誰が相続人になるかは法律で決まっている
ざっくりポイント
  • 相続人を決める基本的な法律を知る
  • 代襲相続などの特殊な場合の相続の規定を知る
  • 相続人の確定作業の進め方を知る
目次

【Cross Talk】相続人は誰になるのか?

先日母が亡くなり相続が発生しています。父は既に亡くなっており、子どもは私の他に兄が2人います。ただ、兄のうち1人が母より先に亡くなっているのですが、兄には子どもがいます。 この場合、相続人は誰になるのでしょうか。

亡くなったお兄さんにお子さん(母から見て孫)がいらっしゃるのであれば、代襲相続が発生します。具体的な規定を見てみましょう。

相続人を決める法律の規定を知ろう

相続が発生した場合、まず初めに誰が「相続人」となるのかを確定する必要があります。誰が相続人になるかについては、民法で決められています。ただし、相続と一口に言っても、親族の中で既に亡くなっている方はいないか、相続権が否定される事情はないかなどの具体的な事情を踏まえなければなりません。 それでは、法律上、相続人となる方をどうやって確定するのか、実際に見ていきましょう。

法定相続人の範囲と順位

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続人となる者は民法で決まる
  • 親族の中で相続人となる者には順位が決められている

相続人はどうやって確定したらいいのですか?

相続人が誰になるかは民法で決まっていますので、具体的に見てみましょう。

相続人が誰になるのかについては民法に規定がされています。 法律で定められていることから「法定相続人」とも言われています。法律は次のように規定しています。

配偶者

まず、「配偶者」は常に相続人になります(民法890条) ここに言う「配偶者」は、民法上の婚姻関係にある方です。単に同棲しているだけの者、いわゆる内縁関係にある者、婚姻関係にあったものの離婚した者は相続人にはなりません。

子どもなどの直系卑属

民法は、配偶者の他、親族の中で3つの順位を設けています。 第一順位の相続人は、子どもなど直系卑属です。(民法887条1項) 卑属というのは親族関係を表す言い方で、子・孫・ひ孫と、本人から下の代に分類される方の事をいいます。
直系というのは自分と直接血族関係にある方の事をいい、兄弟姉妹などの「傍系」と呼ばれる方たちと区別する言い方です。 また、相続に関しては胎児も例外的に権利帰属主体として認められます。(民法886条1項) 配偶者と子が相続人の場合の相続割合は、配偶者1/2・子1/2となっており(民法900条1号)、子どもが複数いる場合には1/2をさらに子どもの数で割ることになります(3人居れば1/2÷3=1/6)。

親などの直系尊属

子などの直系卑属等の第一順位の相続人がいない場合または既に死亡している場合には、親などの直系尊属が第二順位の相続人となります(民法889条1項) 子どもが若くして亡くなった場合には、両親・祖父母が存命している場合もあるでしょう。 このような場合には両親が相続をすることになります。 配偶者と親が相続人の場合の相続割合は、配偶者2/3・親1/3の割合で(民法900条2号)、両親ともに存命の場合には2人が相続人になるので(1/3÷2=1/6)となります。

兄弟姉妹

直系卑属も直系尊属も既に存命ではないという場合には、第三順位の相続人として、兄弟姉妹が相続人となります。 配偶者と兄弟姉妹が場合の相続割合は配偶者3/4・兄弟姉妹1/4となり(民法900条3号)、兄弟姉妹が複数いる場合には全員相続人になるので、例えば兄弟姉妹が2人の場合には(1/4÷2=1/8)となります。

遺言がある場合

遺言がある場合には遺言の内容に従います。
そのため、法定相続分とは異なる相続割合となることがあります。
遺言では個々の財産を誰が相続する・誰に遺贈するということが決められるほかに、相続分を指定することもあります。
なお、遺言による遺贈で、相続人に最低限保障されている遺留分を侵害した場合には、遺留分侵害額請求の対象となりますが、遺言が無効となるわけではありません。

相続人は協議で変えられる?

当事者の協議で相続人を変えることはできません。
相続人および相続分の規定は、法律で定められたもので、当事者がこれを変えることはできません。
もっとも、遺産分割協議の結果、遺産分割を0にするという合意をすること自体は可能で、特定の相続人は相続をしないことも可能です。
ただし、この場合相続人には変わりないので、相続債務の支払いを債権者に求められても断ることができません。

相続の特殊事例

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続人に関する特殊な事情がある場合について知る

私の母の相続の場合には、私を含めた子ども3人で相続をするのですが、そのうちの一人既に亡くなっています。その子どもの子ども(母からすれば孫)がいるのですが、相続はどうなるのでしょうか?

