遺言に期限があるのか、遺言が古すぎて問題がある場合の処理について確認しましょう
ざっくりポイント
  • 遺言に有効期限はない
  • 遺言で指定した財産が既にないような場合の処理
  • 古い遺言で相続人が承諾できないようなものである場合に遺言と違う遺産分割をする場合の処理
目次

【Cross Talk】遺言書の具体的な効力とは?有効期限はある?

自分の相続に関して遺言書の作成を考えています。まだまだ健康なのですが、急になにかあった場合に備えて遺言書を作っておいても良いのかなとは思っています。遺言書は作ってから何年有効なのでしょうか?

特に有効期間はないのですが、作成した遺言書の内容に抵触する状態になった場合にはその部分については効力が生じません。例えば自宅を誰が相続するか定めていたような場合に、その自宅を売却してしまった場合には自宅に関するところだけ効力がなくなります。

なるほど…詳しく教えてもらえますか?

遺言書の効力と有効期限について解説

遺言書を作成すると様々な効力が発生します。
どのような効力が発生するかは詳述するとして、作成した遺言書はいつまで有効なのか、遺言書の内容が古くて相続人が納得できない内容である場合に新しい合意はできないのか?という疑問が生まれる場合があります。
このページでは遺言によってどのような効力が発生するか、その有効期限や内容が古くて相続人で内容を変えたい場合の処理などについてお伝えします。

遺言書の効力

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言書があると相続に関する法律に優先して効力が発生する事項
  • 遺言書によってできる事項

遺言書があった場合にはどのような効力が発生するのですか?

遺言書があると法的効力が発生する事項について確認しましょう。

遺言は何でもかんでも法的効力が発生するわけではありません。

例えば、葬式は音楽葬でしてほしい、と書かれていたとして、相続人が音楽葬を行う義務はありません。
次の事項が遺言書に記載されていると、法的効力が発生します。

相続人の廃除

相続人となる人が被相続人を虐待する・被相続人に重大な侮辱を加えるなど著しい非行を行った場合には、そのような相続人に相続をさせるのはふさわしくないため、相続をさせるのにふさわしくない人に相続させないための制度が「相続人の廃除」です。
遺言で相続人の廃除をする旨が記載されている場合、相続開始後、家庭裁判所に申立てをすることになります。
ただ、相続人の廃除はめったに認められないことから、どうしても相続人の廃除を行いたい場合には、生前からしっかり証拠を詰めるなどして行っておくことをおすすめします。
相続人の廃除については、「遺産を相続させたくない!推定相続人の廃除とは?」で詳しく解説しています。

相続分の指定

相続分については民法が規定をしています。
遺言者が民法の規定と異なる相続分を遺言書で指定した場合には、その指定通りの効果が生じます。
遺留分を侵害する相続分の指定をしても有効です。
相続分の指定で遺留分を侵害された人は、侵害した人に対して遺留分侵害額請求をすることができます。

遺産分割方法の指定

遺言書で遺産分割方法の指定を行なうと効力があります。
遺産の全部について誰が相続するか指定していれば遺産分割は不要ですが、遺産の全部について指定されていない場合にはその部分について遺産分割協議を行ないます。
遺産分割方法を指定した結果、遺留分を侵害している場合には、遺留分侵害額請求をすることが可能です。

法定相続人以外への遺贈・寄付

例えば、孫・お世話になった介護施設・長男の配偶者・活動を支援したい公益団体などに寄付したい、など相続人以外の者に財産を渡したい希望がある場合に、遺贈という形で遺産を渡すことができます。
遺言書の中で遺贈を記載していれば効力が生じます。

子どもの認知

遺言書で子どもを認知する旨が記載されていると効力が発生します。

未成年後見人の指定

子どもが未成年者である場合、その子どもについて最後に親権を行う者は、遺言によって、子どものために未成年後見人を指定することができます。
例えば離婚をして親権者として子どもを養育している場合、自分が亡くなったとしても相手に親権がうつるわけではないので、未成年後見人を指定することができます。

