相談することをおすすめいたします。

遺言や相続でお困りの方へ
おまかせください!
分からないときこそ専門家へ
相続については、書籍やウェブで調べるだけではご不安な点も多いかと思います。当事務所では、お客様の実際のお悩みに寄り添って解決案をご提案しております。「こんなことを聞いてもいいのかな?」そう思ったときがご相談のタイミングです。
  • 遺言書が無効にならないか不安がある
  • 遺産相続のトラブルを未然に防ぎたい
  • 独身なので、遺言の執行までお願いしたい
  • 遺言書を正しく作成できるかに不安がある
初回相談
無料
法律問題について相談をする
電話での予約相談
(新規受付:7時~22時)
0120-500-700
相続手続お役立ち資料のダウンロード特典付き
(新規受付:24時間対応)
LINEでの相談予約
(新規受付:24時間対応)

この記事の監修者

弁護士 今成 文紀東京弁護士会 / 一般社団法人日本マンション学会 会員
一見複雑にみえる法律問題も、紐解いて1つずつ解決しているうちに道が開けてくることはよくあります。焦らず、急がず、でも着実に歩んでいきましょう。喜んですぐそばでお手伝いさせていただきます。

法律問題について相談をする

初回相談無料

電話での予約相談

(新規受付:7時~22時) 0120-500-700

相続手続お役立ち資料のダウンロード特典付き

(新規受付:24時間対応)

LINEでの相談予約

(新規受付:24時間対応)
資料ダウンロード

相談内容

一般社団法人 相続診断協会
資料ダウンロード
相続手続き丸わかり!チャート&解説