その場合には代襲相続が発生します。その他相続に関する特殊事情について見てみましょう。

相続の順位が確定すれば相続人が確定するというわけではありません。 相続ごとに特殊な事情があることもあり、状況に応じた処理が必要になります。

代襲相続

まず、法定相続人の一部が亡くなっているなどした場合の代襲相続(だいしゅうそうぞく)という規定があります(民法887条2項・3項、889条2項) 本件のご相談者様のように、相続人である子どもが1人既に亡くなっているような場合で、その子どもにさらに子どもがいるような場合(母からすれば孫)に適用があります。

子どもが3人で1人が亡くなっているような場合で代襲相続が適用されると、孫が子どもの分を相続することになります。 第三順位の相続が発生している場合で、兄弟姉妹のうち1人が亡くなっていても、兄弟姉妹に子どもがいる(被相続人からすれば姪や甥)ような場合も同様です。 代襲が発生する代襲原因としては死亡のほか、後述する欠格・廃除などもありますが、相続放棄をした場合に代襲相続が発生しない事に注意しましょう。

相続欠格・廃除

次に、法律上は相続人とされている場合でも、様々な事情から相続人とするのが適切ではない場合があります。 例としては、子どもが親を殺害してしまったような場合にまで子どもに相続権を認めるのは適切ではないといえるでしょう。

そのような場合を相続欠格(そうぞくけっかく)と呼んでおり、民法第891条で具体的な事情を次のように定めています。

  • 被相続人や先順位又は同順位で相続する人を殺害して刑に処せられた
  • 被相続人が殺害されたことを知って告発又は告訴しなかった
  • 詐欺・脅迫という手段で遺言書を作成・変更・撤回などさせた
  • 遺言書を偽造・破棄するなどした

また、相続人になる方が、非行が著しい・被相続人を虐待・重大な侮辱を加えており、家族として相続を認めることが適切ではない場合もあります。 このような場合には家庭裁判所が適切かどうかを判断して相続人としての資格を喪失させることができるとされています。 この制度を「廃除(はいじょ)」と呼んでいます。相続欠格と異なるのは、家庭裁判所に申立てをすることを必要とする点です。

孫養子の場合

例えば、遺産を孫に渡したくても、その孫の親が存命の場合には、孫は相続人ではないことになります。 そのような場合に、孫を養子とすることがあり、養子とすれば法律上の子どもとなるので相続人となることができます。 この事自体は認められるのですが、相続税の課税の関係で、相続人の数が多ければ多いほど基礎控除が多くなります。

そのため、孫を大量に相続人にして基礎控除を増やしすぎることによって課税を逃れることがないように、相続税法上、基礎控除の算定の際に法定相続人に含める養子の人数に制限を設けています。 具体的には、実子が居ない場合は養子が何人いても養子を上限2人まで法定相続人に含めて算定し、実子が居る場合には養子が何人いても養子を1人のみとして算定されています。 また、相続税の課税割合も2割加算という制度があるので注意が必要です。

婿養子の場合

例えばある夫婦の子どもが娘しかおらず、その娘が結婚をする際に、夫の姓を名乗るのではなく、娘の姓を名乗り、夫婦とも養子縁組をするような場合を一般に婿養子と呼んでいます。 この場合に、元の親との相続権も変わりませんし、養父母の相続権もあります。 また、養子と実子の間で相続分が変わるということもありません。

受遺者がいる場合

受遺者・包括受遺者がいる場合には、相続人と同様に扱います。
遺贈には、特定の財産を示して行う特定遺贈と、相続財産に対する割合を示して行う包括遺贈があります。
民法990条で、包括遺贈を受けた方は、相続人と同一の権利義務を有するとされています。
そのため、包括遺贈を受けた場合には、他の相続人と遺産分割を行うことになります。

再婚をしている場合

再婚をしている場合で、前婚の配偶者との間に子どもがいる場合、その子どもは前婚の両親との関係において相続人となります。
前婚の配偶者との間の子どもを除いて遺産分割協議を行っても法律上の要件を満たしていないため無効となります。

行方不明の相続人がいる場合

相続人の中に行方不明の相続人がいる場合でも、その相続人を手続き遺産分割に加える必要があります。
戸籍謄本から現住所の特定を試みたものの、それでも相手の居場所がわからない場合には、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申立て、選任された相続財産管理人と遺産分割協議を行います。
なお、7年以上行方不明になっている場合や、沈没した船舶に乗船した・墜落した飛行機に搭乗していたたなどの事情があってから1年以上行方不明になっている場合には、失踪宣告という制度によって亡くなったことにできる制度もあります。

相続人がいない場合

相続人がいない場合には、相続人が居ない場合の清算の手続きを経て、相続財産は国庫に帰属することになっています(民法959条)。
もっとも、例えば相続権のない内縁の夫婦や、被相続人の生活の面倒をみていたような人、特別の縁故がある人に、遺産を分与することができます(民法958条の2)。

法定相続分を調整するための制度

知っておきたい相続問題のポイント
  • 法定相続分の規定によると不公平となる場合がある
  • 法定相続分を調整するための特別受益・寄与分

法定相続分に関する規定はなんとなくわかりましたが、たとえば生前贈与を受けていた子ども、家でずっと親の仕事を手伝っていた子どもがいて、相続分が同じというのも不公平な気がします。

そのような不公平については、特別受益・寄与分という調整の制度があるのでその概要を知っておきましょう。

法定相続分の規定に沿って相続を行うのが基本なのですが、生前贈与を受けていた相続人がいる場合や、親の介護をしていた相続人がいるような場合、そのままの割合で遺産分割するのは不公平といえます。 そのため、次の2つの制度が設けられています。

