相続が発生すると、遺産の手続きや各種届出を行う必要がありますが、その際に重要となるのが「相続人代表者指定届」です。
初めて相続を経験する方のなかには、「どんな効力があるのか?」「勝手に提出していいのか?」「書き方に注意点はあるのか?」などの不安を抱えている方も少なくないでしょう。
本記事では、相続人代表者指定届の役割や効力、提出の際の注意点、正しい書き方までわかりやすく解説します。
目次

相続人代表者指定届とは?

「相続人代表者指定届」というのは、亡くなった方が従来受け取っていた納税通知書について、それ以降、誰が受け取るのかを指定するための届出です。
以下では、相続人代表者指定届を提出しなければならないケースやその効果、対象となる相続人や提出時期について詳しく解説します。

相続人代表者指定届を提出しなければいけない場合

相続人代表者指定届を提出しなければいけないのは、以下2つに当てはまる場合です。

・被相続人が不動産を所有していた場合
・法定相続人が複数人いる場合

不動産を所有している方は、役所から毎年4月~6月に送られてくる納税通知書に基づき、固定資産税を納付する必要があります。 そのため、不動産を所有する方が亡くなった場合には、相続人代表者指定届によって亡くなった方に代わって納税通知書を受け取る人を役所に知らせなければなりません。

法定相続人が一人である場合には、原則として、それ以降法定相続人が固定資産税を納付することになるので、相続人代表者指定届の提出は不要です。 しかし、法定相続人が複数いる場合、遺産分割協議を終えていない段階では、各法定相続人が不動産を共有している状態となり、誰が納税通知書を受け取るのかがあいまいになってしまいます。 全ての法定相続人に対し、納税通知書を送るとなると、役所にとっても大変な負担となるでしょう。そこで、相続人代表者指定届によって法定相続人の中から納税通知書を受け取る代表者を指定し、役所は代表者として届け出た者だけに納税通知書を送付するのです。

相続人代表者指定をしなければならない「法定相続人」とは

相続人代表者指定により、指定される代表者は「法定相続人」の必要があります。 ここでいう「法定相続人」とは、相続分を受け取ることができる相続人として、民法で定められている方を指します。 なお、法定相続人ごとの相続順位は、以下のとおりです。

・第一順位:子どもや孫(直系卑属)
・第二順位:両親や祖父母(直系尊属)
・第三順位:兄弟姉妹
・常に相続人となる人:配偶者

このように、亡くなった方に配偶者がいれば、配偶者は必ず法定相続人となり、そのほか、子ども(孫)、父母(祖父母)、そして兄弟姉妹という順で法定相続人となります。

相続人代表者指定届の提出時期

相続人代表者指定届の提出時期について、特に決まりはありません。
ただし、役所は1月1日時点における「登記名義」を基準として納税通知書を送るので、被相続人が亡くなった年の12月末までに相続登記を完了できないようであれば、速やかに相続人代表者指定届を提出したほうがよいでしょう。
また、1月から4月までの間に被相続人が亡くなった場合は、相続登記の時期に関係なく、届出を提出するのがおすすめです。

相続人代表者指定届を提出した場合の効果

相続人代表者指定届が受理されると、代表者として届け出た者が納税通知書を受け取る人として指定されることになります。 ここでのポイントとなるのは、相続人代表者指定届にはあくまで納税通知書を受け取る人を決めるという効果しかないということです。

相続人代表者指定届の提出によって、代表者が不動産の相続人として確定するわけではなく、そのことにより遺産分割協議が確定するわけでもありません。 つまり、納税通知書の送り先が届出をした方に決まるだけであって、それ以上の効果は何も生じないのです。

相続人代表者指定届を提出しなかった場合に罰則はある?

相続人代表者指定届を提出しなかったからといって、ペナルティを受けることはありません。 相続人代表者指定届を提出しなかった場合、役所が納税通知書の送付先を決め、その方に対して納税通知書が送られることになります。

相続人代表者指定届の書き方

ここからは、東京都中野区の様式をベースに、相続人代表者指定届の書き方を詳しく解説します。 なお、相続人代表者指定届は市区町村によって様式が違うことがあるので、届出をする都道府県の届出書を確認しながら行いましょう。

相続人代表者指定(変更)届 引用元:相続人代表者指定(変更)届

1.日付:
提出する日の日付を記載します。

2.相続人:
相続人全員の氏名を記載します。氏名は戸籍謄本の通りに記載します。

3.相続人代表者の氏名(フリガナ)・住所・生年月日:
氏名は戸籍謄本の通りに、住所は住民票などに記載されている方法で記載します。

4.被相続人の氏名(フリガナ)・死亡時の住所・死亡年月日・宛名番号:
同様に氏名は戸籍謄本のとおりに、住所は住民票などに記載されている方法で記載します。 宛名番号というのは、行政などの一定の団体が個人を管理するための番号で、記載を求められるときには市区町村で確認可能です。

5.相続人の氏名・被相続人との続柄・住所・相続分:
相続人の氏名は戸籍謄本のとおりに、続柄は「長男」「次女」などの被相続人との関係を記載します。住所は住民票のとおりに記載しましょう。なお、市区町村によっては「代表者以外の相続人」とされている場合があるので、このときは代表者以外の相続人のみでかまいません。 相続分には法定相続分を記載します。

