相続における負の遺産の概要や、負の遺産がある場合の選択肢について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 負の遺産とは、相続人にとって負債となる遺産のことである。
  • 負の遺産として借金・未払金・保証債務・公租公課などがある。
  • 負の遺産がある場合の選択肢として支払う・相続放棄・限定承認がある。
目次

【Cross Talk 】負の遺産がある場合、相続人にはどのような選択肢がある?

父の遺産を相続する予定なのですが、負の遺産があるから注意するように言われました。負の遺産とはなんですか?

一般に負の遺産とは、借金や保証債務など、相続した方にとって負担となる遺産を意味します。負の遺産がある場合、必要に応じて相続放棄や限定承認などを検討します。

負の遺産がある場合、相続人にとって負担になるんですね。負の遺産がある場合の選択肢についても教えてください!

負の遺産の種類や、負の遺産がある場合の相続人の選択肢などを解説いたします。

被相続人の遺産には、預貯金や不動産などのプラスとなる財産だけでなく、借金や保証債務などの負の遺産も含まれる場合があります。 負の遺産がある場合、負の遺産を相続して支払ったり、相続放棄によって遺産を相続しないことにしたりなど、いくつかの選択を検討しなければなりません。 そこで今回は、負の遺産の種類や、負の遺産がある場合、相続人の選択肢について解説いたします。

負の遺産とは?調査方法は?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 負の遺産とは、相続人にとって負債となる遺産のことである。
  • 負の遺産として借金・未払金・保証債務・公租公課などがある。

負の遺産について教えてください。

負の遺産とは一般に、相続した方にとって負債となる遺産を意味する言葉です。負の遺産の例として、借金・未払金・保証債務・公租公課などがあります。

負の遺産とは

負の遺産とは一般に、被相続人の遺産のうち、相続人にとっては負債となる遺産を意味する言葉です。

相続の対象となる財産を相続財産といいますが、相続財産には積極財産と消極財産があります。

積極財産は相続した方の利益となる財産であり、預貯金・不動産・自動車などです。 消極財産は相続した方にとって不利益となる財産であり、借金・未払金・保証債務などがあります。

相続財産のうち消極財産が、一般に負の遺産と呼ばれるものです。 負の遺産にあたる財産について、もう少し詳しく見ていきましょう。

借金

借金とは文字通り、被相続人が生前に借り入れをした金銭であり、借入金とも呼ばれます。

借金の例は、信販会社や消費者金融などからの借入金・住宅ローンの残債・自動車ローンなどの割賦契約月割賦金などです。

買掛金・未払金

買掛金や未払金も、一般に負の遺産に含まれます。

買掛金とは、いわゆる掛取引(商品やサービスの代金を後日に支払う取引)の代金のうち、未払いの部分のことです。

例えば、自営業者である被相続人が商品を仕入れるために100万円の掛取引をし、そのうち50万円が未払いの場合は、買掛金にあたります。

未払金とは、商品やサービスの提供を受けた対価のうち、まだ支払いが済んでいない代金のことです。

買掛金との違いは、買掛金は一般に通常の営業取引から生じるのに対し、未払金は通常の営業取引とは異なる取引から生じることです。

例えば、自営業者である被相続人が事務用品として机を購入し、まだ代金の支払いが済んでいない場合は、未払金にあたります。

その他

借金や買掛金・未払金以外に、一般に負の遺産に該当する債務として、以下のものがあります。
・敷金や保証金
被相続人が不動産を貸しており、賃借人から敷金や保証金を預かっている場合、原則として賃借人に返還しなければならないので、一般に負の遺産にあたります。
・前受金
前受金とは、商品やサービスを提供する前に受け取っている、代金の全部または一部のことです。
例えば、商品を売却する際に、手付金として代金の一部を受け取っているものの、まだ商品を引き渡していない場合は、前受金にあたります。
・保証債務
被相続人が保証人や連帯保証人になっている場合は、保証債務を履行する責任を負っているので、一般に負の遺産に該当します。
・公租公課
公租公課とは、国や地方公共団体に納めなければならない税金などの総称です。
公租公課の例として、所得税・住民税・固定資産税などの税金や、国民健康保険の保険料などがあります。

負の遺産がある場合の相続人が採りうる選択肢

知っておきたい相続問題のポイント
  • 負の遺産がある場合の選択肢としては、支払う・相続放棄・限定承認がある。
  • 相続放棄や限定承認をする場合は、熟慮期間にご注意を。

負の遺産がある場合、相続人にはどのような選択肢がありますか?

負の遺産に対する相続人の選択肢として支払う・相続放棄・限定承認があります。相続放棄や限定承認をする場合は、熟慮期間に注意しましょう。

支払う

負の遺産に対する選択肢の一つは、遺産を相続したうえで支払うことです。 相続放棄や限定承認をせず、遺産をそのまま相続することを単純承認といいます。 単純承認をした場合、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や売掛金などの負の遺産もそのまま相続します。 単純承認をした場合、借金や売掛金などの債務を相続人が支払う必要がありますが、支払ってしまえば負の遺産はなくなります。 例えば、1000万円の預貯金と500万円の借金を相続した場合、預貯金を元手にして借金を支払えば、負の遺産はなくなります。

相続放棄

負の遺産に対する選択肢として、相続放棄をする方法があります。

相続放棄をすると、法律上最初から相続人ではなかったものとみなされるので、被相続人の遺産を相続しなくなります。

相続放棄をした場合、借金や保証債務などの負の遺産を相続せずにすみますが、預貯金や不動産などのプラスの財産も相続できなくなることに注意しましょう。 相続放棄をするかどうかは、相続人ごとに判断します。ある相続人が相続放棄をしたとしても、他の相続人が相続放棄をするかどうかは、それぞれ自由に選択できるのです。

限定承認

限定承認とは、相続したプラスの財産の範囲内で、借金や売掛金などの負の遺産を相続する手続きです。

具体的には、裁判所の手続きによって遺産を清算したうえで、なおプラスの財産が残存する場合に受け取ることができます。

プラスの財産の範囲以上の債務を負担せずにすむことが、限定承認のメリットです。 限定承認をするには、相続人全員の同意が必要です(相続放棄をした相続人をのぞく)。相続人のうち一人でも同意しない場合は、限定承認をすることはできません。 また、限定承認をするには申述書に加えて財産目録を提出したり、相続財産管理人を選任して財産を清算したりなど、裁判所でのさまざまな手続きも必要となります。

相続放棄・限定承認

相続放棄や限定承認を検討する場合、原則として相続が開始してから3ヵ月以内に、相続放棄や限定承認をするかを決め、裁判所に申述をしなければなりません。

相続人は原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に、単純承認・相続放棄・限定承認を選択しなければならず、この期間を熟慮期間といいます。

熟慮期間の間に相続放棄や限定承認をしなかった場合や、相続放棄や限定承認の手続きをする前に遺産の一部を処分した場合(例えば、被相続人名義の預金を引き出して使ってしまった、遺産である自動車を売ってしまった等)などは、原則として単純承認をしたとみなされ、限定承認や相続放棄が認められなくなるので注意しましょう。

まとめ

負の遺産とは、借金や保証債務など、相続人にとって負担となる遺産のことです。 負の遺産を相続する場合の選択肢として、単純承認をして支払ったり、相続放棄や限定承認をしたりする方法があります。 負の遺産についてどう対処すればいいのか不安な場合は、相続問題に詳しい弁護士に相談すれば、最適な方法を見つけやすくなります。

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この記事の監修者

弁護士 鎌田 隆博東京弁護士会
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