遺言執行者の指定

遺言執行者を指定することが可能です。
具体的に指定せずに、遺言執行者を指定する人を指名することも可能です。

遺言書に有効期限はあるのか?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言書に有効期限はない
  • 遺言が古くなって内容が合わなくなっているときの処理

まず、遺言には有効期限がないということと、遺言書の内容にある財産がもうないときの考え方について教えてください。

普通方式の遺言には有効期限に関する定めがないので、遺言として有効に成立しているものであれば何年前のものでも効果が発生します。
ただ、その後に遺言の目的物を処分している場合や、別の遺言をしている場合などもあるでしょう。
そのような場合において、法律がどうなっているかを知っておいてください。

遺言書に有効期限はあるのでしょうか。

普通方式の遺言に有効期限はない

まず、普通方式の遺言には有効期限はありません。
遺言には普通方式と特別方式があります。
特別方式というのは、通常通りの遺言をしている余裕がないときにする遺言で、要件を緩やかにしてする遺言をいい、普通方式の遺言をすることができるようになってから6カ月間生存すると当然に失効します(民法983条)。
このような特殊な遺言ではない普通方式による遺言(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)の場合にはこのような期限を定めるものはありませんので、本件のご相談者様の場合のように15年前の遺言でも普通方式の遺言の要件を満たしている限り有効であるということになります。

現在持っていない財産についての記載をどう解釈するか

本件のご相談者様の場合では遺言をしてから15年もの期間が経過しています。
例えば、遺言では自宅は長男に相続させると記載してあったような場合に、15年の間に本人の体が不自由になり自宅を売却して施設に移る、ということがあったとします。
遺言書は有効でも、目的物の不動産はもうないという状態なのですが、このような場合にはどのように処理されるのでしょうか。

遺言をした後に目的物を処分して手元にないような場合には、不動産についての遺言の部分は撤回したものと扱われます(民法1023条2項)
そのため、有効とされる遺言は処分された目的物以外の部分のみということになります。
仮に、自宅を売却して、別の住居を手に入れていたとしても、その別の住居を長男が相続する、といった扱いにはならないので注意をしましょう。

新しい遺言がある場合、古い遺言には効力があるのか

もう一つ検討しておきたいのが、遺言が複数ある場合です。
例えば、一つ目の遺言でA銀行の預貯金は妻に、二つ目の遺言でA銀行の預貯金は長男にという、相反する規定がある場合には、どの遺言に従えば良いのでしょうか。
まず、遺言書が複数ある場合でも、それぞれは独立して有効です。

しかし、上記の事例のように、それぞれの内容が抵触するときには、古い遺言の内容については撤回されたものとして取り扱われ、新しい遺言のものが有効とされます(民法1023条1項)。
つまり、上記の例ですと、A銀行の預貯金は長男が相続することになります。
財産の変動によって遺言の内容が必ずしも適切なままではないような場合もあるので、遺産に大きな変動がある場合には遺言の書きかえが必要か弁護士と相談するのが良いといえます。

遺言の内容が古すぎて相続人全員が納得できないような場合の対処法

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言がある場合は法定相続分の規定に優先する
  • 利害関係人全員が納得していれば遺言と異なる遺産分割協議もできる

古い遺言が有効なのはわかりました。しかしその古い遺言のままで分けると、現状相続人である母が全財産を受け継ぐ形になってしまいます。母も私もこの遺言の通りにするのはちょっと…という意見で一致しています。遺言は絶対なのですか?