6.法人番号:
包括遺贈で法人が相続人と同様の権利を有することになった場合には、その法人の法人番号を記載します。

代筆は可能か

相続人代表者指定届の代筆可否は、自治体によって異なります。

相続人代表者となる方が遠方に住んでいるなど、本人が記載するのが難しい場合もあるでしょう。
このような場合は、他の相続人などが代筆できることがほとんどです。
ただし、代筆を受け付けないと言われる場合や、代筆する場合に相続人代表者指定届の備考欄に代筆をした旨を記載しなければならない場合もあるなど、自治体によって扱いは異なります。代筆を行う場合は、提出する市区町村の担当者に事前に確認しておきましょう。

固定資産税の納税を怠った場合

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺産分割が終わるまで固定資産税を納付しないことはできるのか
  • 固定資産税を滞納するとどうなるのか

相続において、「不動産を相続する人が決まるまで、固定資産税を納付しない」というのは認められません。
固定資産税の滞納が続くと、不動産を失う可能性があるので注意しましょう。

ここでは、固定資産税の支払いを怠った場合の罰則や、例外として固定資産税を支払わなくても良いケースについて解説します。

固定資産税の納税を怠った場合の罰則

遺産分割協議が終わっていないとしても、それまでの間は、法定相続人全員が固定資産税を納める義務を負っています。 それにもかかわらず、固定資産税を長期にわたって滞納すると、役所から催促を受けることになり、さらに滞納し続けると、不動産を差し押さえられるおそれがあるので注意しましょう。

不動産を差し押さえられてしまうと、滞納している固定資産税を全額納付しない限り、役所は差し押さえを解除してくれません。 そして、滞納を解消できない状態が続くと、競売(公売)にかけられる可能性があり、その場合は、不動産は第三者の手に渡ってしまいます。

相続放棄をした場合は固定資産税を支払う必要はない

例外として、相続放棄をした場合には、固定資産税を支払う必要はありません。
相続放棄とは、その名のとおり、遺産を相続する権利を放棄する手続きのことです。
相続放棄を行った相続人はをすると、その方は最初から相続人ではなかったという取り扱いになります。
そのため、不動産の所有者に課せられる固定資産税は支払う必要はありません。

不動産を相続する方が決まった場合

相続人代表者指定届を提出した後に、不動産を相続する方が決まった場合、その翌年から納税通知書は不動産を相続した方に送られることになります。
相続人代表者指定届は、遺産分割協議を終えていないなどの事情で不動産を相続する方が決まっていない場合に、納税通知書を受け取る方を指定するために提出されるものです。
そのため、不動産を相続する方が決まった場合は、その後は不動産を相続した方に納税通知書が送られることになります。
なお、不動産を相続する方が決まった場合であっても、その旨の登記を行わない限り、その相続人に納税通知書が送られてくることはないので、注意が必要です。

代表者が固定資産税を払った分は相続においてどう考慮されるか

ここでは、相続人代表者となった方が立て替えて固定資産税を払った場合の対応について、解説します。

遺産分割協議成立前に立て替えて支払った場合には、他の相続人へ請求できる

相続人代表者が他の相続人に立て替えて固定資産税を支払った場合には、他の相続人に対して、その者の負担分を請求できます。
相続開始後、不動産は共同相続人の共有となるため(民法898条1項)、各共同相続人にはが不動産の所有者として、共有持分(法定相続分)に応じた固定資産税の納税義務が課されるためです。
相続人代表者はあくまでも納税を行う人であり、税の支払いをすべて負担するわけではないことを覚えておきましょう。

共有として保有している場合には他の相続人の相続分に従って請求できる

不動産を相続人の共有財産として所有する場合、相続人代表者は、他の相続人の共有割合に応じて固定資産税を請求することが可能です。
例えば、不動産の共有割合を「1:3」とした場合は、固定資産税の支払いも「1:3」の割合に応じて請求することができます。

相続放棄をした方に相続人代表者指定届が届いた場合の対応について

相続放棄をした相続人に対して相続人代表者指定届が届いた場合、相続放棄をしたことを市区町村に伝えましょう。

相続放棄をしたことは市区町村役場に通知されたり、戸籍に反映されたりするわけではないので、共同相続人の一人が相続放棄をした場合でも、その方に相続人代表者指定届が届くことがあります。

役所に対して相続放棄をしたことを知らせるためには、相続放棄時に家庭裁判所から送られてくる相続放棄受理通知書の写しを取って渡しましょう。

相続放棄受理通知書が無い場合には、相続放棄受理証明書を家庭裁判所で取得してください。

なお、相続放棄をした方が固定資産税の支払いをしてしまうと、法定単純承認に該当し、相続放棄ができなくなってしまうおそれがあります。

そのため、固定資産税は支払わずに必ず市区町村に相続放棄をした旨を伝えるようにしましょう。

さいごに|不動産相続が発生する場合は相続人代表者指定届の提出を

不動産を所有していた身内が亡くなった場合でも、固定資産税の納税義務までがなくなるわけではありません。
不動産を相続する人がすぐに決まらないような場合は、納税通知書を受け取る人を指定するための「相続人代表者指定届」を提出しておいたほう方がよいでしょう。
相続人代表者指定届を提出することにより、固定資産税の支払いを適切に行い、滞納などのリスクを避けることができます。
税額や納期などを適切に管理することができます。 相続人代表者指定届を提出しないことにペナルティはありませんが、固定資産税を滞納し続けると、不動産を競売(公売)にかけられる可能性もあり、その場合、不動産を手放すことになってしまいます。
そのようなことにならないためにも、不動産の相続人が決まっていない場合は、相続人代表者指定届を提出することをおすすめします。

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