
- 生前贈与とは、自分が生きている間に他人に無償で財産を与える行為である
- 生前贈与は原則として贈与税の課税対象になる
- 贈与税には様々な非課税制度があるので、活用することが重要
【Cross Talk 】孫に遺産を遺すための生前贈与って、どんな方法なの?
孫に遺産を遺したいのですが、生前贈与という制度があると聞きました。
生前贈与とは、自分が生きている間に他人に無償で財産を与える制度です。生前贈与は贈与税の対象になるので、節税対策などの工夫が重要ですね。
生前贈与をするには、節税対策が重要なんですね。生前贈与の仕組みについて詳しく教えてください!
孫に遺産を遺したい場合の方法の一つとして、生前贈与があります。 生前贈与は自分が生きている間に財産を譲れるのが特徴ですが、贈与税の課税対象になる点に注意が必要です。 そこで今回は、孫に遺産を遺したい方の生前贈与について解説いたします。
孫に遺産を遺すための生前贈与などの方法

- 生前贈与とは自分が生きている間に他人に財産を与える行為
- 生前贈与以外に孫に遺産を遺す方法として、遺贈や死因贈与などがある
孫に遺産を遺す方法として、どのようなものがありますか?
自分が生きている間に孫に財産を与える方法として、生前贈与があります。亡くなった後に遺産を遺す方法としては、遺贈や死因贈与などがありますね。
生前贈与とは
生前贈与とは、自分が生きている間に財産を他人(自分以外の個人)に与えることです。 例えば、大学の進学資金として孫に現金を与えることなどです。 生前贈与をする方を贈与者といいます。孫に遺産を遺す方法
生前贈与以外に孫に遺産を遺す方法として、遺贈・死因贈与・養子にするなどがあります。それぞれ簡潔に見ていきましょう。 遺贈とは、遺言書に基づいて財産を与えることです。 死因贈与とは、贈与者が死亡することを条件として贈与を行う契約のことをいいます。 生前贈与は自分が生きている間に贈与しますが、死因贈与は亡くなった後に財産を移転する点で異なります。 養子は実子とともに第一順位の相続人です。そのため、孫を養子にすると相続人として遺産を遺すことができます。孫に生前贈与をするメリットとは
孫に生前贈与をする場合、様々なメリットがあります。 まず、生前贈与をすると一般に相続税の節税対策になります。 生前贈与をした分だけ財産が減るので、将来自分が亡くなって相続が発生した場合に、財産に対して課税される相続税の額を少なくすることが期待できます。次に、生前贈与によって孫に資金を提供できます。
孫の生活や人生においては、進学・結婚・子育てなど、多くの出費を必要とする様々な出来事があります。 生前贈与によって孫に資金提供をすることで、孫の生活や人生における様々な負担をサポートできるのです。孫に生前贈与をする場合の贈与税について

- 生前贈与は原則として贈与税の課税対象になる
- 贈与税には様々な非課税制度がある
孫に生前贈与をする場合、贈与税が課税されるのでしょうか?
生前贈与は原則として贈与税の課税対象になります。ただし、贈与税には様々な非課税制度があるので、孫への生前贈与に活用できます。
生前贈与は贈与税の対象
生前贈与は原則として贈与税の対象になります。 贈与税とは、個人から贈与を受けることで財産を取得した場合に、その財産に対して課税される税金です。 祖父母が孫に生前贈与することは、孫からみると個人から贈与を受けて財産を取得することにあたるので、贈与税の課税対象になります。贈与税が課税されるのは、財産を与えた側ではなく、財産を取得した側であることに注意しましょう。 祖父母が孫に生前贈与した場合、贈与税が課税されうるのは孫ということです。
贈与税には非課税の制度がある
贈与税には以下のような非課税枠の制度があります。・相続時精算課税制度
・教育資金贈与信託
・結婚・子育て資金の一括贈与
暦年贈与
贈与税の税金対策として、暦年贈与を利用する方法があります。 暦年贈与とは、毎年110万円までの贈与であれば、原則として贈与税が課税されないことを利用した節税方法です。贈与税には基礎控除(設定された金額以内であれば、控除されて課税されない制度)があり、贈与税の基礎控除額は110万円です。 つまり、年間110万円までの贈与であれば原則として、その年は贈与税の課税対象になりません。 暦年贈与とは、毎年110万円の範囲内で贈与することで、贈与税を課税されずに財産を与えていく方法です。 被相続人の遺産を減らすことができ相続税対策となり得ます。
相続時精算課税制度
贈与税に関連する制度として、相続時精算課税制度があります。 相続時精算課税制度とは、一定の年齢の父母または祖父母から、一定の年齢の子どもまたは孫に財産を贈与した場合に選択できる制度です。相続時精算課税制度を選択すると、2,500万円までは贈与税が非課税になります。 一定の生前贈与について贈与税を優遇することで、高齢者から若年層への財産の移転を促そうとする制度です。ただし、相続時精算課税制度を選択すると、贈与者が亡くなった場合に、相続時精算課税制度によって贈与した分も含めて相続税が課税されます。 また、この制度を利用すると暦年贈与を利用できないなどのデメリットがありますので注意が必要です。
教育資金贈与
贈与税が1,500万円まで非課税になる制度として、教育資金贈与信託という方法があります。 教育資金贈与信託とは、祖父母などの一定の贈与者が、孫などの一定の受贈者に対して、教育資金に充てるための信託受益権を与えた場合などに、贈与税が1,500万円(学校等以外に支払われる金銭については500万円を限度)まで非課税になる制度です。孫の教育資金に充てるための資金を、一定の信託銀行などに信託した場合に、孫が信託銀行などから資金の払い戻しを受けられるようにするものです。 教育資金贈与信託を利用すれば、1,500万円(学校等以外に支払われる金銭については500万円を限度)までの限度であれば、贈与税の負担なしで孫に教育資金を提供できるようになります。
結婚・子育て資金贈与
贈与税が1,000万円まで非課税になる制度として、結婚・子育て資金贈与(結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置)という制度があります。 祖父母や両親などの贈与者が、一定の年齢(20歳以上50歳未満)の子どもや孫などの受贈者の名義の口座などに、結婚・子育てのための資金を一括して拠出した場合に、1,000万円まで非課税とする制度です。将来に対する経済的な不安が、若年層の結婚・出産を躊躇する大きな要因となっていることを踏まえて、両親や祖父母の資産を早期に移転し、結婚・子育てを支援するものです。
孫への贈与で注意すべき点