受遺者・遺言執行者などが居ない場合であれば、全員が納得していれば、遺言の内容と異なる遺産分割も可能です。受遺者・遺言執行者がいる場合にはそれらの方々の了承もとりましょう。

では、古い遺言が有効であるとして、必ずその遺言どおりに行わなければならないのでしょうか。

遺言の効力の原則

ある人が亡くなると相続が始まります。
この場合の遺産の分配については民法が規定をしていますが、遺言がある場合には遺言を優先します。
もし遺言が全ての財産についての記載をしていない場合には、遺言による分配を行ったうえで、遺言に記載のない財産について遺産分割を行う形になります。

相続人全員で遺言と違う遺産分割協議ができる場合がある

しかし、ご相談者様の場合のように、15年前にかかれた遺言書に基づいて遺産分配を行うと、結論として妥当ではない場合もあるでしょう。
このような場合、相続人側もそんな遺言内容は望んでいない、ということにもなりかねません。
遺言と異なる遺産分割協議に相続人全員が合意していれば、遺言と異なる内容の遺産分割協議もできるとされています。
ただし、遺贈を受けた受遺者や遺言執行者がいる場合には、その人たちの同意も必要となりますので注意が必要です。

もめないための遺言書作成の注意点

知っておきたい相続問題のポイント
  • もめないための遺言書作成で注意をすべき点
  • 遺留分や自筆証書遺言をする場合など

遺言書を作成するにあたってもめたくないのですが、何か注意点はありますか?

やはり遺留分に関することと、自筆証書遺言で作成する場合にきちんと形式を満たすことですね。

せっかく遺言書を作成するのですから、その遺言書が原因でもめることにはなってほしくないですね。
遺言書を作ってもめる場合を考慮すると、次のような注意をしましょう。

遺留分には気を付ける

遺言書を作成してももめる場合は遺留分の侵害です。
遺留分を侵害する場合には、遺留分侵害額請求という金銭請求をすることができるようになり、法律上は一括で金銭の支払いをする必要が発生します。
相続できなかった人がこの請求権を行使する場合には、相当感情的になっていることもあり、もめる原因となります。
遺留分には気をつけましょう。

日付

自筆証書遺言・秘密証書遺言を作成する場合には日付の記載は必ず・正確に行うようにしましょう。
日付については西暦・和暦どちらでも良いのですが、きちんと特定できる形で記載しなければなりません。
日付の記載がないと遺言書の効力がなくなるのですが、これは他の遺言書がある場合の効力の前後関係を確定させるなど、遺言に関する基準日として重要な役割があるからです。
「●●歳の誕生日に」という記載は、遺言をした日付を特定できるので有効とされる可能性もありますが、「●月吉日」という記載は日付を特定できず、日付がない遺言書として遺言が無効になった判例があります。

著名・押印

著名・押印は必ず行ないましょう。
署名は戸籍上の氏名を正確に記載するのが無難です。
押印も偽造・変造を防止するために、実印を利用するのが良いでしょう。

加除訂正

加除訂正は方式にしたがってきちんと行ないましょう。
ついボールペンで文字を塗りつぶしてしまいがちですが、このような方式だと訂正が認められないので、二重線をひいてその上に押印する、●文字加入・●文字削除などの様式にしたがいましょう。

遺言執行者の指定

遺言書は特に何もなければ相続人が執行することになります。
遺贈があった場合には相続人相手に手続きを行うことになり、相続人と対立しているような場合ではスムーズにいかないこともあります。
遺言執行者をつけておくと、手続きをスムーズにできます。

その他注意点

自筆証書遺言・秘密証書遺言は、自分で作るとどうしても形式を満たさず無効となったり、無効を主張する相続人が発生するなどして、争いになりがちです。
公正証書遺言は公証人という専門家が作成するので、遺言書に対する信頼が高く争いが避けられる傾向があります。
可能であれば、公正証書遺言を作成することをおすすめします。

まとめ

このページでは、遺言に期限があるのか、古い遺言の内容が妥当でない場合の処理についてお伝えしてきました。
普通方式でされた遺言であれば期限はない、と考えていただいて良いでしょう。
その内容のせいで相続がうまくいかない、という場合には弁護士に相談するようにしましょう。

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この記事の監修者

弁護士 鈴木 奏子
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