特別受益

生前に相続人が被相続人から受けた遺贈・生前贈与によって得た利益のことを特別受益といいます。
特別受益を受けた相続人がいる場合には、その特別受益分を相続財産とみなし、特別受益分を控除した相続分で遺産分割をすることで、公平となるように調整を行います(民法903条)。
たとえば、父・母・子ども2人の相続で、遺産が3,000万円である場合、通常通りの相続分だと、母1,500万円、子どもがそれぞれ725万円ずつとなります。
この場合に子どもの一人が500万円の生前贈与を受けていた場合、相続財産を3,500万円として計算し、特別受益を得ていた子どもの相続分から500万円を差し引きます。
その結果、母1750万円、特別受益を得ていない子ども875万円、特別受益を得ている子ども325万円となり、特別益として得た500万円分の調整が行われ、公平な取り扱いとなります。

寄与分

被相続人の生前に、事業を手伝ったり介護をしたりするなどして、被相続人の財産の維持または増加についての特別な寄与のことを寄与分といいます。
このような特別な寄与を行った方については、寄与分を相続財産から差し引き、残った額を法定相続分で分配して、寄与分を特別な寄与を行った方に与えるという調整を行います(民法904条の2)。
例えば、父・母・子2人の相続で、遺産が3,000万円である上述の例で、子どもの一人の介護によって500万円の出費を免れたという事情がある場合には、遺産を2,500万と計算し、これを法定相続分に従って母1,250万、子どもがそれぞれ625万円で計算し、特別な寄与を行った子どもを500万円加算し1,125万円分を相続することになります。
寄与分の計算は難解であり、かつ当事者で争いになりやすいため、弁護士に相談することをおすすめいたします。

相続人の確定は実際どのように進めるか

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続人の確定をする方法を知る

法律上の相続人が誰になるかは分かったのですが、実際に誰が相続人なのかをどのようにして確定するのですか?

被相続人の戸籍謄本を取り寄せて、親族関係及びその生死を調べることで相続人を確定しています。

どのような範囲の方が相続人になるのかが分かったとして、実際に相続人をどうやって確定するのでしょうか。例えば、相続による不動産の移転登記をする際には、相続人が誰であるのかを確定してそれを示す証拠を提出する必要があります。

死亡により凍結された被相続人の銀行口座を解約するのにも同様の証拠を必要としますので、相続においては必須の手続きであるといえます。この相続人の確定をするためには、家族に関する事項が記載されている戸籍謄本を取得することで行います。

被相続人に関しては、出生から死亡までの全ての戸籍謄本を取得します。 これによって、実は以前に結婚をしていて子どもが居るということがないか、認知をしている子どもがいないか、を調べます。 相続人についても被相続人との関係を明らかにするために戸籍謄本を取得します。

法定相続人以外に相続させたい場合と遺留分について解説

知っておきたい相続問題のポイント
  • 特に対策をしなければ相続人以外に財産を取得する可能性があるのは特別寄与料を請求できる人と特別縁故者のみ
  • 相続人以外に財産を相続させたいのであれば遺贈・生前贈与・死因贈与
  • 相続人の遺留分を侵害しないように注意する

相続人以外の方に自分の財産を相続してもらいたいのですが、どのような方法がありますか?

遺言書で遺贈をするのが基本ですが、今のうちから生前贈与や死因贈与という方式の贈与契約を結んでおくことも可能です。

法定相続人以外に相続させる方法

法定相続人以外に相続させる方法はあるのでしょうか。 まず、特に何も対策をしなかった場合には、相続人以外で財産を取得する可能性があるのは、特別寄与料を請求できる方と、特別縁故者のみになります。

前者は被相続人の介護をしていたなどの関係がある親族のみに認められ、後者は相続人が誰もいない場合に認められるなど、範囲が限られています。 そのため、自分が意図した方に対して意図した金額を渡したいというのであれば

  • 遺言書
  • 生前贈与
  • 死因贈与
  • のいずれかを利用するのが現実的です。

    遺留分に注意をする

    遺言書で遺贈を行う場合・生前贈与・死因贈与のいずれを行う場合でも、相続人の遺留分への侵害には注意しましょう。 遺留分とは、相続人に保障されている相続における最低限の取り分で、基本的には各相続人の法定相続分の半分は取得することができるようになっています。 これを侵害すると財産を得た受遺者がそれ以外の相続人から遺留分侵害額請求権を行使されることになり、トラブルに発展する可能性もあります。

    大きな額の遺贈などを行うことを考えている場合には、遺留分の侵害をしないか、弁護士と確認をしながら行うのが望ましいといえます。

    まとめ

    このページでは誰が相続人になるのか、を中心にお伝えしてきました。 相続については民法で詳細に規定をしていますので、その規定を正確に把握することが重要であるといえます。 また、その法律に関する規定を知ったうえで、どのような親族関係があるのかを戸籍謄本を利用して証明するということも知っておいてください。 さらに詳しく知りたい方は一度、相続問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめ致します。

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