個人事業主の相続における「売掛金・貸付金」について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 売掛金・貸付金債権として相続が可能で、相続人は債務者に請求できる権利を持つ
  • 債権には時効があるため相続人は注意が必要
  • 債権の相続手続きとして債務者に債権を相続した旨を通知する
目次

【Cross Talk 】遺産に売掛金・貸付金がある場合はどうしたら良い?

個人事業主の父が亡くなりました。売掛金を回収していないようなのですが遺産に含まれるのでしょうか?

売掛金や貸付金は債権として相続が可能です。ただ債権には時効があるためあらかじめ確認しておきましょう。

詳しく教えてください。

売掛金・貸付金は債権として相続できる

個人事業主・フリーランスの方は商品・サービスの対価である売掛金を取引先から回収しないまま亡くなってしまう場合があります。また誰かにお金を貸していた方が亡くなった際には「貸付金があった」ことになります。 売掛金・貸付金は債権として相続が可能です。今回は相続での売掛金・貸付金の取り扱い、債権の時効と相続手続き・遺産分割協議書の書き方を解説いたします。

売掛金・貸付金とは

知っておきたい相続問題のポイント
  • 売掛金は取引先に提供した商品・サービスに対する売上の未収金
  • 貸付金とは第三者に返済を約束したうえで貸したお金を指す

個人事業主の売掛金にはどのようなものがあるのでしょうか?

一人親方が請け負った工事代金の未収分、IT系フリーランスが商品・サービスを提供した後にまだ報酬が入ってきていない等の場合が挙げられます。

売掛金

売掛金とは売り上げの対価として将来お金を受け取る権利(債権)を指します。 スーパーのレジのようにその場で現金のやり取りを行うわけではなく、商品・サービスの提供を行ってから後で回収する未収金ともいえます。 個人事業主の場合、商品の小売代金・工事の請負代金・飲食代金・サービス提供の報酬などでまだ受け取ってないものが売掛金に該当します。

労働者を雇わない建設業者である一人親方・飲食店の店主・個人・法人向けに商品・サービスを提供する方・Webエンジニア・デザイナー・ライターなどが亡くなった場合には売掛金が相続財産となる可能性があります。

貸付金

定められた期日までに返済してもらう約束を行い、貸したお金を「貸付金」と呼びます。 取引先や知り合いに貸したお金は債権として相続することができます。

売掛金・貸付金は相続の対象になる?その手続きは?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 売掛金・貸付金は債権として相続できる
  • 債権を相続する際は債務者に債権を相続した旨を通知する必要がある

売掛金・貸付金などの債権の相続で注意すべきポイントはありますか?

まず債権には時効がありますので、相続時に返済期日を調べておきましょう。また債務者に相続したことを通知する必要があり、遺産分割協議書にも相続内容を記載します。

債権の相続と時効

売掛金・貸付金などの債権を相続することで、相続人は債務者に返済を要求することができます。売掛金・貸付金だけではなく、賃貸借契約に基づく未払いの家賃も債権として相続が可能です。

売掛金・貸付金などの債権には時効があり民法では以下のように規定されています。

第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
2 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

お金の貸し借りの契約(金銭消費貸借契約)に関して、貸した人(貸主)は返済期日が来ると、借主に対して借金や利息の支払いを求めることが可能となります。貸主が弁済期の到来を知ったときから5年を経過または弁済期から10年を経過すると時効によって消滅します。

ただ、民法160条「相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない」という規定により、相続人が確定してから6ヶ月は時効が成立しません。

また、債権者にとって時効は、債務者が「時効が成立したから返済しない」と主張することで成立します。時効期間を過ぎていても、返済を求めて一部でも支払いがあった場合には時効は中断します。 よって、たとえ時効期間を過ぎていても、債務者とコンタクトをとり返済を求めることが重要となります。

相続の際には、遺言書がある場合は遺言書通りに、遺言書がない場合には遺産分割協議によって債権の相続人を決めます。相続人のうち1人が相続する方法の他に、相続人全員の合意があれば、分割割合を決めて共同で債権を相続することも可能です。

相続人1人が債権を相続し、これを全て回収できなかった場合には、民法912条共同相続人の担保責任※4に基づき、他の相続人がこれを担保することになります。 例えば、相続人A・Bで遺産を均等に分配し、相続人Aが売掛金1,000万円の債権を相続した後に500万円しか回収できなかった際には、残りの500万円はA・Bが均等に責任を負うことになり、AはBに250万円を請求できます。

債権相続の手続き

債権の相続手続きとして、債務者に債権を相続した旨を通知する必要があります。 貸金債権の場合には、債権者を相続人に変更した金銭消費賃貸契約書を送るか、または債務者から債務確認書を取得します。 売掛金債権の場合には、債務者に債務の残高確認を行います。

遺産分割協議書の書き方

債権を含めた遺産分割協議書を作成する場合には、どのように記載したら良いのでしょうか? このような場合には、債権を特定するためにも、「いつ誰に対して発生した債権であるか」を明確に記載する必要があります。 遺産分割協議書 以上が記載例となります。

まとめ

個人事業主が亡くなり売掛金や貸付金がある場合、相続人はそれらを相続することが可能です。債権には時効がありますので、相続時に返済期日を調べておきましょう。ただ、時効を迎えていたとしても、請求した結果一部でも返済があったときには、時効は中断します。そのため、諦めずに請求を行ってみましょう。 債権の相続に不安や疑問がある方は、相続問題の経験が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

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この記事の監修者

弁護士 岩壁 美莉第二東京弁護士会 / 東京第二弁護士会 司法修習委員会委員
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