- 孫への贈与で注意する点
孫へ生前贈与をしようかなと思っているのですが、注意すべきことはありませんか?
孫への生前贈与について注意すべき点も見ておきましょう。
孫への贈与には様々な制度があるのですが、注意点も多数あります。
定期贈与とみなされないようにする必要がある
定期贈与とみなされないようにする必要があります。 定期贈与とは、毎年一定の額の贈与をすることが決まっている贈与のことをいいます。
例えば、1,000万円の贈与をすることを決めて、毎年100万円を贈与することを決めているとしましょう。
毎年の贈与額は100万円なので、贈与税の基礎控除の金額の範囲内で、贈与税はかからないように思えます。
しかし、このような形の贈与は、合計が1,000万円の定期金に関する権利の贈与を受けたものとして(定期贈与)、1,000万円の価値の贈与として取り扱われます。
そのため、贈与税の課税対象となります。
そのため、贈与のときに定期贈与とみなされないような贈与にするよう注意が必要です。
・贈与する額を毎回変更する
・贈与する時期を毎回変更する
孫自身に管理をまかせる必要がある
贈与した金銭の預貯金の管理は孫自身にさせる必要があります。
相続税を免れるために、形式的に金銭を贈与して預貯金をさせることを、「名義預金」と呼んでいます。
孫に贈与しても孫に管理させないような場合は、名義預金として認定される可能性があります。
名義預金と認定された分は、被相続人の相続の際に孫名義の預貯金も被相続人の相続財産として計算されることになり、贈与をした意味がなくなります。孫自身に管理させるようにしましょう。
孫が幼い場合には孫の親権者が管理することになるのですが、孫の親権者が私的に流用するなどしないように注意が必要です。
目的以外の使途で使わないようにする必要がある
教育資金贈与や結婚・子育て資金贈与として非課税枠のある生前贈与については、目的以外の使途で使わないようにする必要があります。
教育資金贈与や結婚・子育て資金贈与は、政策上優遇すべき贈与として非課税枠を与えているのであって、それ以外の目的に流用することは認められません。
税務調査によって露見した場合に、追徴課税の支払いを求められることになるので、注意が必要です。
遺留分の侵害をしないように気をつける
生前贈与で遺留分の侵害をしないように気をつけましょう。
遺留分とは、相続において相続人に最低限認められている権利のことで、兄弟姉妹以外の相続人に認められています。
兄弟姉妹以外の相続人は、生前贈与や遺贈によって、遺留分に相当する権利を相続できなければ、受遺者・受贈者に対して遺留分侵害額請求を行使することができます。
孫への生前贈与の金額が多くなりすぎると、他の相続人の遺留分を侵害することがあるので、注意が必要です。
贈与税の支払い義務は誰に課せられる?
贈与税の支払い義務は誰に課せられるのでしょうか。
贈与税という言葉の意味から考えると、贈与をした側が支払う必要があるようにも思われます。
しかし、贈与税の支払い義務は、贈与を受けた受贈者側、つまり孫が行わなければなりません。
手続き・税理士の手配・贈与税として納める金額を考えて孫への生前贈与を行うようにしましょう。
ひ孫への教育資金贈与は可能
教育資金贈与については、孫への贈与として検討されることが多いのですが、正確な要件として直系尊属から、直系卑属に対して行う贈与全般に適用されます。
直系尊属とは、血族関係が直系(兄弟姉妹や叔父叔母が傍系)の上の世代である尊属のことをいいます。
直系卑属はその逆で、血族関係が直系である下の世代である卑属のことです。
つまり、曽祖父母とひ孫もこの関係にあるので、ひ孫に教育資金贈与を行いたい場合にも、教育資金贈与の制度を利用することができます。
生前贈与に親権者の同意が必要な場合がある
生前贈与に親権者の同意が必要な場合があるので注意をしましょう。
生前贈与は贈与契約という形で行われます。
契約をするには当事者の意思表示が合致する必要があるのですが、未成年者については意思表示に法定代理人である親権者(親権者がいない場合には未成年後見人)の同意や、親権者の代理によることが必要です。
贈与契約書を作成する際に、親権者の同意があること示すために、贈与契約書に同意に関する事項を設けて署名捺印してもらう必要がある点に注意をしましょう。
まとめ
孫に遺産を遺す方法の1つとして、生前贈与があります。 生前贈与とは、自分が生きている間に、他人に財産を無償で譲る行為です。 生前贈与は贈与税の課税対象になるので、暦年贈与などを正しく活用するなど、節税対策が重要になります。 生前贈与をはじめとする制度をどう活用すればいいのか、悩みや疑問がある場合は、弁護士や税理士に相談することをおすすめいたします。


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